スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第二十四話 ドラグーン
第二十四話 ドラグーン
香港での戦いを終えたロンド=ベルはそのまま中国を横断して重慶に向かっていた。ここにドラグナーの新型があるのである。
「何だかなあ」
タップはアルビオンの自室でぼやいていた。彼等はアルビオンに移っていたのである。
「重慶に着いたらすんなりと除隊できると思ったんだけれどな」
「連邦軍の制度に引っ掛かっちまうとはな」
ライトもいた。彼がここで言った。連邦軍ではマシンや戦闘機に乗ることができるのは将校以上なのである。改革によりそう定められたのだ。
「まあおかげで給料はよくなったけれどな」
「おいおい、そういう問題かよ」
タップはケーンにそう突っ込みを入れた。
「このままいったら何時死ぬかわかんねえんだぞ」
「大丈夫だって」
ケーンはタップを宥めてそう言った。
「死にはしねえよ」
「何でそう言えるんだ!?」
「根拠はねえけれどな」
「おいおい」
ライトがそれを聞いて呆れた声を出した。
「何となくかよ。ったく」
「けれど今まで生きてこれたんじゃねえか。色々とあったけれどな」
「そういやそうだな」
「まあ危ない場面もあったけれどな」
タップとライトはそれに頷いた。
「その原因の殆どは御前にあるけれどな」
「御前に言われたかねえよ」
ケーンはタップにそう返した。
「いつも無茶しやがって」
「戦いってのは多少の無茶はつきもんなんだよ」
「確かにな」
ライトがそれに同意する。
「無茶は戦いの調味料だ」
「初耳ですな」
それを聞いたベン軍曹がそう答えた。
「三人共何を話しているのですかな」
「軍曹」
三人は彼に顔を向けた。見ればベン軍曹は部屋の扉のところに立っていた。そして部屋の中に入って来た。
「とりあえずもうすぐ重慶ですが」
「は、はい」
三人は彼の姿を見て背筋を立たせた。階級が上になってもやはり怖いことは怖いのであった。
「一応これで登録も解除できますが」
「それ本当!?」
タップがそれを聞いて驚きの声をあげた。
「はい。そうすれば除隊も可能ですが」
「将校でも」
「それは関係ありません」
軍曹はやや事務的にそう答えた。
「少尉殿達はあくまで志願者という形になっておりますので。こちらとしては強制はできません」
「そうだったのか」
「じゃあこれでお別れできるんだな」
「はい」
軍曹はまた答えた。
「何度も申し上げる通りこちらはそれを強制できないのです。あくまでそちらで決められることです」
「そうだな」
「タップ、どうするつもりなんだ」
「決まってるじゃねえか」
タップはそう返した。
「除隊だよ。それで退職金で商売をはじめるんだ。前に言ってただろ」
「そういえばそうだったな」
二人はそれを聞いて思い出した。
「俺達は成り行きでこうなっちまったんだし」
「抜けられたら抜けたいな、って言ってたしな」
「そうだろ。何で今まで忘れていたんだよ」
「いやあ、忘れてたわけじゃねえけど」
「忙しかったし」
「まあ色々とあったからな」
タップもそれに頷く。
「けれど思い出したんならいいや。俺は抜けるぜ」
「おいちょっと待てよ」
ケーンがそれを呼び止める。
「御前が抜けたらドラグナーチームはどうなるんだよ」
「三人じゃないと本当の力は出せないんだぞ」
「じゃあ御前等は残るのかよ」
「そう言われてもなあ」
「判断に困るというか」
「それ見ろ」
タップはそこに突っ込んだ。
「気楽にいこうぜ。俺達が抜けても誰かが入ってくれるさ。世の中そんなもんだ」
「ドライだな」
「ドライじゃねえぞ。それが世の中さ。俺達のかわりなんざ幾らでもいるさ」
「確かにな」
ライトが真面目な顔で頷く。
「しかし俺としてはここが気に入ってるしな」
「そうなのか」
「俺も・・・・・・そうだな」
ケーンもそれに同意する。
「ここも案外悪くはねえしな。ベン軍曹は最初は怖かったけれど」
「そうなのですか」
軍曹はそれを聞いて少し憮然とする。
「あ、いやそんな意味じゃなくてさ」
「新兵教育ってやつは何処もこんなもんだと思うし。それだけですよ」
「ふふふ」
軍曹はそれを聞いて少し嬉しそうに笑った。
「どうやら少尉殿達に教育させて頂いたのは正解でしたな」
「そうなんですか」
「はい」
彼は答えた。
「最初は私も戸惑いました。こんな軽薄な連中でいいのか、と」
「俺リーゼント切られたし」
「まあそりゃ当然だな。坊主にならないだけまし」
「そうそう」
「ですが一緒にいるうちに。まあ何といいますか」
「俺達の実力がわかったと」
「いえ」
だが軍曹はそれは否定した。
「残念ながらそうではありません」
「あれ、違うの!?」
