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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第四十一話 コロニー阻止作戦

                第四十一話 コロニー阻止作戦
 火星の後継者達との戦いを終え、コロニーへ向かうロンド=ベル、今彼等は慌しく補給を受けていた。
「間に合って何よりですね」
「ええ、まあ」
 ラー=カイラムの艦橋には金髪の美しい女性がいた。青い軍服と膝までのタイトスカートを身に纏っている。ブライトが彼女に挨拶をしていた。
「エマリー艦長、おかげで助かりました」
「いえ、これも任務ですから」
 その女エマリー=オンスはブライトの礼に対して微笑で以って返した。
「ロンド=ベルが宇宙に出たと聞いてこちらに急行したのです。ヘンケン艦長の御言葉で」
「ヘンケン艦長の」
「今は地球の防衛にあたっておられますが。何かあればすぐにロンド=ベルの救援に向かうよう仰っていました」
「そうでしたか。それでヘンケン艦長は御元気ですか」
「ええ、とても。エマ中尉に会いたがっていましたよ」
「何でいつも私なのかしら」
 艦橋にいたエマはそれを聞いて首を傾げさせた。
「エマ中尉、野暮な詮索は止めた方がいいわよ」
「ハルカさん」
 モニターにナデシコからハルカが出て来た。
「まあ細かい話は後でね。ナデシコのサウナででもゆっくりと」
「何か微妙にいやらしい響き」
「リィナちゃんにもそのうちわかるわよ」
「そうなんですか」
「私には今もわからないけれど」
「エマ中尉は真面目過ぎるんだよな」
「そうそう」
「!?何か言った!?」
「いえ、何も」
「気のせいです、はい」
 トーレスとサエグサは当の本人の声が向けられて慌てて引っ込んだ。エマはそれを確認した後でエマリーに尋ねた。
「スレッガーさんやリュウさんはどうしていますか」
「二人共至って健康ですよ」
「そうですか。それは何よりです」
 エマはそれを聞いて微笑んだ。
「そちらにはアポリーさんやロベルトさんもいますし。機会があればまた一緒にお話したいですね」
「そうですか。今は四人共お忙しいので無理なようですが。お話だけはお伝えしておきますね」
「はい。宜しければお願いします」
「わかりました。ところでウラキ中尉はいますか?」
「はい」
 エマと同じく艦橋にいたコウが出て来た。
「何でしょうか」
「朗報です。デンドロビウムを持って来ました」
「えっ、あれを!?」
 それを聞いてさしものコウも驚きの声をあげた。
「持って来てくれたんですか」
「今度の戦いは激しくなることが予想されますから。持って来ました」
「有り難いです、これでガトーにも対抗できます」
「敵はGP-02、油断はできませんから」
「はい」
「頑張って下さい。そして何としてもコロニー落としを阻止して下さい」
「わかりました。それじゃあ」
「はい」
「それにしてもまた強力な兵器が手に入ったな」
 アムロがそこまで聞いてそう呟いた。
「ここでデンドロビウムが手に入るとは思わなかった」
「だがそれでも作戦の達成には困難な程だ」
 ブライトの言葉は冷静であった。
「アムロ、御前には今回も頑張ってもらうからな」
「ああ、任せておけ」
「先陣を切ってもらう。頼むぞ」
「アムロ中佐あってのロンド=ベルですしね」
「コウ、おだてたって何も出ないぞ」
「いえ、本当に頼みますよ。敵はガトーだけじゃないし」
「ああ」
 アムロは真摯な顔で頷いた。
「とりあえず他の敵は任せてくれ。コウ御前はガトーを頼む」
「はい」
「コロニー落としだけは阻止する、何としてもな」
「そのコロニーですが」
 エマリーが言った。
「周りにネオ=ジオンの大軍が展開しているようです」
「やはり」
「コロニーの側にはアナベル=ガトー少佐のGP-02ともう一機赤いマシンが展開しています」
「赤いマシン」
 それを聞いた一同の顔が曇った。
「それは一体」
「何やら戦闘機に似たマシンのようです」
「バウか!?」
 ネオ=ジオンのモビルスーツである。変形してモビルアーマー形態になることも可能である。その際は二機に分離する。一人のパイロットがリモコンでもう一機を操縦するのだ。
「いえ、バウではありません」
「では一体」
「私も詳しいことはわかりませんが。どうやらネオ=ジオンのモビルスーツではないようです」
「ベガリオンだ」
「アイビス」
 アイビスが艦橋に姿を現わした。スレイも一緒である。
「地球に降りる時のことを覚えているか」
「あ、ああ」
 コウがそれに頷いた。
「赤い、アルテリオンに似たやつだったな」
「それなんだ。あれに乗っているのはあたしの知り合いでね、スレイっていうんだ」
「スレイ」
 その名を聞いたアムロの顔色が変わった。
「確かDCで有名なエースパイロットだったという」
「そうさ。スレイ=プレスティ。あたしとはかって同僚だった」
「そういえば君はかってDCにいたのだったな」
「ああ。その時からの知り合いさ」
 ブライトにもそう答えた。
「アルテリオンはそもそもDCの恒星間航行計画の為に開発されたものだったんだ」
「そうだったのか」
「その姉妹機がベガリオンだったんだ。けどDCが崩壊してあたしはアルテリオンで運送屋をやっていた。ツグミと一緒にね」
「あの時にも色々あったわよね」
「ああ。そしてスレイはネオ=ジオンに入った。あいつの兄貴の関係でね」
「兄!?」
 それを聞いた他の者が表情を変えた。
「あいつには兄貴がいるんだ。科学者のね」
「そのお兄さんがネオ=ジオンにスカウトされたんです。半ば強制的に」
「その頭脳に目をつけてね。やったのはキシリア=ザビだった」
「キシリアが」
「けれどそれからすぐ後でキシリアは死んだ。けれどあいつの兄さんは逃げられなかったそれであいつもネオ=ジオンにいるんだ。兄さんの為にね」
「複雑な事情だな」
「兄の為、か。肉親の情に付け込むなんて」
「コウ、肉親ってのは色々あるものだ」
 アムロがそう言って彼を嗜めた。
「卑怯だがそれに入るのもまた方法の一つだ。褒められたことじゃないがな」
「そういうものですか」
「歳をとればわかるさ。わかりたくないことでもな」
「残念だがアムロの言う通りだ。そして我々はだからといってコロニー落としを見過ごしていいわけではない」
「はい」
 それにコウとエマが頷いた。
「補給が終わり次第すぐにコロニーへ向かう。いいな」
「わかりました」
「総員スタンバっておけよ。まさかという時に来るからな」
「あたしが出るよ」
 アイビスが名乗り出た。
「そうした哨戒は得意なんでね」
「頼めるか」
「ああ、任せておいてくれ。じゃあな」
「あ、待て」
 一言言う前にアイビスは艦橋を後にしていた。ツグミもそれを追って艦橋を離れていた。
「少し気になるな。焦っている」
「ああ」
 アムロがそれに頷いた。
「スレイのことが気になるのか」
「気にならない筈がないですね」
 エマがそれに応えた。
「カミーユだって昔はよくああなっていましたから」
「そういえば俺もだったな」
 アムロはそれを聞いて苦笑いをした。
「昔はよくムキになったものだ」
「あの時は本当に手こずらされたものだ」
 ブライトもそれを聞いて苦笑した。
「御前みたいな奴はいないと本当に思ったよ」
「そうだったな。あの時の俺は若かった」
「私もな」
「けれどブライト艦長もアムロ中佐もまだ二十代だよな」
「あまりそうは見えないけれどな」
「確かにな。よく老けていると言われる」
「残念だが否定はできないな」
 トーレスとサエグサにもそう返した。
