スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第十一話 勇者再び
第十一話 勇者再び
「ねえ比瑪姉ちゃん」
日本狭山市のある孤児院である。ここで一人のツインテールの幼い女の子が側にいる赤く長い髪の少女に声をかけた。
「どうしたの、アカリ」
ヒメと呼ばれた赤い髪の少女は彼女に顔を向けて問うた。
「あそこ見て」
「あそこ?」
ヒメはそちらに顔を向けた。そこには光があった。
「あれ何だろ」
「わからないから聞いてるの」
アカリはそう答えた。そしてヒメの手を取った。
「行こう、ねえ」
だがここで大地が揺れた。
「きゃっ!?」
「何だも!?」
周りにいる男の子達も声をあげた。ヒメは咄嗟に彼等に対して言った。
「ユキオ、クマゾー、気をつけて。余震だよ」
「う、うん」
三人はヒメの言葉に頷いた。そしてヒメの側に身を寄せた。
「うん、大丈夫だからね」
ヒメは彼等を宥める様に優しい声でそう語り掛けた。
「ただの余震だから安心していいからね」
「うん」
三人はそれに頷いた。そしてそれが終わると顔を上げた。
「終わったね」
「うん」
ヒメは三人に答えた。そして先程光があった方にまた顔を向けた。
「まだ光ってるかな」
見れば光はもうなかった。だが何かが見えた。
「あれ何だろ」
「気になるも」
ユキオとクマゾーがそれぞれ言う。そしてそこに駆けて行った。
「あ、待ってよ二人共」
「危ないよ」
アカリもヒメもそれに続く。そして彼等はその何かが見えたところにやって来た。そこには一体の何かロボットに似たものがあった。
「これ何だろ」
ユキオがそれを見て不思議そうに首を傾げる。
「ロボットかなあ」
「きっとそうだも」
アカリとクマゾーも首を傾げながら考えている。だがヒメはその間にそのロボットらしきものに近寄った。
「あ、ヒメ姉ちゃん」
「危ないよ」
「大丈夫だよ」
だがヒメはそう言ってかえって子供達を安心させた。
「ほら見て」
そして彼等に対して言う。
「この子優しい目をしてるお。大丈夫だよ」
そしてまた言った。
「この子生まれたばかりの赤ちゃんなのよ」
「赤ちゃん!?」
「うん」
ヒメは答えた。
「温かい。それにすべすべしてる」
そのロボットを撫でながら言葉を続ける。
「ねえ君」
声をかけた。
「貴女は何がしたいの?生まれたのなら貴女何かしたいんでしょう?」
そう声をかけ続ける。ロボットはそれに答えるでもなく目をただ光らせているだけである。だがここで遠くから何かがやって来た。
「姉ちゃん、あれ」
子供達がヒメに声をかける。見ればこのロボットによく似たロボット達が近付いてきていた。
狭山でこうしたことが起こっていた丁度その頃大空魔竜隊はチバシティに向かっていた。
「おいおい、やったぜ」
甲児がテレビを観ながらはしゃいでいた。サンシロー達も一緒である。
「すげえな、こいつ。やっぱり日本人はこうでなくちゃな」
「フン、甘いな」
だが一緒に見ているリーが不敵に笑った。
「マスターアジアに勝てるかな」
「勝つに決まってるだろ」
「そうだわさ、ドモンこそ最強のガンダムファイターだわさ」
彼等ははしゃぎながらテレビを観ている。観れば何やらガンダム同士が互いに格闘戦を繰り広げていた。白いガンダムと鎧を着たガンダムであった。
「よし行け!」
甲児が叫ぶ。
「そこだわさ!」
ボスもである。白いガンダムが優勢であった。勢いに乗ったか蹴りを出した。
「よし!」
だがリーが言った。
「甘い!」
すると鎧のガンダムはすぐに身を捻った。そして大きく跳躍した。
「ムッ!」
そこから攻撃に入る。だがそれは白いガンダムにことごとく防がれてしまった。
戦いはそこから膠着状態に入った。そして最後には引き分けとなった。
