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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第十二話  火星からの亡命者

                第十二話  火星からの亡命者
「エリカは見つかったか」
 火星の上空をエイに似た巨大な戦艦が飛行していた。これはバームの戦艦であるガルンロールである。バームの司令官リヒテルはこれに乗り作戦を指揮しているのである。リヒテルはこのガルンロールの艦橋において周りの者にそう問うていたのであった。
「いえ、何処にも」
 スキンヘッドの大男が首を横に振ってそれに応える。彼の名をバルバスという。バームの実戦部隊の指揮官である。
「あの時の混乱により・・・・・・」
「そうか」
 リヒテルはそれを聞いて頷いた。
「ならばよい。エリカは死んだ」
「えっ!?」
 それを聞いて周りの者は皆驚きの声をあげた。
「リヒテル様、今何と」
「聞こえなかったか」
 リヒテルは彼等に顔を向けてまた言った。
「エリカは死んだ。そう申したのだ」
「しかしまだわかったわけでは」
 黒く長い髪をした女がリヒテルにそう言って宥めようとする。
「ライザ」
 リヒテルはそんな彼女の名を強い声で呼んだ。
「はい」
「エリカもまた翼を持つバームの民だ」
 リヒテルは言った。見れば彼等の背には翼がある。まるで天界の住人のようであった。
「その誇りは持っている」
「はい」
「ならば死んだ。おめおめ生き恥を晒すわけもない」
「ですが」
「バルバス」
 リヒテルは今度はバルバスに顔を向けた。
「ハッ」
「よもやエリカが地球人共の捕虜になったなどとは思ってはおらぬな」
「それは」
「ならばよい。エリカはこの余の妹だ」
 彼はその鋭い目をさらに鋭くしてこう言った。
「ならば生きて虜囚となるような恥は晒さぬ。ならば死を選ぶであろう」
「はい」
「よいな、皆の者。エリカは死んだ」
 リヒテルはここで一同に対して言った。
「今後は地球人共への正義の鉄槌、そして我がバーム十億の民の為にその身を捧げよ。よいな」
「ハッ!」
 皆リヒテルの言葉に対して敬礼した。リヒテルはそれを受けて頷いてから言った。
「ではこれより地球に向かう。さしあたってはこの火星より逃れた者達を追う。よいな」
 こうしてリヒテルの命が下った。彼等はそれに従い出撃する。今バームと地球の本格的な戦いが幕を開けたのであった。

 この頃ラー=カイラムは一路火星に向かっていた。その途中アルビオンとの合流を予定している。今彼等はその合流場所に到着した。
「アルビオンはまだか」
 ブライトは艦橋においてトーレスとサエグサに問うた。
「そろそろだと思いますけれど」
「先程の通信によるこ間も無くだそうです」
「そうか」
 ブライトはそれを受けて頷いた。
「ではここで待っていてもいいな」
「そうですね。そうしましょう」
「うむ」
 彼は頷いた。するとそこで通信が入ってきた。
「来たか」
「多分」
 モニターを開く。するとそこに古風な武人といった顔立ちの連邦軍の制服を来た男が現われた。
「久し振りだな、ブライト大佐」
「はい」
 ブライトは彼に敬礼して答えた。
「話は聞いている。すぐ火星に向かおう」
「はい、お願いします。シナプス大佐」
 彼がアルビオンの艦長である。見れば一隻の戦艦がラー=カイラムの方に接近してきていた。白いホワイトベースに似たシルエットの艦であった。
「そちらにいるウッソ達は元気ですか」
 ブライトはシナプスにそう尋ねた。
「うむ、元気でやっている。ジュンコ君やマーベット君もいるぞ」
「そうですか。ノイエ大尉はどうしていますか」
「彼はヘンケン隊に回ったよ。転属でな」
「そうだったのですか」
「本当はマーベット君と一緒にいたかったらしいがな。仕方がない」
「そうですね。それが軍人ですから」
「あちらでは子育てにも励んでいるらしい。それはそれで彼らしいがな」
「ははは、確かに」
「そのかわりにオデロに来てもらっているよ。彼も優秀なパイロットだ」
「はい」
 それは事実であった。オデロは先の戦いで腕をあげ今ではロンド=ベルにおいても知られたパイロットとなっていた。ウッソと並んで優れたパイロットと評価されている。
「バルキリーの新型機も乗せているしな」
「新型機」
「そうだ。VF-19だ。パイロットは金龍大尉だ。後でそちらに合流させる」
「わかりました」
「そして他にも補充の部隊を乗せているのだが」
「何でしょうか」
「コスモクラッシャー隊だ」
「コスモクラッシャー隊」
 ブライトはそれを聞いて考える顔をした。彼にとってはじめて聞く名であった。
「そうだ。大塚長官が結成した部隊でな」
「大塚長官・・・・・・。ああ、あの人ですか」
 その人物についてはブライトも知っていた。連邦軍環太平洋区極東支部に所属しておりかって警官であった。だがとある功績により昇進し、今では一つの部隊の長官を務めているのである。口髭を生やした優しい顔立ちの中年の男である。
「大塚長官が派遣してくれたのだ。ロンド=ベルの為にな」
「そうだったのですか」
「彼等は一機の戦闘機に乗り込んでいるよ。コスモクラッシャーという戦闘機にな」
「コスモクラッシャー」
「うむ。五人乗りでな。小さいがかなりの性能だ」
「それは何よりです。何で今は少しでも人手が欲しいですから」
「そうだな。火星からの難民の為だ。今彼等は何処にいるのか」
「火星を脱出して今は地球に向かってきております」
「そうか。ならばすぐに向かおう。一刻の猶予も許されん」
「はい」
「指揮権はブライト大佐、君が執れ」