「あいつもな。よく考えれば俺達は長い付き合いだ」
「全くだ。腐れ縁と言えばそうなるな」
「私の話をしているのか」
「おお」
 丁度いいタイミングでクワトロが出て来た。
「いいところに来たな、シャア」
「その言い方は止めてくれと言っているだろう、アムロ君」
「ふふふ、そんなに嫌か」
「今の私はクワトロ=バジーナだ。シャア=アズナブルでもキャスバル=ズム=ダイクンでもない。これは言っているだろう」
「確かにな。だが一つ聞きたいことがあるんだ」
「何だ?」
「アイビスについて何か思うところはないか」
「アイビスか」
 クワトロはそれを聞いて難しい顔をした。サングラスを取り外す。
「焦っているように見えるな、彼女は」
「御前もそう思うか」
「あの焦りが何時か危険なものとならなければいいがな」
「そうだな。じゃあ手を打っておくか」
「確か彼女はヴィレッタやレーツェルと小隊を組んでいたな」
「ああ」
「二人に任せるか」
「それだけでは不充分だと思う」
 クワトロはブライトに対してそう述べた。
「不充分か」
「そうだ。彼女をフォローできる者がまだ必要だな」
「では一体誰を」
「リンとイルムなんてどうだ」
 アムロがここで二人の名を挙げた。
「あの二人なら大丈夫だと思うが」
「そうだな」
 ブライトはそれに頷いた。
「ではあの二人に任せるか。最近アラドやゼオラも成長してきているしな」
「もう二人で大丈夫だろう。だが今のアイビスは違う」
「彼女に何かあってからでは手遅れだな。ではあの二人にはもう言っておこう」
「それがいいな」
 アイビスに対してリンとイルムもサポートに当てられることになった。アイビスには気付かれないように。帰還したアイビスに対してすぐにヴィレッタが声をかけてきた。
「アイビス、ちょっといいかしら」
「何ですか、一体」
「今度の出撃のことだけれどね」
「はい」
「私達の小隊はアラドとゼオラの小隊とチームを組むことになったわ」
「あの二人とですか!?」
 アイビスはそれを聞いて意外といった顔を作った。
「また何で」
 彼女のアルテリオンと二人のビルトビルガー、ビルトファルケンはタイプが全く異なる。アルテリオンは機動力を活かして一撃離脱を得意とする。それに対してビルトビルガーとビルトファルケンはそれぞれ接近戦用、遠距離戦用であり二機で一組となっている。それぞれ戦い方が全く異なるのである。
「私もブライト艦長に言われただけけれどね。それでいいかしら」
「あたしは別にいいですけれど」
 答えはしたがやはりふに落ちなかった。
「ヴィレッタさんはいいんですね」
「勿論よ」
「レーツェルさんはどう言っていますか?」
「彼も納得してくれているわ。勿論あちらの小隊もね」
「わかりました。それじゃあいいです」
「わかってくれて嬉しいわ」
「じゃあそれでお願いします。次の作戦もお願いします」
「ええ、わかったわ」
 アイビスは話が終わると自室に帰って行った。ヴィレッタはその後ろ姿を見ながらツグミに語り掛けてきた。
「ねえ」
「はい」
 ツグミはヴィレッタの横に留まっていた。まるで話をされるのを知っていたかのように。
「彼女のこと、どう思うかしら」
「焦っています」
 ツグミは率直にそう述べた。
「スレイのことで」
「やっぱりね」
 ヴィレッタはそれを聞いて頷いた。
「今の彼女は危ないわ。冷静さを失っているわ」
「はい」
「貴女からもフォローをお願いするわね」
「わかってます。けれど大丈夫です」
「どうしてそう言えるのかしら」
「私にはわかるんです、長い付き合いですから」
 にこりと微笑んでそう言った。
「アイリスは大丈夫だって。それに何かあっても私がいますから」
「信頼してるのね」
「そうじゃないとパートナーは務まりませんから。アイリスのことは任せておいて下さい」
「わかったわ。じゃあお願いするわね」
「はい」
 笑顔で頷いた。ヴィレッタはそれを見て安心した。どうやら自分の出る幕はないようだと思った。二人には自分が入れないものがあることも悟っていた。

 ロンド=ベルはコロニーのある宙域に到達した。そこには既にネオ=ジオンの大軍が展開していた。
「おうおう、随分いるな」
 ジュドーが彼等を見て嬉しそうに声をあげる。
「こりゃ戦いがいがあるってもんだぜ」
「ジュドー、そんな余裕言っている暇あるの?」
 ルーがそんな彼を嗜めた。
「あれだけの敵よ?対処できるの?」
「できるんじゃなくてするんだよ」
 ジュドーはそう反論した。
「目の前の敵は全部倒すのがセオリーだろうが」
「あっきれた」
「けれどルーだって似たような考えなんだろ?」
 ビーチャが彼女をからかうようにして言う。
「ビーチャ」
「いつもみてえによ」
「否定はしないわ」
 意外にもそれを認めた。
「このメガランチャーがウズウズしてるしねえ」
 ゼータのメガランチャーを構えながら言う。楽しそうに笑っている。
「それでこそルーだよ」
「そういうモンドもマークツーに乗って楽しそうじゃない」
「これが俺の愛機だしねえ」
「フルアーマーになったしね。あたしとお揃いでね」
「エル」
「モンド、抜け駆けはなしだよ、いいね」
「わかってるよ、そんなこと」
「イーノもね」
「メタス改でどうやって抜け駆けするんだよ」
「あんたこの前そのメタスで七機も撃墜してるじゃないさ。それでよく言えるね」
「あれはたまたまだよ」
「たまたまで七機も墜とせないよ」
「それもそうね」
 ルーもそれに頷いた。
「まあ何はともあれそろそろ戦闘開始ね」
「敵さんもスタンバっているし」
「エル、その言い方何かおじさん臭いよ」
「あれ、そうかなあ」
 エルはプルにそう言われ首を捻った。
「あたしはそうは思わないけれど」
「何かブライト艦長みたいだよ」
「確かに似ているな」
 プルツーもそれに同意した。
「というかそっくりだ」
「あたしはまだ十代よ、あんなおじさんと一緒にしないでよ」
「私もまだ十代だが」
 そして絶交のタイミングでブライトが入って来た。
「ゲッ、艦長」
「聞いてたんですか」
「最初からな。リラックスするのはいいが程々にな」
「はあい」
「わかりました」
 今一つ反省のない返事でそう返す。
「まあいい。御前達は正面を頼む」
「了解」
 見ればネオ=ジオンの主力部隊が展開していた。ザクⅢ改や赤いバウ、ドーベンウルフまでいた。
「マシュマーにグレミー、ラカンかよ。本当にオールスターだな」
「ジュドー、頼むぞ」
「わかってますって、艦長」
 ジュドーはモニターのブライトに対してそう言って笑みを作った。
「あんな連中俺一人で充分ですって」
「カミーユ、ジュドー達のフォローを頼む」
「わかりました」
「シローとバニング達もな。宜しくな」
「ええ」
「了解」
 シロー達もそれに頷いた。ブライトの指示はまだ続く。シーブックやダバ達も正面にあたることとなった。指揮はアムロが採る。リュウセイ達もここに回された。見れば小回りの効く部隊は殆どこちらであった。
「そしてヒイロ達は側面だ」
 見ればネオ=ジオンは右手にも部隊を展開させていた。そこにはゼクス等がいた。
「ダンクーガやライディーン、ダイモスもだ。いいな」
「了解した」
「それでいい」
 ヒイロと京四郎が彼等を代表するかのように応える。
「エステバリスは護衛だ。いいな」
「ちぇっ、またそれかよ」
「ヤマダさん、御安心して下さい」
「ダイゴウジだって言ってるだろうが」
 ぼやくダイゴウジに対してルリが言った。
「戦艦も前線に出ますから」
「おっ、そうか」
「はい。今回の作戦は絶対に失敗が許されません。何としても成功させなければなりませんから」