「引き分けか」
「けれどこれでも充分だわさ」
甲児とボスは少し残念そうであったが満足もしていた。
「もう一勝負残っているからな。それに勝てばいいからな」
サンシローがそう言った。
「ドモンは今まで全勝しているんだ。負けたわけじゃない」
「そうだな」
「ドモンは後何勝負残っていたかな」
忍が周りに問うた。
「二つだ」
隼人が答えた。
「今のクーロンガンダムにもう一回、そしてガンダムシュピーゲルにもう一回だ」
「よりによって厄介なのばかりかよ」
「確かシュピーゲルとも引き分けていたのねん」
「確かそうだったな」
隼人は記憶を探りながらそれに答えた。
「あのガンダムシュピーゲルに乗るシュヴァルツ=ブルーダーというのもかなりの強さだが」
「そうだな」
竜馬が頷く。
「何でもドイツ忍者だそうだが」
「ドイツ忍者・・・・・・ああ、あれですね」
ブンタがそれを聞いて頷いた。
「何でもかって日本の忍者がドイツに渡ったものだとか」
「そんなことが有り得るのかよ」
甲児がそれを聞いて首を傾げた。
「あいつのファイトも見てきたが滅茶苦茶じゃねえか。何なんだよあれは」
「甲児君の言う通りだな。俺もあれは訳がわからない」
鉄也も首を傾げている。
「畳返しに相手の拳の上に立ったり。ガンダムであんな動きができるとは思わなかったぞ」
「クーロンガンダムもかなりのものだがな」
亮がここでクーロンガンダムについて言及した。
「あれもかなりのものだが」
「まあな」
皆それに同意した。
「あれも普通じゃないな。中に乗っている人間もそうらしいが」
「東方不敗マスターアジア。只者じゃないのは確かだ」
「ああ」
「皆やっぱりここにいたのね」
ミドリが一同に声をかけた。
「丁度いいわ。いいニュースよ」
「いいニュース!?」
「ええ。スペインに行っていた大介さんだけれど」
「何かあったのか!?」
「あそこでの仕事が終わったらしいわ。それで日本に帰ってくるって」
「おお、やっとかよ」
「これでマジンガーチームの再結成だな、甲児君」
甲児と鉄也がそれを聞いて喜びの声をあげる。
「そうよね。大介さんが入ると何かと心強いわね」
「甲児君もそうでしょ」
ジュンとさやかも嬉しそうであった。
「まあな。やっぱり大介さんはしっかりしているからな」
「腕も確かだしな。あの人がいるといないとではやっぱり違う」
甲児と鉄也は同じマジンガーチームだけあってとりわけ嬉しそうであった。彼等は今から大介との再会を楽しみにしているようであった。ここで大文字から放送があった。
「諸君、チバシティに到着したぞ」
「おっ」
それを聞いて声をあげる。
「いよいよか」
「そのままムートロン研究所に向かう。予定だ」
また大文字の放送が入った。
「何かすぐだったな。しかしあいつ等元気にしてるかな」
「元気らしいわよ。さっきマリちゃんからメールがあって」
さやかが甲児に自分の携帯電話を見せた。
「ほらね、会うのを楽しみにしてるって」
「そりゃいい。洸もミスターも入ると頼りになるぜ」
「甲児さっきから同じこと言ってるね」
雅人がそれに突っ込みを入れる。彼等はそんな話をしながらムートロン研究所に向かっていた。
その時ムートロン研究所でも皆大空魔竜隊との合流の準備を進めていた。
「おい、猿丸先生」
黒い髪を後ろに撫で付けた若者が眼鏡の男に声をかけた。この若者が神宮寺力である。ブルーガーのメインパイロットの一人でありコープランダー隊のまとめ役でもある。
「ブルーガーの改造はどうなったんだい」
「あ、それですか」
猿丸と呼ばれた眼鏡の白衣の男はそれに応えた。
「もう既に終わっていますよ。ミスターのお話通り四人乗りにね」
「よし、ならいいんだ」
神宮寺はそれを聞いて満足そうに頷いた。
「そっちの方が何かと便利だからな」