「はい。まあ何と言いますかマシになったな、と」
「マシに」
「ええ。少しはパイロットとしていけるようになったのでは、と。今ではそう思っております」
「・・・・・・何か俺達って今一つ評価が悪いな」
「アムロ中佐やクワトロ大尉と比べてな」
「御言葉ですが比べる相手が凄過ぎますな」
「まあそうだけれど」
「しかし何というか凄い評判にはなってねえから」
「だから出て行っても問題はねえんだよ」
「私はそれにも反対です」
「何で!?」
「寂しくなるからです」
軍曹はタップに対してそう述べた。
「これはあくまで個人的な感情ですがタップ少尉も他の御二人もいなくなると寂しいです」
「そんなもんかな」
「何か俺達ってガンダムチームと同じでお笑い担当と思われてるけれどな」
「こんな二枚目を捕まえてな。何処を見てるんだか」
「タップの何処が二枚目なんだよ」
「待てよ、こんな男前捕まえて何言うんだ」
「この雰囲気です」
軍曹はそのやりとりを見ながらまた言った。
「これがないとやはり寂しいです」
「そうなのか」
「私としては少尉殿達には去ってもらいたくはありません。ですが」
彼は言葉を続けた。
「しかしそれを決められるのは御自身です。私が申し上げることではありません」
「・・・・・・・・・」
「ですがよく御考え下さい。少尉殿達に去って欲しくない者もいるということを。それでは」
それだけ言ってその場を離れた。後には三人だけが残った。
「なあタップ」
ケーンはあらためてタップに顔を向けた。
「どうするんだ」
「・・・・・・・・・」
彼は俯いたまま答えようとしなかった。黙っていた。
「軍曹のあの言葉は心からの言葉だぜ」
ライトもそう言った。
「ああした人もいてくれてるんだ。それはよく覚えていろよ」
「・・・・・・ああ」
彼はようやく頷いた。だがその顔はまだ晴れてはいなかった。何処か暗く沈んでいた。
しかし時は彼等を待ってはくれなかった。ロンド=ベルは遂に重慶に到着したのであった。ここは中国四川省にある都市でありこの辺りでは最大の都市でもある。ここの料理は辛いことで有名だ。
「さて、と」
重慶に到着するとブライトはダグラス大尉に顔を向けた。
「ようやく重慶に着きましたね」
「はい」
大尉は嬉しそうに声をあげた。
「これでようやくあの三人ともおさらばです」
「はい」
だが横にいる軍曹はあまり浮かない顔をしている。
「やっとだな、本当に」
「そうですね」
嬉しそうな大尉とあくまで対象的であった。大尉もそれに気付いた。
「ん、嬉しくはないのか?問題児共に一番手を焼いていたのは軍曹だろう」
「確かにそうですが」
彼は答えた。
「それでも色々と思うところがありまして」
「?変わった奴だな」
大尉はそれを聞いて首を捻った。
「まあいい。今日という日程嬉しい日はない」
彼はそう言った。
「そうじゃないか、本当に」
「ええ、まあ」
軍曹も仕方ないように頷いた。
「じゃあ行くか。そして新しいパイロットを迎えよう」
そうした話をしながらロンド=ベルは軍の基地に向かった。そこでは既にいかめしい顔の老人がいた。
「よく来てくれたな」
「はい」
ブライトはその老人に敬礼して応えた。
「お久し振りです、プラート博士!?」
「プラート!?」
ケーン達はそれを聞いて驚きの声をあげた。
「まさかプラートって」
「ええ、そうよ」
リンダがそれに応えた。
「私の御父様なの」
「娘が世話になったな」
博士はそう言ってケーン達に顔を向けた。
「何とまあ」
「リンダちゃんって母親似だったんだ」
「ええ」
ルーにそう応える。
「兄さんは御父様似だけれど」
「あれ、お兄さんいたの?」
エルがそれを聞いて驚きの声をあげた。
「え、ええ。まあ」
しかしそれに答えるリンダの声は何処か元気がない。
「ちょっと事情があって今は別々だけれど」
「ふうん、そうなんだ」
「まあそれはいいわ。それより」
「おう」
ビーチャがルーに応えた。
「ケーン達の見送りだよな」
「そうそう」
「何か寂しくなるな。なあイーノ」
モンドはイーノに話を振ってきた。イーノにはそれがわかっていたようである。すぐに応えた。
「まあね」
「何というか名残惜しい気もするけれど」
「お兄ちゃん達と雰囲気似てるしね」
「それはよく言われるな」
「あたしもそう思うよ」
「似た者同士で上手くやっていたしな」
プルとプルツーもそれに同意した。
「何かまあ色々あったけれどな」
「これでお別れか」
「それじゃあな」
「ああ」
ケーン達はロンド=ベルの面々に顔を向ける。その顔はどうも複雑なものであった。
「何だかな」
ケーンは照れ臭そうに笑いながら言った。
「俺達には哀しい場面なんて似合わないけれど」
