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有栖キャロの小学校物語

作者:blueocean
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第18話 魔導師がやって来ました………(前編)

「みんな明けましておめでとう!いい冬休みを送れたかしら?」

さて3学期になりました。
クリスマスにリンスちゃんと出会ったり、フェリアお姉ちゃん達がアイドルデビューしたりして色々忙しかったけど何だかんだ楽しかったです。

「今日から3学期。1年生も後僅か。もうお兄さんお姉さんになるんだから何時までも甘えないでしっかりするようにね」
「そうだぞ、みんな1年生の後輩達に色々教えられる様にするんだぞ?」
「あんたが余計な事を教えないかが一番心配なのよ」
「はははは!!何を言ってるんだか、なあみんな?」

そうみんなに声をかけるが誰もエローシュ君に声をかけない。

「あれどうしたみんな?」
「さあ、バカはほおっておいて提出物の回収始めるわよ」

さあ、3学期スタートです。











「ねえキャロ、バレンタインデーはどうするの?」

1月に学校が始まり下旬に入りました。特に何も無く、平和な時間が過ぎていきます。冬の前に起きた事件が嘘のようです。
そんな日々の昼休みの食事中、夏穂ちゃんが質問してきました。
因みに男子の3人は他の男子に誘われ、サッカーしに行ってます。

エリオ君、大活躍です。

「私はお姉ちゃん達と一緒に作るよ!お兄ちゃんに喜んでもらえればいいけど………」
「相変わらずのお兄ちゃん子ね………ルーは?」
「お母さんと一緒に作る。みんなにあげるつもり」
「まあ私もそうね………雫は?」
「ふぇ!?わ、私は………」

そう言ってサッカーをしている男の子達を見る真白ちゃん。
あっ、今エローシュ君が顔面ヘディングをしました………

「うん、頑張ってみる………」
「真白、あのバカにあげるの?」
「う、うん。………ってみんなにもあげるよ!!」

顔を真っ赤にして慌てながら言う真白ちゃんはとっても可愛いです。

「ルーはエリオにあげるんでしょ?」
「当然よ」

ハッキリと答えるルーちゃんに質問した夏穂ちゃんが驚いています。
真白ちゃんみたいに真っ赤になると思っていたみたいです。

「そう言う夏穂はエローシュに当然渡すんでしょ?」
「ま、まあね………」

少し言い淀みながら答える夏穂ちゃん。
あ、あれ?真白ちゃんが俯いちゃったけどどうしたんだろう………?

それにさっきから雰囲気が変な感じがする………ギスギス?

「わ、私はみんなにあげるよ!!エローシュ君にも佐助君にもエリオ君にも!!」

少し沈黙になり、空気の重さに耐え切れなかった私は、皆に宣言するように言いました。
すると………

「「「あはははは!!」」」
「えっ、何!?」

「キャロって可愛いわね」
「レイ兄に本当に似てきたわね。ちょっと将来が心配よキャロ?」
「キャロちゃんおもしろい」

「何でそんな反応!?」

何か私だけ蚊帳の外みたいです。
私に何が足りないのでしょうか………?









