ゲームの世界に入った俺は伝説のサムライになりました。
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2話 侍は断れない。
「覚悟を決めんのはテメェだ。」
刀を引き抜くと同時に発動される、スキル鬼の眼。
このスキルはただ、俺のステータスを上げるだけのスキルではなかった。
分かりやすく説明するなら、チェンジアップなどのキャラクターのやる気を上げる事で
ステータスをアップさせる類のスキルだったという事だ。
ちなみに鬼の眼の場合テンションは口調だけ上がる変な仕様になっていて、刀を抜いて
スキルが発動すると普段の自分じゃない喋り方をしてしまうのだ。
「あ、紅い瞳に、五尺の大太刀……ま、まさか本物の……
大量発生した千のモンスターを斬り殺した…鬼眼のキョウ…?」
大量発生したモンスターを斬った?
…………。
おお!もしかしてあれか!?
薬屋する為のG集めに狩りまくったあれか!?
なるほど、俺と同姓同名の他人ではなく俺の事だったのか……。
「ひょ!ありえないんだな!コイツはきっと偽者なんだな!!
LV20の僕ちんが痛めつけてやるんだな!!」
まさか、中二臭いと思っていた呼ばれ方をしていたのは自分だったと軽いショックを
受けているとポッポが美少女とイシュラちゃんの手を放し、腰に装備していた杖を俺に向けて
魔法を唱えた。
「食らうんだな!ファイヤーボール!!」
ポッポは唾を撒き散らしながらスイカ一個分の大きさの火の玉を俺に放つ。
だが……。
ズパン!
「この程度か?豚野郎」
レベル124の俺にとっては止まって見えるほど遅い火球を俺は切り裂いて
かき消した。
「そ、そんな!LV20の僕ちんの魔法が……」
よほど自信があった魔法だったのか、ポッポは驚愕の表情を見せている。
「す、すごい」
「魔法を切り裂いちまった……」
「あれが…千のモンスターを斬った、鬼眼のキョウ…」
そしてその光景を見ていた村人達は口々に感想を漏らす。
俺にとってはたいした事無い事でもLVが低い彼等にとっては凄い事なのだろう。
「さあ、選びな。ここで俺に叩き潰されるか、大人しく家に帰るかを……」
「ひ、ひーー!!殺されるーーー!!助けてくれーーー!!!」
「ま、待つんだな!リーダーの僕ちんを置いていかないで欲しいんだな!!」
ヤクザっぽく睨んで、選択肢をくれてやると二人は絶叫を上げながら
村の外へと逃げて行った。
二人の背が見えなくなったところで刀を鞘に収める。
「す、すげーー!!アンタすげーよ!!」
「ありがとな、スッキリしたぜ!!」
「しかし人は見かけによらねーよな!鬼眼のキョウがこんな若い兄ちゃん
だなんて……俺はもっとゴツイ大男だと思ってたよ!」
「鬼眼のキョウは悪鬼羅刹か英雄か?って噂があったがアンタは英雄だぜ!!
俺達が証人だ!!」
収めた瞬間、村人達に囲まれお礼を言われながらもみくちゃにされる。
ちょ、嫌じゃないけど暑苦しいっス!酸素!酸素をくれ!!
感謝してくれているだけで悪気が無いと分かっているぶん、離れてくれといい難い。
つーか、悪鬼羅刹ってなんだ!?