「というかあんた達にはお笑い以外似合わないわよ」
アスカが斜に構えて突っ込みを入れる。
「この三馬鹿トリオが」
「おい、人をチャンバラトリオみたいに言うな」
「あれは四人じゃなかったっけ」
「シンジ君、五人だったと思うわ。メンバーチェンジしたのよ」
「というかミオのファミリアと似てる気がするけどな」
「・・・・・・なあトウジ」
それを聞いたライトが疲れた声を出した。
「幾ら何でもカモノハシと一緒にしないでくれるか」
「あ、すんまへん」
「いいけどな。何か漫才やりそうで嫌なんだよ」
「というかやってることがそもそも漫才だし」
「アスカも黙っとらんかい」
「あたしは文句言うのが仕事だからいいのよ」
「ホンマに御前は」
「まあ話はそれ位にしてだ」
キリのいいところでアムロとブライトが入って来た。
「三人とはこれでお別れだな」
「ええ、まあ」
「名残惜しいですけれどこれで」
「それじゃまた御会いしましょう」
「うむ。そしてドラグナーともな」
「えっ!?」
三人はそれを聞いて驚きの声をあげた。
「艦長、今何て」
「聞こえなかったのか?ドラグナーともお別れだ」
「何故」
「何故って当然だろう」
アムロが三人に対して言った。
「御前達がいないと他に誰も乗らないからな。それで解体するんだ」
「元々テスト用だったしな。これも当然のことだ」
「そんな・・・・・・」
「解体するなんて」
「もう決まったことなんだよ」
アストナージも出て来た。
「まあ除隊するんだから問題ないよな、御前達にとっちゃ」
「確かにそうですけど」
「それでも」
そう言われてもまだ不満そうであった。
「そんなことされたら」
「おいおい、除隊する人間が言っても何にもならないぞ」
「アムロの言う通りだ」
ブライトは澄ましてはいるがその声は何処か笑みが含まれていた。
「除隊するんだからな。仕方がない」
「ちょっと待って下さいよ」
ケーンがそれにくってかかる。
「ドラグナーを解体するなら」
「どうするつもりだ?」
「それは・・・・・・」
返答に窮した。だがそれは一瞬のことであった。
「じゃあ俺達が残ったらどうなるんですか」
「決まっている。ドラグナーはそのままだ」
「パワーアップされてな」
「そのままですか」
ケーンはその言葉に反応した。
「ああ、そのままだ」
「ううむ」
ケーンはブライトの言葉を受けて考え込んだ。
「おいどうしたんだよケーン」
「心変わりか?」
「そういうわけじゃねえけどよ」
口ではそう言いながらも迷っていた。
「何かな。寂しくならねえか」
「何でだよ」
「清々しねえか」
タップは相変わらずであった。
「御前等はそうかも知れねえけどよ、俺は違うみてえだ」
「今更そんなこと言ってもよお」
「除隊するんだろ」
「最初はそう思っていたけれどな。何かな」
「ちぇっ、じゃあ御前は残るのか?」
「・・・・・・・・・」
「まあいいさ、俺達はこれで除隊だ。じゃあな」
だがケーンはそれに答えなかった。彼にしては珍しいことに沈んだ顔をしていた。これには他の者も驚いていた。いつもの軽いケーンは何処にもいなかったからだ。その時だった。
「むっ」
麗が何かを感じた。
「敵か!?」
「はい」
神宮寺の問いに答えた。
「これは香港の時と同じです。それも五人」
「五人というとあれだな」
「はい。グン=ジェム隊です。すぐそこまで来ています」
「よし、じゃあ行くぞ」
神宮寺がまず動いた。
「猿丸大先生、マリ、いいな」
麗は既に動いていた。彼はそれを受けて他の二人に声をかけたのだ。
「は、はい」
「いいわ、ミスター」
二人はそれに応えた。もう一人も既に動いていた。
「俺もだろ、ミスター」
「ああ」
神宮寺はそのもう一人を見て笑った。洸であるのは言うまでもないことであった。
「ライディーンがいなけりゃ話にならねえからな」
「そういうことだ」
「よし、コープランダー隊出動だ!行くぜ皆!」
洸の声に答え彼等は出た。他の者も次々に出て行く。
「俺達も行くか」
アムロがモビルスーツパイロットの面々に声をかけた。
「よし」
バニングがそれに頷く。そして彼等も出た。
後にはブライトとドラグナーチームだけが残った。だがそのブライトも動いた。
「艦長も行くんですか」
「当然だ」
ブライトは素っ気無くそう答えた。
「私も指揮を執らなくてはならないからな」
「そんな」
「そんなもこんなもない」
やはり素っ気無い声であった。
「それが戦争というものなのだからな」
「待って下さいよ」
「何だ」
だがそれでもケーンの声に応えて足を止める。
「俺も行きます」
「何!?」
それを聞いてブライトも他の二人も声をあげた。
「俺も出ますよ、ドラグナーで」
「おい、本気か!?」
タップが問う。
「ああ、本気だ。もう決めた」
