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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第三十五話 冥王、暁に出撃す

              第三十五話 冥王、暁に出撃す
 朝が来た。一機のマシンが姿を現わそうとしていた。
「行くか」
「うん」
 ゼオライマーが姿を現わした。銀色のマシンが暁の紅の光を受けて輝いていた。
 ロンド=ベルの面々も沖もゼオライマーを見ていた。彼等はそれを見送る為に出て来ていたのだ。
「行って来いよ」
「そして全てを終わらせて来い」
「はい」
 マサトは彼等の言葉に頷いた。沖も声をかけてきた。
「マサト」
「沖さん」
「御前には済まないことをしてきた。許してくれとは言わない。だがこれだけは言わせてくれ」
「いいですよ」
 マサトはそれを聞いて微笑んだ。
「僕は。これが運命だったんですから」
「運命か」
「ええ。そしてその運命を終わらせる為に美久」
「ええ」
「行こう」
 マサトと美久、そしてゼオライマーは出撃した。何もかもを終わらせる為に。

「来たか」
 幽羅帝は鉄甲龍の要塞の中にいた。それは上海から少し離れた荒野に置かれていた。
「木原マサキ、いえ秋津マサト」
 はじめて彼の名を呼んだような気がする。何故か憎しみは感じない。
「もう一人の私・・・・・・。いよいよ全てが終わる」
 彼女は前を見た。そこにゼオライマーが姿を現わした。
「来たよ」
 マサトは優しい声で彼女に声をかけた。
「もう一人の僕に会いに」
「ええ」
 帝はその言葉に頷いた。
「いらっしゃい、もう一人の私」
「うん」
 マサトも彼女の言葉に頷いた。
「全てを終わらせましょう」
「そう、全てを」
 二人は優しい頬笑みを浮かべ合ってそう言い合う。
「運命を終わらせる為に」
「彼の怨念を消す為に」
 ゼオライマーはゆっくりと宙に浮かび上がった。そしてその拳を打ち合った。
「さようなら、僕」
「さようなら、私」
 帝は最後にそう言った。優しい、落ち着いた頬笑みを浮かべながら。
「上海郊外で爆発を確認しました」
 暫くしてロンド=ベルにも爆発が確認された。ミドリがそう報告する。
「そうか、終わったか」
 大文字はそれを聞いて瞑目した。
「彼は全てを終わらせたのだ」
「はい」
「自分自身でな。だが辛いことだろう」
「でしょうね」
 ミドリがそれに頷いた。
「自分自身を消したのですから。そして彼自身も」
「いや、待ってくれ」
 だがここでサコンが広範囲用のレーダーを見ながら言った。
「どうしたんだね、サコン君」
「彼はまだ生きていますよ。無事です」
「何っ、まさか」
「ええ、どうやら無事だったようです。その場にゼオライマーが立っています」
「そうか」
 大文字はそれを聞いて少し安堵したようであった。
「彼は生きていたのか。では」
「いえ、まだ油断はできないようです」
 しかしここでサコンの顔が険しくなった。
「敵が来ています。これは・・・・・・ミケーネです」
「無粋な奴等だな、やはり」
 鉄也がそれを聞いて顔を顰めさせた。
「俺が行きます。奴等が相手ならどれだけいても平気です」
「私も行きます」
「それよりも前に動いているのがいるがな」
「えっ!?」
 鉄也とジュンはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「それは」
「すぐわかる。だがゼオライマーが危ないのには変わりない。俺達も行こう」
「了解」
「では博士」
「うむ」
 大文字はあらためて頷いた。そして指示を下す。
「ロンド=ベル発進。ゼオライマーの救援に向かうぞ」
「はい!」
 六隻の戦艦が空に舞い上がった。そして戦場に赴くのであった。二人を助けに。

「終わった・・・・・・。全てが」
 マサトはメイオウ攻撃により全てが消え去ったその場で一人そう呟いた。
「もう一人の僕が消え去った。僕は一人になったんだ」
「いえ、一人じゃないわ、マサト君」