「私がですか」
「そうだ。大佐になったのは君の方が先だからな」
 軍においては同じ階級でも序列があるのだ。任官順となっており、同期ならば士官学校等での成績で決められる。弊害もあるが命令系統を確立させる為に必要なのである。
「よろしいのですか」
「構わんさ。こうしたことは素直に形式に従っておいた方がいい。五月蝿い人もいるしな」
「成程」
 言うまでもなく三輪長官のことであった。彼は最早連邦軍においてももてあます程の存在であったのだ。
「ではそれでいきましょう」
「うむ。さて進路は」
「火星です。すぐに出発しましょう」
 こうして合流したラー=カイラムとアルビオンは火星に向かった。目的は難民達を保護することであった。これもまた軍人としての勤めであった。

 やがてラー=カイラムに通信が入って来た。通信者の名前は『砂漠の王子』であった。
「砂漠の王子?ああ、彼か」
「やっぱり来ましたね」 
 何やらわかったようなブライトに対してサエグサがそう相槌を打つ。ここで声が入って来た。
「お久し振りです、ラー=カイラムの皆さん」
 モニターに金髪の整った顔立ちの少年が出て来た。ガンダムサンドロックカスタムのパイロットカトル=ウィナー=ラパーナであった。名門ラパーナ家の若き当主でもある。所謂貴公子だ。
「カトルか。火星にいたとは聞いていたが」
「はい。他のメンバーも一緒です」
 ここで三人のメンバーがモニターに入ってきた。
「お久し振り、ブライトさん。元気そうで何よりだぜ」
「会えて何よりだ。また世話になる」
「どうやらラー=カイラムは間に合ったようだな。これでダイモスやナデシコ隊の負担も減る」
 茶色い長い髪を後ろで束ねた少年と前が長い茶髪の少年と黒い額のやや広い少年の三人が出て来た。デュオ=マックスウェル、トロワ=バートン、そして張五飛である。それぞれガンダムデスサイズヘルカスタム、ガンダムへビアームズカスタム、アルトロンガンダムカスタムのパイロットである。少年ながらそれぞれ腕利きのパイロット、かつ工作員である。
「ナデシコ、あああの艦か」
 シナプスはそれを聞いて言った。
「ミスマル中佐は元気か」
「ああ、元気だぜ」
「元気過ぎて困る位だがな」
 デュオと五飛がそれに答える。
「何とかあの人の作戦指揮もありここまで来れました。今からそちらに合流します」
「そうか。ところでヒイロはどうした」
「ヒイロはナデシコと一緒にいる。訳ありでな」
 トロワが答えた。
「ふむ、リリーナか」
「へへっ、ブライトさんもわかってるね」
「デュオ、そんなこと言ったら駄目だよ」
「いや、いい。それよりも御前達四人だけ何故ここに」
「先遣隊です」
 カトルがブライトにそう答えた。
「ミスマル中佐から言われまして。先にラー=カイラムの方へ向かって誘導してくれと」
「そうだったのか。それで難民達はどうなっている」
「皆ナデシコに保護されています。何とか皆さん御無事です」
「そうか。それは何よりだ。それでは今からナデシコに向かう。悪いが案内してくれ」
「はい」
 こうしてラー=カイラムとナデシコは四機のガンダムの誘導を受けてナデシコの方へ向かった。暫くしてまた通信が入ってきた。
「ナデシコからか」
「はい」
 トーレスが答える。すぐにモニターが入った。
「ど~~~も、ブライト大佐とシナプス大佐ですかあ?」
 いきなり朗らかな声と共に青く長い髪の目の大きい女がモニターに現われた。二十歳程だと思われるが実際の年齢よりも少し幼い印象を受ける。
「そうだが」
「何か」
 急に朗らかな声が入ってきてもブライトもシナプスも動じてはいなかった。ごく普通に対処をしている。
「連邦軍所属ミスマル=ユリカでぇ~~~す、階級は中佐、これから宜しくお願いしますね」
「うむ」
「こちらこそ宜しく」
 それを見てトーレスもサエグサもいささか驚いていた。アルビオンの艦橋でもそれは同じであった。
「ううむ」
 金髪のいかつい顔立ちの男が冷静なシナプスを見て唸っていた。パサロフである。彼は隣に立つ青いショートヘアの連邦軍の軍服を着た女性に声をかけた。アルビオンのオペレータージャクリーヌ=シモンである。
「なあ」
「はい」
「ナデシコってあんな艦だったのか」
「私が聞いた話によるとそうですが」
 彼女もいささか面食らっていた。普段はクールな顔を少し崩していた。
「木星での戦いではそれでもかなりの戦果を挙げているようですが」
「ジュピトリアンか。かってシロッコ達がいたあれだな」
「はい。今はティターンズと手を結んでいますね」
 ティターンズは地球から撤退せざるを得なくなったとはいえその勢力は健在であった。ゼダンの門を本拠地にサイド3と同盟を結び、そして木星とも手を結んでいたのである。その勢力はかなりのものであった。なお月はギガノス、そしてアクシズはネオ=ジオンが掌握していた。連邦軍は地球と他のコロニーを掌握しているものの余談を許さない状況にあるのだ。
「彼等との戦いではロンド=ベルに匹敵する戦果を挙げております」
「あれでか。ううん」
 パサロフはそれがどうしても信じられないようであった。
「まるで学生だけれどな。よくあれで」
「私もそう思いますが。しかし」
「ああ、わかってる」
 彼はここでシナプスに目を戻した。
「流石だな、艦長は。こうした時でも至って冷静だ」
「そうでなくては艦長は務まらないということでしょうか」
「少なくともこのロンド=ベルではな」
 二人はそんな話をしながらシナプス、そしてブライトとユリカのやりとりを見ていた。それは軍人同士の会話にはとても見えなかった。
「それでだ」
「はい」
「君がナデシコの艦長だな。一応確認したいが」
「はい、そうでぇぇす」