2月………



「エローシュ…………!!!!」
「止めて~!!」

学校に来て早々男子に襲われるエローシュ君。
まるでリンチをしているような状態です。

「あれ?これって………」

その集団から飛んできた上着。これって確か………

「さっきエローシュが着ていたわよね?」

ルーちゃんも拾ったのか靴下を持っていた。

「え、エローシュ………?」

嫌な予感がしたのか夏穂ちゃんも心配そうに声を掛けます。

「え、エリオ君これって………」
「ま、真白、汚いから持っちゃ駄目!!!」

あれって男の子のパンツですよね………
お兄ちゃんと同じトランクスを履いていたみたいです。

私は見慣れていますけど見たことのない女の子は皆目を背けてます。
そんな中、騒動が静かになり、集団も離れていきます。

「テメェら!!こんな事して女の子がチョコくれると思ってんのか!?こういう時はソワソワしてるのがセオリーじゃ………」

「「「「「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」」」

女の子の大声が響きました。

「エローシュ、アンタ何て格好!!」
「へ?何て格好って………あり?」

今やっと気がついたのか自分の姿を見て呆然としています。

「よし、みんな落ち着け、冷静に冷静にだ。特に女性陣、手にもっている物を先ずは地面に置こうか」
「………先ずはそのぶら下げた象さんを隠せーーー!!!!!!」

そんな夏穂ちゃんの声が始まりで女の子の集中砲火が始まりました。

「俺が何したってんだよ………」
「お疲れ………」

裸でうつ伏せに倒れているエローシュ君を見て流石に不憫に思い、服を持ってきてあげ、上から被せてあげました。
因みに女の子達は教室の外から様子を見てます。

「キャロ、こっち来なさい!!汚れるわよ!!」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんの見たことあるし、お兄ちゃんのより可愛いし」
「キャロ!!それ言うとレイ兄が可哀想だから止めなさい!!」

顔を真っ赤にしてルーちゃんが叫んでますが、どうしてそんなに真っ赤なのでしょうか?

「それにエローシュ君のってお兄ちゃんと比べたら………天と地くらい小さいし………」
「ぐはっ!?」

「「「「「エローシュ!!」」」」」

吐血し、倒れるエローシュ君に男子の皆が駆け寄ります。

「酷いよキャロちゃん!!僕達はこれからが成長期なんだ!!君のお兄さんがどれくらいかは知らないけど俺達だって同い年になったらそれくらいは………」
「むっ、お兄ちゃんをバカにしないで下さい!!夜美お姉ちゃん達は『受け入れるのには勇気がいるな………』って言うほど何です………モガモガ」

「キャロ、もう喋るの止めなさい!!!」

慌ててルーちゃんと夏穂ちゃんに口を塞がれてしまいました。
だけど何でこの2人だけこんなに慌ててるんだろう………?

「因みに『受け入れる』って意味分かって言ってる?」
「えっ?………そう言えばどういう意味何だろう………」
「「はぁ………」」

「………何この惨事は?」

取り敢えず先生が来た事で事態は収まりました。
後にこの事件は『血のバレンタイン』と男子の中で語り継がれるらしいのですが、それを知ったのはもっと後の事です………














さて、バレンタインデーも終わり学校に再び平穏が。
当日はエリオ君がお兄ちゃんから聞いた話みたいにクラスの男の子達に追いかけられて慌ただしかったですが、それぞれ楽しい一日になったと思ってます。
私としてもお兄ちゃんに喜んでもらって嬉しかったです。
何か喜び方が異常と言える位凄かったですけど………

「暇だな………」

そして今日は皆で秘密基地に。………と言っても特にすることなく、エローシュ君は漫画を、佐助君が小説、夏穂ちゃんが雑誌、ルーちゃんとエリオ君がゲーム、私と真白ちゃんがお話とバラバラな事をしてました。

「そうね………何か起きないかしら?」
「起こすのはいつもエローシュ………」
「いや、何もやらかさないよ!?」

「こら、エリオ!!それ反則!!」
「勝負は非情だよルー」

「そう言えば真白ちゃん、あの蒼い宝石って誰から貰ったの?」

そんな中、私はふと真白ちゃんが私達のグループに入った際に上級生に取り上げられた宝石の事を思い出しました。

「………まあ皆にだったら話してもいいかな………私ってね、お父さんがいないんだ」
「いない………?」
「お母さんの話だと私が小さい時に事故に巻き込まれたらしいんだ………」

少し悲しそうに喋る真白ちゃんに皆のダラケた空気が消え、聞き入っていました。

「でね、お父さんの形見で、お母さんが『これはお父さんがあなたに残してくれた大事な物だから肌身離さず持って大事にしなさい』って。だからこれは私とお父さんを繋ぐ、大事な大事な一番の宝物」
「そうなんだ………」
「だからみんなには本当に感謝してる。こんな私だけど、これからも仲良くしてね」

そう言って大事そうに宝石を手に持つ真白ちゃんに皆の悲しそうな顔も明るくなる。

「………よし、決まった!!今日は駄菓子パーティでもするか!!」
「いいわね、雫が秘密を教えてくれた記念日って事で!!」
「同意………」
「私も行くわ、エリオも行くよね?」
「うん、僕も行きたい」