「その為にはナデシコも前線に行っちゃいます」
 ユリカもモニターに出て来た。
「もっともいつものことなんだけれどねえ」
「ハルカさん、それを言っちゃ駄目ですよ」
 メグミがハルカを注意する。しかしハルカは何処吹く風であった。
「わかって頂けたでしょうか」
「おう、充分な」
 ダイゴウジはニヤリと笑ってそう答えた。
「そうこなくっちゃな。戦いは派手にやらねえと」
「おう、その通りだ」
 リョーコがそれに頷く。
「徹底的にやるぜ。何人たりともあたしの前に存在させねえ!」
「リョーコさん、何かどっかのレーサーみたいですね」
「お、そうか」
「レーサーが言った。イレッサー」
「・・・・・・なあイズミ、最近無理して駄洒落言ってねえか?」
「そんなことはどうでもいい!とにかく戦争だ!」
「ヤマダさん、前に出るとエネルギー切れ起こしますよ」
「おっとと・・・・・・ってだから俺はダイゴウジ=ガイだって言ってるだろ!」
「ルリちゃんもからかわない。めっ」
 ハルカが窘める。
「ナイーブなんだから、彼」
「・・・・・・初耳だぞ、それ」
 レッシィがそれを聞いて我が耳を疑ったような顔をする。
「何かのジョークか!?」
「あら、ジョークじゃないわよ」
 ハルカは笑ってレッシィにそう返した。
「ダイゴウジ君ってあれでも繊細なんだから。タケル君以上にね」
「おい、忍じゃないのか」
「まあ確かに忍は繊細じゃないけれどね」
「雅人、ドサクサに紛れて何言ってやがる!」
「まあそっとしておいてあげてね」
「わかりました」
「・・・・・・何か釈然としねえがまあいいか。俺は小さなことにはこだわらねえ!」
「成程な」
 レッシィはそれを聞いてようやくハルカの言葉が正しいとわかった。
「可愛いところあるじゃないか」
「コウとアラド、アイビスの小隊はコロニーに向かえ」
 ブライトはまだ指示を出していた。
「正面に向かう部隊と共にな。いいな」
「了解」
「わかりました」
 コウとアラドがそれぞれ頷く。だがアイビスからの返事はなかった。
「アイビス」
「あ、ああ」
 ツグミに言われようやく我に返った。
「了解。任せておいて」
「・・・・・・・・・」
 そんな彼女を見てツグミ、ヴィレッタ、レーツェルは無言で何か考えていた。だがそれを口に出すことはなかった。
「では全軍攻撃だ。一気にカタをつけるぞ」
「よし!」
 ジュドーがそれを聞いて叫んだ。そして敵に向かって突進する。ネオ=ジオンの部隊もそれに対応して前に出て来た。
「来おったな」
 先頭にいる三機の黒いドライセンがまず動いた。
「オルテガ、マッシュ」
 中央のドライセンに乗る髭の男が左右に声をかけた。
「用意はいいな」
「おう」
「何時でもいいぜ」
 大男と片目の男がそれに頷く。彼等がネオ=ジオンの黒い三連星であった。
「丁度あの坊やもいるしな」
「ふふふ」
 三人はニューガンダムを確認してまた笑った。
「あの坊やとも長い付き合いだ。では挨拶をしておこうか」
「うむ!」
 三人は一斉に動きはじめた。そしてアムロのニューガンダムの前に殺到した。
「ムッ、黒い三連星か!」
「その通り!元気そうで何よりだ、坊や!」
 ガイアが彼に対して言う。笑っていた。
「また会ったな!」
「確かに」
 アムロは笑ってはいなかった。しかし懐かしさは感じていた。
「やはり生き残っていたか」
「生憎わし等は戦場慣れしていてな」
「そうそう撃墜された程度では死にはしないさ」
「というかあの三人どれだけ戦っているんだ?」
「一年戦争の頃にはもう現役バリバリだったんだろ?」
「じゃあもう立派なおじさんだな。老いてなお盛んってやつだな」
「また面白い連中を入れているな」
 三人はドラグナーの三人を見てそうアムロに対して言った。
「あの三人、まだ未熟だができるな」
「それは認める」
 クワトロが彼等にそう述べた。
「あれで意外と戦力になってくれている」
「俺達って意外性の男達だったのかよ」
「せめてエースと呼んで欲しいよな」
「三人で一人ってのはよく言われるけれどな」
「しかもよくしゃべる」
「男は寡黙でなければならないが」
「つってもそれが俺達の持ち味だからなあ」
「そうそう」
「個性はいかさなきゃな」
「益々気に入った」
 ガイアはその話を聞いてさらに笑った。
「どうやら三人一組というのはわし等だけではなくなったようだな」
「専売特許だったのにな」
「まあそれはオーラバトラーのあの赤いのが出て来てから変わったが」
「・・・・・・そういや似てるよな」
「つーーーかそっくり」
「もしかしてクローンじゃないのか?」
「はっはっは、わし等みたいなむさいおっさんをクローンにする物好きはおらんぞ」
「残念なことだがな」
「まあ同じ顔がうじゃうじゃいるのも落ち着かんわい」
「そういやそうだな」
「プルとプルツーみたいな可愛い娘じゃないし」
「声が同じなのは一杯いるけれどな」
「あの三人とも一度手合わせしてみたいが今はそうはいかん」
「坊や、行くぞ」
「今度こそ破られはせん」
「来るか!」
 アムロも身構えた。
「うむ、行くぞ!」
「ジェットストリームアタック」
「受けてみよ!」
 三人は縦一列になった。ガイアが先頭である。
「オルテガ、マッシュ、いいな!」
「おう!」
「坊や、観念しな!」
 まずはガイアが動く。ドライブレードで切りつける。
 次にマッシュだ。ビームを放つ。
 最後はオルテガであった。ハンドガンで攻撃を加える。しかしアムロはその全てをかわしきった。
「やりおるな」
「また腕を上げたようだな」
 三人は攻撃を終えすぐに態勢を整えていた。そしてアムロと対峙する。
「危ないところだった。やはり黒い三連星と呼ばれることはある」
「だが対処はできるな」
「シャア」
 クワトロがモニターに出て来た。
「アムロ君、ここは君に任せていいか」
「あの三人を止めろということか」
「そうだ。君ならできると思うが」
「断ることはできないみたいだな」
 戦局を見る。既に戦いは激しくなってきていた。アムロの周りにおいてもそれは同じであった。
「断れないのは私も承知だ。だがいいな」
「ああ」
 アムロは頷いた。
「わかった、ここは任せてくれ」
「よし、では頼むぞ」 
 クワトロはケーラとクェスを連れて別のエリアに向かった。アムロはこうして一機で黒い三連星と対峙する形となった。
「面白い、邪魔はなしか」
「坊や、それでいいか」
「俺に断る権利はない」
 アムロはそう答えた。
「ここは俺が引き受けると言ったからな。だからここにいる」
「ふふふ、いい男になったな」
「あの時はまだ青かったが」
「見事なものだ。流石は連邦の白い流星といったところだな」
 彼等はアムロを取り囲んだ。そして一斉に攻撃に移る。
「行くぞ!」
「覚悟!」
「見える!」
 アムロと三人の戦いが本格的にはじまった。それはまさに一年戦争の再現であった。
「そうだ、これこそが騎士の戦いだ」
 ザクⅢ改に乗るマシュマーは黒い三連星の戦いを見て興奮していた。
「正面から正々堂々と渡り合う。流石は歴戦の戦士だ」
「といっても三人がかりですけれどね」
「ゴットン」
 後方にいるエンドラにいるゴットンに対して顔を向けた。
「どうして御前はそう無粋なのだ?あの方々に敬意を払おうとは思わないのか?」
「そりゃ素晴らしい人達だとは思いますよ」
 彼も何かと世話になっていた。黒い三連星はネオ=ジオンにおいてはかなりの人望も併せ持っていたのであった。
「けれど戦争って結局は生き残った者が勝ちですし」
「空しい考えだな、それは」
 マシュマーはそれを聞いて嘆息した。
「ゴットン、御前にはもう少し騎士道を教えてやるべきだな」