 ユリカはやはり朗らかな声でそう答えた。
「私が艦長でぇ~~~~す、ぶいっ☆」
 そして今度はブイサインをした。やはりどう見ても軍人には見えなかった。
「そうか。それでは宜しく頼む。私はラー=カイラムの艦長ブライト=ノア。階級は大佐だ」
「はぁい」
「私はエイパー=シナプス。階級は同じく大佐。アルビオンの艦長だ」
「わっかりましたあ。それではナデシコはこれからそちらの指揮下に入ります。お願いしますね」
「うむ」
「こちらこそ宜しく」
「それでは今からそちらに向かいます。先にカトル君達送りましたけれど。来てます?」
「ああ」
「彼等に先導されてここまで来たからな」
 二人はそれに答えた。ユリカはそれを聞いて満足そうに笑った。
「じゃあ後は彼等にお願いしますね。それじゃあこれで。再会!」 
 ユリカの姿がモニターから消えた。トーレス達はそれを見て呆然としたままであった。
「うわあ、またえらい人だな」
「あんなので艦長が務まるのかよ」
「どうした、二人共。そんなに驚いて」
 ブライトは彼等を見て声をかけてきた。
「いやね、あんまり凄いんで」
「今まで色々な人間を見てきたけれど艦長であれはないなあ、と思いまして」
「あの程度で驚いていてはこれからやっていけないぞ」
 しかしブライトの声はあくまで冷静であった。二人に穏やかな口調でそう語る。
「これからさらに物凄い人が出て来るかも知れないからな」
「物凄い人?」
「どんな人ですか、それって」
「あ、これは私の勘だ」
 彼は二人の質問にそう答えた。
「まだ戦いは続くだろう。誰が出て来るかわからないからな。ただそんな気がするだけだ」
「そうなんですか」
「まあ普通の人が出て来るならいいですけれどね、ホント」
「これも私の勘だが」
 ブライトは彼等の話を聞きそう前置きしてから言った。
「常識を遥かに越えた人が出て来るだろうな」
「それは」
「誰かはわからない。だが」
 ブライトの言葉は続く。
「誰が来ても驚かないように覚悟はしておいた方がいいな」
「はあ」
 何はともあれラー=カイラムとアルビオンは合流地点に向かった。その前に四機のガンダムが小隊を組んで護衛にあたっていた。
「他のマシンも発進させろ」
「了解」
 ブライトとシナプスの指示に従い二隻の艦からモビルスーツやヘビーメタルが出撃する。そして護衛に就く。金龍のバルキリーは輝達の小隊に入った。
「宜しくな」
「ええ、お願いします」
 見ればスキンヘッドに麒麟の刺青をしたかなりいかつい男であった。ある意味かなり男らしい外見の持ち主と言えた。
「皆さん、お久し振りです」
「おお、ウッソじゃねえか」
 ウッソ達がジュドー達の小隊のところにやって来た。ウッソが乗っているのはⅤ2ガンダム、その後ろには三機のⅤガンダムがあった。ヘキサにダッシュもある。元々量産を念頭に作られたガンダムだけあってその数も多いのであった。
「オデロ達も元気そうだな」
「おかげさまで」
 ウッソの後ろにいる黒い髪の少年がジュドーに応える。彼はダッシュに乗っていた。
「ジュンコさんもマーベットさんもいるし。何か昔に戻ったみたいだな」
「あたしは少ししかいなかったけれどね」
「私も後方にいたことが多かったけれど。あの時はあれだったから」
 マーベットはその頃既にオリファーと結婚し妊娠していた。今は出産し一児の母でもあるのだ。
「そうでしたね。けれどまた御会いできて光栄です」
 イーノがマーベットに話しかけてきた。彼のメタス改も後方支援機能が多い為彼女に納得できるのである。
「イーノ君も元気そうね」
「は、はい。まあ」
「お、また女の人が参加してきたのか」
「おい、ライト」
「俺達の持ち場はここじゃねえらしいぞ」
 ドラグナーの面々もここにやって来た。
「あれ、イーノ君に声が似ている子がいるわね」
「えっ!?」
「誰それ」
「そこの白いマシンの子よ。君ていうの」
「俺!?ケーン=ワカバ」
「ケーン君か。宜しくね。私はマーベット=フィンガーハット。これから一緒に戦わせてもらうわ」
「宜しく」
「俺も」
「俺も」
 ここでタップとライトも出て来た。三機のドラグナーはそれぞれマーベット達の前に出て来た。
「宜しくね、三人共」
「はい」
「いやあ、こんな美人さんが参加してくれるなんて嬉しいよ。やっぱりロンド=ベルに足りないのは大人の女性だからな」
「あたしじゃ駄目なのかい?」
 レッシィの通信が入ってきた。
「レッシィはなあ」
「十七歳だろ。少し違うよ」
「そのタイツは似合ってるけれどね」
 三人は口々に好き勝手を言う。また絶妙な流れであった。
「そういやアムもタイツだよな」
「悪い?」
 アムも入って来た。
「いや、悪くはねえけれどな」
「何かなあ。女の子はやっぱり素足が一番だよ」
「素足だったら危ないでしょ、戦場なのに」
「そうだよ、ケーンさん達ってやらしいんだから」
 ファとエルが彼等に抗議する。
「そんなんだとリンダさんに嫌われるわよ」
「そうそう、スケベは敵よ」
「・・・・・・好き勝手言ってくれるなあ」
「言われる方が悪いのよ」
 そんなやりとりをしながらそれぞれ配置につく。その中には一機の戦闘機があった。デュオタ遅はそれに顔を向けていた。
「あれがクラッシャー隊のやつか」
「どうやらそうらしいな」
 デュオと五飛が話をしている。
「見たところサポート用の機体ですね。運動性能はいいようです」
「それだけとは思えないがな」
「?トロワ、そりゃどういう意味だ」
「ただそう思っただけだ。気にするな」
「そうか。まあすぐにわかることだな。それより見ろ」
 五飛が他の三人に声をかける。
「来たぞ。皆に知らせる」
「おう」