「みんな………キャロちゃんも行こう」

反対側に座っている真白ちゃんが私に手を差し伸べてくれます。

「うん!!」

私はその手を取り大きく返事をしました………










「何………?」

異変に気がついたのは学校を出て少し歩いてからでした。
駄菓子屋は学校から10分程歩いた商店街の中にあるお店なのですが、今日は凄く不自然です。

「誰もいない………な。おかしいな、夕飯時だしいつもなら多くの人がいると思うんだけど………」
「それに空が変………」

佐助君が空を指差し、空を見ると夕日の色では無く、別の空間にいるように感じます。

「エリオ………!!」
「うん、これは………」

「封時結界。僕のは特別でね、他の魔導師に決して探知でない結界を貼ることが出来るんだ」

後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには1人の男性がいました。

「ふ、封時?何を言っているんだ?それに俺達みたいな子供に何の用だ?」
「君達には本当は要は無い。要があるのは、彼女が持っているであろう宝石だ」

そう言って真白ちゃんを指さしました。

「その宝石はかなりの価値があるものだ、出来れば穏便に渡して欲しい」
「………嫌だと言ったら?」

エローシュ君が冷静に相手に言います。

「少し痛い目にあってもらうことになる」

そう言って男の人は手に剣を出しました。
あれは………デバイス!!

「狼獣召喚………」

そう言うと複数の魔方陣が男の人の下から現れ、そこから私達より1回り大き狼が現れました。
牙が大きく血走った目で私達を見てきます。

「な、何だあれ………」
「もう一度言うよ、私は優しさで提案しているんだよ?こんな狼に噛まれでもしたら腕なんて簡単に引きちぎられるよ?それは恐いだろ?」
「………」

エローシュ君を始め誰も返事をしません。
私も恐怖感はあったものの、あんな狼よりも恐いものを見てきたのでそこまで恐怖感にかられることはありませんでした。
エリオ君とルーちゃんも同様で、動揺は少ないみたいです。

だけどエローシュ君達は………

「………まるで魔法みたいだな」
「魔法だよ、知らないのかい?」
「魔法使い………」
「魔導師だよ、私はその中でも珍しい召喚術の使い手でね。さあ無駄話はそれまでだ。これでも忙しい身でね、早く答えてもらおうか………」
「み、みんな………」

真白ちゃんが震えながら皆を見ます。
ですがエローシュ君も佐助君も夏穂ちゃんも特に動じず、周りを見回します。

「………面白くないガキ達だ。ビビる訳でも無く冷静に周りを見回すとは………どうしても逃げるつもりらしいね」
「当たり前だ、真白の持っている宝石は真白にとって大事な物なんだ。渡してたまるか」
「そうね、それにアンタかなり胡散臭いし、渡しても証拠隠滅とか言って殺しそうよね」
「僕達を舐めない方がいい………」

そんな3人の答えに相手だけでなく、真白ちゃん、ルーちゃん、エリオ君、そして私も驚きました。

「………お前逹、本当に子供か?中身は大人って事は無いだろうな?」
「さあ、だけど子供だからって舐めない方がいいぜ」

そう言いながらエローシュ君は手でサインを出しました。
そのサインは鬼ごっこでよく使うもので、手の向けた先にどのくらいのスピードで走るとかを、指の数で指示する物です。

(全力に真っ直ぐ逃げる………)

