スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第二十三話 ギガノスの汚物
第二十三話 ギガノスの汚物
その宮殿は地球では誰も知らない遥か遠くにあった。白亜の豪奢な宮殿であり、それは様々な宝玉や金、銀等によって飾られていた。その奥に彼はいた。
「ラオデキアのことだが」
宝玉で作られた玉座に座る者が言った。その下に何人かいた。
「はっ」
その中の一人がそれに応えた。
「まさか敗れるとは思わなかったな」
「あれは誤算でした」
彼はそう答えた。
「ラオデキアの能力を以ってすれば簡単に掌握できる筈でしたが」
「ユーゼスの裏切りもあったそうだな」
「それはオリジナルのラオデキアが排除しましたが」
彼は玉座の男にそう答えた。
「ですがそれでも敗れてしまいました。残念なことに」
「うむ。だが過ぎてしまったことを今ここで言っても何にもならない」
「はい」
「これからどうするか、だ」
玉座の男はそう言った。
「朕に考えがあるのだが」
「何でしょうか」
「マーグだ」
一言そう言った。
「マーグですか」
「あの男を使おうと思う。どうだ」
「それは」
下にいる男達はそれを聞いて皆難しい顔をした。
「問題があるのではないでしょうか」
「それはわかっている」
玉座の男はそれに答えた。
「マーズとのこともあるしな」
「それです」
下にいる男の一人がそれに反応した。
「ガイアーに埋め込まれた爆弾はマーズが死ねばすぐにでも爆発するようにはしております」
「あれはいざという時の為だったな」
「はい」
男達が答えた。
「その時が来る可能性は否定できない。特に今のままではな」
「それはわかっております」
「だからこそだ」
玉座の男はあらためて言った。
「マーグを出したいと思っているのだ」
「しかしマーグは」
「それもわかっている」
玉座の男は続けた。
「目付け役を置けばよい。洗脳したうえでな」
「目付け、ですか」
「そうだ。かってユーゼスの時には失敗したがな。あれはあの男の野心を見抜けなかった朕の責任だ」
彼は言った。
「失敗は繰り返してはならぬ。よって今回はマーグを洗脳するのだ」
「そしてその目付けは」
「それはもう決めてある」
玉座からそう答えた。
「いるか」
「・・・・・・はい」
闇の中から誰かが姿を現わした。
「そなたにマーグを、そして地球攻略を任せたいのだが。よいか」
「謹んでお受け致します」
それは女の声であった。答えた後で片膝をつく。
「是非共お任せ下さい」
「頼むぞ」
こうして話は終わった。彼等は闇の中に消えた。こうしてまた銀河が動くのであった。
中国香港。この街の歴史はアヘン戦争により清がイギリスに対して開港したことからはじまる。それ以来この街は独自の発展を遂げていた。今はネオ=ホンコンという一つの行政区域となっている。元首はウォン=ユンファ。若き実業家としても知られその政治手腕は卓越したものとして知られている。だがその評判は今一つよくはなかった。
「大尉殿」
香港から帰って来た、マイヨに対してプラクティーズの面々声をかける。
「ウォン主席との会談はどうでしたか」
「何とも言えないな」
マイヨは一言そう答えた。
「と言いますと」
「食えない男だ」
マイヨはまた言った。
「表面上は穏やかだが腹の底は知れたものではない。ああした男は信用できない」
「信用できませんか」
「私はそう見る」
彼は三人にそう答えた。
「巧言令色少なしかな仁、というな」
「はい」
「その言葉を思い出した。一体何を企んでいるかわかったものではない。少なくともギルトール閣下の理想とは相容れない男だ」
「そうなのですか」
「そうだ。あまり好きにはなれない」
「それで会談自体はどうだったんだい?」
ここで女の声がした。
「上手くいったんだろうねえ、大尉殿」
浅黒い大女が出て来た。
「ミン大尉か」
マイヨは彼女に顔を向けた。
「それは安心してくれ。会談は成功した」
「じゃあ香港で暴れてもいいんだね」
ミンはそれを聞いてニヤリと笑った。
「嬉しいねえ。それでこそ戦争ってやつだよ」
「戦争というものを履き違えているようだな」
マイヨはそれを聞いて一言そう言った。
「ギルトール閣下の御考えは頭に入っていないようだが」
「フン、理想で飯が食えるかよ」
ミンの横にいた釘を咥えた男がそれを聞いて嘲笑った。
「戦いってのは勝ちゃいいんだからな」
「そ、その通りだ」
異様に大きな身体を持つ男もそれに同意した。
「おでは暴れられればいい」
「おいおい、ゴルよ。それはちと違うぜ」
釘の男がそれを聞いて言った。
「まあそうかも知れねえがな」
「カナンもわかってるじゃないか」
ミンがそれを聞いて笑った。
「それでこそグン=ジェム隊だね」
「確かにな」
それを横で聞いていた男が呟いた。水色の長い髪をしている。
「俺達ははっきり言って暴れるのが仕事だからな」
「ジンの言う通りだね。そういうこと」
「だから俺はここにいるんだ」
「お、おでも」
「四人共それでいいのか」
マイヨはいささか呆れた様子で四人に対して言った。
「誇り高きギガノス軍としての節度を保とうとは思わないのか」
「節度!?それって食えるのかい!?」
それを聞いてまずミンがそう嘯いた。
「食えるのならいいぜ。美味けりゃな」
カナンも言った。
「もっとも俺はグルメだからな。まずけりゃいらねえぜ」
「ウホホホホホ」
ジンもであった。ゴルは獣のような声で笑っていた。
「くっ」
「何という連中だ」
プラクティーズの面々はそれを聞いて呆れた声を出した。
「貴様等の様な連中がいるから我がギガノスは・・・・・・」
「待て」
しかしそれをマイヨが制した。
「大尉殿、しかし」
「仲間内で争ってはならない。今はそんな時ではない」
「へえ、流石だねえ」
「ギガノスの蒼き鷹の面目躍如ってやつだな」
「お世辞はいい。それよりグン=ジェム大佐はどちらだ」
「大佐かい?」
「そうだ。ここにおられる筈だが」
「わしならここにいるぞ」
マイヨの後ろから声がした。
「若僧、わしに何か用か」
見ればそこに禿頭の大男が立っていた。濃い顎鬚を生やしている。異様な外見の男であった。
「グン=ジェム大佐」
マイヨはその風貌にも怖気づくことなく言った。
「今回の会談のことですが」
「うむ」
その男グン=ジェムはマイヨを見下ろして答えた。
「ウォン主席は香港に入られることを了承して下さいました」
「ほう」
「勿論それには色々と見返りも要求されましたが」
「ギガノスが地球を掌握した時のことだな」
「はい」
マイヨは答えた。
「ネオ=ホンコンとしての位置をそのまま保障してもらえるならそれでよいとのことです」
「ふふふ、やはりな」
彼はそれを聞いて顎に手を当てて笑った。
「あの男、色々と考えとるわ。大人しそうな顔とは裏腹にな」
「はい」
マイヨはそれを聞いて少し憮然とした。
「それがギガノスにとってよいかどうかはわかりませんが」
「若僧」
グン=ジェムはマイヨに対して言った。
「私はマイヨ=プラートです。大佐」
「そうか。それではマイヨ=プラート大佐」
「はい」
「世の中というのは奇麗事だけでは成り立ってはおらんのだ」
「・・・・・・・・・」
マイヨはそれには答えなかった。ただ沈黙した。
「汚いものも山程あるということを覚えておけ。それがわからぬうちは駄目だ」
「私はそうは思いませんが」
そしてこう反論した。
「理想こそが全てを動かすのです」
「なっ」
ミン達はそれを聞いて声をあげた。
「あいつ、大佐に何てことを」
「ぶっ殺されるぞ」
「やれやれ、また棺桶が必要だよ」
「アーメン」
彼等はマイヨの運命を悟った。プラクティーズの面々も青い顔をしている。しかしグン=ジェムはそうはしなかった。
「ほう、わしに意見をするか」
「はい」
マイヨは臆することなくそう返した。
「正しいと思うからこそです。違うでしょうか」
その目と声には迷いはなかった。それを見たグン=ジェムはニヤリ、と笑った。
「若僧・・・・・・いやプラート大尉よ」
「はい」
「面白いことを言うじゃねえか。気に入ったぞ」
「えっ!?」
四人もプラクティーズもそれを聞いて思わず驚いた。
「その一本気さが気に入った。どうやらわしが思っていた以上の男のようだな」
「有り難うございます」
マイヨはそれを聞き真摯な顔で頷いた。
「だがもう少し世の中を知る必要があるな。今度の戦いだが」
「はい」
「御前は後方でわし等のフォローに回れ。御前の考えるのとは違った戦争を見せてやる」
「違った戦争ですか」
「そうだ」
グン=ジェムは答えた。
「楽しみにしていな。わし等の戦争は荒っぽいからな」
「はい」
話が終わるとグン=ジェムは四人に顔を向けた。
「おう御前等」
「はい」
「四天王全員出撃だ。いいな」
「了解」
「派手に暴れてやりますぜ」
「おでもやるぞお」
彼等はそれに応えて嬉しそうな声をあげる。
「ふふふ」
グン=ジェムはそれを見て満足そうに笑った。
「では行くか」
こうして彼等は出撃準備に向かった。マイヨ達はその後ろ姿を見送っていた。
「大尉殿」
ダンがマイヨに語り掛けてきた。
「何だ」
「あのような者達を誇り高きギガノスに入れてよいのでしょうか」
「それも全てギルトール閣下の御考えだ」
マイヨはそう述べた。
「それ故気にするな。いいな」
「はい」
他の二人もそれに頷いた。
「それよりも今は次の戦いのことに備えよ」
「次の」
「相手はロンド=ベルだ。ドラグナーもいるのだぞ」
「はい」
三人はそれに頷いた。
「油断するな。そして決して侮るな。よいな」
「ハッ!」
三人は敬礼してマイヨに応えた。そしてその場を離れた。マイヨも自身の機に向かった。そして戦場に赴くのであった。
ロンド=ベルは香港に到着した。接舷したラー=カイラムからカミーユ達が降りる。
「ここに来るのも久し振りだな」
「そうね」
フォウがそれに応える。
「ねえカミーユ、あの時のこと覚えているかしら」
「忘れるわけないだろ」
カミーユはそう答えた。