「騎士道で戦争なんてできるんですか?」
「たわけたことを言う」
 マシュマーはまた言った。
「それがなくしてどうして戦争と言えるのだ。戦争とは騎士が行うものだ」
「死んだら元も子もないですよ」
「戦場に散るのは名誉なことではないか」
「あたしは生きたいんですけれど」
「どうやら御前には再教育が必要だな。後でアーサー王の本を貸してやろう」
「ああ、あの伝説の」
「アーサー王は実在だ」
「そうでしたか!?」
 それを聞いたイリアが首を傾げる。今までは二人の漫才のようなやりとりを黙って見ていたがそれを聞いて流石に疑問に思ったのだ。
「あれは確か架空の人物では」
「いや、アーサー王は実在だ」
 だがマシュマーはそれを否定した。
「何か新しい歴史資料でも見つかったのですか!?」
「私の心の中にいる。それが何よりの証拠だ」
「・・・・・・そうですか」
 それを聞いてもう聞く気にはなれなかった。
「わかりました。それよりも」
「うむ、わかっている」
 既に目の前にはロンド=ベルがいた。彼等はまっすぐにこちらに突っ込んで来る。
「今このその騎士道を見せる時だ。キャラ、イリア、いいな」
「身体が熱くなって止まらない・・・・・・」
 アールジャジャに乗るキャラの耳には入っていなかった。彼女は何か得体の知れないものに支配されているようにも見えた。
「早く、早く戦争を・・・・・・!」
「わかった。では行くがいい」
 マシュマーは特に驚くことなくそれを認めた。
「そしてロンド=ベルを正々堂々と打ち破るのだ!」
「私は銀河!太陽は壊れる!」
「・・・・・・何で俺の周りってこんな人ばかりなんだろ」
「?ゴットン、何か言ったか」
「いえ、何も」
(耳だけはいいんだな)
 マシュマーの問いを誤魔化しながら心の中でそう呟く。キャラの小隊は既にビーチャ達の小隊に向かっていた。
「うわ、またこのおばさんかよ!」
「ビーチャ、相手を刺激しちゃ駄目だよ!」
 イーノがすぐに注意した。
「けどよ!」
「ビーチャ、あたしが出るよ!」
「エル!」
「女には女ってね!」
「お、俺だって!」
 モンドも出た。
「ここは任せてくれよ!」
「何言ってるんだ!一人であのおばさんは相手にゃできねえだろ!」
「けどあたし達だってニュータイプなんだ!やれるよ!」
「そういう問題じゃねえ!あんなぶっ飛んだおばさんそうそう相手にできるか!」
「じゃあどうしよう!」
「とりあえずモンド、後ろに退きな!」
「どうするんだよ!」
「こうやんだよ!行ッけええええーーーーーーーーー!」
 ビーチャはハイメガランチャーを放った。そしてそれでキャラのアールジャジャを破壊しようとした。キャラの小隊のアールジャジャはそれで吹き飛んだ。
「やったか!」
「光の帯!それは死の光!」
 だがキャラは健在であった。ビーチャの百式改の攻撃をかわしてしまっていた。
「うわっ、生きてやがった!」
「で、どうするのさ!」
「一番怖いのが残ったじゃないか!」
「こうなったら四人でやるしかねえだろ!言った通り!」
「そうだね」
 他の三人はようやく頷いた。

「じゃあやるか」
「ちょっと不安だけれどね」
「けれどこれしかないしね」
「おうよ。やいおばさん!」
「私は流星!赤い銀河に流れる赤い星!」
「・・・・・・何言ってるのかわからねえけれどよ」
 異様なテンションになっているキャラに戸惑いながらも言う。
「そこで大人しくしてな!俺達の力見せてやるぜ!」
「熱い!身体が燃える!」
 会話にはなっていなかったが戦いにはなっていた。四人はキャラとの戦闘を開始した。マシュマーはそれを見て笑っていた。
「見事だ、キャラ=スーンよ」
「あれが見事なんですか!?」
「見事ではないか。四人を相手にしているのだからな」
「まあ腕はいいですからね、あの人は」
「イリアはどうしているか?」
「あの小さいガンダムと戦っていますよ」
「ほう」
 見ればイリアの部隊はウッソの部隊と交戦していた。ラカンの部隊もいるが彼はバニングの部隊と戦っている。
「皆それぞれの相手を見つけているようだな。よいことだ」
「で、マシュマー様はどんな奴と戦われるんですか?」
「私か?私の相手は決まっている」
 ニヤリと笑ってそうに応えた。
「ジュドー=アーシタ、いるか!」
「言われなくてもここにいるぜ!」
 ジュドーが目の前にやって来た。Gフォートレスから素早くゼータに戻る。ルーやプル達も一緒であった。
「マシュマーさんよ、久し振りだな」
「ふふふ、元気そうで何よりだ」
「生憎俺はしぶといんでね。そう簡単にはやられねえよ」
「では私が御前を倒してやろう。この手で」
「できるのかい?」
 ハイパービームサーベルを抜いた。驚く程巨大な刀身であった。
「真の騎士道の前に不可能はない」
「相変わらずしょってるねえ」
 ルーがそれを聞いて笑った。
「参る!」
「いざ!ってところかな」
 マシュマーが真剣なのに対してジュドーは何処かお茶らけていた。
 だが戦いは真剣なものであった。二つの剣がぶつかり合った。
「やるな、やはり」
「あんたこそな。また強くなったんじゃないのか?」
「騎士は常に鍛錬を怠らぬもの」
 彼は言った。
「ジュドー=アーシタ、御前に遅れをとらぬ為にも!そしてハマーン様の為にも!」
「ハマーンか」
 それを聞いてジュドーの顔が少し変わった。
「また会うことになるだろうな」
「ジュドー、他のこと考えてちゃ駄目だよ!」
「プル」
「今はそこにいるおじさんにだけ集中しな!」
「こら、そこの娘!」
 マシュマーはプルツーのおじさんという言葉に反応した。
「私はまだ二十代前半だ!軽々しくおじさんと言うな!」
「立派なおじさんじゃないか」
「そろそろ腹が出て来ていたりして」
「そこの紫の髪の少女も元気そうだな」
「あら、覚えていてくれたの」
「貴様等だけは忘れようとしても忘れられん。嫌でもな」
「光栄ね」
「私は腹なぞ出てはおらん!その様なこと、鍛錬を積んでいれば起こらん!」
「けれど髪の毛はどうかな」
「そこの娘は余程私を怒らせたいらしいな」
「ネオ=ジオンにいる時見たぞ」
 プルツーはおくびもなく言った。
「毎朝毛生え薬をかけてマッサージしていたな」
「マシュマーさん、あんた・・・・・・」
「あれは整髪料だ、髪を整える為のな!」
「本当かね」
「怪しいよね」
「騎士は身だしなみにも気を使うのだ!覚えておけ!」
「何か騎士って忙しいのね」
「あいつだけだろ」
「とにかくそんなことはどうでもいい!ジュドー=アーシタ!」
「おうよ」
 ジュドーは彼に応えた。
「戦いを続けるぞ!いいな!」
「おうわかった、手加減はしねえぜ!」
「手加減されたとなれば騎士にとって最大の侮辱」
「あの兄ちゃんさっきからずっと騎士騎士って言ってるな」
 ケーンがそれを聞いて素朴な様子で呟いた。
「他に何か言うことねえのかな」
「いいんじゃねえの?見ていて面白いし」
「こらタップ」
 ライトがタップを嗜めた。
「いいじゃないか、見上げた精神だ」
「なあ、前から思ってたんだが」
「何だ?」
 ライトは今度はケーンの言葉に振り向いた。
「御前随分あの兄ちゃんに対しては寛大だな。何かあんのか?」
「!?何もないが」
「そうか?その割には色々と庇うよな」
「敵味方なしでな」
「まあそうかもな。言われてみれば」
 タップにも言われて頷いた。
「何かな、近いものを感じるんだ。俺はあそこまで真面目じゃないがな」
「ふうん」
「まあ似た者同士ってやつだな。はっきり言えば。親近感だろうな」
「そうなのか」
「ああした人ってのは敵だけれど最後まで生き残って欲しいとは思う」
「敵だけれどか」
