| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十四話 邪炎その四


「はじめて作った」
「はじめてって割には」
「そうよね」
 二人の少女は彼が作ったそのアイスクリームを見て二人で話す。
「随分慣れた感じよね」
「相変わらずお菓子作るの上手いよね」
「プロみたいよね」
「その域に達してるわよね」
「ははは、御前達にもわかるんだな」
 マスターは二人の少女の言葉を聞いて笑顔で言った。
「このアイスクリームの凄さが」
「だってねえ。お菓子いつも見てるし」
「それに食べてるし」
 それでわかるというのである。
「喫茶店の娘だから」
「わかるわ」
「そうだ、それでいいんだ」
 マスターは娘達のその言葉に満面の笑顔になる。まさに父親の顔だ。
「それがわかるようになるまでが大変だからな」
「美味しいお菓子かどうかを目でなのね」
「わかることがよね」
「その通りだ。そしてだ」
 さらに話すマスターだった。
「見るよりもわかることはだ」
「食べることよね」
「やっぱりそうよね」
「その通りだ。食べるか?」
 娘達に笑顔で告げる。
「このアイスを」
「あっ、食べていいの?」
「このアイス」
 二人は今の父親の言葉に表情を明るくさせた。そうしてであった。
 あらためてだ。父にこう言った。
「お姉ちゃんの分もあるわよね」
「ちゃんと」
 それについても尋ねるのだった。姉の分もだ。
「アイスクリーム」
「三人公平によね」
「当たり前だ。娘が三人だぞ」
 その三人だというのだ。
「それなら三人公平にが当たり前だろう」
「そうよね。じゃあ三人でね」
「お姉ちゃん、食べようね」
 二人でその笑顔でだ。若奈に話すのだった。
「牧村さんの作ったアイスクリームね」
「将来のお婿さんの」
「ちょっと、何言ってるのよ」
 お婿さんという言葉にはだ。若奈は顔を赤くさせて反論した。
「牧村君はそんな」
「だから。わかってるから」
「そういうことはもうね」
 妹達の方が一枚上手だった。顔を赤くさせる姉にこう返すのだった。
「だからお父さんだって牧村さんに教えてるし」
「それでよね」
「うう、だから違うから」
「まあいいじゃないか」
 マスターは若奈が困っているのを見てさりげなく助け舟を出した。
「若奈もアイスを食べるよな」
「え、ええ」
 その通りだとだ。若奈も答える。
「それじゃあ」
「さて、じゃあ盛り付けをするからな」
 マスターは早速そのアイスクリームの盛り付けをはじめた。それが実に早い。しかも的確な動きである。
 それで五人分のアイスクリームを皿に乗せてだ。そうして五人で食べる。
 食べてだ。すぐに二人の妹達が言った。
「うん、やっぱりね」
「そうよね」
「美味しいわよね」
「はじめて作ったなんて思えないわ」
「そうか」
 牧村の無愛想さは二人に対してもであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