「僕達がはじめて会った場所なんだから、ここは」
「嬉しい。覚えてくれていたのね」
フォウはそれを聞いて笑顔になった。
「あの時は私と貴方は敵同士だったわね」
「ああ」
「けれど今はこうして一緒にいる。不思議なものね」
「人生なんてそんなものかも知れないわよ」
エマが二人に対してそう言った。
「エマさん」
「私も最初はティターンズにいたんだから。覚えているかしら」
「そういえばそうらしいわね」
ミリアがそれに応えた。
「私だってゼントラーディにいたのだし」
「そういえばそうだったな」
イサムがそれに応える。
「あんたには随分苦戦させられたぜ」
「俺なんか一度撃墜されてるしな」
「柿崎のあれは油断し過ぎだ」
「おい、それはないだろ」
イサムと柿崎が言い合いをはじめる。そこに金龍もやって来た。
「それよりも折角香港に来たんだし食いにでも行かないか」
「それいいわね」
エマがそれに同意した。
「香港といえば広東料理よね。私あれ好きなのよ」
「そうなんですか」
「あら、意外?」
カミーユの顔を覗き込んでそう問う。
「意外といえば意外ですけれど」
「そうかしら」
「ほら、エマさんってあっさりした感じのする人じゃないですか」
「よくそう言われるわね」
「リィナちゃんやハルカさんに声は似てるのにね」
「そこ、声の話はしない」
マックスが笑いながらファに対して言う。
「そんなこと言ったら僕なんかあのラオデキアや黒騎士に似てるって言われてるんですよ」
「そういえば」
「それがどれだけ落ち込むか。特に黒騎士は」
「あの人疲れるからなあ」
「ショウ、ショウって。他にいねえのかよ」
「いないのだろうな」
ガルドが一言そう言う。
「彼にとってはショウ=ザマこそが全てだ」
「成程な」
イサムはそれを聞いて納得した。
「だからか。あれだけ怨念めいた執念を燃やすのも」
「そうだろうな」
ガルドはまた言った。
「彼にとってはな。ショウ=ザマを倒すことが全てなのだ。それが彼の信念だ」
「それでも疲れる人には変わらねえな」
柿崎が呆れた声でそう言った。
「一条隊長みたいに何処かほのぼのしてりゃいいのに」
「俺はほのぼのしてるのか」
「あ、いや」
苦笑する輝の声を聞いて慌てて否定した。
「決して悪口じゃないですよ」
「わかってるよ」
輝はそう答えて笑みを変えた。今度は邪気のない笑みであった。
「だからいいさ。それよりも行くか」
「食べにだな」
「ええ。美味しい店を知ってますので」
金龍にそう答える。
「皆で行きましょう。大勢の方が楽しめますよ」
「よし」
「じゃあフォウも行くか」
「ええ、カミーユ」
こうしてゼータの面々とマクロスチームが街に繰り出すことにした。そこへダバ達も通り掛かった。
「あれ、何処へ行くんですか?」
ダバが彼等に尋ねる。
「あ、ダバ」
カミーユがまずそれに気付いた。
「ちょっと皆で食べに行くんだけれど」
「食べにですか」
「何、何食うんだよ」
食べ物と聞いてキャオがはしゃぎだした。
「地球の食い物って美味えからな。何食わしてくれるんだよ」
「中華料理よ」
エマがそれに答えた。
「ああ、サイシーの作る料理だな。俺あれ大好きなんだよな」
舌なめずりしながらそう言う。
「ギョーザだろ、ラーメンにチャーハンに」
「それだけじゃないわよ」
エマは笑いながらキャオに言う。
「他にも一杯あるのだから。どう、君達も」
「それでは御言葉に甘えまして」
「御馳走食えるんだったら何でも」
「まあたキャオはそういってはしゃいで」
「まあ気持ちはわかるがな。まあ私達も行くか」
「賛成」
アムもレッシィも呆れながらもそれに賛成していた。こうして彼等も合流し広東料理を食べに行くのであった。
こうして多くの者が香港の街で楽しんでいる時アムロはラー=カイラムに残っていた。
「やはりそこにいたか」
そこへブライトがやって来た。見れば彼は自室で機械いじりをしていた。
「ああ。最近時間がとれなかったからな。たまには一人でゆっくりとしていたくてな」
アムロはブライトに顔を向けてそう答えた。
「それで趣味に熱中していたんだな」
「何かこうしていじるのも久し振りだけれどな」
「そうだな。御前も忙しくなってきたからな」
「おいおい、それはお互い様だろう」
アムロはそれを聞いて笑った。
「もっとも御前はあの時から忙しかったけれどな」
「そうだな。しかし私達も歳をとったものだ」
「歳のことは言うなよ」
そう答えてまた笑った。
「俺も御前も中年になったわけじゃないぞ、まだ」
「そうだな。わだ若いか」
「御前はあの時から何かと年寄り臭かったがな」
「おい、言った側からそれか」
「ははは」
「艦長」
ここでブライトを呼ぶ声がした。チェーンのものであった。
「こちらにおられたんですか」
そして部屋に入ってきた。
「あ、アムロ中佐も」
「何かあったのか?」
「ええ。ちょっと三輪長官が御呼びです」
「あの人か」
ブライトはそれを聞いて顔を曇らせた。
「どうで碌な話じゃないな」
「仕方がない。それでも呼んでいるんだからな」
「俺も行こう」
アムロはそう言って席を立った。
「いいのか?御前はあの人は嫌いだった筈だが」
「そうも言ってはいられないだろう。それにあの人を好きな人なんていやしないさ」
「それを言ったらお終いだぞ」
「ははは、そうだがな。じゃあ行くか」
「うむ」
こうして二人は艦橋に向かった。チェーンがその後ろについて行く。そこにはもうモニターに口髭を生やした不機嫌そうな顔の軍服を着た男がいた。
「ブライト大佐、久し振りだな」
彼はブライトを見るなりそう声をかけてきた。彼が連邦軍環太平洋区司令長官兼日本国防省である三輪防人である。連邦軍においては超タカ派として知られている。その過激な発言と言動を知らない者はいなかった。
「はい」
ブライトはモニターを見上げてそれに応えた。
「お久し振りです、長官」
「うむ」
三輪はそれに対してはまずは鷹揚に頷いた。
「アムロ中佐も一緒だな。ならば話が早い」
アムロはロンド=ベルにおいては重鎮とされているのである。
「何でしょうか」
「単刀直入に言おう。今からロンド=ベルはわしの指揮下に入れ」
「えっ!?」
ブライトもアムロもそれを聞いて思わず驚きの声をあげた。
「長官、今何と」
「聞こえなかったのか。わしの指揮下に入れと言ったのだ」
三輪はもう一度言った。
「長官の言葉ですが」
ブライトがそれに反論を開始した。
「我々は独立部隊ということになっております」
「そんなことは関係ない」
だが三輪はそれを認めなかった。
「今地球がどういう時かわかっておるのか」
「勿論です」
アムロもそれに加わった。
「だからこそ我々は今こうして香港にいるのです」
「そしてオデッサに向かうのだな」
「はい」
二人はそれに答えた。
「ミスマル司令からのご命令で。何か不都合でも」
「それこそが問題だ」
三輪はそう言い切った。
「あの男の管轄は何だ」
「宇宙軍です」
「そうだろう。この地球、そして環太平洋ではない。ロシア地区が環太平洋区に含まれているのは知っているな」
「はい」
ブライトは答えた。
「すなわちオデッサの作戦の総指揮はわしがあたっておる。わしの指揮に従うのは当然だ。それはわかっているな」
「いえ」
だがブライトは反論した。
「何!?」
それを聞いた三輪のこめかみが動いた。
「上官に反論するつもりか」
「そうではありません。意見を申し上げるだけです」
ブライトは冷静にそう返した。
「何度も申し上げますが我々は独立部隊です」
「だからそれがどうしたと言っておる」
「我々は環太平洋区の管轄にあるのではないのです」
「オデッサの作戦はわしの管轄だ!」
三輪は叫んだ。
「その程度のこともわからないというのか!」
「それはわかっております」
それでもブライトは反論した。
「ですが部隊は管轄下にはない筈です。所属以外の」
「クッ・・・・・・」
その通りであった。それを言われると反論できなかった。
「三輪長官」
ここでブライトは言った。
「今後我々の作戦は我々で決定させて頂きます。少なくとも環太平洋区の管轄ではないことをご理解下さい」
「後悔するぞ」
「後悔はありません」
恫喝にも屈しなかった。
「そんなことを怖れていては戦いなぞできませんから」
「本当だな」
「はい」
臆してはいなかった。
「今の我々は目の前の敵を倒さなくてはなりません。それだけです」
「・・・・・・その言葉二言はないな」
「長官」
アムロが言った。
「お話中申し訳ありませんが」
「何だ?」
「何者かがこのラー=カイラムに接近してきました。申し訳ありませんがこれで」
スイッチに手をかける。
「待て、話はまだ・・・・・・」
だがスイッチは押された。三輪の姿が消えていく。
「許さんぞ、この非国民・・・・・・」
言い終わらないうちに姿が消えた。こうしてモニターは暗闇に戻った。
「これでいいな」
「済まないな、アムロ」
ブライトはアムロに顔を向けて礼を述べた。
「何、いいさ。こうしたことは御前がやっては何かと都合が悪いだろう」
「ああ」
「そうしたことは俺が引き受けるさ。その為にもロンド=ベルにいるんだからな」
「悪いな、いつも」
「だからそれは言うな。お互い様だろ」
「そうかな。私はどうも御前には助けられてなかりだが」
「それは俺もさ。御前はラー=カイラムの艦長だ。しっかりした艦長がいてくれてどれだけ有り難いか」
「全くだ」
ここでクワトロの声がした。
「それはアムロ君に同意するな」
「シャア」
アムロはそれを受けてクワトロに顔を向けた。
「御前も残っていたのか」
「残っていてはいけない理由でもあるのかな」
クワトロはそれを受けてそううそぶいた。
「少なくとも私はそうは思わないが」
「言ってくれるな」
アムロは表情を変えずにそう答えた。
「御前がただここに残っているとは思えないが」
「それはお互い様だろう」
クワトロはそう返した。
「君もこの香港には何かを感じている筈だが」
「・・・・・・ああ」
アムロはそれに頷いた。