「ああ。まあこんなこと言ったらまた大尉にどやされるけれどな」
「ははは、それはお互い用心しようぜ」
「ああ」
 そう言うドラグナーチームも戦いに加わっていた。正面はロンド=ベルの主力で攻勢を仕掛けていた。側面ではヒイロ達とゼクスが激しく剣を交えていた。
「ナタクを舐めるなあっ!」
 ウーヒェイが突っ込む。そしてツインビームトライデントでゼクスのトールギスに斬り掛かった。
「ゼクス様!」
 しかしそれを阻むようにかってオズにあったモビルスーツ達が前に出る。彼等はオズ、そしてマリーメイア軍崩壊後ネオ=ジオンに入っていたのだ。
「見ていてあまりいい気持ちはしないですね」
 それをアルビオンの艦橋から見ている一人の少女が呟いた。赤い髪と青い目を持つ少女であった。
 彼女の名はマリーメイア=クリシュナータ。かってオズのリーダーであったトレーズの娘である。マリーメイア軍の象徴として兵を挙げたがその壊滅後はリリーナと行動を共にしていた。そして今はアルビオンにおいてヒイロ達と共にいたのだ。
「リリーナさんのお兄様とヒイロさん達がまた戦うのを見るのは」
「これも彼が選んだ道ですからな」
 シナプスはそのマリーメイアに応えるようにして言った。
「仕方のないことです」
「それはわかっているつもりですけれど」
 だがマリーメイアの顔は晴れない。
「晴れませんね」
「お気持ちはわかります」
 だがそれ以上彼等は言わなかった。戦いに目を向けていた。
 ウーヒェイの前に立ちはだかるモビルスーツ達は瞬く間に薙ぎ払われた。アルトロンのトライデントの威力はそれ程凄まじいものであった。
「ゼクス!」
 ウーヒェイは彼の名を叫んだ。
「何故ネオ=ジオンなぞに!」
「義の為だ」
 アルトロンのトライデントを受け止めながら彼は答えた。鈍い効果音が戦場に響く。
「義だと!?」
「そうだ。私は危ういところをガトー殿に救って頂いた」
「ソロモンの悪夢にかよ!」
 そこにデュオが来た。彼もまた小隊を一つ薙ぎ払ってきていた。
「そうだ。私は義の為に生きる。それならば当然だろう」
「その為に多くの人間が死んでもかよ!」
「戦いにより人は死ぬのは道理」
 ゼクスは言った。
「だからこそ終わらせなければならないがそれにより犠牲が出るのは止むを得ない」
「どうやら今ここで話をしても無駄のようだな」
「ヒイロ」
 後ろから翼を持ったガンダムが現われた。ヒイロのウィングゼロカスタムである。
「行くぞゼクス、俺の前にいるのなら容赦はしない」
「無論」
 ゼクスは彼を見据えた。
「ここは通さぬ。我が誓いにかえて」
「誓いか。俺も誓った」
「何をだ?」
「平和を守り、戦いを終わらせるということを。リリーナにな」
「・・・・・・そうか」
 リリーナの名を聞いても彼は動じなかった。
「ではそれぞれの義の為に戦うとしよう」
「おいヒイロ」
 ここでデュオとウーヒェイが道を開けた。
「御前に任せるぜ。俺達は用事ができちまった」
「残念なことだがな。いいな」
「わかった」
 ヒイロは静かに頷いた。そしてデュオとウーヒェイが離れていくのを見送った。彼等はカトル、トロワと合流して他の敵にあたっていた。
 ヒイロとゼクスの戦いもはじまった。ロンド=ベルとネオ=ジオンのエースパイロット達がそれぞれの義の下において剣を交えていた。
 その中ネオ=ジオンの指揮を採っていたのはグレミーであった。彼は赤いバウを駆りながら戦場全体を見据えていた。
「まずいな」
 彼は戦場を見て一言そう呟いた。
「アリアスとオウギュストはどうしている」
「既に撃墜され戦場を離脱しました」
 傍らにいる緑の一般のバウに乗った男がそう報告する。
「正面は最早劣勢を覆うべくもありません」
「そうだな。そして側面も」
「はい」
 その部下はグレミーの言葉に頷いた。
「こうなっては緊急手段だ。ガトー殿にお伝えしてくれ」
「何と」
「コロニーの落下を速めてくれとな。いいな」
「わかりました」
 それを受けてその部下は後方に向かった。そして暫くしてコロニーがゆっくりと動きはじめた。それに最初に気付いたのは勝平であった。
「ん!?おい宇宙太」
「どうした?」
「あのコロニー動いてねえか?」
「馬鹿野郎!そりゃ地球に向かって落ちてるんだよ!」
「だからあたし達がそれを防ぐ為にここで戦ってるんでしょ!」
「いや、そうじゃなくてよ。何か動きが速くなってねえか」
「何!?」
 それを聞いて二人の動きが止まった。
「それ本当!?」
「ちょっと待ってくれ」
 宇宙太はそれを受けてザンブルのコンピューターで計算をはじめた。そして青い顔で言った。
「その通りだ。間違いない」
「どういうことなの、これって」
「おそらく我々の攻撃に危機を感じたネオ=ジオンがコロニーの落下を速めたのだろう」
「ブライト艦長」
「落下まであとどの位だ?」
「三分です」
 ルリが静かに言った。
「三分でアイルランドのダブリンの落下します」
「まずいな、それは」
「艦長、どうしますか?」
「コウ、アイビス」
 ブライトはここでコウとアイビスに声をかけた。
「君達に任せたい。いいか」
「はい」
「了解」
 二人はそれに頷いた。
「ガトーとスレイは頼む。そして」
「ブライト大佐、一つ重大なことを忘れてはいないかね」
「重大なこと!?」
 グローバルに言われて首を捻った。
「それは一体」
「コロニーを止める方法だよ。ネオ=ジオンを止めてもそれは一時的なものだろう」
「はい、そうですが」
「完全に防ぐにはコロニー自体を完全に破壊するしかない。その方法は考えているかね」
「内部からの攻撃を考えていますが。制止させた後で」
「そう、内部からだ」
 グローバルはその言葉を聞いて笑った。
「丁度おあつらえ向きの作戦を知っているのだが」
「まさか」
「うむ、用意はもうできているぞ」
「あれですね」
 ブライトもそれが何かわかった。微笑んで応えた。
「お願いできますか」
「うむ、任せてくれ」
「ロイ、聞いたかしら」
「おう」
「貴方達にやってもらうわよ。すぐにマクロスに戻って」
「了解した。スカル小隊」
 彼は自分の小隊にまず声をかけた。
「そしてダイアモンド=フォースもだ。いや、バルキリー全機に告ぐ」
「何かあるんですか?」
「マクロスに戻れ。いいな」
「!?」
 皆それを聞いて首を傾げさせた。
「またどうして」
「すぐにわかる。いいな」
「わかりました。それでは」
 彼等も軍人である。命令には従う。こうして彼等はマクロスに戻って行った。その間にコウとスレイは一直線にコロニーに向かっていた。
「ガトー!」
 デンドロビウムに乗るコウは叫んでいた。
「来い!ここで決着をつける!」
「コウ=ウラキか」
 彼はコロニーの前に仁王立ちしていた。そしてコウを見据えていた。
「来たか。そのガンダムを駆って」
「そうだ!コロにーは地球に落させない!」
 そう言いながらガトーのGP-02に向かう。
「俺の命にかえても!」
「それが今の御前の義だな」
「その通りだ!」
 彼はまた叫んだ。
「御前の義とどちらが上か今ここではっきりさせてやる!」
「面白い。どうやら前の戦いからさらに成長したようだ」
 そう言うとバズーカを投げ捨てた。
「な、核バズーカを」
「義による戦いにはこれは不要!」
 ガトーは言った。
「あくまで己の力量に頼るものだ!」
「そうか、なら行くぞ!」
「来い!」
「俺は地球の人達の為にコロニーを止める!」
「私はジオンの大義の為にコロニーを落下させる!」
 二つの義がぶつかり合う。その横でアイビスはスレイと対峙していた。
「久し振りだね、スレイ」
「アイビス、よくも私の前に」
 落ち着いているアイビスに対してスレイは怒気に満ちた目を向けていた。
