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髑髏天使

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第二十六話 座天その八


「それはな」
「わかってるの」
「そうだ。体操のせいだ」
 それのせいだというのだ。
「小学校の時からやっていたな」
「ええ、そうだけれど」
「体操をすると大きくならないものだ」
 彼は言った。
「そのせいだ」
「体操のせいだったの」
「ああ、そういえば」
 ここで若奈も気付いたのだった。それではっとした顔になる。
「未久ちゃん体操やってるから。それでなのね」
「激しい運動はかえってなんですね」
「そうなのよ。そのせいだったのね」
 体操はかなり激しい運動である。身体全体を使うからだ。成長期にあまりそうしたスポーツをすると背はどうしても伸びないのである。
「私が小さいのは」
「そうだと思うわ。多分だけれど」
「仕方ないですね」
 しかしであった。未久は今は苦笑いを浮かべただけであった。そうしてそのうえでまた若奈に顔を向けて言葉を出すのであった。
「それなら」
「いいの」6
「はい」
 いいというのであった。
「もうそれならそれで」
「背が低いのもそれでいいの」
「やっぱりコンプレックスはありますよ」
 それはあるというのである。否定しない。
「けれどあれですよ。もう背が伸びないのならね」
「そうよね。どうしようもないわよね」
「はい」
 また答える未久だった。
「ですから」
「それに」
 若奈はここで言うのだった。
「背が低くてもね」
「背が低くても」
「それでも彼氏はできるのよ」
「できますか?」
「そうよ。できるわよ」
 このこをと未久にしっかりとした口調で話した。
「わかるわよね」
「はい」
 今の若奈の言葉の意味をすぐに理解した彼女だった。
「よくわかりました」
「そういうことよ。だからね」
「極端に悲観することはないわよ」
「わかりました」
 こう話すのだった。とりあえずこれで話は一段落となった。しかしそれで話は終わりではなく。今度は牧村を見ながら二人で話すのだった。
「それでだけれどお兄ちゃん」
「何だ」
「今二十歳よね」
 今度話すのは年齢についてであった。
「そうよね。二十歳よね」
「そうだが」
 彼にとっては今更な話だったがそれでも応えた。
「それがどうかしたのか」
「二十歳になってどうなの?何か変わった?」」
「別に何ともない」
 髑髏天使としてのことは最早自然に隠してしまっていた。もうそれだけのものは身に備えてしまっていたのである。これまでの生活の中で。
「何ともな」
「そうなの。何もないの」
「強いて言えばだ」
「うん」
「酒が飲めるようになる」
 この誰でも知っていることをぶっきらぼうに言ってきたのであった。
「それだけだ」
「それだけ?」
「成人式に出席する」
 次に告げたのはこれであった。やはりこれも誰でも知っていることである。 
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