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髑髏天使

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第三十三話 闘争その二十


「そうした存在にだ」
「そうか」
「僅かな間に強大な力を身に着けた」
 そしてこのことも話してきた。
「それを持て余すかどうかだが」
「それを再び見るか」
「その通りだ。確かに今まで闘ったが」
「それはどうだった」
「まだ飲み込まれてもいないし持て余してもいないな」
 死神はこう彼に告げた。
「確かなものになっている」
「なっているのだな」
「さしあたってはな。だが」
「だが、か」
「このままでは危ういことも事実だ」
 大鎌をその両手に持ったまま話してきた。
「今のままではだ」
「危ういというのだな」
「己を見ることだな」 
「己をか」
「そうだ。心も鍛えることだ」
 それは博士が言うことと同じだった。
「いいな。その心をだ」
「俺の心か」
「そうすれば危うさもなくなる」
「わかった」
「貴様は今は持て余してもいないし飲み込まれてもいない」
 またこのことを話すのだった。
「だが」
「だが、か」
「危ういのも確かだ」
 このこともまた言うのであった。
「若し危うさに揺れたらだ」
「俺は魔物になるか」
「その時は刈る」
 死神の言葉は本気そのものだった。
「その魂を冥界に送り届けてやる」
「いいだろう。俺も魔物として生きるつもりはない」
 髑髏天使もそのつもりはないと返した。
「あくまで人として生きるつもりだ」
「ならその為に心を鍛えるといい」
「そうさせてもらう。それではだ」
「話も闘いも終わりだ」
 彼だけでなく死神の方も言ってきたのであった。
「それではな」
「帰るのだな」
「既にこの者の命も刈った」
 まだ無様に転がっているその暴力教師の骸を冷たく見下ろしての言葉だった。
「今からこの汚らわしい魂を地獄に送り届ける」
「地獄には」
「これからこの輩は気が遠くなるまで責め苦を受けだ」
 所謂地獄の責め苦である。それを受けるというのである。
「そのうえで生まれ変わることになる」
「何に生まれ変わるのだ?」
「まずは寄生虫だ」
 それだというのだ。
「確かサナダ虫になる」
「人の腹の中にいるあれか」
「そうだ、あれに生まれ変わる」
 そうだというのだ。全長数メートルに及ぶ気色の悪い寄生虫である。
「まずはだ」
「それから何に生まれ変わる?」
「回虫にも生まれ変われば蛆虫にも生まれ変わる」
 そうしたものになっていくというのである。
「蚊やゴキブリに生まれ変わり続けそれを何千回も繰り返しだ」
「人にはならないのか」
「この輩はあまりにも下劣な罪を犯し続けた」
 ここでも死神の言葉も目も冷たい。
「人になれる筈もない。最早な」
「そうか」
「それについて何とも思わないのだな」
「自業自得だ」
 髑髏天使の言葉も極めて冷淡であった。知り合いに対する言葉とは思えないまでだった。 
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