「覚悟はできているわね」
「ああ」
 アイビスはそれに頷いた。
「あんたとは長い付き合いだ。けれどここは通らせてもらうよ」
「貴女には負けないわ」
「それはあたしの台詞だ」
 アイビスはそう言い返した。
「あたしはあんたと戦って、コロニー落としを防ぐ為にここに来た」
「コロニーを」
「そうさ。だから行くよ」
「アイビス」
 ここでツグミが言った。
「ツグミ」
「落ち着いてね。そして私の言うことをよく聞いて」
「ああ、わかったよ」
 彼女はそれに頷いた。
「私達もいるからね」
 後ろからヴィレッタの声がした。
「外野は任せておいて」
「元々そうしたことは得意だしな」
「ヴィレッタさん、レーツェルさん」
「いいね」
「ああ、頼むよ」
 アイビスは二人の言葉も受け入れた。
「あたしはスレイの相手をしなけりゃならないから」
「俺達もいるしね」
「アラド」
「アイビスさん、フォローは任せて」
「ゼオラ」
「リンさんもイルムさんもいるし。だからアイビスさんはアイビスさんのことに専念してよ」
「アラド、あんたもね」
「おい、そりゃどういう意味だよ」
「余計なことに気を取られて怪我しないように言ってるのよ」
「ちぇっ、お姉さんぶるなよ」
「仕方ないでしょ、実際お姉さんなんだから」
「俺はゼオラの弟じゃねえぞ」
「似たようなものでしょ」
「似てねえよ」
「ふふふ」
 そんなやりとりを見てアイビスの心がリラックスした。
「いいね、何だか落ち着いてきたよ」
「アイビス」
「ツグミ、やるよ」
「ええ」
 アルテリオンは巡航形態になっていた。そしてそれで右に動く。
 ベガリオンは左に動く。そして互いに隙を窺う。
「なあスレイ」
 アイビスはアルテリオンを動かしながらスレイに問うてきた。
「何だ!?」
「あんた、どうしてネオ=ジオンにいるんだい?」
「知れたこと」 
 スレイはキッとして言い返した。
「御兄様の為だ」
「フィリオのか」
「そうだ。だから私はネオ=ジオンにいる」
 彼女はそう言った。
「御兄様を御守りする為だ」
「わかったよ。それがあんたの義なんだね」
「何!?」
「あたしの義ってのと似てるかもな」
「ば、馬鹿な!」
 それを聞いて激昂した。
「私と御前が似ているだと!馬鹿なことを言うな!」
「いや、若しかすると似ているのかもね。あんたとあたしは」
「まだ言うか!」
「意地っぱりだし、素直じゃないしね。常に誰かがいないと駄目だしね」
「アイビス」
「あたしにはツグミがいる。そしてあんたにはフィリオがいる。同じさ」
「戯れ言を!」
 スレイは攻撃を仕掛けてきた。そして一気にアイビスを倒そうとする。
 しかしアイビスの動きの方が速かった。彼女はアルテリオンを上に滑らせた。
「なっ!」
「動きもね、似ているさ」
「クッ!」
「けれどここは勝たせてもらうよ。あたしは多くの人達を助けたい」
「私は御兄様を!」
「スレイ」
「何だ!」
 今度はツグミが声をかけてきた。スレイはキッとした目で彼女もいるアルテリオンを見据えた。
「今は無理だろうけれどよく考えて」
「何をだ」
「フィリオが本当は何を望んでいるかを。こんな罪もない人達を虐殺することかしら」
「ネオ=ジオンの大義は私にとってどうでもいい」
 スレイは言った。
「ただ御兄様が助かれば・・・・・・。他には何も要らない」
「そう。今はそうなのね」
「これからもだ!どう変わるというのだ!」
「人は変わるものよ」
 ツグミはまた言った。
「少しずつ。貴女もね」
「私を惑わそうとしても」
「いや、ツグミはそんなことはしないよ」
「敵の言うことなぞ!」
「確かに今あたし達は敵同士だけれどね。けれど言っていることに何かを感じないかい」
「詭弁だ!」
「今は詭弁に聞こえるだろうね、あんたには。けれど何時かわかる筈さ」
「まだ言うのか!」
「ああ。今わからなくてもね。絶対にわかるって思ってるから」
「わかったところで御前が死ぬことに変わりはない!」
 セイファートを放ってきた。ベガリオンの最大の武器だ。
「アイビス、よけて!」
「わかってるよ」
 アイビスは冷静にそれをかわした。一瞬アルテリオンが分身したかに見えた。
「なっ!」
 そしてセイファートをかわした。見事な動きであった。
「アルテリオンとベガリオンは互いの星だったね。フィリオが開発した」
「ええ」
 ツグミはアイビスの言葉に頷いた。
「だからね。やってやるよ。フィリオの意志を実現させることを」
「御兄様の意志を実現させるのは私だ!」
「今のあんたでは無理さ」
 アイビスはまたスレイの言葉を否定した。
「今のあんたにはね、絶対に」
「まだ言うのか」
「だから何度でも言ってやるって言っただろ。あんたみたいな強情な奴にはな」
「では黙らせてやる!」
「そうはいかないよ!」
 アイビスも攻撃に出て来た。アクセルドライバーを放つ。
「ツグミ!リミッターは!?」
「もう解除してるわ!」
「よし!じゃあ全力でいくよ!」
「ええ!」
 アルテリオンの動きがさらに速くなった。そして複雑な動きを示しながらスレイに向かう。
「これでわかるか!」
「わかるものか!」
 スレイも動いた。アルテリオンのそれに勝るとも劣らない動きだ。
「敵の・・・・・・裏切り者の言葉なぞ!」
「じゃあわからせてやる!ツグミ!」
「ええ!」
 また攻撃を放つ。今度はマニューバーであった。
「これでどうだいっ!」
「うわああっ!」
 さしものベガリオンでもそれをかわすことはできなかった。一発直撃を受けてしまった。
 中破した。それで動きを止めてしまった。
「あたしの勝ちみたいだね」
「まだだ!」
 スレイはそれを諦めようとしなかった。
「この程度で・・・・・・。私は・・・・・・」
「まだやるつもりかい」
「スレイ、もう今のベガリオンではこれ以上の戦闘は無理よ。貴女が一番わかっているでしょう?」
「無理なぞしてはいない」
 だがスレイはそれを認めようとしなかった。
「御兄様の為ならこの命、どうなろうとも」
「止めよ、スレイ=プレスティ」
「ガトー少佐」
「最早今の貴公にそれ以上の戦闘は無理だ。撤退せよ」
「しかし」
「コロニーは私一人でも守り抜く。その心配はするな」
「ですが・・・・・・」
「今無理をしてどうなるのだ?フィリオ殿がそれを望んでいると思うのか?」
「それは・・・・・・」
「わかったなら下がれ。いいな」
「クッ、了解した」
 スレイは不満を胸に抱えながらもそれを了承した。兄の名を出されては仕方がなかった。
「ではこれで撤退させてもらう。いいな」
「うむ」
「アイビス、ツグミ」
 スレイは最後に二人を見据えた。
「何だい?」
「この借りはきっと返す。覚えておけ!」
 そう言い残して戦場を去った。赤い星が遠くへ消えて行った。
「本当に頑固な奴だね」
「昔から変わらないわね」
 ツグミはアイビスの言葉に頷いた。
「素直じゃないし」
「けれど何時かあいつもわかるさ。その時だ」
「ええ」
 ツグミはまた頷いた。今度は笑顔で。
「何時になるかはわからないけれどね」
「貴女も変わったし」
「おい、あたしにも言うのか」
「当然よ。今まで一緒にいて苦労させられたから」
「ちぇっ」
 スレイの撤退によりコロニーの守りに穴が開いた。だがガトーはそこに兵を送った。
「ケリィ、カリウス」
「うむ」
「はい」
 ドラムロとドライセンが出て来た。
「スレイ=プレスティの分を頼む。いいな」
「わかった」
「お任せ下さい、ガトー少佐」
 それを受けて二個の小隊が今までアイビスとスレイが戦っていた場所に現われた。そしてすぐに攻撃を仕掛けて来た。
「まだこんな戦力が!」