ケーンは答えた。
「やっぱり俺は残るよ。それで戦う」
「おいケーン」
「これだからお坊ちゃんってのは」
「ライトは人のこと言えねえだろうが」
「親父は関係ねえぜ」
ライトは軽くそう返した。彼の父は欧州ではかなりの高い地位にあるのである。彼は名門の生まれなのだ。
「けれど御前だったそうだろ」
「まあな」
彼はそれを認めた。
「とにかく俺は行くぜ」
「仕方ないな」
ライトはうっすらと笑った。
「じゃあ俺も行くか」
「よし」
「あ、おい」
結果としてタップは一人残された形となった。こうなっては致し方なかった。
「しようがねえな、もうこうなったらヤケだ」
彼も覚悟を決めた。
「俺も行くぜ、いいだろ」
「おう」
「これでドラグナーチーム目出度く復活だな」
「よし」
こうして彼等も出撃に向かった。ブライトは走っていく彼等の後ろ姿を見て涼しげな笑みを浮かべた。
「これでいいのですね」
「うむ」
プラート博士はそれに頷いた。
「まさかこんな簡単にいくとはな」
「根は単純な連中ですからね」
「根ではなくそのままだと思うが」
「まあ確かに」
「しかしこれで話が進んだな。これでいい」
「ですね」
「しかし大佐」
「何でしょうか」
ブライトは博士に顔を向けた。
「君も人が悪い。いや、人の扱いに慣れていると言うできかな」
「伊達に老けてはいませんので」
「ははは」
そんなやりとりをしながら彼等も進んだ。そしてブライトはラー=カイラムに乗り込むのであった。こうして戦いがはじまった。
「フフフ、予想通りだな。ここに来るのは」
グン=ジェムは彼等を見据えてそう呟いた。
「ロンド=ベルめ、今度は逃がさんぞ」
「そ、それでどうする」
ゴルが尋ねた。
「決まってるだろ。バラしちまうのさ」
ガナンが相変わらず釘を舐めながら言う。
「スパッとね」
「ミンのはざっくりだけれどな」
ジンが突っ込みを入れる。四天王も全員揃っていた。
「よし、いつも通りいくぞ」
「了解」
四人はそれに頷いた。
「目標はロンド=ベル、一気に潰す。それから重慶を占領だ」
「ロンド=ベルさえやっちまえば後は楽だな」
「赤子の手を捻るようなもんだね」
「そ、その通り」
「丁度奴等の他に敵はいねえし」
「やるぞ皆の衆!」
「おう!」
グン=ジェム隊が動いた。そしてロンド=ベルに襲い掛かる。彼等はロンド=ベルを取り囲んできた。
「来たな」
ブライトがその動きを見ながら呟く。
「どうやらまた攻撃を仕掛けてくるようだな」
「そうみたいですね」
トーレスがレーダーを見ながら言う。
「ただミノフスキークラフトは撒いていません」
「それも必要ないだろう」
ブライトは艦橋から外を見ながらそれに応えた。
「これだけ曇っていればな」
見れば外はどんよりと曇っていた。重慶は晴れることが少ない。従って今も曇り空であるのだ。
「ロボット部隊にも注意するように言え。視界に注意しろとな」
「はい」
「そして我々もだな。これは用心が必要だ」
「ですね」
「そしてドラグナーチームはいるか」
「はい」
三人が一斉にモニターに姿を現わしてきた。
「ここにちゃんといますよ」
「パワーアップされたやつでね」
「よし」
ブライトはそれを見て頷いた。
「では頼むぞ。いつも通りな」
「任せて下さいよ」
「こうなったら乗り掛かった船」
「そうそう」
タップもいつもの彼に戻っていた。どうやら吹っ切れたようである。
「そういうわけで艦長、やらせてもらうぜ」
「期待していてくれていいから」
「それではそうさせてもらうか」
ブライトはここは彼等を乗せることにした。
「どうだ、パワーアップされたドラグナーは」
「いいですね、最高」
「何っていうか乗り心地から違う感じですよ」
「そうか、それは何よりだ」
「けれど変ななんだろなあ」
「どうした」
「これって解体されるんでしたよね」
「ああ」
「それで何でパワーアップされてるんですか?変じゃないですか」
「それはだな」
誤魔化そうとした。その時トーレスが言った。
「艦長」
「どうした」
「敵が接近してきます。指示をお願いします」
「おっと」
ブライトはそれを受けて指揮官の顔に戻った。そしてすぐに指示を下す。
「砲門開け!」
「了解!」
それを受けて動く。そして砲撃をはじめた。すぐにそれでメタルアーマーが数機撃墜される。
「弾幕も忘れるな!左舷いつもみたいにはなるなよ!」
「わかってますって!」
「ありゃりゃ」
ケーン達はそれを見てとぼけた声を漏らした。
「絶妙のところで誤魔化されたな」
「まあいいんじゃないの。パワーアップしてくれてることはいいんだし」
「ご都合主義っていえばそうだけどな」
「そうだな。まあ今は深く考えないでおこうか」
「そうだな。じゃあ今回も暴れますか」