 美久がマサトに声をかけた。
「私がいるから」
「美久・・・・・・」
「いつも私が側にいるから。マサト君は一人じゃないわ」
「優しいんだな、君は」
 マサトはそれを聞いてそう答えた。
「本当に。いや、君だけじゃない」
「私だけじゃない?」
「八卦衆も・・・・・・。皆美しい心を持っていた」
 彼はここでこう言った。
「幽羅帝も。皆美しい心の持ち主だった。しかし僕だけが違う」
「マサト君・・・・・・」
「僕が造った皆が綺麗で、どうして僕だけが薄汚いんだ」
 マサトは言った。
「何故、何故僕だけが」
「それは違うわ」
 だが美久はそれを否定した。
「マサト君」
 彼の名を呼んだ。マサト、と。
「人は自分の心の中にないものは造り出せないわ」
「・・・・・・・・・」
「貴方の心の中にそれがあったから彼等を造り出せたのよ。それは違うわ」
「そうなのだろうか」
「ええ」
 美久は頷いた。
「貴方は貴方の心の中にあるそれぞれのものを彼等に託したのよ。私にも」
「そうなのだろうか。けれど」
 それでもマサトは言った。
「僕は彼等を・・・・・・」
「それも違うわ。見て」
「えっ」
 美久の言葉に顔を上げた。前を見た。
「ほら」
 そこには彼等がいた。もう一人の自分も。彼等は微笑んでそこに立っていた。
「そして貴方は彼等を壊そうとはしなかった」
「馬鹿な、そんな」
「彼等が彼等の道を見つけられるようにしていたのよ。全てがわかったうえで」
「どういうことなんだ」
 マサトは彼等を見てさらにわからなくなっていた。
「何故彼等が」
「貴方は彼等を滅ぼすつもりはなかったのよ。彼等にそれぞれの道を歩んでもらいたかったの」
「けれど僕は彼等の心に」
「しがらみを抜けてこそ人ははじめて歩けるものなのよ」
 美久はまた言った。
「どれがわかっているから彼等も、そして貴方も今ここにいるのよ」
「そうだったのか」
「ええ。そして彼等は歩いていくわ。見て」
 彼等は微笑んでその場を去っていった。ある者は一人で、そしてある者達は二人で。それぞれの道を歩みはじめた。一人ずつマサトの前から去って行った。
「行ったんだね」
「ええ」
 美久は頷いた。
「そしてマサト君も」
「僕も!?」
「そうよ」
 彼女はまた答えた。
「貴方の運命を切り開いたから。貴方もこれからは自分の道を歩いていけるわ」
「そうかもしれない」
 マサトは一旦はそれに頷いた。
「けれど」
「けれど・・・・・・何かしら」
「僕の道は僕のだけじゃないんだ。美久、君もいる」
「私も」
「うん。そして・・・・・・」
 暗い顔だが意を決したものであった。
「僕自身も。もう一人の僕もいる」
「マサト君、いいのね」
「ああ。僕は僕の運命を受け入れた」
 彼は言った。
「それが僕の道なんだ。彼もいることが」
「そうなの、わかったわ」
「僕は僕だけじゃない。秋津マサトは」 
 悟った顔になっていた。
「僕だけじゃないんだ」
 ゼオライマーは動きはじめた。そして飛び去ろうとする。しかしそこで四機のエヴァが姿を現わした。
「終わったみたいですね」
 シンジがまず言う。
「シンジ・・・・・・君だったっけ」
「はい」
 シンジはそれに答えた。
「マサトさん、お疲れ様でした」
「有り難う」
「計画は終わったみたいですね」
「うん」
 マサトはそれに頷く。
「僕達が終わらせたよ。彼の計画はね」
「そうですか」
 シンジだけでなく他の三人もそれに頷いた。
「じゃあこれでゼオライマーは役目を終えたんですね」
「うん」
「帰りますか、日本に」
「ああ、帰ろう。そして僕は」
 マサトは何か言おうとした。だがそこで異形の者達が姿を現わした。
「んっ!?」
 それはミケーネ帝国の戦闘獣達であった。先頭には魔魚将軍アンゴラスがいた。
「フン、そう易々と日本に帰ってもらっては困るな」
「ミケーネ帝国」
「何であんた達がここにいるのよ」
 アスカが彼等にくってかかる。
「フン、知れたこと。ゼオライマーを破壊する為だ」
「ゼオライマーを」