「アイビス、よけて!」
 ドライブレードが来る。不意をつかれたアイビスはよけきれない。誰もが万事休すと思った。その時だった。
「こういう時の為にいるのよ」
 ヴィレッタのヒュッケバインがそこにいた。そしてサーベルでドライブレードを受け止めていた。
「なっ、ヒュッケバインだと」
「ヴィレッタさん!」
「危ないところだったわね、アイビス」
 ヴィレッタはアイビスに顔を向けて優しげに微笑んだ。
「けれど間に合ってよかったわ」
「あ、有り難うございます」
「御礼はいわ。元々これが私の仕事だし」
「けれど」
「おっと、それから先は言わない方がいい」
 レーツェルもいた。彼はケリィのドラムロと戦っていた。
「今は戦闘中だしな」
「は、はい」
「貴女達はコロニーをお願いするわ。もう時間がないから」
「わかりました」
「あと一分。頼むぞ」
「はい!」
 それを受けて加速した。そして全速でコロニーに向かう。既にアラドとゼオラがそこに張り付いていた。
「あ、アイビスさん」
「無事だったんですね」
「ああ」
 アイリスは二人に優しい笑みを向けた。
「何とかね。それよりコロニーを何とかしないと」
「ええ」
「わかってますって」 
 二人は既に動いていた。そしてコロニーの推進装置に攻撃を仕掛け、その動きを止めていたのだ。
「速いね」
「アラドがちょっとモタモタしていましたけれど」
「おい、また俺かよ」
「モタモタしてたのは事実じゃない。しっかりしてよね」
「ちぇっ、いつもこうだよ」
「ふふふ。けれどこれで一安心だね」
「いや、それにはまだ早いぞ」
「グローバル艦長」
 モニターにグローバルが姿を現わした。
「コロニーを完全に破壊しなければな。話は終わらん」
「コロニーを・・・・・・。どうやるんですか?」
「マクロスならできる」
「マクロスなら」
「そうだ。君達は危ないから下がっていてくれ。今まで御苦労」
「は、はい」
「何するつもりなんだろう」
「さあ。主砲で一斉射撃とか」
 マクロスが前に出て来た。既に変形し、姿を人型に変えている。
「総員衝撃に備えよ!」
「総員衝撃に備えよ!」
 グローバルの言葉をキムが復唱する。
「ダイダロス=アタック、行くぞ!」
「ダイダロス=アタック、準備完了!」
 マクロスの左腕が動いた。そしてコロニーに向かって突き出される。ダイダロスの中では既にフォッカー達がスタンバイしていた。
「おう、そろそろだぞ」
「はい」
 輝が頷いた。フォッカーはロイ=フォッカースペシャル、そして輝はアーマードバルキリーに乗っていた。
「皆いいな」
「はい」
 他の者達はデストロイドに乗っていた。マックスとミリアはスパルタン、ダイアモンド=フォースはトマホーク、イサムとガルド
はディフェンダー、キリュウとミスティ、レトレーデはファランクスであった。そして柿崎は。
「どうだ、それは」
「いい感じですね」
 フォッカーの言葉に応えた。彼は一際大きなデストロイドに乗っていたのである。
「モンスターの名前は伊達じゃないですね、凄い馬力ですよ」
「今回の主役は御前さんだからな。頼むぞ」
「はい」
 柿崎はコクピットでニヤリと笑った。
「任せて下さいよ」
「どうせならこれからはそれで戦ったらどうだ?」
「モンスターで!?」
「そうだ。バルキリーより性に合っているかも知れんぞ」
「止めて下さいよ、俺はやっぱりバルキリー乗りですから」
「そうか」
「こえは今だけですよ、本当に」
「じゃあそれでいい。だが、今は頼むぞ」
「はい」
「総員衝撃に備えておけよ」
「了解」
 皆フォッカーの言葉に頷いた。
「派手にやるからな」
「ええ」
「わかってますって」
 イサムも笑っていた。そしてその時を待っていた。
「行け!」
 グローバルはコロニーにダイダロスを打ちつけた。凄まじい衝撃がダイダロスを中心に走る。
「デストロイド部隊、発進!」
「よし来た!」
 フォッカーはその言葉を聞いて叫んだ。
「行くぞ!」
「はい!」
 ダイダロスの先端部が開かれるとそこからコロニーの中に雪崩れ込んだ。そして次々に攻撃に移る。
「柿崎!」
「はい!」
 柿崎のモンスターは入口に留まっていた。そしてそこから攻撃を加える。両手と、上の四つの巨砲で。他の者達を援護していた。
 モンスターの火力は絶大であった。コロニーの中が瞬く間に破壊されていく。
「すげえ・・・・・・」
「おい、ボヤボヤしてる暇はないぞ」
 フォッカーはモンスターの攻撃に驚くキリュウに対してそう言った。
「俺達もやらなくちゃいけないんだからな」
「あ、そうでした」
「弾が続く限り派手にやれ!いいな!」
「了解!」
「俺はコロニーの核を破壊する!総員時間まで思いきりやれ!」
 フォッカーはバルキリーを戦闘機形態に変形させた。そしてそのままコロニーの中を飛び回る。まるで風の様な速さであった。
「流石だね、やっぱり」
「キリュウ、だから攻撃しなさいって」
 レトラーデが彼を窘める。
「ボヤボヤしてると時間になるわよ」
「おっとと」
 他の者も派手な攻撃を加えていた。その間グローバルは自分の左腕にある時計をずっと眺めていた。
「そろそろいいな」
「はい」
 早瀬がそれに頷いた。
「では攻撃を終了しましょう」
「フォッカー少佐の方はいいか」
「俺の方はもう終わりましたよ」
 マクロスのモニターにフォッカーが姿を現わした。
「ロイ」
「クローディア、俺の方はもう大丈夫だ」
「そう。じゃあもういいわね。艦長」
「うむ」
 グローバルはクローディアの言葉に頷いた。
「それでは攻撃終了だ。総員撤退」
「総員撤退」
「えっ、もうかよ」
 それを聞いてイサムが声をあげた。
「もうちょっと暴れたかったのによ、デストロイドで」
「我が侭を言うな」
 そんな彼をガルドが窘める。
「戦争だからな。命令には従うものだ」
「へっ、相変わらずの堅物だな。今まで一番派手に暴れていた癖によ」
「俺はいつもと変わりはない」
 だが彼はイサムの挑発にも乗りはしなかった。
「帰るぞ、いいな」
「ああ、わかってるよ。しかし」
「しかし!?」
「意外といいモンだな、デストロイドってのも。気に入ったぜ」
「そうか」
 二人の他にもパイロット達は続々と帰る。そして最後にフォッカーが帰還した。
 バルキリー形態でダイダロスに入る。そして入口でバトロイドに変形した。
「これでよし」
「皆いるな」
「はい」
 輝の言葉にマックスが頷いた。
「皆ちゃんといますよ」
「柿崎は?」
「中尉、俺ここから動けないんですよ」
「あっ、そうか」
 見ればモンスターはちゃんといた。輝はそれを聞いてハッとした。
「そういえばそうだったな」
「そうですよ。何か俺って信用ないのかなあ」
「ははは、それは違うな」
 しかしフォッカーはそれを否定した。
「違いますか?」
「ああ。それだけ御前さんが気にかけられているってことさ」
「そうかなあ」
「いざって時に心配してもらえているってことだ。そうじゃないか」
「言われてみれば」
 上を見上げて考えながらそう応える。
「そうなのかも」
「何事もな、プラスに考えるのがいいのさ。人間ってやつは」
「ロイはちょっと楽天的過ぎるわ」
 クローディアがモニターに現われて彼を叱った。
「少しは危険とかを避けなさい」
「危険なことが大好きなのが俺でね」 
 それでも彼は負けてはいない。
「そうじゃなきゃ今までパイロットなんてやってないさ」
「そのうち撃墜されるわよ」
「言ってるだろ?俺には勝利の女神がついているってな」
「またそんなこと言って」
 叱りながらもクローディアの顔が綻んできた。
「大怪我しても知らないから」
「その時は看病してくれるさ、女神が」