 ナデシコが合流地点にやって来た。ラー=カイラムやアルビオンとは全く違った形をしている。二つの艦を合わせたような形をしている。独特のシルエットであった。
「へえ、あれがナデシコか」
「あれはBタイプだな」
 ライトがケーンに言う。
「Bタイプ?」
「木星との戦いの時に使ったのがAタイプ、あれは新型のBタイプなんだ」
「へえ、つまりアーガマとネェル=アーガマみたいなもんか」
「わかりやすく言うとそうなるな」
 タップにもそう説明する。
「性能はかなり高いらしいぜ。専用の艦載機もある」
「専用の。どんなのだい」
「確か」
「エステバリスだよ」
 ここで緑のショートの髪の女がモニターに出て来た。
「エステバリスCっていうんだ。覚えておけよ」
「あ、ああ」
「ところであんたは」
「ん!?あたしのことか」
「勿論。レディー、よかったらお名前を」
「そう呼ばれると照れるな。あたしの名はリョーコ。スバル=リョーコってんだ」
「ふうん、日系人か」
「ナデシコに乗ってるのは大体そうだぜ。あたしだけじゃなく」
「へえ、そうなんだ」
「ああ、紹介するぜ・・・・・・っと」
 それより前にモニターに二人の女が現われた。オレンジの髪に眼鏡の少女と黒い髪で右半分をそれで隠した女の二人である。とりわけその黒い髪の女は独特の雰囲気を漂わせていた。
「アマノ=ヒカルです」
「・・・・・・マキ=イズミです」
 二人はそれぞれ名乗った。
「宜しくお願いしますね」
「お願いします」
「おう、こちらこそ」
「宜しく頼むぜ」
 ドラグナーチームは彼女達にそう挨拶を返した。
「何かそれぞれ個性的なレディー達でいいねえ」
「おやおや、そこの金髪の兄さんしょってるねえ」
「ナンパですかあ?」
 リョーコとヒカルがライトにそう突っ込みを入れる。
「おや、気付かれたか。そうそう、これが終わったら艦内デートでもどうかな」
「ははは、いいねえ」
「じゃあ皆で行きましょうね」
「じゃあそういうことで」
「おい、ライト」
 ここでケーンとタップが入ってきた。
「御前だけずるいぞ」
「そうだそうだ」
「じゃあ御前等もリンダちゃんやローズちゃんと一緒に来れば」
「うっ」
 二人はライトにそう突っ込まれて終わった。リョーコ達はそれにさらに突っ込みを入れてきた。
「何だ、彼女持ちか」
「それなら関係ないわね」
「ちぇっ、まあいいさ」
「ローズちゃんと一緒に行くか」
「ローズはロースにすべし」
 そしてここでイズミがポツリと呟いた。それを受けてドラグナーチームとエステバリスチームの間に吹雪が舞った。
「・・・・・・今の何だ」
「・・・・・・いつものジョークだから気にしないで」
「・・・・・・そうか」
 何だかんだと話をしながら彼等は合流地点に集結する。見ればエステバリスは他にもいた。
「おい、二人共遅れるな!」
 三機のエステバリスの先頭にいる男がそう怒鳴り後ろの二機のエステバリスに対して言う。それを受けて後ろのその二機のエステバリスから返事が返る。
「わかってますよヤマダ大尉」
「誰がヤマダだあっ!」
 金のロンゲに赤いメッシュを入れたの男にすぐに怒声が返ってきた。
「俺はダイゴウジ=ガイだ。何度言えばわかる、タカスギ=サブロウタ!」
「いちいちフルネームで呼ばなくてもわかりますよ」
 サブロウタは辟易した顔でそう返した。
「ちゃんとついて来ていますよ、ダイゴウジ大尉」
「うむ」
 ダイゴウジはそれを聞いて満足したように頷いた。
「ならばいい。おそらく敵はすぐにでも来るだろう」
「来ますかねえ」 
 もう一機の茶色い髪の少年がそれを聞いて考えながら言う。
「テンカワ=アキト」
 ダイゴウジはそんな彼に対して言った。
「これは前にも言ったな」
「はい」
「敵は何時現われるかわからんのだ。戦場においては常に周囲に気を配れ。よいな」
「は、はい」
 アキトはそれを受けて頷いた。
「わかりました」
「そうか。ならいい」
「おいおい、旦那はまた気合が入ってるな」
「いつも通りよね」
 その横に一機の戦闘機がやって来た。
「ガルばーFX・・・・・・夕月京四郎か」
「おう」
 その戦闘機ガルバーのコクピットにいるアフロにサングラスの男が不敵に笑って応えた。緑の?ぎの服を着て背中に日本刀を背負っている。この戦闘機ガルバーFXのメインパイロットである。
「あたしもいるわよ」
 その後ろから声がした。そこには金髪のまだ幼い顔立ちの可愛らしい少女がいた。
「和泉ナナもか」
「わん」
 彼女はダイゴウジに犬の鳴き声で応えた。それが彼女の挨拶であった。
「敵の気配はないか」
「今のところはな」
「ミノフスキークラフトもないし。レーダーにも反応はないしね」
「そうか。だが油断はいかんぞ」
 それを受けてもダイゴウジの言葉は変わらなかった。
「敵は何時出てくるかわからんからな」
「そういうことだな。油断大敵ってやつだ」
 京四郎はそれを受けてこう言った。
「旦那はやっぱり違うな」
「伊達に最近まで入院していたわけじゃねえからな」
「・・・・・・サブロウタ」
 ダイゴウジはそれを聞いて嫌そうな顔をした。そして彼に対して言った。

「それは言うな、いいな」
「あ、すいません」
「わかればいい。ところで」
「何だ」
 京四郎はダイゴウジに話を振られそれに応えた。
「ダイモスとウィングゼロカスタムは何処だ」
「一矢か」
「そうだ。今何処にいる」
「俺ならここにいるぜ」
 すると後ろから赤い巨大なロボットが姿を現わした。見ればガルバーやエステバリスの何倍もある。地下都市開発用ロボットであるダイモスだ。乗っているパイロットは黒い髪の精悍な顔立ちの青年であった。
「済まない、ちょっと色々あってな」
「エリカさんが?」
「ま、まあな」
