髑髏天使
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第五十五話 魔水その十二
「水は今回の貴様等の相手だ」
「俺だけではないか」
「確かにここに呼んだのは貴様だけだ」
「呼んだか。連れて来たと言うべきだな」
「ではそう言い換えよう。しかしだ」
「しかしか」
「ここに来るのは貴様だけではない」
こう言うのである。
「それは言っておく」
「では。ここに」
「そうだ。来たぞ」
牧村の後ろからあの声がした。そしてだ。
黒いブラウスとスラックスの彼が来た。死神である。
そして魔神達もだ。全員来たのだった。
そのうえで男に対してだ。魔神達が言うのだった。
「来ましたよ」
「気配を察したからのう」
「それでだ。ここまでだ」
「来たわよ」
「この世界に来ることは神ならできることだ」
男は魔神達の言葉を受けたうえで述べた。
「若しくは神に等しい力を持つならばだ」
「しかし俺はか」
「持っているが。それを引き出すまでには至っていない」
そうだとだ。牧村に述べたのだ。
「今貴様が神に等しいのは戦う力だけだ」
「空間を移動できる力はないか」
「具体的にはそうなる」
男がここで言いたいのはそうしたことだった。そしてだ。
あらためてだ。男は述べた。
「その力が得られるかはわからないがだ」
「それでも今はだな」
「戦いになる」
それになるというのだった。
「四元素の最後の力とだ」
「水か」
それならばだと。牧村は察した。
「混沌の水か」
「前に自分で言ったな。クトゥルフだ」
男はその神の名を話した。
「それだ」
「混沌の水の神か」
「それと戦い。死ぬことだ」
この戦いでもだ。男は牧村達の死を確信して述べる。
「混沌と破壊に飲み込まれることだ」
「その言葉は何度も聞いた」
だが、だ。牧村の言葉は冷静だった。
そしてだ。彼はその冷静なままでだった。逆に男に対して返した。
「ではその神を今すぐにだ」
「実体化させろというのだな」
「そうだ。そうさせろ」
こう男に言った。
「戦ってやる」
「わかった。それではだ」
男も牧村の言葉を受けてだった。
「いいな、クトゥルフよ」
「うむ」
その水の中からの声だった。
「それではな」
「準備はいいな」
「何時でもいい」
濁りきった。嫌になる声であった。
「こちらはだ」
「そうか、いいのか」
「盲目のスフィンクスよ」
水はこう彼を呼んだ。
「その為に私を呼んだのではないのか」
「如何にも」
男も静かに答える。
「それはその通りだ」
「ならばだ」
「すぐに戦うのだな」
「そうする。私はこの者達を倒す」
こう言い切るのであった。
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