「よし」
彼等も戦いに入った。すぐにバズーカを放つ。
「これでどうだああっ!」
「ほう、小童共もいたか」
グン=ジェムが彼等の前に出て来た。
「げ、おっさん」
「やっぱり出て来たか」
「フフフ、ヒーローは呼ばれた時に出てくるものよ」
「おっさんの何処がヒーローなんだよ」
「どっからどう見ても悪役じゃねえか」
「その減らず口、これで黙らせてやろう」
グン=ジェムはそう言いながら巨大な青龍刀を取り出してきた。
「行くぞ!」
「うわっ!」
それはケーンを狙っていた。危うくそれをかわす。
「危ねえじゃねえか!」
「死んだらどうするつもりなんだよ!」
「念仏位は唱えてやる」
彼の返事はそれであった。
「だから大人しくしておれ!」
「そう言われて大人しくする馬鹿が何処にいるんだよ!」
「ケーン、いいからここは避けろ!」
「あんなのまともに受けたら只じゃ済まねえぞ!」
「わかってるって!」
三人はそれぞれコンビネーションをとりながらグン=ジェムと対峙する。だがそれでは何とか互角といったところであった。彼等ではまだグン=ジェムの相手は荷が重いようであった。
「これはまずいな」
ブライトはそれを見て言った。
「あの三人ではまだ無理か」
「どうしますか?」
「ゼンガーはどうしている」
「ゼンガーは」
トーレスはそれを受けて戦局を見た。するとゼンガーは今丁度クスハやブリットと共に敵の小隊を一つ全滅させたところであった。
「丁度手が空いておりますが」
「そうか、ならいいな」
ブライトはそれを受けて頷いた。そして指示を下した。
「それではゼンガーを向かわせろ。いいな」
「わかりました」
ゼンガーがグン=ジェムのところへ向かう。ケーン達はグン=ジェムの前に中々手を打てないでいた。
「クッ、何て腕だ」
「フフフ、この前のようにはいかんぞ」
グン=ジェムは高らかに笑ってそう言った。
「さて、観念したか」
「生憎俺は諦めが悪いんでね」
ケーンはそう言葉を返した。
「観念なんて言葉は知らねえんだよ」
「その心意気気に入ったぞ、若僧」
グン=ジェムはそう言うと刀を大きく振り被った。
「では武士の情だ。一思いにやってやろう」
「チッ、よけるしなねえな、こりゃ」
「待て!」
だがそこに一陣の風が吹いた。
「風!?」
違った。それは声であった。
「ケーン=ワカバよ」
そこにいたのはゼンガーであった。彼のグルンガストが前に出て来たのだ。
「ここは俺に任せるのだ」
「ゼンガーさん」
ゼンガーはケーンのドラグナーの前に立ってそう言った。
「よいな」
「けれどよ」
「今の御前ではこの男の相手をするのは困難だ」
だがゼンガーはケーンの言葉を遮りそう述べた。
「他に相手をすべき敵がいる。今はこの男の相手をすべき時ではない」
「時じゃないってのか」
「そうだ」
ゼンガーは答えた。
「今は俺に任せるのだ。いいな」
「ケーン」
ライトがそれを受けてケーンに声をかけてきた。
「ここはゼンガーさんの言葉を受けようぜ。今の俺達じゃこのおっさんの相手は荷が重い」
「けれどよ」
「タイミングってやつだよ」
タップも言った。
「今はそのタイミングじゃないんだ。だからここは大人しく引き下がろうぜ」
「それがわからない御前じゃないだろう」
「・・・・・・わかったよ」
ケーンは渋々ながらそれを受け入れることにした。頷く。
「じゃあゼンガーさん、お願いします」
「うむ」
ゼンガーもそれを受け入れた。
「それではここは俺に任せるのだ。いいな」
「はい」
「じゃあ俺達はこれで」
こうしてドラグナーチームの三人は別の戦場に向かった。ゼンガーは彼等を背にグン=ジェムと対峙していた。
「ギガノスきっての剣豪グン=ジェムか。話には聞いている」
まずはゼンガーが口を開いた。
「あの三人を相手にしても一歩も引かぬとはな。噂通りの腕のようだ」
「お世辞はわしには通じぬぞ」
だがグン=ジェムはそれを笑って受け流した。
「金か食いものならともかくな」
「世辞ではない」
ゼンガーはそう言い返した。
「本当のことだ。俺は嘘は言わぬ」
「そうか。では御前は一つ間違えておるから言っておこう」
「何だ」
「わしがギガノスきっての剣豪ではない」
そしてこう言った。
「ギガノスの汚物よ。汚物は剣豪ではないな」
「・・・・・・汚物だからといってその中にる剣は隠せはしない」
ゼンガーの返答はそれであった。
「ゼンガー=ゾンバルト、今ここに言おう」
そう言いながら剣をゆっくりと引き抜く。
「死合う!」
「面白い」
構えをとったゼンガーを見てグン=ジェムも笑みを浮かべた。
「ならばわしも貴様と剣を交えよう。覚悟はいいな」
「覚悟ならば常にできている」
ゼンガーは言った。
「男として、剣を手にする者としてな」