「そうだ。その圧倒的な力、必ずや我等にとって害となる。ならば今のうちにな」
「相変わらずせこい奴等やな」
 トウジがそれを聞いて呆れた声を出した。
「ちょっとはでっかいふうにやれんのかいな」
「全くよね」
 アスカもそれに続く。
「そんなんだからあたし達に負けてばっかりなのよ。わかる!?」
「何っ、わし等を愚弄するつもりか」
「愚弄も何も本当のことじゃない」
「何だとっ!」
「ゼオライマーを倒す前にあたし達がいるのよ。あたし達を倒せると思ってるの!?」
「えっ、それって」
 マサトはアスカのその言葉を聞いて驚いた。
「僕達を・・・・・・」
「あたし達はねえ、あの計画を何とかする為にいたのよ」
 アスカはそれに答えた。
「あんたを相手にする為にロンド=ベルにいるんじゃないのよ。わかる!?」
「ちょっとアスカ」
「シンジ、あんたは黙ってなさい」
 アスカはそう言ってシンジを黙らせたうえでマサトに話を続ける。
「だからね、あんたには何の恨みもないのよ。ゼオライマーにもね」
「そうだったの」
「だからそこで大人しくしてなさい。いいわね」
「いや」
 だがマサトは動いた。
「僕も戦わせてもらうよ。君達だけ戦わせるみたいだから」
「・・・・・・いいの?」
 レイが彼に問うた。
「ここで戦うと一度だけじゃないわよ」
「・・・・・・・・・」
「ミケーネは完全に貴方を敵視するわ。そして他の勢力も」
「構わないよ」
 マサトは言った。
「僕は決めたんだ。戦うって」
「どういうことかしら」
 アスカがそれに問う。
「このゼオライマーの力は世界を破壊する為にあるんじゃなかったんだ。木原マサキ、いや僕はそれを望んじゃいない」
「それで」
「じゃあこの力は別の方に使う!世界を破壊するんじゃなくて・・・・・・」
 彼は言った。
「世界を守る為に!」
「フン、また世迷言を言う輩が出てきおったか」
 アンゴラスはそれを聞いて嘲笑した。
「ならばよい。ゼオライマー共々貴様等を叩き潰してくれる!」
「待てっ!」
 しかしここで新たな声がした。
「ムッ!?」
「正義の道に目覚めた者を滅ぼさんとする外道の輩、俺は決して見逃しはしない!」
「何者だ!?」
「ドモン=カッシュ!」
 ドモンは叫んだ。
「ガンダァァァァァァァァァァァァァァムッ!」
 ガンダムが姿を現わした。そしてドモンはそれに乗る。
「シャイニングガンダム、見参!」
「ドモンさん!」
「何故ここに!」
「悪が跳梁跋扈するところシャッフル同盟あり!」
「シャッフル同盟が!」
「そうだ!ここにいるのは俺だけではない!いでよシャッフル同盟!」
 ドモンが叫ぶと他の四機のガンダムも姿を現わした。そしてエヴァ達の前に出る。
「シャッフル同盟参上!ミケーネよ、覚悟はいいか!」
「その程度の数で我等に挑むつもりか」
「戦いは数ではない!」
 ドモンはそれに反論した。
「気迫だ!そして悪を憎む正義の心だ!」
「ぬかせ!それでわしに勝てると思うか!」
「シャッフル同盟に敗北はない!行くぞ!」
「ちょっと待ちやがれ!」
 また声がした。
「またあ!?」
「今度は一体」
「ダイゴウジ=ガイだあっ!」
 ダイゴウジのエステバリスが出て来た。
「俺もやらせてもらうぜ!おう、マサトっていったなあ!」
「はい」
「その心意気、気に入ったぜ!俺もやらせてもらう!」
「貴方も」
「そうだ、その為に来たんだからなっ!」
「何かドモンさんと同じこと言ってる」
「シンジ、それを言うのは野暮ってやつやで」
「そうかなあ」
「そうね」
 レイがそれに頷く。
「あと間違ってもドモンさんとダイゴウジさん、トウジ君の声について考えちゃ駄目よ」
「何で?」
「それが決まりだから」
「よくわからないけどわかったよ」
「そういうことね」
「そこの魚野郎!」
 ダイゴウジはシンジ達に構わず相変わらずのテンションで叫び続ける。
「俺が刺身にして食ってやる!覚悟しろ!」
「何っ、刺身だとお!?」
「そうだ!それが嫌なら天麩羅だ!好きなのを選べ!」
「ぬうう、言わせておけば!」
 アンゴラスはそこまで聞いて激昂した。