 ナナにそう言われてその青年は少し赤い顔をした。
「何か身体の調子が悪そうだったからな」
「一矢」
「竜崎一矢」
 京四郎とダイゴウジ、それぞれが同時に一矢に対して言った。
「言っておくがな」
 やはり二人の声は重なった。
「今の御前はもう少し落ち着いた方がいい」
「どういうことだ、京四郎」
 一矢はその言葉に顔をムッとさせた。
「何度も言っているだろう、恋は盲目ってな。今の御前はあまりにも前が見えなくなっている。それではこれからの戦いは乗り切れないぞ」
「何でそんなことを言うんだ」
「竜崎」
 京四郎に反論する彼に対してダイゴウジが言った。
「確かに恋はいいものだ。それは己を強くもする。だがな」
「だがな・・・・・・!?」
「今の御前は少し周りが見えなくなっている。そのままでは戦士として駄目だ」
「クッ・・・・・・」
 一矢はそれに反論しようとする。だがそれはできなかった。
「もう少し落ち着け、いいな」
「そう言うとうちの艦長も大概なモンだけれどね」
 サブロウタがここでそう言った。
「えっ、そうかなあ」
「アキト、御前さんそれに気付かないのか?」
「だから何が?」
「じゃあいい。悪いな、つまんねえ話して」
「?」
 アキトはサブロウタの言葉に首を傾げたままであった。彼には何のことか全くわかってはいなかった。そんなところがアキトにはあった。
「ところでヒイロ=ユイだが」
 ここでダイゴウジはヒイロのことに話を移した。
「今何処にいるのだ。見ないが」
「ヒイロさんは今別の方向に出撃しておられます」
 澄んだ綺麗な少女の声と共にモニターに淡いピンクの髪の美しい少女が姿を現わした。肌は白く雪のようである。その目は大きく黄色かった。何処となく表情に乏しい感じがする。
「お、ホシノ=ルリか」
「はい」
 彼女はダイゴウジにそう答えた。
「側面の哨戒に出ておられます。何かあった時の為に」
「そうだったのか」
「敵は何処から来るかわかりませんから。ダイゴウジさんの御言葉通り」
「ううむ」
 これにはダイゴウジも唸るしかなかった。
「それでヒイロさんには哨戒に出てもらいました。今のところ敵はいないようですが」
「そうか。しかし油断はできないな」
「それはそうですね。何しろ敵もボゾンジャンプができますから」
 アキトがここで言う。
「ああ。バーム星人にあの兵器が渡ったのは痛いな。もっともそれだけじゃないが」
「ええ」
 京四郎の言葉に頷く。彼等はナデシコの周りを護衛しながら合流地点に向かっていく。
「さて」
 ブライトはナデシコを見ながら呟く。
「そろそろ合流だが。敵は出るかな」
「どうですかね。出るといっても何が出て来るか」
「それが問題ですね」
「ああ」
 トーレスとサエグサに応えてそう頷く。
「前のポセイダル軍もこの辺りにいる可能性がある。ティターンズやギガノスはいないと思うが」
「どちらにしろ油断大敵です」
「そういうことだ。総員スタンバっておけよ」
「はい」
 皆ブライトの言葉を待つまでもなく戦闘配置についていた。そして辺りに警戒を払っていた。その時であった。
「ムッ」
 トーレスがレーダーを見て叫んだ。
「エネルギー反応多数!合流地点に現われます!」
「何、バルマーか!」
「いえ、違います。これは」
 ラー=カイラム達の前に無数の敵が姿を現わした。
「見たこともない敵です、これは」
「ジュピトリアンの残党です」
 ルリがブライト達に対して言った。モニターに彼女の顔が出る。
「ジュピトリアンの」
「はい。バルマー戦役の時彼等はモビルスーツ部隊の他にも兵器を持っていました。それがあれです」
「そうだったのか」
「ところでだ」
 ここでシナプスがルリに尋ねた。
「何でしょうか」
「そのボゾンジャンプとは何なのだ。はじめて聞くが」
「それは」
「空間跳躍のことなのでぇ~~す」
 ユリカが話に入ってきた。
「空間跳躍」
「はぁい、密かに開発された技術でぇ、まあワープなんですよぉ、分かり易く言えば」
「そうなのか」
「はい。そして木星は私達にそれを使う兵器を送ってきていたのです。それが今どうしてここにいるのかはわからないのですが」
「いや、それはわかる」
「どういうことですか」
 ルリはブライトに尋ねた。
「木星はバルマーと同盟を結んでいた。それを考えると」
「これはバルマーの攻撃であると」
「そうだ。そして彼等がここに来たということは」
「ポセイダル軍も・・・・・・!」
 ダバがそれを聞いて叫んだ。
「そうさ、その通りだよ!」
 すると低い女の声が聞こえてきた。
「その声はっ!」
「まさかっ!」
 ダバ達がそれに反応する。すると無数のヘビーメタル達も姿を現わした。その先頭には金色のマシンがあった。
「金色のマシン、オージェか!」
「ネイか!」
「そうだよ。久し振りだねえ、ダバ」
 声はそこから聞こえていた。見ればきつい顔立ちの大柄な女がコクピットにいた。彼女の名をネイ=モー=ハンという。ポセイダル軍十三人衆の一人でもある女だ。
「あんたがここに来るのはわかってたんだよ」
「どういうことだ」
「ギワザ様の情報収集能力を甘く見てもらっては困るね。こっちだって遊びでやってるんじゃないんだよ」
「そういうことだ。それは私も同じだ」
「その声は」
「食い逃げ男!」
 レッシィとアムが若い男の声を聞いて叫んだ。
「ギャブレー、あんたまでいたの!」
「ええい、私は食い逃げ男などではない!」
 見ればオージェの横に四本の腕を持つヘビーメタルがいた。声はそこからであった。
「私にはギャブレット=ギャブレーという名があるのだ。いい加減に覚えろ!」
「だって食い逃げしたのは事実じゃない」
「ホント。素直に悪いことは悪いと認めるんだね、だから男らしくないって言われるんだよ」