「否定はしない。この街には何かがある」
「あのウォン=ユンファ主席のことか」
ブライトはそれを聞いてアムロとクワトロにそう問うた。彼は先程ユリカ達と共に彼と会談の場を持ったのであった。そこにはアムロとクワトロも同席していた。
「確かに彼は腹に一物あるようだが」
それはブライトにもわかっていた。だがクワトロはそれに対して首を横に振った。
「残念だが違う」
「では」
「彼は確かに色々とある人物だろう。しかし今我々に対して何かをしてくるとは思えない。少なくとも直接的には」
「そうか」
ブライトはそれを聞いて頷いた。
「では何が」
「第二東京市のことだが」
ここでクワトロは先の戦いについて言及した。
「あの戦いのことを覚えているか」
「忘れる筈がない」
ブライトは一言そう答えた。
「あんなことができる人間は今まで見たことがないからな」
そしてマスターアジアについて言及した。彼の凄まじい戦闘力を見てブライトも驚愕していたのであった。
「そうだ。彼だ」
クワトロは言った。
「彼はネオ=ホンコンのモビルファイターだ。そして香港に来いと言った」
「ああ」
「何か隠しているのかも知れない。少なくともこの街で何かが起こるだろう」
「何かが」
「それが何かまではまだよくわからないが」
アムロが言った。
「俺達はどうやら変な場所に来てしまったのかも知れないな。ましてやこの香港では過去にも色々あった」
「ああ」
「今回もな。おそらくは」
ここで通信が入った。モニターにシナプスが現れた。
「丁度よかった。三人共いるか」
彼はブライト達三人の姿を認めてまずはこう言った。
「何かあったのですか?」
「ああ。こちらのレーダーに反応があった。メタルアーマーだ」
「メタルアーマー」
「ギガノスの蒼き鷹か」
「それだけじゃない。他にもいる」
「他にも」
「そうだ。まっすぐにこの香港に近付いてきている。守備隊のいない場所を通ってな」
「何と」
「すぐに迎撃に移ろう。そちらからも出てくれ」
「了解しました。行けるか」
「ああ」
アムロとクワトロはそれにすぐに応えた。
「まずは俺達は食い止める」
「その間に他のパイロットを呼び戻してくれ」
「わかった。シナプス大佐、そちらは誰がいけますか」
「ウラキ達とコスモクラッシャー隊がいける。他は集まるまで三分といったところだな」
「三分ですか。こちらも大体そうですね」
「三分か。なら大丈夫だ」
「その間なら充分防ぎきることができる」
「頼むぞ」
ブライトはまたアムロとクワトロに対してそう言った。
「こうした時ばかり済まないな」
「だからそれは言うな。お互い様だ」
「そういうことだ。艦長は艦長の仕事に専念してくれ」
「わかった」
「他にはダンクーガチームとゴーショーグンがいけるらしい。あとはシャッフル同盟だ。そしてグランガランとゴラオンからは魔装機がいけるそうだ」
「案外大丈夫だな」
「そうだな。ではアムロ君、行こうか」
「ああ。シャア、油断するなよ」
「私が油断をすると思うのかい?」
「念の為だ。それじゃあ駄目か」
「君も成長したようだな。だがいい」
クワトロは頷いた。
「では行こう。三分頑張ればいいからな」
「ああ」
こうしてアムロ達は出撃した。そして彼等はラー=カイラムの前に出て来た。ケーラのリ=ガズィとクェスの乗るヤクト=ドーガも一緒であった。
「二人共いたのか」
「丁度スクランブルでして」
ケーラがアムロに答える。
「あたしはチャムちゃんやリリスちゃんとお話してたから。声が似てるせいか気が合って」
「また声か」
「そういえばアムロ君と宙君の声も似てるな」
「呼んだかい」
ここで宙も出て来た。既に鋼鉄ジーグとなっている。
「俺も車いじってたら出そびれちまってな大空魔竜に残っていたんだ」
「宙さんたら」
美和も一緒であった。
「私までお付き合いしちゃったじゃないの」
「おいおい、ミッチーは別に誘ってないだろ」
「けれど気になるじゃない。宙さんっていつも車の改造滅茶苦茶だし。気になって仕方ないわ」
「あれは俺のやり方なんだよ」
宙はそう反論した。
「それはわかってるだろ。レースやってた時からそうだったんだからな」
「それはそうだけれど」
「話はいい。ミッチー、行くぞ」
「わかったわ」
「よし、今いるのはこんだけだな」
忍がダンクーガに乗って姿を現わしてきた。
「とりあえずは今いるだけでやるぜ。皆いいな」
「ちょっと待って」
ここで子供の声がした。
「子供!?」
「折角はじめてコスモクラッシャーに乗ったのに自己紹介位させてよ」
「自己紹介って・・・・・・。おめえ誰だ!?」
「おいらかい?おいらは赤石ナミダっていうんだ」
コスモクラッシャーに乗る一人の少年がそう名乗った。
「新しくコスモクラッシャー隊に配属されたんだ。宜しくね」
「宜しくねっておい」
忍はそれを聞いて呆気にとられた。
「ガキが戦場に出てどうするんだよ」
「ちょっとお、それあたしに言ってるの?忍さん」
プレセアのふくれた声がした。
「別に子供でも戦えればそれでいいんじゃない?そんな言い方失礼しちゃうわ」
「いけね、忘れてた」
「おいおい忍、しっかりしてくれよ」
「メインパイロットのあんたがしっかりしてくれないと困るんだからね」
「そうそう」
そんな忍に亮、沙羅、雅人が突っ込みを入れた。
「まあそれはいいか。それで坊主」
「何だい」
「御前さんも戦えるんだな。じゃあ度胸入れてやれよ」
「うん」
ナミダは忍の言葉に頷いた。
「戦争ってのは気合だからな。どれだけ暴れるかだ。いいな」
「わかったよ、兄ちゃん」
「ヘッ、兄ちゃんかよ」
忍はそれを聞いてニンマリと笑った。
「照れ臭えな。そう言われると」
「忍は一見すると怖いからな」
マサキがそこでこう言った。
「けれどそこがまたいいのよね。野性味があって」
シモーヌがそれに合わせる。
「今度二人でじっくり飲みたいね。忍、いいかしら」
「あ!?悪くはねえけれどよ」
忍はシモーヌにそう返した。
「飲むのなら覚悟しとけよ。俺は強いぜ」
「ああ、それもわかってるさ」
忍の酒は有名であった。シモーヌもそれがわかっていたのだ。
「だから誘うんだろ。とことんまで飲もうね」
「ああ、この戦いが終わってからな」
「よし来た。じゃあ多く撃墜した方がワインを一本奢るってのはどうだい」
「ワインじゃ面白くねえな。今一つ酔えないんでな」
「じゃあウイスキーにするかい?」
「それがいいな。じゃあ行くぜ」
「あいよ」
忍の言葉を受けてロンド=ベルが動き出した。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁってやるぜっ!」
そして香港に侵入してきたギガノス軍と戦闘に入った。それを遠く離れた場所から見守る一人の男がいた。
「ふふふふふ」
スーツを着た黒髪の男である。サングラスをかけチョコレートを口にしている。
「いよいよはじまりましたね、ショーが」
彼はロンド=ベルとギガノスの戦いを見守りながらそう言った。
「面白くなりそうです。ところで東方不敗さん」
「何じゃ」
彼の隣にはマスターアジアがいた。彼はそれに応えた。
「そちらの用意はできていますか」
「言われずともな」
素っ気なくそう答えた。
「とうの昔にできておるわ。それより何故ギガノスを香港に入れたのだ」
「保健ですよ」
男はにんまりと笑いながらそう答えた。
「これからのね。いざという時の為ですよ」
「フン」
マスターアジアはそれを聞き面白くなさそうに応えた。
「ウォンよ、そうしてまた小細工を弄するか」
「小細工ではありませんよ」
その男ウォン=ユンファはそう返した。
「あくまでこれから生き残る為です。違いますか」
「少なくともわしは好きにはなれんな。こういうことは」
マスターアジアはやはり不機嫌な顔でそう答えた。
「わしの性に合わぬのでな」
「まあそれはいいでしょう。人それぞれですよ」
ウォンはやはり笑いながらそう言う。
「ただ私は私のやり方でやらせてもらいますが」
「フン」
「貴方ももう少ししたら出番ですね。健闘を祈りますよ」
「わしが遅れをとると思うか」
「まさか」
ウォンはやはり笑いながら答えた。
「楽しみにしているだけですよ。私はね」
「所詮お主にはわからんだろうな」
マスターアジアはここでふとそう呟いた。
「本当の戦いというものは」
「!?」
ウォンはそれを聞いて首を傾げた。
「今何と」
「何でもない」
だが彼はそう答えて誤魔化した。
「気にすることはない。そしてわしは時が来たら動こう」
「はい。期待していますよ」
「うむ」
こうして彼等は戦いを見守り続けた。戦いは魔装機を先頭にしてはじまっていた。
「行くぜ!」
まずはマサキが突っ込む。その後ろにヴァルシオーネと他の魔装機神も続く。
「まずはこれだあっ!いっけええええええ」
サイバスターの身体に緑の光が宿る。
「サイフラァーーーーッシュ!」
そしてサイフラッシュが放たれる。そrねいよりグン=ジェム隊のメタルアーマー達がダメージを受ける。それだけではなかった。
「あたしも行くよ!サイコブラスターーーーーッ!」
リューネも攻撃を放った。サイコブラスターで敵を撃つ。そこへ他の魔装機神も続く。これによりグン=ジェム隊は総崩れになると思われた。
だが彼等はそうはならなかった。それでも戦場に踏ん張り迎撃を開始したのだ。
「へへッ、やるじゃねえか」
スタークガンドーラに乗るカナンが不敵に笑った。
「おうゴル、行くか」
「おう」
ゴルがそれに頷く。そして彼等とその直属の配下が前に出て来た。だがここでもう一機出て来た。
「待ちな」
それはミンのスタークダインであった。
「ここはあたしも入れなよ」
「ミン」
「俺もな」
ジンもやって来た。彼等はそれぞれの手勢と共にやって来たのだ。
「あの連中はかなり手強いよ。用心が必要だ」
「おいおい、言葉が違うだろうが」
カナンはミンに対してそう言った。
「御前の場合は早いとこ暴れたいだけだろうが」
「わかってるじゃないの」
ミンはそれを聞いてニヤリと笑った。