「貴様から先に倒してやろう、覚悟はいいな!」
「覚悟なくして戦いはない!来い!」
「よくぞ言った!死ねぃ!」
 ミケーネはダイゴウジに軍を向けようとする。しかしここでまた新たな者達が出て来た。
「待て!」
「またか!」
「俺達もいることを忘れるな!」
 ダイモスが姿を現わした。ガルバーも一緒である。
「ダイモス!」
「俺達だけじゃない!見ろ!」
「何っ!」
 そこにはロンド=ベルの全軍がいた。彼等はミケーネに正対するようにして布陣していた。
「エステバリスの特性を忘れていたな」
 一矢は彼等に対して言った。
「エステバリスは一定範囲ナデシコから離れるとエネルギーの供給に支障をきたす。ならばエステバリスが日本からここに来れる筈がない」
「クッ・・・・・・!」
「ならば母艦、そして他の者も来ているということだ。御前達の敵は彼等だけではない」
「おのれ」
「来るなら来い!貴様等をここで一掃してくれる!」
「誰が人間なぞに!」
 こうしてミケーネとロンド=ベルの戦いがはじまった。だがこの戦いはロンド=ベルの圧勝に終わった。ミケーネの者達は重傷を負ったアンゴラスを先頭に僅かな数がかろうじて戦場を離脱しただけであった。
「口程にもない奴等だ」
 ドモンが壊走する彼等の後ろ姿を見て言った。
「所詮はこの程度か」
「いや、それは違うな」
 鉄也がそれを否定した。
「奴等はまだ本気を出しちゃいない。これでもまだほんの小手調べか」
「小手調べか」
「ああ。奴等の戦力は底知れない。油断するな」
「わかった。ところでだ」
 ドモンはここでゼオライマーに顔を向けた。そしてマサトに対して声をかけてきた。
「秋津マサトだったな」
「はい」
「俺は過去は問わん。歓迎するぞ」
「僕を」
「そうだ。何か不都合があるか?」
「いえ」
 彼は首を横に振った。
「お願いします、これから」
「ああ」
 こうしてマサトと美久、そしてゼオライマーがロンド=ベルに入った。ラストガーディアンは解体し、沖は連邦軍へ編入されることとなった。
「これでまた一つ終わったな」
 タダナオは日本に帰りふとそう言葉を漏らした。
「恐竜帝国とバウ=ドラゴン。二つの敵が滅んだわけだ」
「ああ。だが全てが終わったわけじゃない」
 それに対してオザワが言った。
「ティターンズもドレイク軍もいる。さっきのミケーネもな」
「そうだったな。他にも一杯いやがる」
「敵はまだ多いぞ。気を引き締めていこう」
「そうだな」
「ちょっと待ったあ」
 だがここで彼等に声をかける少女がいた。
「ルー」
「まだ何か忘れているんじゃなくて?」
 ルーは悪戯っぽく笑いながら二人に尋ねてきた。
「ん!?まだあったか?」
「ガイゾックにバルマー、そしてバームか?あとは」
「ギガノスにオルファンもいるぞ」
 タダナオがオザワにそう付け加えた。だが彼も完全ではなかった。
「ネオ=ジオンよ。彼等もいるでしょう?」
「おっと、そうだった」
「けれど連中はキシリアが事故死してからこれといって・・・・・・」
「それは甘い考えだな」
 フォッカーがそこにやって来た。
「少佐」
「ネオ=ジオンには何人かとんでもない奴がいるぞ。注意しておけ」
「ソロモンの悪夢、アナベル=ガトーですか?」
「一人はな」
 フォッカーはタダナオにそう答えた。
「だが彼だけじゃない」
「ハマーン=カーン。そして」
「エギーユ=デラーズだ。あの男もいるということを忘れるな」
「あいつまだいたんですか」
 タダナオはその名を聞いて声をあげた。
「前の戦いで死んだと思っていたのに」
「生憎な。奴は生きている」
「しぶといおっさんだな」
「また何か企んでいるだろう。用心しておいた方がいい」
「ですね」
 タダナオもオザワもそれに頷いた。
「奴が今度何かしようもんなら宇宙に出向いて叩き潰してやりますよ」
「頼もしいな」
「何、あんな爺」
「ひとひねりですよ」
「諸君!」
「!?」
 突然放送が入った。
「今人類は危機に瀕している!バルマー、そしてミケーネの脅威によって」
「この声は」
 彼等はその声を聞いて驚きの声をあげた。