「ぬうう、言わせておけば」
 紫の長い髪の男が四本腕のヘビーメタルのコクピットの中で怒っている。彼がそのギャブレット=ギャブレーその人なのである。
「頭ぁ」
 彼の後ろから声がした。
「何だ」
 ギャブレーはそちらに顔を向けた。そこにもヘビーメタルがいた。
「いい加減それにこだわっていちゃあ話が進みませんね」
 そこには浅黒い肌の男がいた。
「わかってる」
 ギャブレーは憮然としてそれに答えた。
「今の私のやるべきことは一つ、彼等を倒すことだ」
「そうそう」
「上手いねえ、ハッシャ=モッシャは」
 ネイはそれを横目で見て微笑んでいた。凄みのある微笑みであった。
「ギャブレー、あんたはダバをやればいいさ」
「まことか、ネイ殿」
「ああ、あいつはあんたにくれてやるよ。そのかわりあたしは」
 彼は三隻の戦艦に目をやった。
「獲物がたっぷりあるからねえ。楽しませてもらうよ。いいね、アントン、ヘッケラー」
「はっ」
「了解致しました、ネイ様」
 ネイの後ろに控える青い髪の男と痩せた男がそれに頷いた。ネイはそれを見て満足気に笑った。
「行くよ、そして一気にやる」
「はっ」
 ヘビーメタル隊が動いた。そして木星の残党達も動く。三隻の戦艦にめがけ突っ込む。ギャブレーはダバに向かった。
「ダバ=マイロード、行くぞ!」
「ギャブレー!」
 ダバはギャブレーのセイバーを同じくセイバーで受け止めた。それから両者は斬り合いに入った。
「ここで貴様を倒す!」
「俺を倒して貴様を何を手に入れるつもりだ!」
「名誉だ!そして私は身を立てるのだ!」
「志が低いぞギャブレー君!」
「ええい五月蝿い!」
 その間にアムとレッシィはダバの左右についた。そしてそこから大型のランチャーを取り出した。
「あたし達もね!」
「やらせてもらうよ!」
 二人はそれを敵にめがけて放った。巨大な一条の光がヘビーメタル達を撃つ。それだけで多くの敵が破壊された。
「クッ、バスターランチャーだって!?」
 ネイはそれを見て思わず叫んだ。だがそれは一撃ではなかった。二機は再びバスターランチャーを放った。それでまた多くの爆発が起こった。
「クッ、二発も!」
「ヌーベルディザートはバスターランチャーが使えないのではなかったのか!しかもエルガイムも二発も放つとは!」
「生憎ねえ、改造したのよ」
「地球の技術を使ってな」
 アムとレッシィはアントンとヘッケラーに対してそう言った。キャオはそれをラー=カイラムの艦橋で見てはしゃいでいた。
「どうだい、俺の腕は。凄いだろう」
「おいおい、俺が教えてやったんじゃないか」
 アストナージはその横で苦笑しながら言った。
「どうだい、地球の技術もかなりのもんだろ」
「はい」
「しかしペンタゴナのもいいね、こっちの参考にさせてもらうよ」
「はい、どんどんお願いしますよ」
 彼等は地球の技術を使いエルガイムとヌーベルディザートを改造したのである。それによりこの二機の性能は格段に上昇していた。
「まだまだこれだけじゃないわよ」
「そう、そいじょそこらのヘビーメタルじゃ相手にはならないよ」
「おのれ・・・・・・」
 ネイはそれを聞いて歯噛みする。だが戦いを忘れたわけではなかった。
「アントン、ヘッケラー」
 すぐに後ろの二人に指示を下す。
「はい」
「御前達があの二人の相手をしな。あたしは戦艦をやる」
「わかりました」
 アントンとヘッケラーはそれに従いアムとレッシィに向かう。見ればギャブレーと同じヘビーメタルであった。アシュラテンプル
と呼ばれるヘビーメタルである。
「来たね」
「思う存分相手してやるよ」
 アムとレッシィも彼等に向かった。こうして三機のヘビーメタルが互いに激突した。
 ネイはそれを尻目に突撃する。その周りではヘビーメタルや木星の兵器が次々と撃墜されていく。だが彼女はそれでも怯まなかった。そしてパワーランチャーを構えた。
「これでどうだいっ!」
 ビームを放つ。それはナデシコに向かって放たれていた。
「ビーム来るわ、よけるわよ!」
 ユリカはそれを既に察知していた。そしてナデシコの操縦士であるハルカ=ミナトに対して指示を出した。
「取り舵一杯!」
「了解!」
 派手な外見ながら落ち着いた動きでそれに応える。そしてナデシコを左に動かした。それでオージェの攻撃をかわした。
「クッ、あれだけの巨体でかい!」
 ネイはそれを見て舌打ちした。しかしそれはかえって彼女の闘争心を高めるだけであった。
「まだまだっ!」
 次々にビームを放つ。しかしそれはことごとくかわされてしまう。そして周りでは味方が次々と撃墜されていた。
「行けぇっ!」
 ウッソがビームライフルを放つ。それでヘビーメタルを貫く。一機撃墜するとまた撃墜する。オデロ達がそれに続いて攻撃を仕掛けている。
「ウッソにばかりやらせるわけにはいかないからな!」
「あたしもいるよ!」
 彼等は巧みに戦場を動きながら敵を倒していく。エステバリス達はナデシコの周りにいた。
「隊は崩すなよ!」
「わかってるさ!」
 リョーコがダイゴウジにそう応える。六機のエステバリスは三機一組、二個小隊で敵に対処していた。リョーコはイズミと
ヒカルに対して言った。
「行くぜ、イズミ、ヒカル!」
「了解」
「あれをやるのね」
「おうよ!」
 二人はそれを聞いて頷いた。そしてリョーコのすぐ後ろにきた。
「久し振りにやるぜ。俺達のフォーメーションアタックだ!」
 三機は一斉に動いた。そして目の前の三機の敵に突っ込む。
「食らいやがれっ!」
 そして彼等を瞬く間に葬り去った。恐るべき動きと攻撃であった。
「また腕をあげたねえ」
「俺達も行くぞ!」
「はい!」