「じゃあ思う存分暴れてやるかい」
「お。おでも」
ゴルがそれに続く。
「久し振りに派手にやりたい」
「ハハハ、仕方のない連中だ」
グン=ジェムはそれを少し離れた位置から見ながら笑った。
「最近暇をもてあましていたようだからな、ははは」
そして四人に対して言った。
「おう、御前等」
「はい」
「徹底的にやってやれ。いいな」
「言われるまでもなく」
彼等は最初からそのつもりであった。
「やってやりますぜ」
「おう、わしも行くぞ」
そしてグン=ジェムも動きはじめた。彼の配下の部隊がこぞって動きをはじめた。
「グン=ジェム隊、総員攻撃開始だあっ!」
「おう!」
荒くれ者達がそれに従う。そして彼等の一斉攻撃が開始された。
「ヘッ、面白くなってきやがったぜ」
忍はそれを見て思わず笑った。
「こうした派手なやりあいってのは何時やってもいいもんだな」
「おいおい忍」
そんな彼にマサキが声をかけた。
「喧嘩じゃねえんだぞ、これは」
「俺にとっちゃあ同じことさ」
だが彼はそう言葉を返した。
「暴れられるんだからな。何かこんな楽しいことは久し振りだぜ」
「あんたいっつもそうじゃないか」
沙羅がそんな忍に対して言った。
「いい加減大人しくするってことを覚えたらどうだい」
「御前には言われたかねえよ」
忍はそう言葉を返した。
「御前だって相当なもんだろが」
「まあそうだよね」
雅人がそれに頷く。
「けれど忍がそうだってのは変わらないよ」
「何ィ!?」
「そう、それだ」
亮が指摘する。
「忍、少しは落ち着くことも覚えろ」
「馬鹿言ってるんじゃねえぞ、ダンクーガは闘争本能で動いてるんだろうが」
「時にはそれを前に出さないことも必要なんだ」
それでも亮はそう言った。
「さもないと大変なことになるぞ」
「そん時はそん時だ」
だが忍はそれを聞かなかった。
「俺には俺のやり方があるんだ。行くぜ!」
ダンクーガの全身に力を込めさせた。
「断空砲フォーメーション!行っけえええええええっ!」
「やれやれ」
亮は呆れながらもそれに付き合うことにした。
「やれ、忍!」
「言われなくてもな!」
そして断空砲が放たれた。それで敵を撃つ。一個小隊が消し飛んだ。
「ほう」
グン=ジェムはそれを見てニヤリと笑った。
「やるじゃねえか。敵にも見所のある奴がいるな」
「ですね」
ジンがニヤリと笑って応えた。
「けれど俺達の域にはまだまだですぜ」
「そう簡単にわしみたいになられても困るしな」
グン=ジェムも笑っていた。
「だが残念なことだ。わしの敵だったのが」
「はい」
「ガナン、ゴル」
ガナンとゴルに声をかけた。そしてダンクーガを指差して命令した。
「まずはあの黒いのをやれ。いいな」
「はい」
「お、おう」
二人はそれに頷く。それから動いた。
「行くぜ、ゴル」
ガナンが先に出た。だが少しいったところで動きを抑えゴルが前に出た。
「うおおおおおおおっ!」
そのままダンクーガにタックルを仕掛ける。不意を衝かれたダンクーガはそれをまともに受けてしまった。
「グッ!」
「今だっ!」
そこにガナンの攻撃が来る。両肩の二つのレールガンを放つ。ダンクーガはそれも受けた。だがそれでも尚立っていた。
「ダンクーガがこの程度でやられるかよ!」
「ほう、やるな」
ガナンはそれを見て楽しそうに笑った。
「どうやら思ったより楽しめるな」
「それはこっちの台詞だ」
忍はそう言葉を返した。
「相手してやるぜ、こっちに来い」
「面白い。ゴル、また仕掛けるぞ」
「おう」
そして二人はまたダンクーガに攻撃を仕掛けた。だが今度はかわされた。
「二回もやられねえぜ」
「じゃあ三回ではどうだ?」
「何度やっても同じだぜ!」
忍はそう言い返す。そして逆に剣を抜いた。
「断・空・剣」
それでゴルのスタークゲバイとガナンのスタークガンドーラを切りつける。しかしそれはかわされてしまった。
「チイッ!」
ダンクーガと二機の戦いの側でミンが暴れていた。彼女の乗る赤いマシンスタークダインはロンド=ベルめがけ突進していた。
「やらせてもらうよっ!」
彼女は機体から何かを取り出した。
「死になっ!」
何とそれはチェーンソーであった。彼女はそれを手に暴れはじめたのだ。
「何て女だ」
京四郎はそれを見て呆れた声を出した。
「もう少し女らしく戦うってことはできねえのか」
「は!?誰に言ってるんだい」
ミンはそれに対してふてぶてしく笑った。
「あたしにそんなこと期待するんじゃないよ」
「やれやれだ」
京四郎はまた呆れた声を出した。
「淑女の嗜みも知らないのか」
「それは食べられるのかい?」
「まさか」
うそぶくミンにそう返す。
「だが一つ言っておこう」
「何だい!?」
「衣食満ちて礼節を知る、だ。御前達はどうやらそうではないらしいな」
「食えりゃそれでいいさ。あと暴れられりゃあね」
当然のように京四郎の言葉を一笑に付す。そして京四郎に向かった。
「話はいいかい。念仏でも唱えなっ!」
「やれやれだ。ナナ」
彼はナナに声をかけた。
「しっかりつかまってろ。飛ばすぞ」
「うん」
ナナは頷いた。ガルばーが上にあがろうとする。だがその時だった。
「待って!」
その前に一機のガンダムが姿を現わした。
「ガンダムッ!?」
「一体誰が」
見たことのないガンダムだった。皆それを見て思わず首を傾げた。だがドモンは違っていた。
「レイン」
「レインさん!?」
コウがそれを聞き驚きの声をあげる。
「レインさんもガンダムに!?」
「ええ」
そのガンダムの中から声がした。それは確かにレインのものだった。
「私も一応ガンダムに乗れるから」
「そうなんだ。それでそのガンダム何ていうんですか?」
「これ?」
「はい」
興味深そうな声であった。コウらしいと言えばそうであった。
「ライジングガンダムっていうの」
「ライジングガンダム」
「ええ。私用にね。開発されたの。御父様が」
「御父様って」
「コウ、ミカムラ博士だよ」
ここでキースが言う。
「ああ、あの人か」
有名な人物であった。優れた科学者であると共に温厚な人柄で知られている。日本においてロボット工学の権威として知られている人物の一人である。
「色々あってね。私のも作ってもらったの」
「そうなんだ」
「レイン」
ドモンがここでレインに声をかけた。
「無理はするな」
「大丈夫よ、ドモン」
だがレインは臆することなくそう返した。
「私だって戦えるんだから」
「初耳だぞ」
しかしドモンは素っ気なくそう返した。
「・・・・・・ちょっと、貴方私とどれだけ一緒にいるの!?」
「子供の頃からだ」
「子供の頃からドモンと付き合っていたのか」
「レインさんも大変だったのね」
ケンジとミカがそれを聞いて呟く。
「私が合気道やってたの知らないの?」
「ああ」
やはりドモンの言葉は素っ気ない。
「そういえばそんなこともあったか」
「・・・・・・まあいいわ」
レインは呆れながらも言葉を続けた。
「弓も薙刀もやっていたから。だから少し位なら大丈夫よ」
「そうか。では頼む」
「ええ、任せて」
「へえ、女かい」
ミンはあらためてレインのライジングガンダムを見据えて笑った。
「言っとくけどあたしは女だからって遠慮しないよ」
「わかってるわ」
レインは怖気づくことなくそれに返した。
「こっちだって容赦はしないから」
「綺麗な顔していいね。気に入ったよ」
ミンはまた笑った。
「思いきり切り刻んでやるよ。覚悟しな」
チェーンソーにスイッチを入れた。そして構える。
「行くよ!」
そして向かう。だがライジングガンダムはその横薙ぎにされたチェーンソーをかわした。
「まだっ!」
「やるねっ!」
かわしながら攻撃態勢に入る。薙刀を構える。
「これならっ!」
そしてそれで切りつける。だがミンはそれをかわした。後ろに跳んだのだ。
「むっ!」
「悪いね、あんたの攻撃は見切ってるよ!」
ミンはニヤリと笑ってそう返した。
「これはお返しだ。とっときな!」
チェーンソーを振り回しながら襲いかかる。しかしレインはそれもかわした。
「逃げるのは上手いね!」
「逃げるのだけじゃないわよ!」
言いながら薙刀をまた構える。そしてそれで反撃に転じる。
「こっちだって!」
両者もまた攻撃に入った。双方一歩も引かないものとなった。
ジンはその暫く後ろでそれぞれの機に指示を出しているようであった。冷静に戦局を見ていた。
「ムッ」
やがて彼はレーダーを見て反応した。
「大佐」
「どうした、ジン」
グン=ジェムは彼に顔を向けた。
「敵です。新手が来ます」
「新手か」
「ええ」
彼は答えた。
「敵の戦艦の前です。結構いますよ」
「そうか」
彼はそれを聞いて頷いた。
「じゃあ御前も行け。いいな」
「了解」
ジンの部隊も動きはじめた。するとそこでドラグナーチームが姿を現わした。
「竜騎士隊、参上!」
「お待たせえ!」
「俺達が来たからにはもう安心だぜ!」
ケーン、タップ、ライトの三人が朗らかな声を出す。そして戦場に颯爽と名乗りを挙げた。つもりだった。
「あんた達、何ふざけてんのよ!」
後ろからアスカの声がしてきた。
「あれ、アスカいたのかよ」
ケーンがそれを聞いてとぼけた声を出した。
「御前も間に合ったのか」
「フン、あたしを誰だと思ってんのよ」
アスカは胸を張ってそう言う。
「あたしはねえ」
「やかましい女だろ」
タップが言う。
「それじゃなきゃ五月蝿い女かな」
「どっちにしろいい意味じゃねえけれどな」
ライトとケーンもそれに合わせた。
「ええい、黙ってなさい!そんなんだからピーマン頭って言われるのよ!」
「ピーマンか、今度は」
「その前は玉葱だったかな」
「いや、カボチャだったぜ。確か」
「どっちにしろ野菜なんだな」
「いいんじゃねえの?レイちゃんがベジタリアンだし。なあ」
「私は」
アスカと共に出撃していたレイが彼等に合わせる。
「別にいいですけれど」
「そうか。なあアスカ」
「何よ」
「たまには果物でも出してくれよ。俺達も野菜ばっかじゃ飽きるぜ」
「そういう問題じゃないと思うけれど」