「言っている側から」
「一体どういうことだ」
 それはデラーズの声であった。彼が演説を行っていたのだ。
「それに対して地球連邦政府は何かしているだろうか。いや!何もしていない」
 デラーズは連邦を批判する演説を行っていた。
「それにより今地球は死のうとしている。ミケーネ等により」
「自分達もその一つとは考えてねえのかよ」
「それがわかる程周りが見えていたらジオンには入らねえさ」
 オザワがややシニカルにそう述べた。彼はどうやらジオンが嫌いであるらしい。
「ギレン=ザビの狂信者がそれで何の御用件かね?全く」
 彼のシニカルな言葉は続いた。冷たい顔でデラーズの演説を聞く。
「今こそ腐った連邦政府、そして地球を蝕む者達に鉄槌を下す時だ!」
「ギレンと同じだな」
 オザワはシニカルな突込みを入れた。
「我々は今ここに宣言する!地球に正義の鉄槌を下すと!」
「どうするつもりだ!?」
「これより地球に対してコロニー落としを敢行する!これから四十八時間後にだ!」
「何だと!」
 オザワだけではなかった。それを聞いて全ての者が驚きの声をあげた。
「彼等とは縁も所縁もない者達のことを考慮し、四十八時間の猶予を与える!その間に連邦政府の者達も逃げるかも知れない!だがそれは彼等が嘲笑を受ける根拠となるだろう!臆病者として!」
「何勝手なこと言ってやがる!二日かそこらで逃げられるわけねえだろうが!」
 タダナオがそれを聞いて激昂した。
「あいつは馬鹿なのかよ!一体どういうつもりだ!」
「粛清だな」
 フォッカーが言った。
「粛清」
「そうだ。ネオ=ジオンに反対する者達に対してな。地球はネオ=ジオンを快く思わない者が多い」
「そりゃそうでしょ。一年戦争の時にはかなりやられましたから」
「だからだ。地球にいる多くの者は彼等にとって敵だ。だからコロニー落としをしようというのだ。ネオ=ジオンの力と決意を知らしめる為にもな」
「それで何十億人が犠牲になっても」
「ジオンにとってそんなことは関係ない」
 フォッカーはまた言った。
「そうじゃなきゃ一年戦争なんてはじめからしないさ。そうじゃないか」
「ですね」
 二人はそれに頷いた。かってジオンは一年戦争の折毒ガスにより多くの人々の命を奪った。そしてコロニー落としを行い、オーストラリアを破壊した。それがジオンのやり方であった。
「ぞれがジオンだ。わかってるとは思うが」
「はい」
「さて、どうするかな」
 フォッカーは考える顔をして言った。
「これはえらいことになってきたぞ」
「フォッカー少佐、ここにおられたのですか」
「ルリちゃん」
 ルリがそこにやって来た。
「タダナオさん達も。丁度いいです」
「集合か?」
「はい」
 ルリはタダナオにそう答えた。
「すぐに集まって下さい。ナデシコのオペレーションルームです」
「わかった。じゃあ行くか」
「はい」
 彼等はそれに頷いた。そしてナデシコのオペレーションルームに集合した。
「話は聞いていると思う」
 まずブライトがそう言った。
「ネオ=ジオンが地球に対してコロニー落としを行おうとしている。四十八時間後にだ」
「はい」
 皆それを聞いて頷いた。
「残された時間はあまりない。しかも月では新たな動きがある」
「新たな動き」
「ギガノスだ。どうやら彼等はマスドライバーシステムで地球に対して攻撃を行おうとしているらしい」
「ギガノスも」
「そうだ」
 ブライトはそれに答えた。
「マスドライバーで地球をピンポイントに狙っているらしい」
「そのマスドライバーって何ですか?」
 ジュドーが尋ねた。
「とんでもねえ兵器だってのはわかるんですが」
「何でも岩石を地球に向けて放つ巨大な砲らしい」
「岩石を」
「地球に至ればそれは隕石になる。つまり隕石で地球を攻撃するのだ」
「それってとんでもないことじゃないですか」
 皆それを聞いて驚きの声をあげた。
「早く何とかしないと。コロニー落としも問題ですけれど」
「だから宇宙に行かなければならないのだ」
 ブライトは彼等にそう答えた。
「わかるな、私の言っていることが」