 サブロウタ達も行く。そして木星の兵器を次々に撃墜していく。その横にはダイモスとガルバーがいた。
「故人曰く」
 京四郎は不敵な声と共に敵に向かう。
「先手必勝ってな」
 そして敵に機銃掃射を仕掛けた。それで一機ずつ的確に撃墜する。
「はああっ!」
 一矢はダイモスで群がる敵を次々に葬り去っていた。まずは三竜艮で敵を打ち砕く。
「そいやあっ!」
 それからとりわけ大型の敵に突っ込む。ダイモスの胸が開いた。
「ダブルブリザァァァァァァァァァァァァァァッッッッド!」 
 それの吹雪で敵を撃つ。それにより大きく飛んだ相手に拳を向ける。そして叫んだ。
「必殺!烈風・・・・・・」
 拳を振りかざして突っ込む。その拳が唸った。
「正拳突きいいいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっっ!!!!!」
 拳が敵を貫いていく。そして真っ二つにして破壊した。ダイモスはその間を潜り抜けるようにして突破した。まさしく闘将であった。
 しかしそれでも敵は多かった。木星の兵器もポセイダル軍もかなりの数である。三隻の戦艦もそれぞれ砲撃を行っていた。
「外すなよ・・・・・・撃て!」
 シナプスが指示を下す。それによりアルビオンの主砲が放たれ敵を小隊単位で倒していく。ラー=カイラムも攻撃を行っていた。
「主砲、一斉発射!」
 それでも数は減らない。敵の中にはナデシコに小隊ごと突っ込もうとするものもあった。しかしその小隊は瞬く間に光の中に消え去ってしまった。
「間に合ったか」
 遠くに巨大な砲を構える天使がいた。いや、それは何とガンダムであった。翼を持つガンダム、ウィングガンダムゼロカスタムであった。
「ああ、そのようだな」
 その横にもガンダムがいた。それはウィングガンダムゼロである。そこからは女の声が聞こえていた。紫のショートの髪の女である。ルクレィツア=ノインであった。
「ヒイロ、すぐ前線に向かうぞ。今ナデシコは敵に攻撃を受けている」
「わかっている」
 ウィングガンダムゼロカスタムにいる少年がそれに頷く。彼の名はヒイロ=ユイ。このガンダムのパイロットであり五人のガンダムに乗る少年達の一人であった。
「皆いるか」
 ヒイロは他の四人に声をかけた。
「ああ」
「ここには」
 見れば彼等も既にナデシコの側に来ていた。
「これからナデシコを護衛する」
 それだけであった。簡潔な言葉である。だがそれだけにわかりやすかった。
 五機のガンダムが敵の前に立つ。そしてそのまま突き進む。彼等はそれぞれの敵の小隊に向かって行った。
「行っくぜええーーーーーっ!」
 まずはデュオが叫ぶ。その鎌を大きく振り被る。月に死神のシルエットが浮かぶ。そして敵の小隊に斬り込んだ。
 鎌が一閃される。敵をまとめて両断した。それにより敵の小隊は一気に全滅した。
 次はトロワであった。彼は突き進まない。最初は静かに動きを止めていた。だが突如ガンダムヘビーアームズカスタムの目が光った。
「邪魔するのなら、容赦はしない」
 トロワは静かにそう言った。そしてヘビーアームズは両腕を交差させると飛び上がった。空中をきりもみ回転しながら飛び着地すると全てのミサイルポッドを開いた。
 無数のミサイルとロケットが放たれる。それにより敵の小隊が激しい攻撃を受ける。瞬く間にその小隊は炎に包まれて消え去ってしまっていた。
 カトルも動いた。だが彼は少し違っていた。
「マグアナック隊の皆さん、いいですか!?」
「はい、カトル様!」
 彼の周りに何十機ものマシンが現われた。そしてそれがカトルのガンダムサンドロックカスタムの周りを取り囲んだ。
「撃てっ!」
「はい!」
 それが一斉攻撃を仕掛ける。それによって敵の小隊はまさに跡形もなく消え去ってしまった。
 最後は五飛であった。彼は敵の小隊に対峙すると棒を取り出した。それはツインビームトライデントであった。
「ナタクをなめるなあっ!」
 デュオのように敵に斬り込む。そして群がる敵をトライデントを振り回して切り刻んだ。それにより敵を一掃してしまった。
 彼等はそれぞれ敵の一個小隊を瞬く間に全滅させてしまった。その腕は全く衰えていないどころかさらに上達している程であった。
「見事なものだな、何時見ても」
 ノインはそれを見て感心したような言葉を口にした。そう言う彼女もバスターライフルにより既に敵の一個小隊を消し去ってしまっていた。
「流石は今まで戦いを生き抜いてきただけのことはある」
「御前に言われるとは光栄だな」
 バスターライフルで敵の小隊をまた葬り去ったヒイロは彼女の横でそう言った。
「リリーナのいるあの艦をやらせるわけにはいかないからな」
「フッ、そういうことか」
 ノインはそれを聞いて笑みを作った。
「それも変わらないな。御前らしいというか」
「そうか」
 しかしヒイロは褒められても感情を表に出すことはなかった。
「だが戦いはまだ続いている。行くぞ」
「うむ」
 彼等は今度はビームサーベルを出した。それで敵に斬り込む。
「やらせはしない」
 銀河に天使が舞う。その手にする剣で敵を切り伏せていく。それはまるで黙示録に出て来る終末の裁きの天使達のようであった。
 戦いはロンド=ベルのものとなってきていた。数では大きく劣りながら個々のパイロットの能力と兵器の性能が大きくものを言っていた。とりわけカミーユとジュドーの活躍は凄まじかった。
「出て来なければやられなかったのに!」
 ZⅡのハイパーメガランチャーが火を噴くとそれだけで無数の敵が滅びる。ジュドーはZZの額のハイメガキャノンを放つ。
「いっけええええ、ハイメガキャノン!」
 それで敵を屠る。彼等の行くところ敵はなくまさしく鬼神の如きであった。