「まあいい、どっちみち力づくで負ける事はありえない。さっさと終わらせよう」

そう言って男の人が指示を出すと一斉に狼達が私達に向かって駆け出したました。

「今だ!!」

エローシュ君の合図でみんな一斉に走り出します。
ですが、所詮子供の足、直ぐに追いつかれそうです。

「ハハハ、頭は良いみたいだが所詮やはり子供………」
「必殺、唐辛子煙幕!!」

エローシュ君が地面にスーパーボールの様なボールを思いっきり叩きつけると、そのボールから赤い煙が巻き起こりました。

「キャウン!!」

狼達はモロに吸ってしまったのか、その場で蹲り、とても苦しそうにしています。

「なっ!?あのガキ………!!」

そして私達は再び、エローシュ君の手サインを見て、それぞれ別れました。
エリオ君、ルーちゃん、佐助君。
私、夏穂ちゃん、エローシュ君、真白ちゃんと2組に。

「くそっ!?2組に別れやがった!!手柄を独占するチャンスを………これが上手く行けば組織でも幹部に上がれるのに………くそっ!!早く奴等を追え!!!」

男の人の声が響く中、私達は一生懸命走り続けました………













『これであの狼の嗅覚は完全に使えなくなった。この商店街は結構複雑だ、簡単には見つからない………』
「俺達の庭だしな」

商店街の八百屋さんの二階からエローシュ君が別れた佐助君に連絡をかけました。
簡易トランシーバーです。
小さいのがウリらしく、サイズは推理漫画にあった探偵バッチ位です。

『これからどうするエローシュ?』
「建物の中、2階や3階で身を潜めよう。俺達じゃあの狼を倒せる策が………無いわけじゃ無いけど危険過ぎる。助けを待って粘った方が良い」
「そうね、あんな狼に私の技もかけられないし………」
「エローシュ君、真白ちゃん、それは………」
『無理だよ、これは封時結界って言ってたでしょ?普通の人じゃ気がつかないし、あの人が言ったことが本当かどうか分からないけど、特別性って事は魔導師でも簡単に見つけられない物かもしれない』

私が説明しようとした時、代わりにエリオ君が説明してくれました。

「エリオ、お前………」
『説明するよ、僕達の事を………』












「魔導師………知らなかった………」
「まさかキャロもそうだったなんて………」

エリオ君は私とルーちゃんの事、そしてミッドチルダの事、家族は魔導師だって事も話してくれました。
流石にみんな驚いているみたいで、嫌われちゃうか心配です………

「じゃあキャロちゃんは本物の魔法少女なんだね!」
「真白、その言い方だと日曜の少女アニメみたい」

えっと………見て無いから題名が分からないです………

「まあいいや。取り敢えず魔導師ってことはああいいうのにも詳しいよな?何か弱点とか無いか?」
「基本的に魔力が無くなれば召喚した物を此処に呼び出し続ける事は出来なくなるよ。でもあの人は1度に5匹の狼を出したし、それは難しいかも………」
『そうね、流石に1日中出しっぱなしだったら魔力切れ起こすかもしれないけど………』
「それは無理だな。それじゃあ嗅覚も戻ってしまう………あの狼って地球にいる狼と代わりないか?」
「そんなに代わり無いと思う」
『そうね、嗅覚をやられて捜すのに手間取っている所を見ても犬と変わらないわ』

私とルーちゃんの意見を聞き、考え込むエローシュ君。

「エリオ、お前って戦えるのか?」
『僕はレイ兄とルーのお父さんから戦闘訓練してるからね、自信は結構あるよ。それにデバイスも持ってるし』
「ルーちゃんとキャロは戦闘出来るの?」
『私とキャロはあの男と同じ、召喚術を使うの。私はデバイス今日持ってきてないからそんなに強い虫を召喚出来ないけど、キャロはデバイス持ってるし、フリードがいるわ』
「フリード?」
「あっ、この子です。行け、フリード!!」

懐から小さなボールを取り出し、真ん中にあるボタンを押すと手のひらサイズに膨らみました。
そして投げるとポン!!と音と共にボールからフリードが現れました。

「クキュー!!」
「おおっ!!」
「小さな竜!?」
「可愛い!!」

驚く2人ですが真白ちゃんだけ、抱きかかえ、ナデナデしてます。

「しかもモンポケ仕様!!俺、メッチャ欲しいんだけど!!」
『そんな話は後で!!そのフリードなんだけど、キャロの魔法で巨大な竜に出来るわ。フリードならあんな狼全て駆除出来ると思うんだけど………』
「まあ確かに竜って響きだけでも強そうに聞こえるな………」

と言っても私はまだ私は完全に使いこなせている訳ではありません。
そんな私で熟練そうな相手の召喚術師を倒せるのでしょうか………

『で、どうするエローシュ?』
「………よし、決めた」

そしてエローシュ君の指示が言い渡されます………  
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