髑髏天使
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第五十三話 怪地その一
髑髏天使
第五十三話 怪地
男はだ。この時混沌の中にいた。
そのうえでだ。彼等と話していた。
「ハストゥールが倒れた」
「そうだな」
「感じ取っている」
二つの、不気味そのものの声が彼に応えてきた。
「まさかと思ったがな」
「風が消えるとはな」
「魔神達も完全に敵に回った」
男は彼等にこのことも話した。
「髑髏天使達と共に攻撃を仕掛けてきた」
「十二の魔神達もか」
「我等にか」
「そうだ、今はそうした状況だ」
こう話すのだった。
「敵が増えた」
「面白くなってきたか」
「これまで以上に」
「若しかするとだ」
男の言葉は続く。
「四柱の神々は全て倒されるかもな」
「そして貴様が戦う」
「そうなるというのか」
「だとすればだ」
ここでだった。男の声に笑みが宿った。
「どれだけの過去だったかはわからないがだ」
「貴様が真の姿を現す」
「そうなるな」
「今の貴様のその姿ではなく」
「あの姿に」
「あの姿に戻ることは久しくなかった」
男は言う。
「忘れかけていた程だ」
「そうだな。我等もだ」
「その姿はだ」
どうかというのである。その彼等もだ。
「忘れかけている」
「果たしてどうした姿だったのか」
「己の姿だというのにな」
「それは最早な」
「だがそれも当然のことだ」
男は彼等の今の言葉を肯定した。そうしてさらに言うのであった。
「どれだけの時をこの中で過ごしているのかわからないのだからな」
「この無限の混沌の中でな」
「我等は存在し続けている」
「この何もない空間でな」
「何もないが何もかもがある」
それがこの混沌の中だというのである。極彩色のものが蠢き合っているその中だというのである。
「ここはそうだ」
「その中にいてはどうしてもな」
「己の姿を忘れてしまう」
「どういったものか」
「だがだ」
男はその彼等にまた話した。
「ここから出ればだ」
「そうだな。我等は真の姿を出せる」
「この無限の混沌の中から」
「そうなればだ」
「思い出せる」
「そうなるにはだ」
どうしてそうなるか。男は彼等にそれも語った。
「髑髏天使と死神を倒し混沌の世界をこの世に出すか」
「それか我等があの者達と戦うか」
「どちらかだな」
「もっとも。後者はない」
男はそちらは否定した。絶対にないというのだ。
「私と戦うことになればだ」
「必ず倒すか」
「そうするか」
「この盲目のスフィンクスには誰も勝てはしない」
だからだというのだ。男は己をその異形の存在と言ってからだ。さらに言う。その言葉には絶対の自負と誇りがあった。混沌としているがだ。
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