「どうしてなんですか。前から気になっていたんですが」
「ああ、その四人目の席はな」
「はい」
「猿丸先生用なんだ」
「えっ!?」
猿丸はそれを聞いて思わず声をあげた。
「ミスター、今なんて」
「だからブルーガーには先生も乗ってもらうんだよ」
「あの、私戦いは」
「そんな悠長なことも言ってられなくてな。まあ安心してくれ。操縦や攻撃は俺と麗、マリでやるからな」
「はあ」
「といっても先生元々乗り込んでいたじゃないか」
「それはそうですが」
実は彼は探査要員としてかってはブルーがーに乗り込んでいたのである。わけあって降りていたのだ。
だが猿丸はそれを聞いて肩を落とすばかりであった。そしてその側では茶色の長い髪の少女が黒髪の少年と話をしていた。
「ねえ洸」
この茶色の髪の少女が先程さやかにメールを送ったマリである。桜野マリという。
「また甲児さんや竜馬さんと一緒になるのよね」
「ああ」
その黒髪の少年ひびき洸はそれに応えた。彼もまた何やら思うところがあるようだ。
「甲児さん達元気かなあ。まああの人のことだから大丈夫だろうけれど」
「案外落ち込んだりなんかしちゃっていたりして」
「ははは、それはあの人に限って有り得ないよな」
そんな話をして和気藹々とした雰囲気であった。そして大空魔竜が姿を現わしてきた。
「お、来たな」
「あれが噂の大空魔竜ですね」
赤っぽい髪の少女もいた。ブルーガーのサブパイロット明日香麗である。
「話に聞いていたよりずっと大きいですね」
「ああ」
神宮寺達がそれに頷く。皆上を見上げていた。
「洸」
神宮寺が声をかけた。
「俺は一足先に麗達と一緒にブルーガーであがるぜ。こういった時に敵が来ることが多いからな」
「ああ、頼む。俺も何かったらすぐ出る」
洸もそのつもりであった。そして人面岩を見た。
「行くぜ、ライディーン。また戦いにな」
そう言った時であった。不意に基地のサイレンが鳴った。
「ほら、おいでなすったぜ!」
神宮寺が待ってましたとばかりに声をあげる。
「麗、マリ、先生、行くぞ!」
「はい!」
「わかったわ、ミスター!」
麗達もそれについていく。そして洸も人面岩に顔を向けた。
「ライディーン、行くぞ!」
傍らにあるバイクに目をやる。そしてそれに乗り込みエンジンをかけた。
そのまま走る。人面岩に向かって一直線に進む。人面岩が開き中からライディーンが姿を現わした。
「ライディーーーーーーン、フェェェェェェェェェェドイイィィィィィィィィィンンンッ!」
バイクをハイジャンプさせる。そしてそのままライディーンの中に入る。ライディーンの目に光が宿った。そして動きはじめた。
「行くぞ、ライディーン!」
空を飛ぶ。そして迫り来る敵に正対した。見れば邪魔大王国の者達であった。
「遅いぞ」
マガルガに乗るククルは後ろにいる者達を叱責していた。
「ハッ、申し訳ありません。何分陛下の御真意に気付きませんで」
アマソ達がそれに頭を垂れる。
「まさかムー帝国の力を手に入れようとは。お流石です」
「ふふふ」
ククルはそれを聞いて笑っていた。
「ムー帝国の力は絶大じゃ。それを我等がものとしたならばどうなる」
「言うまでもないことでありますな」
「そういうことじゃ。ミケーネの者達の世話になることもない。それに」
「それに?」
「あの謎の敵にも対抗できる。あの者達何者かはわからぬが」
ククルはミケーネの基地を襲ったあの謎の敵に対して考えを巡らせていた。
「かなりの力を持っておるようじゃからな。それに対抗せねばならん。よいな」
「はっ」
アマソ達が頷いた。彼等はそれぞれヤマタノオロチに乗り込んでいる。
「さて」
ククルは顔をムートロン研究所に移した。
「行くぞ。丁度出て来ておるわ」
ライディーンと大空魔竜隊がそこにいた。既に全機出撃し戦闘態勢に入っていた。
