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髑髏天使

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第三十三話 闘争その四


「僕達も見ていてね。呆れてるからね」
「戦争終わってからかなり酷くなったよね」
「先生とか教授の世界って」
「正直なところ嫌な世界じゃよ」
 博士はそれを否定しなかった。
「まああまりお勧めはせん。陰謀も多いしな」
「どろどろしてるんだね」
「そういうのも入るなんて」
「っていうか滅茶苦茶じゃないの?」
「ねえ」
「滅茶苦茶なんてものではない」
 牧村も知っている世界だった。だからこそまた話すのだった。
「腐敗し尚且つそれに光が当てられることは長い間なかった」
「なかったんだ」
「何でだろうね、それって」
「最近までなかったって」
「どういうこと?それって」
「聖職者と呼ばれておったからのう」
 博士はまた話した。実際に教師はそう呼ばれてきていた。それが真実かどうかというとである。甚だ疑問なのはもう言うまでもない。
「かつては」
「今は違うよね」
「もうね」
「じゃからいい鉄は釘にはならん」
 博士もまたこのことを話した。
「そういうことじゃ」
「まあそういうさ、先生には教わらない方がいいね」
「碌なことにならないからね」
「だよね」
 妖怪達もそれはわかっていた。
「絶対にね」
「実際にいるだけでも信じられないし」
「っていうか剣道なんかするなよって思うけれど」
「全くだよ」
「一応言うがだ」
 また牧村が言ってきた。
「中学校では突きは禁止されている」
「それはどうしてですか?」
 ろく子が彼の方に首を伸ばしてそのうえで目をぱちくりさせて問うてきた。
「中学生で禁止されているのは」
「中学生はまだ身体ができていない」
 これは事実だった。
「だからそんな危険な技を使えば大変なことになりかねない」
「だから突きはしないんですか」
「そうだ。これは常識の話だ」
 そう、『常識』であった。だが教師の世界というものはマスコミの世界と並んでその常識が通用しない世界なのである。まさに無限の腐敗地獄の中にある世界なのだ。
「教師なら当然知らなくてはならないことだ」
「っていうか生徒怪我させたら問題なんじゃ?」
「そんな稽古させてね」
「そうだよね」
「しかしだ」
 牧村の言葉はここで剣呑なものに変わった。
「それを教師が行う」
「えっ!?」
「何で!?」
「禁止されてるのに!?」
「先生が生徒にやるの!?」
「そうだ。生徒に突きを入れる」
 これもまた事実である。中学生の生徒に突きを入れるのである。無論これで罰せられることはない。教師の世界は日本で最も無法がまかり通る世界の一つであるからだ。こうした意味においてもマスコミや知識人の世界というものは異常な世界なのである。
「しかも只のリンチ技のシャベル突きをだ」
「シャベル突き!?」
「何、それ」
「変な技みたいだけれど」
「下から上にスコップを上げる様にして突きを入れる。実際の試合で使おうものなら即刻退場になってもおかしくはない技の一つだ」
 そういう技だというのだ。
「それを使うことすらある」
「いや、それおかしいでしょ」
「そんなのするってもう指導でも何でもないし」
「シゴキのレベル超えてるし」
「幾ら何でもさ」
「僕達の間でもそんなことしたら」
 妖怪達にもモラルがある。それを見せる言葉だった。 
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