シンジがそれを聞いて呟く。彼もトウジもいたのだ。
「おい、御前達」
しかしここでピートの突込みが入った。
「話はいいから早く戦うんだ。いいな」
「ちぇっ、ピートさんは真面目だなあ」
「ホント、同じアメリカ人だってのに俺なんかとは偉い違い」
「ここらへんが学生と海兵隊のトップガンの差だろうね」
しかしそれでも三人は相変わらずの調子であった。それでも戦場に向かった。
「やっと行ったか。よし、エヴァは戦艦の周りを固めてくれ」
「了解」
シンジ達はそれに頷いた。
「そろそろ敵も近付いてきた。接近戦もあるだろうからな」
「まあ任せといてよ」
アスカがまた胸を張って言った。
「天才のあたしがいるんだからね。どんと構えてなさいって」
「アスカさん、前に敵が来ていますよ」
そこでルリがアスカに言った。
「えっ、嘘」
「本当です」
見れば本当だった。ジンのスタークダウツェンであった。
「丁度いい獲物がいたな」
ジンはアスカのエヴァを見てそう言った。
「エヴァを仕留めりゃでっかい手柄だ。やらせてもらうぜ!」
「あたしは手柄じゃないわよ!」
そう言い返す。そしてジンの攻撃をかわした。
「フィールド使うまでもないわ!」
「言ってくれるな!」
人はそれを聞いて笑った。
「じゃあ一思いにやってやる!」
「やれるもんならね!」
エヴァも戦いに入った。こうして二分が過ぎた。
「あと一分か」
ブライトはそこで呟いた。
「他のパイロット達はどうしている」
「はい」
サエグサがそれに答えた。
「丁度皆戻りました。今それぞれのマシンに向かっています」
「そうか」
ブライトはそれを聞いて頷いた。
「ならいい。予定通りだな」
「はい」
サエグサは頷いた。
「準備が整い次第全機出撃だ。いいな」
「はい」
彼等の前の戦いはさらに激しくなっていた。ドラグナーチームはその中に入っていた。
「ドラグナーだあ!当たると痛てえぞおっ!」
ケーンはビームサーベルを振り回しながらそう言う。そしてグン=ジェム隊のメタルアーマーを次々と斬り伏せていく。
「死にたくない奴はどっか行きやがれ!」
「といっても来るのが戦争」
「それを相手にするのが俺達」
タップとライトはそんなケーンのフォローをしながらそう言った。
「しかし妙だな」
「どうした、ライト」
ケーンが彼に問うた。
「いや、あそこにいつもの旦那がいるな」
「ああ」
ライトはそう言って後方にいるマイヨのファルゲン=マッフを指差した。
「ついでにあの三人組もいるぜ」
タップはプラクティーズを指差していた。
「いつもは真っ先に突っ込んで来るあの旦那が大人しくしているってのも妙だな」
「まあそうだけれどな。けれどあっちにはあっちの事情があるんだろう」
ケーンはあまり深く考えずにそう言った。
「とりあえず俺達は目の前にいる奴等を相手にしようぜ。何かとんでもねえのが来てるし」
「あれか」
タップは今度はグン=ジェムのゲイザムを指差した。緑のマシンであった。
「何か異様な外見だな」
「威圧感もあるぜ」
「フフフ、若僧共よくぞわかったな」
グン=ジェムはケーン達の言葉を聞き満足気に笑った。
「わしがこの部隊の隊長グン=ジェムだ。以後覚えておけ」
「何かギガノスっていうより山賊か何かみてえだな」
「ああ」
タップとライトがケーンの言葉に同意する。
「本当にロボットのパイロットか?」
「世紀末の世界から出て来たんじゃねえのかな」
「好き勝手言ってくれるな」
「まあそりゃ」
「俺達の仕事はそれだし」
「それは違うぞ」
クワトロが突っ込みを入れる。
「君達の仕事はパイロットだが」
「わかってますって」
「ふざけただけですよ」
「大尉って冗談が通じないんだから、もう」
「・・・・・・だといいがな」
それでもクワトロはまだ不満そうであった。
「まあいいだろう。君達は彼を相手にしてくれ」
そしてドラグナーチームにグン=ジェムの相手をするように言った。
「了解」
「けれど大尉は?」
「私か?」
「ええ。てっきり大尉かアムロ中佐が相手をするとばかり」
クワトロとアムロはロンド=ベルにおいて切り札とも言えるパイロットであった。当然グン=ジェムは彼等のうちどちらかが相手をすると思っていたのだ。
「ちょっとな」
クワトロはそう答えて思わせぶりに笑った。
「思うところがあってな」
「わかった。ギガノスの蒼き鷹だ」
「けれどそれなら俺が」
「彼は動かんさ」
しかしクワトロは彼等にそう答えた。マイヨの考えが読めていたのだ。
「?何故ですか」
「あ、いや」
だがクワトロはそれを誤魔化すことにした。
「動きでな。あれはおそらくフォローに回るだけだろう」
「そうなのですか」
「じゃあ俺達は安心してあの山賊に向かいますね」
「ああ、頼む」
クワトロは言った。
「フォローは私とアムロ中佐がやろう」
「だから安心して言ってくれ」
「了解。それじゃあ」
「ああ」
アムロにも挨拶をしてグン=ジェムに向かう。だがグン=ジェムは彼等を前にしても余裕であった。
「ハッハハハ、来たな小童共が」
彼は大声で笑った。
「貴様等ではわしの相手にはならんが食事の前の軽い運動には丁度いい」
「俺達は運動の相手かよ」
「御免こうむりたいね、可愛い娘ちゃんが相手じゃないんだから」
「同感」
「そう言ってられるのも今のうちだ」
それでもグン=ジェムは笑っていた。
「貴様等、念仏は唱えたか。では行くぞ」
「俺クリスチャンなんだけれど」
ライトがそれを聞いて呟く。だがそこにゲイザムの刀がやって来た。
「うわっ!」
紙一重でそれをかわした。それを見たライトはもう笑ってはいなかった。
「何て太刀筋だ」
「フフフ、どうだ」
グン=ジェムはライトを見据えて笑った。
「わしの太刀は。驚いただろう」
「ああ、流石にな」
ライトの言葉にいつもの軽さはなかった。
「これは厄介な奴だぜ。ケーン、ライト」
そして他の二人に声をかける。
「気をつけろ。これはかなりの強敵だぞ」
「どうやらそうみたいだな」
ケーンは言った。
「こりゃ三人力を合わせないとな」
タップも頷いた。やはり顔は真剣なものだった。
「散るぞ。いいな」
「ああ」
ライトの言葉に従い散開する。それぞれグン=ジェムの斜めに向かう。
「連携は俺が指示するからな。二人共頼むぜ」
「わかった」
「フン、小僧共が無駄なことを」
グン=ジェムの態度は囲まれても同じであった。
「どのみち貴様等はここでわしに始末されるのだ。無駄なことは止めろ」
「無駄かどうかはやってみなくちゃわからないってね」
「そういうこと」
「だから山賊のおっさんよお」
三人はそれぞれ言う。
「俺達の若い力受けてみるんだな」
「決して無鉄砲じゃないぜ」
「若者は行動するから若者なんだからな」
「口の減らん奴等だ。だがな」
ゲイザムは構えをとった。
「それはわしを倒してから言うのだな。できたらな」
「やってやらあ!」
「若者を舐めるなあっ!」
三人とグン=ジェムはぶつかり合った。まずはタップとライトが攻撃を放つ。バズーカであった。
「いっけええ!」
「ケーン、今だ!」
「おうよ!」
ケーンも攻撃を放った。同じくバズーカだった。だがグン=ジェムはそれを何なく受け止めた。
「今何かしたのか?」
そしてニヤリと笑って三人に問うてきた。
「何っ!?」
「俺達のフォーメションアタックを受けてピンピンしてやがるとは」
「このおっさん不死身か!?」
「その通り」
何とグン=ジェムはその言葉を肯定した。
「わしは不死身よ!この程度の攻撃で倒れると思ったか!」
「チッ、どうやら俺達の相手は怪物じゃなくてゾンビだったみてえだな」
「ゾンビっていうより海坊主だろ」
「またメジャーな名前が出て来たな」
「フフフ、海坊主か。それはいい」
彼はそれを聞いて笑った。
「では小童共を頭から食ろうてやるわ!」
そして刀を振り回して三人に向かう。戦いはさらに激しさを増すのであった。
そこで三分経った。遂にロンド=ベルが全軍出て来た。
「待たせたな!」
「済まない皆!」
ジュドーとカミーユが最初に出て来た。
「今度の敵は何か世紀末な奴だな」
「サンシローさん何か懐かしそうですね」
「否定できないな」
ブンタの言葉に苦笑した。
「何でかわからないが」
「俺もだ」
フォッカーもそれに同意する。
「何か妙に懐かしい雰囲気だな」
「それを言ったらあたしもそうだよ」
沙羅が言った。
「少佐達とは一回それについてよくお話したいね」
「ああ。何かそんな気がする」
竜馬も言う。
「何故だろうな。なあ一矢」
「そうだな。何故だろう」
「とんでもない拳法でもあるんじゃないのか」
リーがポツリと呟いた。
「拳法か。そういえば」
ここでチラリとドモンの方を皆見る。
「一人ケタ外れなのがいるしな」
「俺は普通だ」
しかし本人はそう強弁した。
「こんなことは修業すれば誰でもできることだ」
「できたら苦労しないわよ」
グランガランの艦橋にいるリツ子が突っ込みを入れる。
「使徒を素手で倒すなんて流石に思いもよらなかったわ」
「けれど格好よかったですよね」
シンジが彼女にそう言う。
「シンジ君・・・・・・」
「僕何かあの人に憧れます。格好いいですから」
「おっ、シンジも一皮剥けたな」
甲児がそれを聞いて嬉しそうな顔をする。
「それでこそロンド=ベルだぜ」
「甲児君・・・・・・」
だがミサトはそれに対していささか不満なようであった。
「幾ら何でもエヴァはあんなことできないわよ」
「マジンガーは腕飛ばせますよ」
「そんな問題じゃなくてね。あの人は人間かどうかもあやしいでしょーーーが」
「師匠は人間だ」
ドモンは強弁した。
「あんな素晴らしい人は他にはいない!」
「人間かどうかすらあやしいぜ、ありゃ」
だがリョーコがそれに疑問の声を呈した。
「けれど格好いいのは事実ですよね」
「おさげの髪の中年。おっさげえ」
ヒカルが言えばイズミも洒落を飛ばす。だがドモンは冷気にも負けずに続ける。
「いずれそれは皆もきっとわかってくれる筈だ」
「その通り!」
ガイがそれに賛同した。
「ドモン=カッシュ、御前は本当の漢だな!」