「行くぞ、全軍総攻撃じゃ!」
「ハッ!」
邪魔大王国の者達はククルの号令一下攻撃を開始した。大空魔竜隊とコープランダー隊はそれを迎え撃つ。ライディーンもその中にいた。
「行くぜ皆!」
「おう!」
洸の言葉に皆応える。そして戦いを開始する。
「フン、ライディーンがどうしたというのだ」
イキマは目の前に来たライディーンを見て嘲笑の笑みを浮かべていた。
「所詮は張り子の虎よ。我等の手にかかれば」
そう言いながら攻撃の指示を下す。八つの頭から炎を放つ。
「おっと!」
だがライディーンはそれを何なくかわした。そして反撃を繰り出す。
「ゴーガンソォォォォォォォォォォドッ!」
剣を取り出しそれで斬りつける。それによりヤマタノオロチはかなりのダメージを受けた。
「グワァッ!」
イキマはそれを受けて思わず声をあげた。だがそれでもオロチは墜ちはしなかった。
「この程度でっ!」
「無事かっ!」
だがここでククルがフォローに入って来た。
「ククル様!」
「イキマ、無理はするでないぞ!」
「大丈夫です。御心配なされますな」
だが彼は笑ってそれに返した。
「ククル様の手をわずらわせることもありません。どうかお気になされませぬよう」
「そうか」
「それよりもククル様」
「何だ」
イキマの言葉に顔を向ける。
「是非ともムーの力を手にお入れ下さい。あの力があれば我等は」
「わかっておる」
彼女はそれに答えた。
「あの人面岩が怪しい。待っておれ」
「はい」
ククルは人面岩に向かう。だがここでグルンガストが前に出て来た。
「また主か!」
「ここは通さん!」
ゼンガーはククルを前にして叫んだ。
「貴様等にムーの力を渡すわけにはいかぬ」
「ならば力づくで奪い取るのみ」
ククルはゼンガーの乗るグルンガストを見据えてこう言った。
「主ごときに我等が悲願、邪魔されるわけにはいかぬからのう」
「悲願か」
「そうよ。我が邪魔大王国がこの国を手中に収めるという悲願。それを果たすのよ」
ククルはその目を赤く光らせながらそう語った。
「その為にムーの力貰い受けてつかわす」
「それならばライディーンを手に入れるがいい」
「何」
「ライディーンこそムーの力の具現。それを手に入れずして何がムーの力だ」
「そうであったのか」
「そして俺は貴様等にその力を渡すつもりはない」
イキマのヤマタノオロチを倒したライディーンがここに来た。見ればイキマは既に脱出し戦場を離脱している。
「来い、今ここで貴様を倒してやる」
「ぬうう」
ククルはそれを聞いて怒りの声をあげた。
「ならば言われる通りにしてやろう。ライディーン」
彼に正対した。
「ぬしの力、貰い受けてつかわす。覚悟せよ!」
「望むところ!」
彼等は激しくぶつかり合った。そして互いに攻撃を繰り出し合う。死闘が幕を開けた。
「ゴォォォォォォォォッドアルファァァァァァァァッ!」
ライディーンが念動波を放つ。それによりマガルガを撃たんとする。しかしマガルガはその念動波を翼で弾き返した。
「何のっ!」
「クッ!」
洸はそれを見て苦渋の声をあげた。そこにゼンガーのグルンガストが来る。
「助太刀するぞ!」
「いや、いい」
だが洸はそれを断った。
「こいつは今は俺がやる。貴方は他を頼む」
「いいのか」
「ああ」
洸は頷いた。
「こちはムーの力を狙っている。ならば」
言葉を続ける。
「それは決して手に入らないということを教えてやる。この俺の手でな」
「そうか」
ゼンガーはそれを聞いて動きを止めた。
「ならば任せる。いいな」
「ああ」
洸は答えた。そしてあらためてマガルガに正対する。
「行くぞ」
「来るがいい。屠ってくれる」
ククルも引く気なぞ毛頭もなかった。ライディーンと正対しても臆するところがなかった。
「ひびき洸」
