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ソードアート・オンライン~幻の両剣使い~ 【新説】

作者:定泰麒
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第1話 β版テスター

 
前書き
先に書いておきます。駄文です。

よろしくお願いします。 

 
 2022年春5月頃 大手メーカー「アーガス」、〈ソードアート・オンライン〉『Sword Art Online』(SAO)を発表、βテストを開始した。




 「おい、アイズ!」

 「なんだい?」

 「お前は、どうしてそこまで強いんだ」

 「えらく直球だね」

 「気になるだろが! β開始から1度も死んでない男の強さの秘訣ぐらい誰だって」

 「それもそうか。……まぁ練習したんだよ」

 「練習?」

 「そう練習さ」


 アイズは、少しだけ遠い目をすると、少しだけ過去に思いをはせた。





 過去にわき腹を刺されたことがある。突然なにが起こったかさえ分からず、ただどうも体が熱かったのは覚えている。
 俺は気を失ったのか、それ以降のことをおぼえていない。

 という夢を見始めたのは、俺が6歳の頃だった。妙にリアルで生々しかったその夢を今でも覚えている。夢というものは、起きた時に憶えていることは、あまり多くない。それに、世界観がまるで本物のようで、そこに生きている人たちが妙に人間っぽくて、これは現実なんだと、夢の中で思ったこともある。

 夢で見ていたのは、断片的なものだった。それでいて自分の年齢も様々。制服を着て、女の子と手を繋いで歩いてる時もあれば、どことも知れない小学校のグラウンドでサッカーをしていることもあった。

 そのなかでも、多く体験したのは本を読んでいたことだった。

 漫画、大衆小説、純文学などジャンルは様々な物を読んでいた。その中でもより多く読んでいた本がいわゆるライトノベルというジャンルの本だった。

 といっても、一冊のシリーズを繰り返し読んでいるようなものだった。いや、もしかしたら他にも読んでいたのかもしれないが、少なくともその本のタイトルのものしか出てこなかった。

 それが、ソードアート・オンライン

 この世界がその物語の中の世界と酷似している、それどころではなく同じ世界だと感じ出したのは、兄が空に浮かぶ鉄の城の物語を俺に話したことからだった。ただの夢の中の物語が、現実にそれが帯びだして恐怖を感じたのを子供ながらに憶えている。

 茅場晶彦(カヤバアキヒコ)

 それが俺の兄の名前だ。夢の中の本の中の登場人物と名前が同じだった。そのことを親に話したことがある。それも8歳くらいの頃で、言葉が拙いながらも説明したが、ただの夢だと一蹴されてしまった。
 それ以降、夢のことを親に話さなかった。信じない親に失望を覚えてしまったためだ。

 というのも、俺がどこか達観した子供だったからだ。毎日、毎日、夢を見た。しかも毎朝、毎朝、それを覚えている。これがきっと俺の精神をどこか蝕んでいったからだろう。





 兄は、俺が生まれた時には天才や神童と呼ばれていた。

 俺が生まれた時、兄は8歳であった。その当時から簡易的なプログラムを開発できていたし、量子力学に興味を示し始めていた。

 これは、間違いなく父親の影響といって間違いなかった。父は、量子力学者であった。そのため家には千を超える量子力学に関連した本が貯蔵されていた。それを兄は見ていたのだ。

 そうして、兄・茅場晶彦は若干18歳。大学1年で既に、業界では大手ゲームメーカー”アーガス”に入社し、億を超える年収を手にしていた。

 元々、”アーガス”は、小さいゲームメーカーであった。兄はそこに自分で作ったゲームプログラムを売り込んだ。そうしたところ、そのゲームは爆発的に売れ、一躍”アーガス”は大企業となったという経緯がある。

 俺はといえば、兄がそんな活躍をしているなか、両親と一緒にアメリカに住んでいた。

 どうやら俺自身にも、才能があったらしく、しかもその才能というのが異常なものだったのだ。なぜかわからないが、勉強したものが全て頭の中に入っていくのだ。例えば、父の貯蔵していた本を一字一句も間違えずに言うことができるし、何か機械を見た場合、一瞬でその用途やその設計図が頭の中に浮かんで来たり、自分でも気持ち悪くなるほどだった。

 しかし、それが俺にもたらしたのは孤独というものだった。

 いつの世でも、天才と呼ばれ歴史に残る人が存在する。きっと兄である茅場晶彦は、そういった存在の1人だと思う。その兄を見ていればわかる。彼は孤独で、いつも人の一歩先を歩んでいた。それに人は、尊敬するが、同時に畏怖さえも覚えさせるのだ。嫉妬、憎しみ、それこそ負の感情をただ天才であるがゆえに受けなくてはならない。だからこそ、天才は孤独なのだ。

 それは俺にも当てはまった。日本という国では、普通というものを尊重し、子供を教育していく。だが、俺にはその普通が当てはまらなかった。兄もそれは同様であった。普通に成長し、普通の社会人になるように教師たちは、努力する。それは、自分もそのように教育され、それが正しいことだとおもっているからだ。

 人間は誰にでも、長所と短所がある。例えば、英語はできるのに数学ができない。かっこよくて、テストでもトップになるような奴でも性格が悪かったり。それが個性と呼ばれるものだ。

 俺の場合、長所は頭が良いの一言だ。それならまだよかった。俺は、頭が良すぎたのだ。もはや異常と日本の教育において位置づけられた。そして、そんな俺をどうしたらわからない恐怖に教師たちは、才能を押さえつけようとした。

 教師がそんなことをすれば、それを生徒たちが気づかない訳がなかった。異常だと、誰にも思われた。見かねた父が、能力次第で飛び級をすることが出来るアメリカに引っ越しすることを決めた。