「ガイ」
ドモンは彼に顔を向けた。
「いずれ貴様とは心ゆくまで語り合いたい。いいか」
「望むところだ」
ドモンはニヤリと笑ってそう返した。
「男なら」
「うむ」
「心ゆくまで語り合うべし!」
「そしてそこから真の友情が生まれるのだ!」
彼等は波を背負ってそう宣言した。そして舞台は移った。
「・・・・・・熱いのはもういいから」
アムが突っ込みを入れる。
「とにかく今は目の前の敵をやっつけちゃいましょ。丁度一杯いるし」
「おっと」
ドモンもガイもそれに気付いた。
「そうだな。それではまず」
「この連中を相手にするか」
「というかそれが先でしょーーーが」
「困ったものだな。男ってやつは」
「あら、女だってそうよ」
レッシィにマーベルがそう言った。
「マーベルさん」
「貴女もそれはわかってると思うけれど」
「ああ」
レッシィはにこりと笑ってそれに応えた。
「確かにな。あんた程じゃないけれど」
「ふふふ」
「おいマーベル」
ショウがマーベルに声をかけてきた。
「一体何の話をしているんだ?敵が来ているぞ」
「ふふふ、ちょっとね」
「あんたの話をしてたんだよ」
「俺の?」
ショウはレッシィにそう言われ首を傾げた。
「俺とトロワや雅人の声が似てるってのはもう止めてくれよ」
「それなら私と早瀬中尉も言われたから言わないな」
「あたしなんかどれだけ同じなんだか。だからそれは言わないよ」
「だったらいいけど。気になるな」
「気にしなくていいわ」
「そうそう。どうでわかんないんだし」
「子供じゃないんだよ」
「そうだったわね」
「一応は」
しかし二人はショウをその大人の女性の態度で扱うのだった。
「とにかく行きましょう。今は」
「ああ」
マーベルにそう言われショウはようやく納得した。
「じゃあ行くか」
「ええ」
「それじゃあね、レッシィ」
「ああ。後で一杯やろうな」
「そうね。いいわね」
そしてショウ達も小隊となり戦場に向かう。途中でトッドと合流していた。
「マーベルさんも大変だね。子供の御守りは」
「レッシィ」
ダバの声がした。
「行くぞ。敵が来た」
「ああ、今行くよ」
あたしもね、と思いつつ彼女も戦場へ向かった。彼女達もまたそれぞれの思いがあった。
戦いが本格的になるとようやくマイヨ達も動きだした。だが彼等はあくまでグン=ジェム隊のフォローであった。
「大尉殿」
戦場に向かいながらウェルナーがマイヨに声をかけた。
「どうした」
「あの者達のことですが」
「先に言った筈だ」
だがマイヨはそんな彼に対しそう言った。
「言うなとな」
「はい」
ウェルナーはそれを受け仕方なく頷いた。
「今は戦いに専念しろ。ロンド=ベルは手強いぞ」
「わかりました」
「そのロンド=ベルですが」
今度はカールが口を開いた。
「どうした」
「本隊が出て来ました。我々も本格的に戦闘に参加しなくてよいのでしょうか」
「今回の我々の任務はグン=ジェム隊のフォローだ」
マイヨは一言そう述べた。
「それも任務だ。そういうことだ」
「ハッ」
だがマイヨの顔は堅いままであった。やはり彼にも色々と思うところがあった。しかしそれを態度には表さないだけであったのだ。
「ダン」
「はい」
マイヨはダンに声をかけてきた。彼はそれに応えた。
「左に行け。ウェルナーは右、カールは中央だ」
「ハッ」
「了解しました」
二人もそれに頷いた。そして三人はそれぞれの小隊と共に動いた。
「私も行く。よいな」
「ハッ!」
マイヨも動いた。そのレールガンが煌いた。
「奴等の迎撃態勢が整う前に・・・・・・」
彼はセラーナの乗るゼータに照準を合わせていた。
「叩く!」
そしてレールガンを放つ。光が一直線にセラーナに向かっていった。それはセラーナを貫くかに見えた。だがそうはならなかった。
「来る・・・・・・!」
セラーナは直感でそれを悟った。死が来ていると。
すぐに動いた。ゼータをウェイブライダーに変形させた。そして飛翔した。
それでマイヨの攻撃をかわした。それからまた元に戻り着地した。
「ムッ!?」
マイヨはそれを見て目を瞠らせた。
「あのゼータ・・・・・・できるな。カミーユ=ビダンか」
彼もカミーユのことは聞いている。アムロやクワトロの次にくるロンド=ベルのエースパイロットであった。
「いえ、違います」
だがダンがマイヨにそう言った。
「では誰だ」
「あれは確かセラーナ=カーンだった筈です。本来は連邦政府の高官らしいですか」
「セラーナ=カーンか」
「御存知でしたか?」
「いや。だがいい腕をしている」
彼は一言そう言った。
「どうやらロンド=ベルのパイロットは皆優れているようだな。戦いがある」
マイヨはそれが満足だったのだ。そしてそのまま攻撃を続ける。
「相手にとって不足はない。ギガノスの蒼き鷹の力見せてくれようぞ」
「はい!」
「我々も!」
彼等も戦線に参加していた。こうして戦いは激しさを増すばかりであった。だが次第に個々のパイロットの技量と性能で大きく勝るロンド=ベルがやはり優勢になってきていた。グン=ジェムにもそれはわかっていた。
「損害が馬鹿にならなくなってきたな」
彼はその戦局を見てそう呟いた。
「うちの猛者共も攻めあぐねているようだしな。ここは潮時かのう」
そこへ新たな敵がやって来た。ジンが戦闘を続けながら言う。
「大佐、敵だぜ」
「おい」
ライトもであった。
「また新手だ。ゴキブリみたいだな」
「俺達はゴキブリかよ」
ジンがそれに反論する。
「生憎だが俺達じゃねえぜ」
「あ、ホントだ」
「これは違いますね」
ルリも言った。
「はじめて見る敵です。これは」
「デスアーミーよ」
ここでマスターアジアがいきなり戦場に姿を現わしてきた。
「師匠」
「ドモンよ、約束通り来てやったぞ」
彼はビルの屋上に腕を組み立っていた。そしてドモンに言った。
「御前も元気そうで何よりだな」
「はい。ところでデスアーミーとは」
「一言で言うと悪の尖兵だ」
「悪の尖兵」
「そんなの山程いるんじゃねえのか?」
ヤマガタケがそれを聞いて呟いた。
「どっちにしろまた新手の敵が出て来たってところだな」
「そういうことですね」
リーとブンタがそう言った。これがロンド=ベルの面々の見解であった。
「地球を廃墟にせんとする者の手先だ。わしは今まで奴等を追っていたのだ」
「それで香港に」
「うむ」
マスターアジアはドモンの言葉に頷いた。
「奴等だけは何とかせねばならん。ドモンよ、用意はよいか」
「はい!」
ドモンはそれに答えた。
「何時でも。師匠と共に!」
「よし、よくぞ言った!」
マスターアジアはそれを受けて宙に跳んだ。
「出でよ、我が分身よ!」
クーロンガンダムが姿を現わした。マスターアジアはそれに乗り込む。そして空中で構えをとった。流派東方不敗の構えであった。
「ドモン!」
「師匠!」
二人は互いを呼び合った。
「ガンダムファイト」
「レェェェェェェェェェデェェェェェェイ」
そして互いに叫ぶ。
「ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
最後は同時に叫んだ。師弟が今左右で不敗の構えをとったのであった。
「・・・・・・なあ大佐」
ミンがそれを見ながらグン=ジェムに声をかけてきた。
「何だ」
「ここは潮時なんじゃねえかい」
「潮時か」
「ああ。かなりやられちまったしまた敵が出て来るっていうしな。ここらが潮時だろう」
「ううむ」
「俺もそう思うぜ」
ガナンが言った。
「これ以上やっても意味はねえと思うな」
「どうやら敵は俺達も狙っているようだしな」
ジンはレーダーを見てそう述べた。
「大佐、どうするよ」
「お、おでは大佐に従う」
「うむ」
彼等が自分と同じ考えなのに密かに満足しながらグン=ジェムは頷いた。
「それでは腹は決まった。退くぞ」
「了解」
四人はそれに頷いた。
「そのさい後ろを持つのは」
「私にやらせて頂きたい」
「御前か」
「はい」
見ればマイヨであった。彼はグン=ジェムの言葉に頷いた。
「撤退の際の後詰はこの上ない名誉。是非やらせて頂きたい」
「死ぬかも知れんがいいのか」
「無論」
マイヨはそれに即答した。
「武人として、ギガノスの軍人としてそれは覚悟のうちではありません」
「ほお」
「それは誇りなのです」
「言ったな。いい目をしとるわ」
グン=ジェムはマイヨの目を見て言った。見ればその目は強い光で輝いていた。
「わし等とは違うな」
「どうせ俺達は愚連隊だしな」
「ヘッ、エリートに雑草はわからないさね」
「そう言うな」
グン=ジェムはガナンとミンを黙らせた。そしてマイヨにまた言った。
「プラート大尉、それでは貴様に任せる。いいな」
「はい」
マイヨは頷いた。
「大尉殿」
そこへプラクティーズの面々も入ってきた。
「我等も御供致します」
「いや、いい」
だがマイヨはそれを断った。
「御前達はグン=ジェム大佐と共に下がれ」
「しかし」
「これは命令だ」
だがマイヨはそれに対し強い声でそう返した。
「命令」
「そうだ。御前達も軍人だ。ならばわかっているだろう」
「はい」
彼等はそれに頷くしかなかった。
「そでは大尉殿、御健闘を」
「うむ」
マイヨは静かに頷いた。そして撤退をはじめたギガノス軍の最後尾に来た。
「さあロンド=ベルの諸君よ」
ロンド=ベルの面々を見据えて言う。
「私と剣を交えたいという者は来るがいい!」
「あれがギガノスの蒼き鷹か」
ダバがそれを見て呟いた。
「どうやら死を覚悟しているな。相手にはしない方がいい」
「そうだな」
レッシィがそれに頷く。
「ギガノスは退けた。今は彼等は相手にはしなくていい」
「ああ」
「問題は今迫っている敵だ」
「そうだな。ライト」
ダバはライトに顔を向けた。
「今そのデスアーミーの動きはどうなっているんだ?」
「まっすぐこっちに来ているな」
ライトはそう答えた。
「そろそろ来るぜ。おっ」
そして声をあげた。
「来たぞ。皆準備はいいか」
「おう」
「何時でもいいぜ」
「よし」
ライトは他の者の声に頷いた。