「ええ」
「我々はこれより宇宙に出る。攻撃目標はコロニー落としを敢行しようとするネオ=ジオン軍、そしてマスドライバーを完成させたギガノスの月の基地だ」
「敵の本拠地かよ、よりによって」
 ケーンがそれを聞いて驚きの声をあげた。
「腕が鳴るぜ」
「おいおい、心配しねえのかよ」
 タップがそれを聞いて呆れてしまっていた。
「何でだよ、タップ」
「敵の本拠地だぜ、いきなり決戦だってのによ」
「地球に降り立ったギガノス軍の一部が月に戻っているらしいしな」
「それマジかよ、ライト」
「ああ。さっきチラリと聞いたけれどな。あの旦那も一緒らしいぜ」
「そうか、ならさらにいいや」
 ケーンはニヤリと笑った。
「あの旦那とも色々話したいことがあるしな」
「ケーン」
 そんな彼にブライトが言った。
「何ですか?」
「確かにマスドライバーは月にあるが彼等の本拠地にあるわけではないぞ」
「そうなんですか!?」
「そうだ。本拠地とは少し離れた場所に置かれている。だがそれを守る敵軍はかなりの数のようだがな」
「そうだったんですか」
「まあそうだろうな」
 ライトがそれを聞いて頷いた。
「幾ら何でも本拠地のすぐ側に置くような無謀な真似はしないよな」
「そうそう、誰かさんとは違って」
「おい、そりゃどういう意味だ」
「ケーン、静かにしろ」
「ちぇっ」
「それでだ」
 ケーンはくってかかった。ブライトはそれを制止した後で話を再開した。
「南アタリアに駐留しているマクロスのグローバル准将が協力を申し出てきてくれたのだ」
「グローバル准将が!?」
「補充のパイロット、マシンも一緒にな。それについてどう思うか」
「是非共受けるべきだな」
 シナプスがそれを聞いてそう述べた。
「マクロスはその存在だけで大きな戦力だ」
「はい」
「そのうえ新たな戦力が参加するとなればな。断る理由はない」
「わかりました。ではアタリアへ」
「うむ」
 シナプスは頷いた。こうしてまずは南アタリアへ向かうこととなった。だが話はそれで終わりではなかった。
「あ、皆そこにいたのかよ」
「武蔵」
 武蔵が部屋に入って来たのだ。
「傷はもういいのか」
「ああ、何とかな。ちょっと休んでたら治っちまった」
「ちょっとって・・・・・・。熊か何かじゃねえんだから」
「それはおかしいだろ」
「そうか?おいらにとっちゃいつものことだからな」
「まあいいか。それで何かあったのか?」
「ああ。何でもオルカンとか何とかがよ」
「オルカン?」
「オルファンのことね」
「あ、そうそうそれ」
 武蔵はカナンの言葉に頷いた。
「そのオルファンがな」
「どうかしたの?」
「浮上するとかそんなのを今ラジオで言ってたんだ」
「何だって!?」
 それを聞いた勇が思わず声をあげた。
「オルファンが!?」
「どうしたんだよ勇、そんなに驚いて」
「どうしたもこうしたもない、それは大変なことだ」
「どう大変なんだよ」
「オルファンが浮上すると世界が滅亡すると言われているんだ」
「えっ!?」
「まさか」
「いや、本当のことだ」
 勇は皆に対してそう答えた。
「オルファンをこのままにしては大変なことになる」
「どうする!?」
 ラッセが皆に対して問うた。
「オルファンのこともある。このまま宇宙に行っていいか。だがコロニー落としなんて物騒なものも放置しちゃいけないな」
「そうだな」
 ブライトはそれを聞いてまた頷いた。
「二手に分かれよう。まずは宇宙に行く部隊」
「はい」
「母艦はラー=カイラムとアルビオン、ナデシコがいいと思うが」
「異論はない」
「私も」
 二人の艦長はそれに異存はなかった。
「アルビオンは宇宙戦に適しているからな」
「アキトと一緒なら何処でも」
「えっ、俺!?」
「これでいいな。では部隊だが」
「エステバリスは絶対ですね」
「そうだな。アキト、いいな」
「ええ、まあ」
 アキトは仕方ないといった様子でブライトに頷いた。
「どのみちエステバリスはナデシコから離れてそうは動けないですから」
「これでよし。後はモビルスーツ部隊だ」
「いいな、皆」
「はい」
