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髑髏天使

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第五十四話 邪炎その三


「九十九パーセントの努力だよ」
「一パーセントの才能よりもか」
「一パーセントの才能は誰にもあるからね」
「そうだな。全く才能がないということはな」
「基本的にないんだよ」
 こう彼に話すマスターだった。
「そういうものだからね。それに」
「それにか」
「君にはお菓子作りにかけては確かな才能があるね」
「俺にはあるか」
「あるよ。充分にね」
 そうだというのである。
「二パーセントはあるね」
「二パーセントか」
「いや、その二パーセントが凄いんだよ」
 マスターはいささか真面目な顔になってだ。そのうえで彼に述べた。
「普通の人はそんなに才能がないんだよ」
「その二パーセントもか」
「実際には一パーセントがあれば立派なものだからね」
「一パーセント。その九十九パーセントのうちにか」
「そういうことだよ。けれど君は二パーセントあるから」
「そこに九十九パーセントの努力か」
「それで全然違うね。ただ」
 ここで、だった。マスターは彼にこんなことも話した。
「普通は誰でもどんなことでも多少の才能はあるけれどね」
「例外もあるか」
「誰にもそうした例外はあるからね」
 こう話すのだった。
「君の場合は接客だね」
「自覚している」
 自分のことだからだ。それは彼もよくわかっていた。その無愛想さとぶっきらぼうな口調はだ。他の誰よりもよくわかっているのだ。
 それをだ。彼は自分で言うのだった。
「それはな」
「そうなのかい、やはり」
「前に出るのは駄目だな」
「間違ってもウェイターにはならないでくれよ」
 顔は笑っているがそれでもだ。目の光は真剣なものだった。
「そうしたことは若奈がやるからね」
「わかった」
「君はお菓子作りに皿洗いに」
 これも喫茶店において欠かせない仕事である。それは確かだ。
「それと用心棒だね」
「用心棒か」
「そう、フェシングをしてるね今は」
「自信はある」
 それもかなりだった。髑髏天使としての戦いのことはあえて話さないがだ。
「だからだ。それはだ」
「できるね」
「大抵の相手。拳銃と持ってしてもだ」
「いけるのかい」
「拳銃も当たらなければ意味がない」
 少なくとも髑髏天使としての戦いにおいてはだった。そうしたものなぞ問題にならない、そこまでの戦いが常である。だからこう言えたのだ。
「安心することだ」
「わかったよ。じゃあ用心棒もね」
「やらせてもらう」
「そういうことだね」
 こんな話をしながら作ったアイスクリームを盛り合わせていた。そこにだった。
 若奈とだ。二人の少女が戻って来た。その二人の少女はというと。
 顔も背丈もスタイルもだ。実に若奈によく似ていた。ただし一人、年長の娘は髪が長くもう一人はまだセーラー服だ。その二人だった。
 その二人がだ。牧村の姿を見て彼に笑顔で声をかけてたのだ。
「あっ、牧村さん来てたの」
「アイスクリーム作ってたの」
「そうしてるんだ」
「そうだ」
 その通りだとだ。牧村も彼女達に返す。 
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