「パーティーの第二幕だ。やるぜ!」
「おう!」
ロンド=ベルを黄色いロボットが取り囲んだ。見れば白い単眼を持っている。
「これがデスアーミー」
「そうだ」
マスターアジアはドモンの言葉に頷いた。
「見たところ大した力はないようですが」
「だが油断はならんぞ」
「わかってます」
師の言葉にそう頷く。
「では行きますか、師匠」
「うむ」
師は弟子に対して頷いた。
「では行くぞドモン」
「はい」
師弟は同時に動いた。
「流派東方不敗は」
「王者の風!」
二人がまず突っ込んだ。そしてデスアーミー達に拳を振るう。
「未熟未熟!」
「はああああああああああああああああっ!」
群がるデスアーミー達を次々と破壊する。だがそれでも彼等の数は減らない。
「俺達も行くぞ」
アムロが他の者に声をかけた。
「二人だけに任せていては駄目だ」
「そうだな」
クワトロがそれに頷く。
「総員攻撃に移れ。いいな」
「了解」
それに全ての者が頷いた。そして一斉に動きをはじめた。こうしてデスアーミーとロンド=ベルの戦いが幕を開けたのであった。
戦いは完全にロンド=ベルのものとなっていた。彼等はそれぞれ敵を撃つ。だがその数が違い過ぎた。先にギガノスとの戦いがありその疲れもあった。彼等の動きは少し鈍いようであった。
「やはりギガノスとの戦いの影響か」
「だろうな」
クワトロがアムロに答えた。
「それに数も多い。一機一機はそれ程ではないがこうまで多いとな」
「ああ」
アムロはそれに頷いた。
「だがやらなくちゃいけない。香港をこの連中に渡すわけにはいかないからな」
「何か策があるのか、アムロ君」
「残念だがない」
アムロはそう答えた。
「けれどやってやるさ。こんな戦いは今まで幾らでもあったんだからな」
「落ち着いているな」
「それはお互い様だろう?」
アムロはクワトロに顔を向けてそう言って笑った。
「宇宙怪獣たバルマーの時からそうだったんだからな」
「それは違うな」
だがクワトロはそれに異論を述べた。
「一年戦争の頃からだ」
「そうだったな」
アムロはまた笑った。
「じゃあそっちは頼むぞ」
「わかった」
ニューガンダムが右、サザビーが左に位置した。そしてそれぞれ攻撃を放つ。
「いけっ、フィンファンネル!」
「ファンネルオールレンジ攻撃!」
そしてデスアーミー達を撃つ。ファンネルにより彼等は薙ぎ倒されていった。
だがそれでも数は減らない。その数を頼みにロンド=ベルに迫る。戦艦にも接近していた。
「弾幕薄いぞ、何やってんの!」
ブライトが叫ぶ。彼の周りにもデスアーミーが群がってきていたのだ。
「ミサイル発射!同時に側面にも注意しろ!」
「はい!」
トーレスとサエグサがそれに頷く。そして周りにいるデスアーミー達を倒していくのであった。
「いいからやっちゃって!」
ユリカが叫ぶ。
「前の敵をまず撃って!」
「はい!」
それにハーリーが頷く。
「艦長、前には」
ルリがここでユリカに言う。
「アキトさん達がいますけれど」
「アキトなら大丈夫よ」
ユリカはそれに対してにこやかに返した。
「だからグラビティ=ブラスト発射!」
「わかりました。アキトさん」
「俺!?」
「はい」
ルリがアキトに答えた。
「上に飛んで下さい。ガイさんもです」
「よし!」
「サブロウタさんとジュンさんは左です。いいですね」
「あいよ」
「じゃあそれで」
彼等はそれぞれ動いた。すると今までいた場所にグラビティ=ブラストが通った。そしてデスアーミー達を吹き飛ばしたのであった。凄まじい威力であった。
「どう、これがナデシコのパワーよ!」
ユリカはそれで敵を倒すことができてはしゃいでいた。
「お化けなんかには負けないわよ!」
「お化けか」
タケルがそれを聞いておかしそうに笑った。
「確かにな。何か変な気を感じる」
「気!?」
それを聞いてジョルジョが声をあげた。
「タケルさん」
「はい」
タケルは彼に顔を向けた。
「気を感じられたのですか」
「ええ」
タケルはそれに答えた。
「それが何か」
「いえ」
ジョルジョはそれに答えはしなかった。
「どうやら私の思い違いですね。確か貴方は格闘家ではありませんでした」
「残念ですけれど」
彼は運動神経はかなりのものであった。だが格闘は専門的には学んではいなかったのである。
「俺そうしたことは専門的にはやっていなくて」
「ですね。でしたら違います」
「気を感じることですか」
「ええ。それはどうやら私の思い違いです。貴方はまた別の力を持ってもられます」
「別の力!?」
「それが何かまではわかりませんが」
ジョルジョは言った。
「貴方はその力により今後大きなことを為さるかも知れませんね。その力、正しく使うのです」
「はい」
何が何だかよくわからないまま頷いた。
「とにかく頑張ってみます」
「はい。それでは今はゴッドマーズの力、見せてもらいましょうか」
「わかりました。それでは」
「はい」
タケルもデスアーミーとの戦いに参加する。ジョルジョはそれを後ろから見守っていた。
「よおジョルジョ」
そこに他のシャッフル同盟のメンバーが来た。
「あのタケルってのはかない筋がいいみたいだな」
「おいらもそう思うよ」
「格闘家ではないようだがな」
「ええ」
ジョルジョはそれに頷いた。
「それでは私達もタケルさんに負けないように頑張りましょう」
「おう、シャッフル同盟の名にかけて」
「この世に正義がある限り」
「悪は全ての力で粉砕する!」
四人が一斉に動いた。そして周りにいるデスアーミー達を粉砕していく。圧倒的な力であった。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」
「ハイハイハイハイハイハイハイハイッ!」
「ヌウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
「ムンッ!」
チボデー、サイシー、アルゴ、そしてジョルジョの力はデスアーミーのそれなぞ問題にはならなかった。彼等は疾風の様な速さで敵を屠っていく。しかし彼等だけではなかった。
戦場に何やら風が舞った。それと共に輪が数体のデスアーミーを両断した。
「誰だっ!」
ドモンはそれを見て声をあげた。
「ギガノスの残党か!」
「あたしをあんなのと一緒にしないでくれる!?」
ドモンの目の前のビルの屋上から声がした。
「折角助けに来てあげたのに」
「御前は」
「アレンビー=ビアズリー」
アルゴがそこにいるガンダムを見上げて言った。
「ノーベルガンダムか」
「ノーベルガンダムゥ!?」
ミサトがそれを聞いて顔を顰めさせた。
「また訳のわからないガンダムが出て来たのお!?」
「ネオスウェーデンのモビルファイターよ」
ニナが彼女にそう説明する。
「何でも女の子に姿を合わせたガンダムらしいわよ」
「女の子ねえ」
ミサトはニナの話を聞きながらあらためてそのガンダムを見た。見れば何かセーラー服を着ているようであった。
「確かに女の子らしいけれど」
ミサトの顔はそのままであった。
「何かあれじゃあセーラー服を着た女子高生じゃない」
「貴女もそう思う?」
ニナがあらためて問うてきた。
「ええ」
「私もそう思うわ」
見れば彼女も顔を顰めさせていた。どうやら現実を必死に自分に言い聞かせているらしい。
「あれでもガンダムなのよ」
「そうなのよね。ううん」
ミサトは一言漏らした。
「何かガンダムも色々いるわね」
「そうね」
ニナもそれに頷いた。そして戦いに目を戻す。
「で、あれ強いの?」
「どうかしら」
ニナは首を横に捻った。
「とりあえずは強いでしょ。仮にもモビルファイターなんだし」
「そうね」
「ただ」
「ただ?」
「どうせ変なのに決まってるでしょうけれどね」
「同感」
二人は半ば諦めていた。そして戦いを見守っていた。
「まさか御前が来るとはな」
「久し振りね、アルゴさん」
アレンビーはアルゴを見下ろしてそう声をかけてきた。
「元気だった?まあ見たところ元気みたいだけれど」
「ああ」
アルゴは憮然とした声で答えた。
「俺はな。御前もそうだったみたいだな」
「まあね」
アレンビーは明るい声でそれに頷いた。
「それでどうしてここに来たんだ?」
「どうしてって?決まってるじゃない。助けに来てあげたのよ」
「助けに」
「そうよ。ロンド=ベルをね。ネオスウェーデンの政府から直接言われたのよ」
「初耳だな」
大文字はそれを聞いて呟いた。
「サコン君、知っていたかね」
「どうやら急に決まったみたいですね」
サコンはそれにそう答えた。
「多分ミスマル司令が手回ししてくれたんでしょう。あの人ならやってくれますよ」
「ふむ」
大文字はそれを聞いて考える顔をした。
「だとしたら有り難いな。それではアレンビー君」
「はい」
「喜んでその申し入れ受けたいが。いいかね」
「勿論ですよ」
彼女は明るい声でそれに応えた。
「その為に来たんですから」
「そうか、それは何よりだ」
大文字はそれを聞いて納得した。
「それでは宜しく頼むよ」
「はい!」
すぐにアレンビーは動いた。天に跳ぶ。
「行くよっ!」
そしてリボンを取り出した。
「ビームリボン!」
それでデスアーミーを撃つ。一撃で粉砕していく。
「強いわね」
それを見てミサトが呟く。
「ニナの言う通りね」
「ええ」
ニナがそれに頷く。
「けれど一つ気になることあるのよ」
「何かしら」
「何でアルゴは彼女を知っていたのかしら。それもよく知っているようだけれど」
「そういえばそうね」
ニナもそれについてふと考えた。
「アルゴっていえばねえ」
「ええ。ナスターシャさんよね」
「呼んだか」
ここで低い女の声がした。そして軍服の眼鏡をかけたきつそうな顔立ちの女がラー=カイラムの艦橋に姿を現わした。
「あ、ナスターシャさん」
「うむ」
彼女は二人を見て頷いた。彼女はナスターシャ=ザビコフ。ネオロシアのガンダムファイトの監督である。今はアルゴに同行しロンド=ベルに参加している。チボデーギャルズや少林寺の僧侶達と同じである。
「アルゴとアレンビーのことで聞きたいようだな」