「気に逝ったぞ、その言葉」
グン=ジェムも構えた。
「では思い切り死合うとしようぞ」
「参る!」
両者は互いに剣を振りかざした。そして同時に前に出た。
「グオオオオッ!」
「ムンッ!」
グン=ジェムの咆哮とゼンガーの気合が交差する。そしてぶつかり合う。両者の一騎打ちが幕を開けたのであった。
剣撃が乱れ飛び銀の火花が辺りを彩る。激しい動きは何時しか舞の様になっていた。
激しい戦いと時として舞の様に美しくなるという。二人の戦いがまさにそれであった。
「すげえ」
その戦いに何時しか両軍は魅入られていた。戦いを止めそれを見守っていた。戦いは一時中断する形となっていた。
ロンド=ベルもグン=ジェム隊の者達もそれを見守る。双方固唾を飲んで見ていた。
「よく見ときなよ」
ミンは周りの者に対してそう言った。
「あれが大佐の本当の力だよ」
「あれが」
「ああ」
ミンは笑った。
「ちょっと本気を出せばね。あれだけの剣の腕があるんだよ」
「久し振りに見たよな」
ガナンもそれに応えた。
「何か最近は俺達が前に出ていたからな」
「けれどそれがいいからな」
ジンもいた。
「まあな。特に御前さんはそうだろ」
「あ、ああ」
ゴルは頷いた。
「けれどこうやって大佐の戦いぶりを見るのもいい」
「ああ」
「思う存分見せてもらおうぜ」
彼等は動こうとはしなかった。無粋な真似はせずグン=ジェムの戦いを見守っていた。それはロンド=ベルも同じであった。
「凄いな」
アムロがそれを見て呟いた。
「ゼンガーの剣捌き、尋常なものじゃない」
「そうだな」
京四郎がそれに頷く。
「俺よりも上かも知れないな」
「京四郎さんよりも!?」
「ああ」
ヒメに対して頷く。
「俺だからわかるのかも知れんが。グン=ジェムの腕は俺なんか足下にも及ばん」
「京四郎さんがそう言うのなら本当なのね」
カナンが納得する。
「信じられないけれど」
「そういうことだ。あとわかってるな」
「ええ」
皆京四郎の言葉に応える。
「下手な手出しは無用だ。いいな」
「了解」
彼等もまた戦いを見守っていた。そしてその中に一騎打ちは続いていた。
斬り合いは既に数百合に達していた。だが何時終わることかわからないまでに続いていた。戦いは収まるどころかさらに激しくなるようであった。
「やるな」
「貴様こそな」
両者は互いにニヤリと笑ってそう言葉を掛け合った。
「ここまでの奴に会ったのは久し振りだ」
「その言葉、痛みいる」
ゼンガーはグン=ジェムの言葉に応えた。
「だがそれも終わりにさせてもらおう。行くぞ!」
「ムッ!」
グン=ジェムは振り被った。そして思い切り刀を振り下ろす。
「成仏するがいい!」
「何のっ!」
ゼンガーはそれをかわした。後ろにも横にも跳んだのではなかった。
前に出たのだ。そしてそれでかわした。これには一同目を瞠った。
「何っ!」
「示現流に下がるという技はない!」
ゼンガーは叫んだ。
「只前に出るのみ。そして」
言葉を続けながら剣を繰り出す。
「前にいる敵を倒すのみ!」
一撃を繰り出した。それはゲイザムの左腕を切り落とした。刀を持つ腕であった。
「グウウ・・・・・・」
「勝負あったな」
ゼンガーはグン=ジェムの背中に出ていた。そして振り返りそう言った。
「おのれ・・・・・・」
「では覚悟はいいな」
「フン」
グン=ジェムはそれに対して不敵に笑った。
「生憎わしは降伏することも死ぬことも嫌いでな」
「ではどうするつもりだ」
「逃がさせてもらう。わしは逃げるのも得意でな」
そう言いながら間合いを離した。そして自軍の中に入った。
「また来る。その時こそ決着をつけてやろうぞ」
グン=ジェムは去った。彼の部下達も彼と共に姿を消した。こうして戦いは終わった。
「終わったな」
「追わなくていいのかい?」
甲児がゼンガーにそう声をかけてきた。
「折角勝ったってのによ」
「いい」
ゼンガーは一言そう述べた。
「今はな。逃がしてもよい」
「何でだよ」
「二度の敗北でグン=ジェム隊はその力を大きく削がれた。これで暫くの間は奴等も大きな作戦行動を起こせないからだ」
「そうだな」
フォッカーがそれに頷く。
「今の戦いでも連中は派手にやられた。流石に今は戦力の回復に務めるだろう」
「うむ、あのグン=ジェムという男指揮官としても有能なようだからな」
「そうなのか」
甲児はそれを聞いて半分わかったようなわからないような声を出した。
「外見からは想像もつかねえけれどね」
「兜、人を外見で判断するのはよくないぜ」
ボスが忠告した。
「おいらいたいにハンサムならともかくな」
「おいおい、ボスがハンサムかよ」
「何ィ、文句あるのかよ」
「その前に本名はいい加減わかったのかよ」
