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髑髏天使

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第二十六話 座天その十九


「こうしてだ。立っている」
「生きているというのね」
「俺は立っている限り闘う」
 少なくともその目は死んでいなかった。髑髏の奥にある人の目はあくまで強く確かな二つの光を放ち続けていたのである。
「その限りな」
「いいわね。貴方が魔物だったら」
「どうだったというのだ?」
「惚れていたな」
 今の言葉は偽りではなかった。
「間違いなくね」
「魔物に惚れられるというのもだ」
「悪くないでしょ」
「趣味ではない」 
 そうだというのであった。
「貴様にとっては生憎だろうがな」
「つれないわね。そんなのじゃあまりもてないわよ」
「恋だの愛だのに興味がないと言えば嘘になるが」
 流石にそれを否定はしなかった。
「しかしだ」
「しかし?」
「貴様ではない」
 彼は言い切った。
「貴様をその相手には選びはしない」
「本当につれないわね」
「貴様は敵だ」 
 魔物を見据えての言葉だった。
「だからだ。敵を愛する趣味は俺にはない」
「敵は敵なのね」
「敵は倒す」
 まさに剣そのものの鋭さを持つ言葉だった。
「それだけだ」
「そうなのね」
「だからこそ貴様も倒す」
 それを目の前に飛び続けるがしゃどくろに対しても告げた。
「いいな、それで」
「ストイックでいいわ」
 魔物はそれを聞くとさらに満足したようであった。声にもそれが出ている。
「さらに惚れそうね」
「敵でなかったらそうするがいい」
「敵としてもよ」
 しかし魔物はまた返す。
「貴方にね。惚れそうよ」
「敵に惚れるというのか」
「相手が強くて。そして見事であればある程」
 なるというその言葉は。確かにそれを感じさせるものであった。
「魔物は惚れるものなのよ」
「貴様だけではないのか?」
「それが違うのよ」
 彼女が言うにはそうであるらしい。声は楽しそうな笑みを含んだままである。
「魔物はね」
「戦いを楽しむからか」
「その相手を見るのも当然ではなくて?」
「言われてみればそうだな」 
 話を聞いていてそれも確かだと認めた髑髏天使であった。
「だからか」
「そうよ。それでね」
 そしてさらに言ってきた。
「貴方は私の中で永遠に生きるのよ」
「貴様の中でというのか」
「ええ」
 それはまさに恋人が言うべき言葉であった。だが魔物はその言葉を今確かに言った。そのうえで髑髏天使をその目で見続けているのであった。
 そうして再び。彼女は言った。
「だからね」
「俺を倒すというのか」
「私の手で死んでもらうわ」
 言いながら再び突進に入ろうとしていた。
「次に私の突進を受けたなら」
「むっ!?」
「まずいわね」
 先程髑髏天使が受けたダメージをわかっているかの様な言葉であった。 
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