髑髏天使
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第三十三話 闘争その十九
「俺はだ」
「ではだ。それを見極めさせてもらう」
言いながら鎌を縦横に振り回す。そのうえで髑髏天使の命を絶たんとする。その速さも威力も魔物達とは比較にならなかった。
「むっ、これは」
「どうだ、私の鎌は」
「確かにな。これはかなり」
「何時までも耐えられるものではないな」
「その通りだ。だが」
「だが、か」
「そうだ。倒れはしない」
そうだというのだった。
「ただやられるだけではない」
「ではどうするというのだ?」
「俺は守るだけではない」
こうしてまた右手の剣を振るう。それで攻める。
しかしその攻撃をだ。死神は身体の動きだけでかわしてみせる。
足の動きも使ってだ。それはかなりの動きだった。
「ただ武器を振るうだけではないか」
「そうだ。貴様の剣と違い私の鎌はだ」
「小回りが利かないな」
「そして守りに適していない」
己の得物についても把握しているのだった。
「それはわかっている」
「そうか。それならだ」
「こうしてかわすまでのこと」
身体を巧みに使いながらの言葉だった。
「それだけだ」
「そうか。それだけか」
「そしてだ」
ここでまた言う死神だった。
「私の術はまだある」
「まだか」
「例えばだ」
この言葉と共にであった。不意に後ろから来た。
髑髏天使の影からもう一人死神が出て来たのだ。そうして。
「これはどうする」
「来たか」
「何っ!?」
「来たかと言ったのだ」
こう返すのであった。
そしてその後ろからの一閃を上に飛んでかわした。まさに読んでいる動きだった。
「貴様はこうした奇襲を好む」
「それは既にわかっていたか」
「その通りだ。だからこそだ」
かわせたというのである。
「こうしてかわせた」
「流石だな。最初に会った時とは何もかも全く違う」
「それはどういう意味での言葉だ」
大地に降り立ちながらの問いだった。
「一体」
「安心しろ。悪意はない」
「悪意はか」
「それはない」
このことは確かに言う死神だった。
「だが。事実を言っている」
「事実だというのか」
「そうだ。貴様は確かに変わった」
「どういう風に変わったかだな」
「鋭くなった」
まずはそうだというのである。
「貴様はかなり強くなった」
「鋭い強さになったのか」
「そうだ、かなり強い」
彼の言葉は続く。
「そうなった」
「智天使になれるのは髑髏天使の中でも僅かだと聞いてはいる」
「そうだ。ましてやだ」
「まして、か」
「貴様程僅かな間になった例もない」
このことも言うのだった。
「一人としてだ」
「一人としてか」
「そうだ。貴様はそれだけ特別の存在なのだ」
「選ばれたとかそういうものでもないな」
「なったというべきだな」
そうだというのである。
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