インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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タッグマッチ前
「んで、結局は箒と組んだと」
「ああ」
「そんなくだらないことで俺と話をしにきたと?」
「え、ああ」
「乳繰り合うのは部屋でしろよ。お互いのプライベートに干渉したくないから俺は別室を希望しているんだ」
「いや、俺はその気はなくてだな―――!?」
一夏の顔が途端に引き攣る。それはおそらく俺が切れているからだろう。
「何? さっさと自分の作業に戻れば? 俺は今すごく忙しいんだけど」
「し、失礼します」
武装の点検をはじめ、俺はディアンルグを来る日のためにオーバーホールしていた。
「かざみん、それを一人でするの~?」
「ああ。自分のものには手間暇かけてするのが普通だろ」
そう答えつつも作業は止めない。時間がないからな。
一応、今までは簡単な整備に留めていたが、アイングラドとその操縦者が亡国企業にいるとなると、こっちは万全の状態で望まないと勝ち目はない。そのために残り一週間は朝は体を鍛え、放課後はすべて整備に費やした。
(《迅雷》《キロプテル》《迅光》《インパクト・スラッグ》に、IS用拳銃《スワロー》を二丁入れておくか。近接武器は《斬魂》《斬血》《炎閃》《メタルクロー》《ストライクバンカー》。盾に《ヴァンピーア》と特殊シールド《力壊》を入れておこう)
そうすると、メモリがいっぱいになった。《斬血》が入らないので武装としてではなく装甲として入れよう。これでもかなり容量を小さくしたんだが。どうやらこれがディアンルグの武装となってしまいそうだ。
「ふぅ。これでよし」
オーバーホールもセバスがちょうどいいタイミングで終わらせ、誰も使っていないアリーナでテスト飛行を開始する。それも爆発的な威力で、現在の紅椿に劣らないような性能だ。
『高機動ウイング《ファルケン》の調子はいかがでしょうか?』
(こいつは最高だな。しかも制限がかかっているとはいえ紅椿もこんな感じだった気がするが)
『ええ。以前観測した紅椿のトップスピードに近い状況ですね。それゆえに狙われる可能性は高いですが』
(でも、どうしてそんなにシールドエネルギーが減ってないんだ?)
これは元々俺が考えていたものだが、セバスが途中でやりたいというのでやらせていた。
『簡単ですよ。ただ《ファルケン》にはシールドエネルギーとは別のエネルギーを加えており、それが原因で加速性能が向上してます』
それはすごいな。………すごいけど……。
(もうキャノンボール・ファストがないんだからいらなくないか?)
『いえ。アイングラドが出てきた以上、形振りを構っている状況でないことはわかりきったこと。そのための《ファルケン》です』
確かにセバスの言う通り、アイングラドの性能を知っているから形振りは構えない。しかし、あれは並大抵のISでは歯が立たない。むしろ壊される。
(まぁ、そうか。シールドエネルギーを無駄に使わないならそれで……)
『後、他にも具体的な物を用意しましたのでしばらくお待ちください』
そう言うやいなや途端にディアンルグの形状が変わった。
《ファルケン》は4対の8枚羽で構成されている。そしてその羽に当たらないように《キロプテル》が背部に収納された。元々別の場所―――オルコットのブルー・ティアーズのようにスラスター部分に当たる部分に収納されていたが、今は背部に収納されている。
そして《ファルケン》はさっきまで背部に直接着けていたのだが、それが非固定浮遊部位と化し、今では完全にディアンルグのスラスターとなった。
『更新を完了しました。では、飛んでください』
言われた通りに飛行してみると、どういうことかさっきよりも速く移動できた。
(どういうことだ?)
『さっきまでは固定していたので他部位に問題を起こさないように出力を下げていました。ですが今は固定していないので本来の出力を発揮しているんです』
なるほど。それなら納得だ。
そして一度整備室に戻って調整を施してまた自室に戻った。
■■■
―――マドカside
「ねぇ、スコール。今度IS学園に行ってもいいかしら?」
食事中、ノクトはスコールにそう聞いていた。
「どうしてかしら?」
「兄さんを連れてきたいから♪」
本当にこいつはブラコンだなと思う。
だがこいつがそこまで風宮祐人に執着するのには理由がある。
それは彼に宿る頭脳―――それが篠ノ之束にも匹敵するらしい。が、それは私を黙らせる口実であって、本当は自分が得するからだろう。
「あんな男に価値があるとは私は思わないけどな」
「レズは黙ってなよ」
「なんだ―――と………」
うるさい秋女―――オータムが急に口を閉じる。それはノクトが肉を切るのに使用していたナイフをオータムの首に当てたからだ。
「大体、兄さんを相手にしてよく生きてるね。本気を出さなかったんだってすぐにわかったよ」
「ねぇ、ノクト。彼はそんなに強いのかしら?」
スコールが尋ねると、ノクトはすぐに頷いた。
「たぶん今は牙が抜けているからエムに勝てるかわからないけど、IS学園に入る前は強かったよ」
「じゃあ、新たな戦力として期待できるかしら?」
「むしろ単機でIS学園を倒せるかな? まぁ、織斑千冬が出てきたらどうなるかわからないけど、最近は出てきてないから大丈夫かな?」
「そう。なら行ってらっしゃい。例え無理でもそれなりのダメージを与えてきてくれるかしら?」
「うん。努力する」
そういうことで決着がつくかと思っていると、
「スコール!!」
―――バンッ!!
オータムがテーブルを叩きながら立ち上がった。
「どうしたの?」
「どうしたじゃねぇ!! なんでそんな男なんか―――」
―――ドガシャァンッ!!!
私は一瞬だが悪寒が走った。
私もこれを直に受けたことがある。それは世間を馬鹿にしていた時にカッターで遠慮なく殺されそうになった。
「ねぇ、雑魚風情がいきがらないでよ。虫酸が走るからさ」
「て、テメ―――」
オータムが反論しようとすると、ノクトがオータムの首を締め出した。
「は? 牙を抜かれている兄さん相手に白式のコアを奪われると同時に人質も奪われたクズが何言ってんの? それに―――牙を抜かれていなかった今頃あなた、死んでるよ? それとも―――今ここで殺してあげようか?」
それは何の冗談でもなく、本気。私の時はなかったが、今では完全に殺そうとしている。
「やめなさい、ノクト。さっきの件、取り消すわよ」
「………」
―――ドサッ
明らかに嫌だと思っている態度でノクトはオータムを開放し、何食わぬ顔で食事を再開する。
(あの男が来るとどうなるだろうか?)
ふと風宮祐人が来るとどうなるか想像したくなったが、私はノクトの話しか知らない。それゆえにできなかった。
だが、あの時の光景は今でも覚えている。もしあの時、その男が壊れたマリオネットの様に海に落ちていなかったら絶対にオータムは死んでいた。
(確かに、戦力にはなるな)
そう思いながら私は残っている料理にあるつくのだった。
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