「男がそんな小さいこと気にするなだわさ」
「・・・・・・それって小さいことかなあ」
シンジが呟く。
「思いきり大きなことですよね」
デメクサの言葉が最後となった。何はともあれ重慶の戦いは幕を降ろした。
「こうして晴れてロンド=ベルに正式に入隊」
ケーンがブリーフィングルームではしゃいでいた。
「皆、宜しくな」
「何か予想通りだけれどね」
リューネが言う。
「それでも歓迎するよ。大勢いた方が楽しいしね」
「そうそう」
セニアがそれに同意する。
「ロボットって一杯あった方がいいじゃない。色々と研究できて」
「セニアって結局それなのね」
「悪い?」
「悪くはないけどモニカと全然違うからね」
「モニカはモニカ、あたしはあたし」
リューネに対してそう反論する。
「だからいいじゃない」
「まあそうだけれどね」
「何というかお姫様らしくないんだよなあ」
マサキの言葉も意に介していないようであった。
「別にいいわよ。王位継承権ないんだし」
「だからといって気ままに振舞っていいというわけじゃないし」
「そうそう」
オザワの言葉にベッキーも頷く。
「まあそれが役に立っているからいいけれど」
「ケースバイケースてやつだね」
シモーヌがここでこう言った。
「だからセニア姫にはあたしはとやかく言うつもりはないよ。魔装機の整備もしてくれるしね」
「さっすがシモーヌ。話がわかるわね」
「確かに」
タダナオもそれに同意した。
「姫には我々もお世話になっていますし」
「タダナオもそう思う?」
「は、はい」
赤い顔でそれに頷く。
「少なくとも私はそう思いますが」
「やっぱりわかってくれる人はわかるのね。嬉しいわ」
「まあそうなんだけれどな」
「魔装機が地上でも満足に戦うことができているのはセニアとウェンディさんのおかげだし」
「二人がいないとどうしようもないわよ」
「縁の下の力持ちってわけだな」
「そうなるな」
「俺のところでいうとミッチーみたいなものか」
「宙さん」
「ミッチーがいなかったら俺は只のサイボーグだからな」
「そういえば宙って邪魔大王国はもう滅ぼしているのよね」
「ああ」
宙はセニアの問いに答えた。
「この手でな。色々とあったが」
「そうだったの。けれどあのククルってのが復活させたのよね」
「あいつが何者か知ってる?」
「いや」
だが彼はそれには首を横に振った。
「残念だが。よくは知らない」
「そう」
「だったら仕方ないわね」
「あの女は俺が戦ってきた連中とは違う」
宙は言った。
「能力も外見も。他の連中とは全然違う」
「そうね」
美和がそれに頷く。
「彼女は何か私達に近いものを感じるわ」
「俺達に」
「ええ。何処かね」
「確かにな」
ゼンガーがそれに同意した。
「俺はあの女と何度か刃を交えた」
自らの経験からそう言う。
「あの動き、邪魔大王国のそれではない」
「やはりな」
宙はそれを聞いて頷いた。
「では一体」
「そこまではわからないがな」
「けれどそうだとすればそれで謎よね」
クスハが言う。
「一体あの人は何なんだろう」
「それもおいおいわかるんじゃないかな」
「アラド」
「それに今のところ邪魔大王国とは戦っていないんだし。置いておいていいと思うよ」
「そういうわけにはいかないわよ」
ゼオラが口を挟んだ。
「だからあんたはいつも能天気って言われるのよ」
「いや、アラドが正しい」
ゼンガーはここはアラドの肩を持った。
「ゼンガーさん」
「今我々は邪魔大王国とは戦闘をしていない。奴等は今日本にいる筈だ」
「そのようですね」
ツグミが言った。
「今のところ話は聞きませんし。先の戦いでの傷を癒しているのではないでしょうか」
「だろうな」
竜馬が頷いた。
「だとすれば今奴等のことは考えなくていいな。それよりも目の前のことを考えよう」
「グン=ジェム隊、そしてティターンズのことですね」
「そうだ」
「連中は今目の前にいるからな。対策を練っておかなきゃな」
隼人も言った。
「特にティターンズはな」
「ああ」
弁慶の言葉に頷く。
「連中だけじゃないからな」
「ドレイクか」
「そうだ」
ショウの言葉を指摘した。
「連中をどうかするか、だな。問題はそこもだ」
「ドレイク。まさかまた地上に出て来るなんて」
「しかもティターンズと組むなんてな。俺も信じられないさ」
「そんなものだ」
隼人に対してサコンがそう答えた。
「人間ってのは利害で結びつくものさ。特にああした人種はな」
「サコン」
「それは覚えておいて損はない。そして利害がなくなったならば」
「結びつきが切れる」
「そういうことだ」
サコンは言った。それは確かに真実であった。
「そこも考えていくべきだな、連中には」
「ああ」
彼等の話は入り組んだものになった。そしてそれは長い間続いた。