「まあ話してくれるんなら」
「何かあったの?」
「アルゴはアレンビーに負けたことがある」
彼女は一言そう言った。
「嘘」
「本当のことだ。ガンダムファイトでな。四十八秒で負けた」
「あのアルゴが」
「そうだ。あっという間にな。恐るべき強さだった」
アルゴの強さはもうロンド=ベルの者ならば誰でも知っていた。そのアルゴを秒殺するとはそれだけで信じられないものであったのだ。
「あのアレンビーの強さは本物だ。それは私が保証する」
「本物、か」
「けれど一見じゃわからないわよね」
「私も最初はそう思った」
ナスターシャは言った。
「だが見ていればいい。それでわかる」
「わかったわ」
二人はそれに頷いた。
「じゃあ見せてもらうわ。ネオスウェーデンのモビルファイターをね」
「ちょっち怖いけどね」
「ふふふ」
ナスターシャはそんなニナとミサトを見て笑った。
「では見ておいてくれ。我がネオロシアのアルゴもな」
アルゴはもう戦闘に戻っていた。そのハンマーでデスアーミーを破壊していく。まさに鬼神であった。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
「アルゴ、張り切ってるな」
そこへイサムがやって来た。
「何か見ている方がやる気になってくるぜ」
「御前はそうだな」
アルゴは彼に顔を向けてそう答えた。
「では見ているといい」
「おいおい、俺だってやるぜ」
イサムはそう言葉を返した。
「何せガルドの奴に撃墜数で勝たなくちゃいけねえからな」
「それに勝てると思っているのか」
ウィンクしながら言うイサムの側にガルドもやって来た。
「御前は今回まだ八機しか撃墜していない」
彼は言う。
「俺は十機だ。それで勝てると思っているのか」
「ああ、勝てるさ」
彼は言った。
「二機位これでな」
バトロイドからガウォークに変形しながら言う。そして前にいる二機のデスアーミーを瞬く間にその拳で破壊した。
「どうだ」
「その程度か」
だがガルドはそれを見ても冷静だった。
「それでは俺がもう一機倒せば済むことだな」
「じゃあ俺は二機倒してやるぜ」
「おい二人共」
張り合う二人の上にフォッカーがやって来た。ファイターになっている。
「少佐」
「そろそろアルビオンに戻れ」
「あれ、何かあったんですか?」
「もう戦闘も終わりだ。見ろ」
見れば戦場にデスアーミーは殆ど残ってはいなかった。その残り僅かなデスアーミー達に今クーロンガンダムとシャイニングガンダムが攻撃を仕掛けようとしていた。
「行くぞドモン!」
「はい、師匠!」
二人はあの技を放とうとしていた。全身に気を込める。
「超級覇道・・・・・・」
「電影弾ーーーーーーーーーーーーっ!」
マスターアジアが飛ぶ。そして周りにいる敵を一掃してしまった。それで戦いは終わりだった。
「すげえ」
イサムはそれを見て一言そう漏らした。
「何回見ても無茶苦茶な強さだな」
「そうだな」
フォッカーがそれに同意した。
「桁外れの強さなのは事実だな」
「はい」
ガルドが頷く。
「あの強さは少し常識を超えています。現実のものとは思えません」
「だが現実だ」
しかしそんな彼等にアルゴがこう言った。
「アルゴ」
「だから俺達は今ここにいるのだしな。違うか」
「いや」
イサムが彼に対して言った。
「その通りだ。無口だがいいこと言うじゃねえか」
「褒めても何も出ないぞ」
「ウォッカもかい?」
「酒は別だ」
「そうか。じゃあ後で飲もうぜ」
「うむ」
「おい、俺も入れろ。最近クローディアに止められていてな」
フォッカーも入って来た。彼等は酒の話をしながら艦に戻った。これも勝利者の特権の一つであった。
「さてドモンよ」
戦いが終わりマスターアジアはあらためてドモンに顔を向けた。
「また腕をあげたようだな」
「有り難うございます、師匠」
「近いうちにわしを越えるかも知れんな」
「いえ、そのような」
「謙遜はよい。わしにはよくわかるからな」
「はい・・・・・・」
「そしてこのデスアーミー達だがな」
「何かあるのですか」
「うむ。この者達はDG細胞により動いている」
「DG細胞!」
それを聞いたドモンの顔色が一変した。
「あれのせいだったのですか」
「そうだ。御前が何を為さねばならんかはわかるな」
「はい」
ドモンは強い声で答えた。
「俺は今その為に戦っているのですから」
「そうだ。わかっていればよい」
マスターアジアはそれを聞き満足そうに頷いた。
「だがあれは」
「あれは・・・・・・!?」
「いや」
しかしマスターアジアはドモンの問いに言葉を濁した。
「何でもない。気にするな」
「はい」
「然るにドモンよ」
彼は言葉を変えた。
「今はまだ御前は未熟な部分もある。しかしな」
「しかし」
「修業を積め。さすれば御前はより大きな存在となるだろう」
「はい」
「それではわしはまた去ろう」
「何処へ行かれるのですか、師匠」
「ローマだ」
彼は一言そう述べた。
「ローマ」
「うむ。今度はあそこが気になってな。ミケロ=チャリオットは覚えていよう」
「はい」
ネオイタリアのガンダムファイターであった。マフィア出身の札付きの男である。彼はドモンが倒したのであった。
「あの者がまたよからぬことを企んでいるらしい。それを阻止しなくてはな」
「それでしたら俺も」
「ドモン」
だが彼は弟子を制止した。
「今御前にはやらなくてはならぬことがあるではないか」
「しかし」
「それともわしが遅れをとるとでも思うのか」
「いえ」
「使徒を素手でぶっ潰すような人に限ってそれはないわよね」
「アスカ、何か最近すれてきとらへんか?」
十三がそう突っ込みを入れる。
「たまには息抜きも大事やぞ」
「何かトウジじゃなくて十三さんでも似たようなものね」
「そら御前関西弁やからやろが」
「何か隼人さんやサコンさんと話してるような気にもなるけれど」
「それは言わん約束になっとるで」
「はいはい、じゃあそうしとくわ。じゃあ帰りましょ」
「烏もないとるしな」
「・・・・・・何か言っていることが古くない?」
「気にすんなや」
アスカと十三がそんなやりとりを続けていた。そしてその間にもドモンとマスターアジアは話を続けていた。だがそれもやがて終わりに近付いていた。
「それではドモンよ」
「はい」
「機会があれば、いや必ずまた会おう」
「はい」
マスターアジアは風雲再起を呼んだ。そしてそれに乗った。
「それではな」
そして彼は大空に消えていった。後に馬のいななきだけを残して。
「行ったか」
ロンド=ベルの面々はそれを見送って呟いた。
「相変わらずとんでもねえ爺さんだな」
甲児が半ば呆れたように言った。
「あれだけ派手にやってくっるとな。こっちまで気持ちよくなってくらあ」
「甲児君らしいわね」
さやかがそれを聞いて笑う。
「意外と合うんじゃないかしら」
「確かに嫌いじゃねえな」
甲児はそう返した。
「あんな人は見ていて気持ちがいいぜ」
「じゃあ甲児も弟子入りしてみたら?もっと強くなるわよ」
「いいかもな」
マリアの言葉に同意する。
「いっちょやってみるか」
「おいおい甲児君」
そんな彼を大介が止めた。
「それはせめてこの戦いが終わってからにしてくれよ」
「あ、そうだった」
「全く甲児君の無鉄砲さにも困ったものだな」
鉄也も少し苦笑して言う。
「確かにあの力は凄いがな」
「そうですね」
洸が頷く。
「けれどあの人がもし敵になったとしたら」
「俺達でも相手になるかどうかわからんな」
「ああ」
神宮寺の言葉に賛成した。
「おい、馬鹿なことを言うな」
ドモンがそれに反論した。
「そんな筈がないだろうが。師匠が」
「まあな」
一応はそれに同意する。
「だがあの力・・・・・・。恐るべきものには変わりない」
ブライトが最後にそう呟いた。皆今はマスターアジアの去った方を見送るだけであった。そして重慶に向かうのであった。ウォンに相変わらずの疑念を覚えながら。
「さて、マーグだが」
またあの声が聞こえてきた。やはりあの部屋にいる。
「そろそろ行かせてもいい頃だと思うが」
「それですが」
それに注進する者がいた。
「実はマーグは今もうここにはおりません」
「何っ!?」
玉座の男はそれを聞いて声をあげた。
「それはまことか」
「はい」
下にいる者はそれに答えた。
「どうやら既に地球に向かっているようです」
「何故だ」
「もしかするとマーズのことを知ってではないでしょうか」
「マーズのか」
「はい」
下の男はまた答えた。
「もしそうだとすれば厄介なことになりますが」
「そうだな」
玉座の男はそれを聞いて頷いた。
「だとすればすぐにでも動こう」
「それでは」
「あの者を呼べ」
「はい」
彼はそれを受けてすぐに動いた。そして一人の少女が呼ばれてきた。
「御呼びでしょうか」
「うむ」
玉座の男はそれに頷いた。
「実はそなたにすぐに地球に行ってもらいたいのだ」
「地球にですか」
「そうだ。実はマーグがそちらに向かったらしい」
「マーグが」
少女はそれを聞いて考える声を出した。
「だとしたら厄介なことになりますね」
「そなたにもわかるな」
「はい」
少女は応えた。
「それではすぐにでも」
「うむ、頼むぞ」
「ハッ」
こうして少女は姿を消した。後には気配もなかった。
「これでよし」
「あの娘もよく働きますな」
さっきの下の男がそう言った。
「あの者にも守らなければならないものがあるからな」
玉座の男はそれに対してそう返した。
「守らなければならないものですか」
「そうだ。母星だ。思えば我等の掌中にある星は実に多いな」
「はい」
「その中の一つに過ぎんが。役に立ってくれるわ」
「そうですね。それでは地球はこれで」
「後はマーグとあの娘により全てが終わる。全てがな」
話は終わった。彼等はそのまま闇の中に消えていった。そして後には何も残ってはいなかった。
第二十三話 完
2005・5・24
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