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髑髏天使

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第二十六話 座天その七


「背が高いしスタイルもいいから余計に目立つのよね」
「ですよね」
 口が悪い妹もこれは認めるところであった。
「スタイルは確かにいいですよね」
「ほら、私は背が低いじゃない」
「私もですよ」
 この部分では全く同じの二人であった。
「背が高いだけでも羨ましいのに」
「足は長いし。しかもストレッチに問題が出るまでだなんて」
「未久ちゃんも足長くない?」
「そういう若奈さんも」
 ここで二人はお互いのことを言い合う。
「けれどそれでも。背が低いと」
「あまり目立たないのよね」
「ですよね。やっぱり背って大きな関係があるんですね」
「モデルさんだってそうだし」
 言いながら牧村を見るのであった。性別は違っても羨ましいことには違いはないのである。だからこそ彼を見続けているのであった。
「私もう背は伸びないみたいですし」
「女の子はね」
 若奈の顔は嘆くものになっていた。
「小学校六年で成長が止まるから」
「じゃあずっとこのままなんですね」
「そうよ、このままよ」
 まさにその通りだというのだった。
「ずっとね」
「男の人は十八や九でもまだ伸びる場合があるんですよね」
「そうよ。そういえば」
 若奈はまだ牧村を見ている。そうしてここでも羨ましそうに言うのだった。
「牧村君また背が伸びた?」
「気のせいじゃないのか?」
「やっぱり伸びてない?」
 その垂れ目がさらに垂れている。羨ましそうな光の中で。
「気のせいじゃなくて」
「絶対に伸びてますよ」
 未久も言う。
「大阪にいるうちのお爺ちゃんがですね。また背が高くて」
「そんなに高いの」
「はい、七十歳超えてるのに百八十はあるんですよ」
「今の牧村君と同じ位あるのね」
「ありますね」
 牧村にしろそれだけの高さがあるというのである。
「やっぱり」
「遺伝なのね。私はお母さんの血を引いててね」
「お母さんのですか」
「実はあれなのよ」
 困った顔での言葉が続く。
「私お母さん似でね」
「お母さんのですか」
「叔母さん。実は天理教の教会の人でお母さんのお姉さんだけれどね」
「はい」
「その人も小さくて。叔母さんの娘さん三人いるけれど三人共」
 その叔母と家族の話もするのであった。
「やっぱり小さいのよ」
「そうなんですか」
「それで私の妹二人も小さいのよ。皆一五〇位しかないのよ」
「お母さんや叔母さんや従姉妹の人達もですか」
「皆小さいのよ」
 一人として例外はないというのである。
「皆ね」
「私の家は何か私だけみたいなんですよ」
「そういえば未久ちゃんのお母さんは」
 当然ながら牧村の母でもある。
「背は普通よね」
「何で知らないですけれど私だけなんですよ」
 困った顔で話すのであった。
「小さいのは」
「牧村君は見ての通りだし」
「お父さんも大きいですよ」
「遺伝じゃないのね」
「牛乳とかも好きですよ」
 背が高くなるといえばやはりこれであった。カルシウムやタンパク質がいいというのはどうやら本当のことらしい。だが例外もあるのだろう。
「それでも」
「私の場合は間違いなく遺伝だけれど」
「何で私は小さいんでしょうね。何でも食べるのに」
「理由はわかっている」
 これまでただティラミスを食べ紅茶を飲んでいた牧村が妹に告げてきた。 
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