インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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取り戻した後も………
俺がこの事態を知ったのはシヴァを出して30分ぐらい経過した頃だった。
連絡を受けてすぐに俺は鷹月に食器を押し付けて誰もいない場所に移動して飛翔した。
「おいお前ら、起きてるか?」
『フェーニクス。いつでも』
『リヴァイアサン。同じく準備OKッスよ』
『ハデス。……同じく』
『ヘラクレス。俺もいつでも構わない』
今まではシヴァだけだったが、そうは言ってられなくなった。
『シヴァ、お前もすぐに合流しろ』
『うるさいわよフェーニクス。リーダー面しないで』
そしてやんややんやと騒がしくなる。
「ハデス、悪鬼回廊を展開してくれ」
『……了解』
目の前に黒い穴が展開され、中に入るとそこには死者の霊魂が漂っていた。
『『『『……………』』』』
「? どうした?」
『……おそらく、マスターが慣れていることに疑問を生じているのだろうかと』
「知るかよ。とにかく今は飛ばすぜ」
シヴァ、フェーニクス、リヴァイアサン、ハデス、ヘラクレス。この五人―――いや、正しくは五体はレジェンド・コアというもので人格を形成していて、それぞれが属性というものを持っている。シヴァは氷、フェーニクスは炎といった感じに。当然、リヴァイアサンみたいに水と雷という複数の属性を持っている奴もいる。
まぁ、ディアンルグはもともとそれを前提に造っているからどちらかと言えばこっちが本性なわけだ。………本当にやんちゃしすぎだろ、俺。
ちなみにだが、それぞれが人の形を形成することができる。シヴァが女である程度の胸があるのはそれが理由だったりする。ということはな―――いや、考えないようにしよう。
何度か悪鬼回廊を利用して、山田先生から連絡が入った。内容は引き返せとかそういうことだが、無理だしする気もないしそれに――――その誘拐した女には色々と聞きたいことがある。
そしてこっちはあるコア反応をキャッチした。それはこの前俺を殺そうとしていた無人機。
『ねぇ、壊していい?』
「いや、データを抽出させる。セバス」
『……やれやれ、AI使いが荒いですね』
シヴァが本気で壊そうとしていたので一時的に宥め、セバスにデータを抽出させた。
『あのIS、止めますか?』
「当たり前だ」
即答すると同時に、そのISは海に落ちた。
そしていざ交戦しようとすると山田先生から通信が来た。
『風宮君。更職さんの救助を優先。そして可能なら白式、打鉄弐式も回収してください』
「人命を最優先ってことですか。―――まぁ、例えあの女を殺してもそっちを優先するけど」
アメリカの第二世代型IS『アラクネ』に視線を戻すと、どうやら本人も気づいていたらしく、簪さんの頭にライフルの銃口を向けていた。
「おいテメェ、こいつの命が惜しかったら今すぐISを解除しな」
(セバス、簪さんの右手の中指に填められているのって)
『ええ。打鉄弐式です。そして白式のコアは彼女の装甲腕で後ろに固定してあります』
(なるほどな……)
答えは決まり、俺は作戦を瞬時に伝えて堂々と言い放った。
「断る!!」
「え……」
「はぁあああああああッ!!?」
―――スパッ
敵が叫び終わると同時に何かが切れる音がして、簪さんが海に落ちた。
だが俺はそれを無視して白式のコアをキャッチする。ちなみに簪さんなら、
『簪は確保したわ!』
シヴァがIS装甲を纏った状態を再現してキャッチしていた。
(ならすぐに離脱しろ。力は殺さない程度なら遠慮なく使って構わん。フェーニクスはこれを持ってステルスモードで追随)
『了解!』
白式のコアを持たせたフェーニクスを追随させ、俺は蜘蛛女に向き直った。
「テメェ!」
「うっせぇ………」
ああ、もういいや。冷静にならなくていいや。いいんだよなぁ?
「死ね!!」
飛んでくる弾丸が俺を《斬血》で一つ残らず斬り散らし、目の前の敵が驚愕していることは笑みを浮かべる。
「一つ聞きたいんだが、いいか?」
「うっせぇ!!」
敵が叫ぶと同時にクローで引っ掻いてくる。
それを《メタルクロー》で防ぎ、IS学園の方にぶん投げた。IS学園が幸い孤島でその周りには陸はない。
「おいテメェ! 戦う気あんのか!!」
向こうが叫んでくるが、俺は無視した。
「いい加減に―――!!」
「あ~、やっと気づいたか……アンタ、今動けないだろ?」
『ヘラクレス。俺が言ってもおかしいが………冥福を祈る』
『ハデス、そこは縁起悪いことを言うところじゃない気がするッス』
ハデスとリヴァイア(リヴァイアサンのあだ名)が何か言っているが、どうでもよかった。
「だからさぁ、動けないアンタをボコッてやる。ああ、安心しな。そのブサ顔もちったァマシになるだろうよ」
「や、止めろ―――」
―――ボゴッ!!
ヘラクレスの棍棒がISサイズで現れ、蜘蛛女の頭にクリーンヒットした。
「あ~、なんか飽きたなぁ……」
『『『飽きるの早ッ!?』』』
「だからさぁ、さっさと死んでよ!」
荷電粒子砲《迅雷》を当て、蜘蛛女の機体がぶれる。
「さて、殺るか」
『単一仕様能力『覇気顕現』発動』
ハイパーセンサーにそんな表示が現れるが気にならなかった。
「な、な、何を―――何をする気なんだよ!!」
「は? お前を殺す以外の選択肢はないんですけど?」
俺の体に宿る覇気が現れ、俺が腕を突き出す度に玉となって蜘蛛女の方にガトリング砲から出る弾丸の如く飛んでいった。
ある程度敵がダメージを受けたと判断し、間合いを詰めてひたすら殴る蹴るの暴行を加える。
「これでフィニッシュだ!!」
上下逆さまになると同時に体を回転させて、右足に集中させて渾身の蹴りを炸裂する。
「う、うわぁあああああっ!!」
女が海に叩き落とされるのを確認した。
(あ、やば……)
興奮のあまり、『覇気顕現』のデメリットを忘れていた。
何か聞こえたが、どうやら精根が尽きたらしく俺はそのまま海に落ちた。
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