「これ!やめんかお前達!!恩人に失礼だろう!!」
聞き捨てなら無い単語に疑問を抱いていると、美少女の父親オランドゥさんが
怒声を張り上げ、もみくちゃにしていた村人達はやりすぎたと思ったのか
それとも父親が怖かったのかは分からないが、俺から数歩離れてくれた。
ああ、風が気持ちいい……。
「村の者が失礼をしました。私はオランドゥ、アルダ村の神官で村長を兼任しています。
さっきは娘達を救っていただき本当にありがとうございました。」
「いえいえ、気にしなくていいですよ。気に食わなかったからという理由で
やった事ですから」
「それでも本当にありがとうございます。
よかったらお礼をさせてもらえませんか?このまま何もせずにはいられませんので」
「そうですよ!キョウさん、是非お礼をさせてください!!」
「え…ええと…」
押しに弱い日本人である俺はオランドゥさんと娘のイシュラちゃんの好意を
断ることが出来ず、御礼を受けることになった。
☆☆
数日前お父様がメルダの冒険者ギルドに出したコヴォルト退治の依頼を受け、冒険者の二人組みが、
このアルダ村にやって来た。
一人は30過ぎの太った魔法使いで、もう一人は片眼が真紅の色をした侍で、
自己紹介では鬼眼のキョウと名乗っていました。
彼が噂の鬼眼のキョウ……。
彼の名乗りを聞いた村の人たちはこれで安心だとほっとした空気になるのですが
魔法使いの男が私を見た瞬間その空気は死にました。
なぜならこの魔法使いは『友愛するんだな!』と油まみれの手で私の手を握りながら
迫ってきたからです。
助けを求めようと鬼眼のキョウさんを見ますが、彼はニヤニヤと私の胸を見るばかり。
最悪です。
噂では悪鬼羅刹か英雄か?と言われていましたがこの人は外道です。
そして、自体はどんどんと悪い方向へと向かっていきます。
妹のイシュラも目をつけられ、ついに私達を守ろうと頭を下げるお父様。
さらには私達の為に怒ってくれた村の人が鬼眼のキョウの刀の餌食になろうとしている。
私は神に祈りました。
私達をこの悪魔から、助けてくださいと……。
そして願いが通じたのか一人の男性が私の前に現れました。
歳は私と同じくらいで、黒い着物を着ており、その手には普通よりも長い刀が握られ
瞳は美しい真紅の色をしていた。
頭上にはキョウという名前が表示されています。
そう……彼が彼こそが鬼眼のキョウだったのです。
「さあ、選びな。ここで俺に叩き潰されるか、大人しく家に帰るかを……」
「ひ、ひーー!!殺されるーーー!!助けてくれーーー!!!」
「ま、待つんだな!リーダーの僕ちんを置いていかないで欲しいんだな!!」
切り裂かれる武器に魔法。
彼の強さ本物で、千のモンスターを斬ったという話も信じられるほど強く
二人の外道を追い払う時も、まるでドラゴンが目の前に居るような
錯覚がしました。
しかし、何故でしょうか?
二人が逃げたのを確認した彼が刀を鞘に戻した瞬間、彼の紅い瞳は黒くなり
雰囲気も柔らかくなって、村の人達にもみくちゃにされる彼は
どこにでもいそうな謙虚な青年となりました。
紅き目を輝かせ、戦う彼と今の彼……一体どっちが本物なのでしょうか?
彼に関して気になることは他にも沢山あるけれど今は……。
「姉様!姉様も早く広場に行こうよ!!」
「はいはい。わかったから、走るのはやめなさい。」
今は私達家族の恩人にお礼をしましょう。
☆☆
「もう!ポッポさんの責任っすよ!!俺の義眼を鬼眼にして
『鬼眼のキョウ』に成りすまそうだなんて言うから!!」
「うるさいんだな!お前もノリノリだったんだな!!」
「なんだと!この豚野郎!!
もう嫌だ!!俺はパーティーを抜けさせてもらう!!」
「あ!待つんだな!」
「うるせぇ!」
「あぶぅ!?」
口論の末、部下の侍に殴られて倒れる僕ちん。
何でスーパーエリートである僕ちんがこんなめにあわなくちゃいけないんだな……。
頭の中に浮かんでくるのは紅の瞳を持つバケモノ。
「あいつのせいなんだな」
そうだ。
あいつさえいなければ、僕ちんはレヴィアたんとイシュラたんと友愛し、
雄プレイすることが出来たのに……。
復讐してやる……。
そうと決まれば…まずはパーティーメンバーと資金集めなんだな。
バケモノに復讐を決めた僕ちんは復讐のための準備をする為に
とある場所にむかって歩き出した。
そう……僕ちんの目的を最も早く達成できる闇ギルドへ……。
夕日を背に消えていくポッポ。
彼は再び登場するのか?それともしないのか?
それは……
読者様の反応しだいで……
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