「・・・・・・馬鹿」
「では総員離脱だ」
 グローバルがあらたな指示を出した。クローディアとフォッカーのやりとりが終わるのを見計らったように。
「爆発の衝撃に備えよ」
「了解」
 ダイダロスが引き抜かれた。先端部は閉じられていた。 
 マクロスはコロニーから離れた。そして他のマシンも次々と戦艦の中に戻って行く。既にネオ=ジオンの部隊は前線を離脱していた。だがガトーは最後まで戦場に残っていた。
「おのれ、我等が大義が・・・・・・」
 彼は忌々しげにダイダロスアタックが終わり、腕を引き抜いたマクロスを見据えていた。
「許さんぞ」
「ガトー殿」
 そこにゼクスがやって来た。
「作戦は失敗した。ここは撤退するべきだ」
「ゼクス殿」
「後詰は私が受け持つ。貴殿はもう下がってくれ」
「しかし」
「先日の借りを返させて欲しいのだ」
 そしてこう言った。
「いいか」
「・・・・・・わかった」
 ガトーはそれを認めた。
「では先に下がらせてもらう」
「うむ」
「くれぐれも無理はせぬようにな」
「わかった。それではな」
 ガトーは主力部隊を率いて戦場を離脱していく。ゼクスはそれを見送りながら直属の部隊と共に戦場に留まっていた。今その目の前でコロニーが炎に包まれていく。
「終わったな」
 コロニーはゆっくりと砕けていった。そして巨大な炎となる。
「これでいいのかもな。関係のない者達を巻き込むのは?」
「!?特佐、何か」
「いや、何でもない」
 それを聞いて部下の一人が問うてきたが誤魔化した。
「独り言だ。気にするな」
「わかりました」
「ガトー殿と主力部隊は皆安全な場所にまで退避したか」
「はい」
 部下の一人がそれに頷いた。
「そうか。ならいい」
 ゼクスはそれを聞いて頷いた。そして部下達に対して言った。
「では我々も退却するとしよう。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ」
 ロンド=ベルを見据えながら後ろに下がって行く。そして何処かへ去って行った。
「行ったか」
 ヒイロはそのトールギスを見ながら呟いた。その後ろではコロニーが消えようとしていた。炎から塵へと変わろうとしていたのであった。
「また会おう。その時は」
 彼は窓から姿を消した。振り返るとそこには仲間達がいた。皆作戦成功を心から祝っていた。
「よし、これで危機は去った!」
「やっぱりマクロスはすげえぜ!」
 シャンパンを空け、叫んでいた。皆泡立つ酒によりズブ濡れとなっていた。やはり勝利と人類の危機を救えたことが嬉しかったのだ。
「だがまだやるべきことがあるぞ」
 ブライトはジュドー達にかけられて、乱れた髪を何とか整えながら言った。
「マスドライバーがあるからな」
「そのマスドライバーですけど」
 ケーンが彼に尋ねてきた。
「一体どんなやつなんですか?」
「ん!?知らないのかケーン」
「タップ、知ってるのか?」
「いいんや。ライト、知ってるか?」
「俺も詳しくは知らないけれどな」
 ライトはそれを受けて説明をはじめた。
「月から岩石を地球に向けて放つ兵器だ。外見は大砲に似ているらしいな」
「大砲かよ」
「そんなので地球にまで届くのか!?」
「待て、それは前に言っておいた筈だぞ」
 ダグラスがそれを聞いて顔を顰めさせた。
「御前達、何故それを知らないのだ」
「あっ、聞いてませんでした」
「何ィ!?」
 ケーンのあっけらかんとした言葉がダグラスの血圧をあげさせた。
「貴様等、それはどういうことだ!話を聞いていなかっただとお!」
「だってなあ」
「コロニーのこともあったし」
「そうそう。まずは目先のことを処理していかないとな」
「将校は常に先のことを読んでいろといつも言っているだろうが!御前達、階級は何だ!?」
「少尉です」
 三人はしれっとしてそう答えた。
「それが何か」
「それが少尉の言葉か!そんなのだから御前達はいつも問題ばかり起こしているのだろうが!」
「大尉、それは気のせいですって」
「そうそう、俺達みたいな品行方正の若者を捕まえてそれはないよなあ」
「怒りたい年頃なのかな」
「俺はまだ若い!歳のことは言うな!」
「ありゃヤブヘビ」
「参ったね、こりゃ」
「マスドライバーより先に貴様等を修正してやる!そこになおれ!」
「まあ大尉殿」
 ベンが間に入って来た。
「今は祝いの場ですしここは抑えて」
「軍曹、貴様がそうやってこいつ等を甘やかすからさらにつけあがるのだろうが!そこをどけ!」
「まあ落ち着かれて」
「大尉、まあこれでも飲んでくれ」
「フォッカー少佐」
 フォッカーはその手にある一杯のグラスを彼に差し出していた。
「グッとやってな」
「グッと」
「そう、グッと」
「わかりました。それじゃあ」
「ああ」
 言われるままでにグラスを受け取って飲んだ。するとあっという間にそこに倒れてしまった。
「流石ウォッカだ。よく効くな」
「それ本当にウォッカですか?」
「何かやばい薬なんじゃ」
「おいおい、幾ら俺でもそんなものは飲ませないぞ」
 ドラグナーチームの突っ込みに対して苦笑いで返した。
「これは本当にウォッカさ。ただアルコール度がちょっと高くてな」
「どれ位でしょうか?」
 ベンが尋ねる。
「九十六度ってとこだ。ロシアじゃ普通に飲まれてるらしい」
「九十六度」
「そんなの人間が飲めるのかね」
「俺は普通に飲んでいるぞ。出撃前にクイッとな」
「出撃前に」
「クイッと」
「戦争ってのはな、伊達と酔狂だ。酒は付き物だろうが」
「いや、幾ら何でもそれはまずいんじゃ」
「危ないですし」
「おいおい、御前等らしくない言葉だな」
 流石に引いているドラグナーチームに対してそう言った。
「試しに一度やってみろ。そうすりゃ俺みたいになれるぞ」
「ロイ、貴方」
「ゲッ、クローディア」
 恋人が現われてその顔を変えさせた。かなり狼狽したものになっていた。
「あれだけ出撃前のお酒は止めなさいって言っているのに」
「いや、これは」
「言い訳はいいわ。そんなことだと今度から禁酒よ」
「おい、それは厳し過ぎるだろ」
「貴方にはそうでもしなくちゃわからないわよ。いい、今度出撃前に飲んだら禁酒よ」
「ちぇっ、わかったよ」
「全く。何時まで経っても子供なんだから」
「流石のフォッカー少佐もクローディアさんには勝てないみたいだな」
「ああ。ロンド=ベルのエースの一人も敵はいるんだな」
「若しかするとギガノスの旦那にも」
「あればいいけどな、本当に」
「今回も出て来るんだろうな」
「ああ、どうやらそうらしいな」
「アムロ中佐」
「既にギガノスは防衛ラインを整えているらしい。それの指揮官はマイヨ=プラート大尉だ」
「やっぱり」
「気を引き締めていくようにな。彼は手強い」
「わかってますって」
「思う存分やってやりますよ」
「だといいいのだがな」
 ブライトの顔色はそれを聞くと暗くなった。
「くれぐれも無茶はしないようにな」
「何か俺達って信用ねえな」
「全くだぜ」
「これも人徳ってやつかね、やれやれ」
「そんなに信用されたけれどチャラチャラとしたふざけたことは止めろ!」
「あっ、大尉殿!」
「ええいどけ軍曹!今度こそはこの俺の手で!」
「あっ、やべえぞ大尉が来た!」
「逃げろ、危ねえぞ!」
 三人はダグラスから退散した。ダグラスはそれでも三人を追いかける。そして時間が過ぎていった。束の間の休息の時であった。


第四十一話   完


                                    2005・8・27



 
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