ゼンガーがそんな彼に対して言った。
「何でしょうか」
「武運長久を祈る。勝てよ」
「はい」
彼はそれに答えた。これを受けて彼はマガルガに再び攻撃を仕掛けた。
「行くぞっ!」
背中から弓を取り出した。そしてそれで狙いを定める。
「ゴォォォォォォォォッドゴォォォォォォォォオガンッ!」
弓を放った。それでマガルガを射る。だがマガルガはそれもかわした。
「他の者ならいざ知らず」
ククルはライディーンの弓を舞を舞うようにかわしながら言う。
「わらわにこの程度の攻撃が通用すると思うてか」
「それはわかっている」
だが洸の声は冷静であった。
「これはほんの陽動だ」
「何!?」
「本当の攻撃はこれだ。行くぞ」
ライディーンが動いた。そして態勢を変えた。
「ゴッドバーーートチェェェーーーーンジッ!」
ライディーンが変形した。鳥の形に変わった。そして洸はさらに言う。
「照準セェェェェェェーーーーーット!」
マガルガに狙いを定める。そしてそのまま突撃した。
「何とっ!」
ククルはそれをかわそうとする。だが先程のゴッドゴーガンをかわしたそれで態勢が整っていない。かわしきれなかった。
「ヌウッ!」
急所はかわした。だが攻撃を全て避けることはできなかった。右腕を吹き飛ばされてしまった。
「おのれ・・・・・・」
「見たかライディーンの力を」
洸はライディーンを元の形に戻してククルに対して再び正対した。
「貴様ごときに扱えるものじゃないぜ」
「わらわを愚弄するか」
その言葉に顔を紅潮させた。整った白い顔がみるみる醜く歪んでいく。まるで般若の様であった。
「愚弄なんかしないさ」
だが洸はそれに対してすぐにそう返した。
「ただ貴様の様な奴にこの力は手に入らない、それを言っただけさ」
「おのれ」
しかしそれはククルにとってはさらに怒りを湧き起こらせるだけであった。再び攻撃に入ろうとする。だがここで何者かがやって来た。
「ククル殿、ここにおられたか」
逆になった髑髏の頭を持つ巨人が空中に姿を現わした。
「ムッ、悪霊将軍ハーディアスか」
鉄也がその巨人の姿を見て言った。ミケーネ帝国の暗黒大将軍の下には七人の将軍がいる。彼はその中の一人なのである。
「ここは下がられよ。迎えに参りましたぞ」
「どういうことじゃ」
「我等が闇の帝王が御呼びです。恐竜帝国とのことで是非ともお話したいとのことです」
「さよか。ならば仕方がないの」
ここでライディーンに顔を戻した。
「この勝負預けておく。さらばじゃ」
こう言って撤退した。他の残った者もそれに続く。こうしてムートロン研究所での戦いは終わった。この時黒い鷲が姿を現わした。
「あれ」
「アランじゃねえか」
沙羅と忍がそれを見て言った。
「厚木にいたんじゃねえのか。どうしたんだよ」
「ちょっと事情が変わってな」
アランはダンクーガに通信を入れた。モニターに彼の顔が映る。
「大空魔竜隊に入ることになった。宜しくな」
「おお、そりゃいい。歓迎するぞ」
「また三輪長官と喧嘩したのか」
竜馬と隼人が彼にそう声をかけた。
「それもある」
彼はそれを認めた。
「親父は庇ってくれるがな。やっぱりあのおっさんとは合いそうにもない」
「まあそうだろうな」
「あの人に合う人なんて滅多にいないわよ」
甲児とさやかもそれに納得した。
「けれどそれだけじゃねえだよ。それだけであんたが動くとは思えねえぜ」
忍はさらに突っ込みを入れた。
「何があったか詳しく教えてくれよ」
「ああ」
アランはそれに頷いた。そしてまずは大空魔竜隊は大空魔竜の中に入りアランの話を聞いた。皆艦橋に集まっている。
「実は狭山で事件があってな」
「狭山」
「日本の埼玉県にある都市だ」
ピートにサコンが答える。
「あまりいい話でもないことで有名にもなっているがな」
「そうか」