ロンド=ベルもまた戦いへの備えを進めていた。そしてそれは勝利を目指すものであった。
戦いを終えたグン=ジェム隊は予想通り戦力の回復に務めていた。破壊されたメタルアーマーの補充及び修理に専念すると共に兵員や物資の補充も受けていた。そして次の機会を待つのであった。
「大事なのはこれからどうするかだ」
グン=ジェムは部下達に対してそう語った。
「まずは力を回復させなきゃならん」
「賛成」
四天王もそれに同意した。
「それまではたっぷり力をつけておけ。いいな」
「言われなくても」
彼等はテーブルを囲んでいた。そして多量の肉を口にしていた。
「た、大佐」
まずはゴルが口を開いた。
「この肉美味いな」
「おう」
彼は骨付き肉にかぶりついていた。グン=ジェムも同じである。
「いい豚肉だな。やはり豚はいい」
「そうだな」
ガナンも食べていた。
「何か砂漠の方じゃこれは食えねえからな」
「あっちはムスリムが多いからね」
ミンがそれに応える。
「連中は豚食わないからね」
「確か戒律がどうとか言ってたな」
「ああ」
グン=ジェムに答える。
「戒律のせいでこんな美味いもんが食えないなんて悲しいことだよ」
「だがその分俺達が食える」
ジンが突っ込みを入れる。
「まあそういうことだな」
ガナンは骨を皿に放り出してまた新しい肉にかぶりついた。そこに別のメニューがやって来た。
「おう、来たな」
グン=ジェムはそれを見て嬉しそうに笑った。見ればそれは大蛇を丸ごと料理したものだ。香辛料をふんだんに使ったソースをかけている。そしてグラスも人数分運ばれてきた。赤いものがその中にある。
「これよ、これ」
グン=ジェムはそれを見てまた笑った。
「やっぱり蛇の生き血は食前酒にもってこいだな」
「おう」
ガナンがそれに頷く。ゴルとジンもそれを飲んだ。だがミンはそれを口にしなかった。
「やらねえのかい」
「あたしは蛇が嫌いでね」
それが答えだった。
「悪いけどあたしはいいよ」
「そうかい」
「じゃああの伊達男にでもやるか」
「そういやプラート大尉がいないな」
ジンがそれに気付いた。
「奴なら別行動だぞ」
それにグン=ジェムが答えた。
「別行動」
「うむ、奴もここには今一つ会っていないようだったのでな。あの三人組と合わせて別行動をとらせることにした」
「そうだったんだ」
「さ、寂しいのかミン」
「馬鹿言っちゃいけないよ」
ゴルにそう言葉を返す。
「あんなキザ野郎。あたしには合わないよ」
「そうだろうな」
「ミ、ミンにはもっといかつい男が似合う」
「あたしの男の趣味は五月蝿くってねえ」
彼女は得意気に語りはじめた。
「男気のあるのがいいんだよ。それもあたしに釣り合うね」
「じゃあいねえな」
ガナンはばっさりと切り捨てた。
「そんなの地球にはいねえ」
「宇宙にもな」
「ガナン、ジン」
ミンは二人を睨み据えた。
「じゃあ何かい!?あたしに魅力ないって言うのかい」
「わしはそうは思わんぞ」
「大佐」
「だがミンの相手をしたら身体がもたんだろうな」
「普通の男ならな」
「み、三日でお釈迦」
「チッ」
ミンはそれを聞いて舌打ちした。
「やわな男は嫌いなんだよ。あたしみたいな荒れ馬を乗りこなせるようないい男じゃないとね」
そう吐き捨てた。彼等がそんな話をしているその時マイヨは一人砂漠にいた。プラクティーズや正規軍の面々と行動を共にしている。グン=ジェムの言葉通りであった。
彼は手に一通の手紙を持っていた。それを読み険しい顔をしていた。
「何ということだ」
そして嘆息した。そこには月のことが書かれていた。
ギガノスは今紛糾していた。地球をそのままの形にしようというギルトールに反発する者達がいるというのだ。
「ギルトール閣下の崇高な理念を理会できない者が我がギガノスにいるとは」
それが彼には信じられなかった。彼にとってギルトールの理念は無謬のものであるからだ。
だがそれに意を唱える者達がいた。ドルチェノフ中佐等急進派の将校達だという。
「閣下の理念に従えば我がギガノスの理想は達成されるというのに」
全てを否定されたような気になった。それ程までに彼はギルトールを崇拝していたのだ。
だからこそ悩む。しかし地球にいる彼は今それに対して何もできはしない。それは嫌な程よくわかった。
「どうすればいいのだ」
しかし答えは出なかった。出る筈もなかった。だからこそ悩むのであった。
「・・・・・・・・・」
マイヨは一人悩んだ。悩まずにはいられなかった。そして時間だけが過ぎる。彼はその中で一つの考えを持つのであった。
第二十四話 完
2005・5・29
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