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髑髏天使

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第二十話 人怪その一


                     髑髏天使         
                  第二十話  人怪
「それで昨日だけれど」
「何だ?」
 牧村は今サイドカーを操っていた。夕刻の道をそのまま進んでいる。そうしてその横には未久がいる。妹を学校から家まで送っている最中だったのだ。
「面白いことがあったのよ」
「面白いこと?」
「ほら、こっくりさんってあるじゃない」
 未久はサイドカーに乗りながら兄に対して告げてきていた。
「あの遊びをしていたのよ」
「こっくりさんか」
 牧村はその遊びの名前を耳にしてここで眉を顰めさせた。
「そんなものをしていたのか」
「それがどうかしたの?」
「悪いことは言わん」
 まずはこう告げるのだった。
「止めておけ、あれは」
「やるなってこと?」
「そうだ。あれは霊を呼び出してそれで遊ぶな」
 彼もまたこっくりさんは知っているのだった。この遊びは昔からある。はじまりは明治維新の頃アメリカから伝わった心霊術からだとも言われている。
「その呼び出される霊が問題だ」
「そんなに問題なの?」
「霊はいいものばかりとは限らない」
 真剣な顔でこう告げるのであった。
「決してな。そうとばかりは限らない」
「というとあれ?」
 妹は兄の言葉からあることを察したのだった。
「呼び出される幽霊にとんでもないのがいる可能性もあるってことなのね」
「その通りだ。何が呼び出されるかわかったものじゃない」
 彼はあらためて妹に告げた。
「だからだ。注意するのだ」
「そうだったの」
「友達にも言っておくことだ」
 真面目な言葉は続く。
「悪いことは言わないから止めておけとな」
「何だ、つまらないの」  
 未久はそれを聞いて如何にも残念そうな声をヘルメットの中から出した。
「折角面白かったのに」
「面白かろうがなかろうかだ」
「駄目なのね」
「危険はことはしないに限る」
 正論でありそれをあえて妹に話すのだった。
「絶対にな」
「わかったわ。じゃあ止めるわ」
 そして未久も兄のその忠告に素直に従うのだった。
「こっくりさんはね」
「ああしたことは遊びでするものじゃない」
 彼はこうも話すのだった。
「何があろうともな」
「遊びでやったら何が出て来るかわからないからなのね」
「実際に見たことはないがな」
 牧村もそれはなかった。しかしこっくりさんというものの危険さについてはよく知っているのだった。だからこそ妹に対して言うのだった。
「それはな」
「そうなの。けれどわかったわ」
 それでもわかることはわかった未久だった。
「もう二度としないから」
 先程も同じようなことを兄に告げたがここでもまた言うのだった。
「そういう遊びはね」
「そうするべきだ。それでだ」
 ここで牧村は話を変えてきた。
「ヘルメットはどうだ?」
「私が今被ってるこれ?」
「そうだ。それはどうだ」
 今度妹に尋ねたのはこのことだった。
「この前新しく買ったが」
「凄くいいわよ」
 声を頬笑まさせて兄に答える。それと共に顔も向ける。見ればそのヘルメットは黒地に銀色の薔薇を飾っていた。そうした柄であった。
「被り心地もいいし外の薔薇も」
「いいな」
「うん。それでね」
 ここでふとした感じで兄に問うてきた。
「前のヘルメットはどうしたの?」
「当然持っている」
 その前のヘルメットについてもこう答えるのだった。 
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