「くっ、地球人ってのは話には聞いていたけれどここまでやるのかい!」
 ネイも流石に戦局が自分達に不利なことをわかっていた。倒されるのは自軍のみであり敵は勢いを増すばかりであった。彼女は意を決し残りの者達に対して言った。
「撤退するよ、これ以上の戦闘は無意味だ」
「はっ」
「わかりました」
 まずアントンとヘッケラーがそれに従う。彼等はアム、レッシィとの戦闘を止めネイのところに来た。
「全軍退きな。いいね」
「待たれよ、ネイ殿」
 だがここにギャブレーが入ってきた。
「私はまだダバとの決着をつけてはいないぞ」
「ギャブレー」
 だがネイはそんな彼に対して顔を向けて言った。
「まだ戦いはこれからなんだ、チャンスは幾らでもあるよ」
「しかし」
「言いたいことはわかっている」
 ネイはまだ言おうとする彼に対して強い声でそう応えた。
「確かに負け戦ってのは嫌だよ。あたしも腹が立つ。だけれどね」
 彼女は言葉を続けた。
「それを認めて引き下がるのも指揮官の務めだよ。いいね」
「うむ」
 不承不承ながらそれに頷いた。ネイはそれを見届けて自軍にあらためて言った。
「全軍撤退!」
 ポセイダル、そして木星の兵器はそれを受けて戦場を離脱した。ロンド=ベルはそれを追おうとはせずナデシコの周りに集結した。彼等にとって第一の目的は難民の保護でありそれを優先させたのだ。
「行ったか」
「そのようですね」
 シナプスは艦橋でパサロフの言葉を受けていた。
「中々手強い敵だったが。何とか退けたな」
「はい。ですがあの攻撃はまだまだ序の口でしょう」
「だろうな。バルマーの力は底知れない。おそらくこれからもさらに戦力をつぎ込んでくるだろう。ましてや敵は彼等だけではないしな」
「ですね」
 パサロフはそれを受けてその固い顔に陰を落とした。
「ギガノスもティターンズもいますし。ネオ=ジオンもいます」
「そうだ。ネオ=ジオンの動きはどうなっている」
「今のところは大人しいですが」
 前の戦いにおける停戦協定がまだ生きているのである。だからこそ彼等は表だっては目だった動きをしてはいなかった。だがこの停戦協定はあくまでかりそめのものであることは誰の目にも明らかであった。そしてそれが破られた時こそが本当の戦いであると考えていたのだ。
「油断はならんぞ。ハマーン=カーンもエギーユ=デラーズも只者ではない」
「はい」
「ソロモンの悪夢もいる。あの男が何をしてくるか、注意しておけ」
「わかりました」
 ソロモンの悪夢、ネオ=ジオンのパイロットアナベル=ガトーのことである。彼は前の戦いにおいてガンダム試作二号機を強奪し、その核バズーカにより当時連邦の基地であったソロモンを攻撃したのである。それによりそこに集結していた連邦の宇宙艦隊は一瞬にして壊滅した。それを受けて彼の通り名が『ソロモンの悪夢』となったのである。ネオ=ジオンにおいて知らぬ者はいない恐るべき男であった。
「ですが艦長、今はティターンズの方が警戒すべきだと思いますが」
 ジャクリーヌがそう意見を具申する。
「わかっている」
 シナプスはそれに頷いた。
「彼等は今ゼダンの門を本拠地とし木星及びサイド3と同盟関係にある。今のところ最大の脅威だ」
「はい」
「それだけではない。コロニーレーザーの建設を進めているという情報もあるな」
「はい。それが事実だとすると大変なことになります」
「ギガノスも何かしら開発しようとしているようだしな。事態は我々が思っている以上に深刻かもしれんぞ」
「はい」
「だがさしあたっては火星からの難民達をどうするかだな」
「ですね」
 彼等はナデシコを見ていた。そしてこれからのことに思いを馳せるのであった。
 すぐに難民達についての話し合いがはじまった。ブライトとシナプス、ユリカといった各艦の艦長達、そしてフォッカー等少佐以上の将校達が集められた。そして話し合いがはじまった。
「私は地球に行くことを提案しますぅ」
 まずユリカがそれを提案した。
「地球か」
「はい。あそこなら場所も多いですし。コロニーよりもいいと思いますよお」
「確かにな。現実には。だが」
「何かあるのですか?」
 顔を曇らせるブライトを見て不思議そうな顔をする。
「いや、今地球はな」
「あの人がいるからな」
 フォッカーがここで言った。
「三輪長官だな。あの人にはまず何を言っても無駄だ」
「はい」
 シナプスの言葉に一同首を縦に振った。問題はそこであった。
「あ、それなら大丈夫ですよ」
 しかしユリカは相変わらずのお気楽さで皆に対してそう言った。
「何故そう言えるのだ?」
「ブレックス閣下もおられますし。それに三輪長官は軍の中では孤立しておられますよね」
「むう」
「確かにな」
 これは事実であった。三輪は確かに連邦軍においてかなりの発言権を持っており、権限も巨大だがあまりもの過激さにより軍の中でも彼に賛同する者は非常に少なかったのだ。流石に連邦軍でも彼程過激な思考の持ち主はそうそういなかったのである。
「それではブレックス准将にお願いしてみるとしよう。それならばまあ問題はあるまい」
「そうですね」
 ブライトはシナプスの言葉に頷いた。
「それでは地球に向かうとしよう。どちらにしろこの場所は危険だ」
「はい」
 ナデシコと合流し難民達を保護したロンド=ベル隊は地球に向かうこととなった。とりあえずの危機は退けたがすぐに次の危機が訪れることを皆直感でわかっていた。



第十二話    完



                                  2005・3・8

 
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