サコンは詳しいことは話さなかったがピートには何となくわかった。人間の社会は日のあたる場所だけではないのである。陰もあるのだ。
「そこで少し事件があってな」
「事件」
「そうだ。ヒメ、来てくれ」
「うん」
ここで艦橋に一人の少女が現われた。赤い髪の少女である。
「彼女は」
「宇都宮比瑪っていいます。どうぞよろしく」
彼女はそう名乗って頭を下げた。
「へえ、ヒメっていうんだ。いい名だな」
「惚れたか、サンシロー」
「な、何言ってるんだよ」
「HAHAHA,サンシローは純情ボーイね」
「また兄さんたら」
隼人はからかいジャックが茶化す。メリーはそんな兄を嗜める。いつものことであった。
「まあそれはいい。ところで」
「はい」
大文字の言葉に応える。
「君はどうしてここに来たんだね」
「はい」
ヒメはそれを受けて答えた。
「ブレンパワードに誘われて」
「ブレンパワード!?」
皆それを聞いて不思議そうな声をあげた。
「それは一体」
「何のことなんだ」
「博士、知っていますか」
ミドリが大文字に尋ねた。だが彼も首を捻っていた。
「申し訳ないが」
「そうですか」
「私もはじめて聞く。それは一体何なんだ」
「詳しいことは私も知らないですけれど」
「えっ、そうなの!?」
「だったら俺達にもわかる筈もない」
ジュンと鉄也がヒメの言葉を受けてそう言った。
「けれど大変なんです。オルファンが」
「オルファン!?」
それを聞くと全ての者の顔色が一変した。
「今オルファンって」
「はい」
ヒメは頷いた。
「それが動くと」
「わかっている」
大文字がそれに答えた。
「宇都宮君といったね。君の言いたいことはわかっているよ」
「本当ですか!?」
大文字の優しい言葉を受けヒメは顔を上げた。ここで大空魔竜に通信が入った。
「む!?」
通信を開いた。するとそこに二人の男が出て来た。一人はドレッドの黒人、そしてもう一人は金髪の白人であった。
「ナンガ=シルバレーだ」
「ラッセ=ルンベルグだ」
黒人と白人はそれぞれ名乗った。そして大空魔竜隊に対して言った。
「ここにブレンパワードのパイロットがいると聞いたが」
「はい」
ヒメはここで名乗った。
「それは私ですけど」
「そうか、君か」
二人はそれを聞いて少し意表を衝かれたような顔になった。
「まさかこんな可愛らしいお嬢さんだったとはな」
「だがブレンパワードは容姿で選ばれるわけじゃないからな」
二人はそう言い合った後でまたヒメに対して言った。
「俺達はノヴィス=ノアから来た」
「ノヴィス=ノア!?」
「連邦軍の戦艦の一つだ」
大文字がそう皆に説明した。
「特殊な任務に就いているので詳しいことは私も知らないが」
「博士の言う通りだ」
ナンガがそう言った。
「ちょっと変わった戦艦でね。俺達の乗っているのもすした関係でモビルスーツとかとは違うんだ」
「じゃあ何なんだ?」
「アンチボディっていうのさ」
「アンチボディ・・・・・・。さっきはブレンパワードと言っていなかったか」
「おっと、悪い。俺達が乗っている方をブレンパワードという」
「ふむ」
ここでラッセが大文字の問いに答えた。大文字はそれを聞いて納得したように頷いた。
「そうだったのか」
「ああ。それで敵さんの方をリクレイマーと呼ぶ」
「リクレイマー」
「詳しいことは中で話す。着艦していいか」
「うむ。ピート君」
大文字はそれを受けてピートに声をかけた。
「着艦用意を」
「はい」
こうして二機のブレンパワードが着艦した。彼等もまた長い戦いに入ることをこの時は誰も予想していなかった。しかし時の歯車は彼等を確実に巻き込んでいた。
第十一話 完
2005・3・3
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