 それから8年という日々が過ぎた。引っ越し後、受けた能力テストにて判定不能だと判定された俺は、10歳という若さにして高校に通うことになった。というのも、10歳の少年を社会に急に飛び込ませるのは無理だと判断されたためだった。

 高校といっても、通信制のもので1年で1回学校に行けばよかったところであり、暇を持て余した俺は様々な知識に手を付けた。本を読めば読むほど知識が吸収されていく。それを誰にも邪魔されない。本当に楽しかった。まるで、しめつけられる首輪を外されたような感じだった。

 量子力学はなおのこと、経済学、経営学、商学、哲学、科学、医学……様々なことを学んだ。

 それで学んだことを使って、株に手を出した。それによって、月に大体100万円以上の利益を得ることができるようになっていた。
 他にも、薬学にも手を出した。現在難病として認定されている病気を治せないかと気まぐれで思ったことが始まりで、最初はAIDSからしてみようかと勉強し始め、約3ヶ月かけて勉強した。既にたくさんの実験がなされていることがわかり、どうすればいいのかと1ヶ月ほど、そのことだけを考えていた。
 ある日、ふとシャワーを浴びているとパッと頭の中に思い浮かんだアイディア。それが俺の人生、ひいては医学界に衝撃を与えることになった。
 父の知り合いのAIDSの研究をしている教授と話し合い、俺のアイディアを基にAIDSの研究を行った、そうしてこの世界にAIDSを完全に滅ぼすことができる薬が出来上がった。

 そこから全てが変わった。

 AIDSに効く特効薬開発における功績……想像以上にお金を得ることになった。月に100万程度だったものが、月に少ない時で1億、多い時で10億を超える大金を得ることになったのだ。
 さらにノーベル医学賞をその教授と俺とでダブル受賞をすることになった。当然世界的にも名前が売れることになり、マスコミにも取り上げられることになった。
 しかし、俺はマスコミの前に一切姿を現すことはなかった。それには、マスコミの前に出てしまうと俺のやりたいことが出来なくなってしまうと考えたからであった。

 それが、兄・茅場晶彦の作ることになるゲーム……ソードアート・オンラインに参加するためだった。





 「兄さん……両親が死んだ今、それはやるべきことなのかい?」

 「死んでいなくても、私はやるつもりだった。だから親が死んだからって私の計画をやめるつもりはないよ……康彦(ヤスヒコ)、お前が私の邪魔をしようとね」

 「そうか、じゃあ全力で俺はその計画を邪魔するよ。だから、俺をβ版への参加させて欲しい」

 「わざわざ、自分の計画に障害になりそうな人物をゲームの中に入れろと? ふっ、良いさ。参加を認めよう。いくらお前が何をしようとも結局は何も変えられまい」

 「それは、どうかな……俺は強いよ。きっと世界中にいる誰よりもね」

 「楽しみだな……それじゃあな、弟よ。また、会おう」

 「じゃあね、兄さん」

 その日は、気雨が降っていた。晶彦、康彦兄弟は珍しく2人そろっていた。目的は、両親の葬式。アメリカの土葬を行い、その場に3,40は超える人が見送りしていた。神父や参列していた人達が帰っていくなか、2人はその場に残って話していた。

 康彦18歳、晶彦26歳の時のことである。

 交通事故という不慮の事故によって、両親を一度に亡くした。両親は財産を兄弟に残したが、それ以上の財産を持っていた兄弟には必要はなかった。 
 
 康彦は、かつて開発したAIDSの特効薬の利益を使って会社を経営していた。元々本で得られる程度の知識があり、さらに経験というものを康彦は積んだ。そのおかげもあってか、会社は兆を超える利益を得られる程度にはなっていた。

 わずか18歳にして、貯蓄が2兆を超えているのである。そんな彼に向かうとこ敵など存在せず、もはや世の中というものをつまらなく感じていた。
 そうして彼は、兄の手掛ける命を懸けるゲームへの参加を希望したのだ。

 「ようやく……始まるのか……」

 その日まで、康彦は訓練を欠かさなかった。このゲームへの参加自体を遥か昔に決めており、NEEDLESの第1世代機まで手に入れ、1週間籠ったり、わざわざ小説内の戦闘を基にした戦闘プログラムを組み訓練したり、様々なことをしてきた。それも、原作の始まる2年前からだ。

 β版で何をしようか考えた。ゲーム内で兄の計画の邪魔をするにはどうしたらいいのか?

 まず兄の計画とは、何かを考える……まったく思いつかなかったが、デスゲームをしようとしていることはわかっていた。だからこそそれを防げば、兄の計画を防げるのではないか。それをするには、何をしたらいいか、少なくても康彦1人では無理だ。そうして、思いついたのがβ版にて仲間を作っておいた上で、デスゲームに挑むということだった。

 康彦は、人から見れば矛盾していた。

 デスゲームを防ぐなら、根本から防げばいいのに、ゲームに参加してその中で防ぐという。康彦には、どうやってデスゲームとなるのかわかっていたし、それを防ぐこともできた。それをしなかったのは、ひとえに楽しくないからという命をなんとも軽く見ていたからなのである。

 そんな考えに至ったのは、彼のこれまでの人生というものが原因であったといえよう。

 そんな歪な考えを持ち、尚且つ間違いなく現段階ではだれも敵うことのない実力を持った男がソードアート・オンラインという世界に降り立った。





 「おい、おーい。聞いてんのか!?」

 「ご、ごめん。ちょっと考え事してて……」

 「はぁ~。もういいや。さて、そろそろ約束の時間だろ。行くか?」

 「もうそんな時間か……よし、行こうかシュタイン!」

 「おぅ、行くかアイズ!」

 その名は、アイズ。
 後に勇者と呼ばれる男である。
 

 
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