「当然ですね」
 カミーユやジュドー、ウッソ達がアムロの声に頷く。
「そしてヘビーメタル」
「はい」
「そしてメタルアーマー」
「エースは宇宙に羽ばたく、いいねえ」
「ケーン、あまり調子に乗って撃墜されるんじゃねえぞ」
「うるせえ」
「そしてコスモクラッシャー隊」
「了解、いいな皆」
「はい」
 ケンジの言葉に頷いた。
「バルキリー隊」
「まあそうだろうな。マクロスがいるし」
「そしてライディーンに獣戦機隊、ザンボット、そしてダイモスとガルバーにも行ってもらう。これでいいな」
「わかりました」
「久し振りの宇宙かよ、腕が鳴るぜ」
「後は・・・・・・。SRXチーム」
「よし!」
「アラドとゼオラ、そしてアイリス達にも行ってもらうか」
「アラド、暫く宇宙の戦闘やっていないけれど大丈夫でしょうね」
「いちいち言わなくても大丈夫だよ」
「だといいけれど」
「宇宙か。暫くぶりだな」
「アイリス、何だか懐かしいね」
「ああ」
「次は地上だ」
 ブライトの言葉は続いた。
「母艦は大空魔竜、グランガラン、そしてゴラオンの三隻だ」
「といっても残ったものだが」
「まあそれはいいってことさ」
「マジンガーチーム、ゲッターチーム、そしてジーグだ」
「おいらはどうなるんだ?」
「ブラックゲッターならもう完全に修復したぜ」
 アストナージが彼にそう説明した。
「えっ、もうかよ」
「てこずったがな。けれどこれでもう大丈夫だ」
「そうか。じゃあこれでまた戦えるんだな」
「武蔵ここで提案デーーーース」
「何だよ、ジャック」
「ミーとメリーと武蔵の三人でブラックゲッターに乗りませんか!?若しくはテキサクマックを三人で」
「三人でか」
「その方が戦力になると思うから。どうかしら、武蔵さん」
「おいらはいいけれどよ、別に」
「じゃあこれで決まりデスネーーーーーーー」
「おいおい、勝手に決めるなよ。・・・・・・けれど、まあいいか」
 武蔵はそれに頷いた。こうしてブラックゲッターと新しいパイロットが決定した。
「ガイキングチームもだな」
「大空魔竜がいるからな。当然だな」
「そしてオーラバトラー隊」
「了解」
「シャッフル同盟とモビルファイターか」
「任せろ」
「ブレンパワード、そしてダイターンとコンバトラー、ボルテス、ゴーショーグン、ゼオライマー、そしてエヴァだ」
「あたし達は陸なのね」
「まあ予想通りやな」
「魔装機もだ。それはいいな」
「ああ。こっちはいいぜ」
「マサキの方向音痴が気になるけれどね」
「おい」
「そしてクスハとブリット、ゼンガーにも行ってもらいたいが」
「異存はない」
「私もです」
「俺も」
 三人はそれにすぐに答えた。
「これで決まりか。ではまずは南アタリアに向かうとしよう」
「全軍ですか?」
「そうだ。宇宙に出る時が一番危険だからな。地上に残る部隊にも協力してもらいたい」
「わかりました。それでは」
「頼むぞ」
 こうして一先全軍を以って南アタリアに向かうことになった。タダナオは部屋を出ながらオザワに声をかけていた。
「なあ」
「どうした?」
「オルファンのことだけれどよ」
 彼は友の顔を見ながら言葉を続ける。
「あれが浮上したら本当に世界が破壊されちまうのかよ」
「勇の言葉だとそうらしいな」
 オザワはそう答えた。
「僕も詳しくはわからないがあいつが言っているから本当なんだろうな」
「そうなのか」
「どうするかまではわからないがな」
「勇はそれがわかっているかな」
「少なくとも僕達よりはわかっているだろう」
 そう答えるより他になかった。
「ここは彼に任せるしかないだろうな、実際は」
「勇ならやってくれるかな」
「やるしかないな、滅亡したくなければ」
「そうだな」
 二人は頷き合った。そしてそれぞれの部屋に入るのであった。次の戦いに備えて。


第三十五話   完


                                        2005・7・27

 
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