吸血鬼の真祖と魔王候補の転生者
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第13話 戦乙女騎士団
前書き
前回のあらすじ
教会への宣戦布告
セノアの加入、装備を作る
「団長、総員戦闘準備完了いたしました。」
皆さんごきげんよう、シルヴィアよ。
私たちは今ヨーロッパの某所、とある地方都市近郊の森から、その都市を眺めているわ。
現在時刻は日の出の少し前よ。
私に掛けられた声に振り返れば、正面には声をかけた張本人、セノアが跪く。
その後ろには総勢300名の美女達。
惜しむらくは、その格好が一般人からかけ離れていることのみ。
セノアも含めて全員、チェインメイルを着込み、その上から全身を包むプレートアーマー(顔は見える)を装備。背中には黒いマント、左手には円形のラウンズシールドを装着、左腰には刀身60cmのサーベルを履いて、右手には柄が1m、そこから手の平サイズに広がり穂先まで1m円錐形で細くなっていくランスを持っているのだから。
掲げられている旗には、巨大な盾、交差する2本の剣、両脇に立つ2本の杖を背負った戦乙女の横顔が描かれている。
そんな彼女たちは巷では戦乙女騎士団と呼ばれ尊敬の念を向けられている。
そして私はその団長、エヴァが副団長でセノアが部隊長。
・・・・・・・・・・ドウシテコウナッタ?
「この40年、教会相手に暴れまわり、身寄りのない女たちを引き連れて、教会の圧政から開放する様が民衆から真の騎士だと言われるようになり、それを聞いてテンションが上がったお前が、チート魔力に物を言わせてミスリルを大量生産し、騎士といえば重装騎兵だと言わんばかりに装備一式を作成して装備させ、ミスリルの軽さと強度・十字架の付与魔法でチート能力を与え、チート無双をしたからじゃないのか?」
・・・・・おおぉぉ
「的確な状況説明ありがとう、エヴァ。それでもね、人は目を背けたくなることってあるものよ?」
「私たちは軽く人間やめているけどな」
・・・・・・・・・・おおぉぉ
遠い目で誤魔化そうとしたけれど、鋭いツッコミでぶった切る我が恋人兼義妹様。そこに痺れる憧れるー。
・・・このネタって恋姫の華琳様でよかったかしら。使いながら忘れちゃった。
ヨーロッパといえば騎士、騎士といえば重装騎兵。それは譲れないわ。
まぁ、両者に絶対的なつながりはないけれど。ファンタジー好きとしては、ねぇ?
ちなみに、適宜訓練で痛みは与えているので、VR的なゲーム感覚は無くしてある。
あと、エヴァが言ったとおり、今は1450年。私とエヴァ、セノアが旅を初めてもう40年にもなるわ。
まぁそんなくだらない話をしながら、いつもの服装の私たち2人のあとに続く300の騎士たち。
街の門番は既に買収済み。え?騎士団が賄賂?ナニソレオイシイノ?
ということで、顔パスで都市に入りメインストリートをずんずん進む。
そうして見えて来たのはこれまで襲撃してきた中でも最大規模の大教会。
まぁ、この地方の中心地であり、ただの司祭ではなくその上位者、司教が常駐する教会となれば当然とも言える。
「さて、セノア。あとはまかせたわよ」
「はっ!」
そう返礼すると、すぐさま部隊に戻り指示を始めるセノア。
私とエヴァは今回の戦闘に参加しないことは既に通達されている。
理由は簡単、これだけ大規模な戦闘を自分たちだけで勝ち残れば、それが更なる自信につながるからだ。
「楽をしたいだけじゃないのか?」
「そうとも言うわね♪」
そうこうしている内に・・・
「「「「「ブォーブォーブォーーーーーーーーー」」」」」
私手ずから彫って与えた300の角笛が、夜が明け日が上り始めた都市に鳴り響く。
「「さぁ」」
「「Let’s rock(派手にブチかましなさい)」」
私とエヴァ、2人の静かな宣言で幕が上がる。
魔王様の微笑みを浮かべながら。
「それで?勝率の方は?」
「エヴァ、あなたわかって聞いているでしょう?ただの賊に負けるとでも?」
「戦力差は倍以上だぞ?」
そう、今回セノア達に任せようと思った最大の理由。それはこの戦力差を自分たちで解決できるかどうかを試したかったのだ。
敵兵力は傭兵部隊を中心に1000名ほど。大してこちらは重装歩兵300名。
普通で考えればこちらの壊滅は必須。
それも含めて、今回の作戦立案は全てセノア達にまかせた。
結果彼女たちは、前日夜に商人を買収し教会に大量の酒を差し入れさせる。
同時に門番も買収し、スムーズな軍事行動を準備する。
予定通り、昨夜教会では大宴会が開かれたのも調査済み。
つまり敵兵力の大多数は使い物にならない二日酔い状態。
まぁ、もっとも・・・
「全てがそうとは・・・いかないわね」
セノアは騎士団を3つに分け、それぞれ100名ずつ、別々の入口から突撃をかけた。
そして扉を壊し、中に侵入しようとしたところで最初の異変に気づく。
「撃てーーーー!」
気で強化した聴力が、教会内の部隊長が放つ号令を拾う。
同時に、敵が放った数十の矢が、正面から突撃したセノア達に向かう。
「総員!盾構えっ!」
それでもセノアも、だてに40年戦い続けていない。すぐさま号令を放つ。
ファランクス(密集陣形)を基本としている騎士団は、すぐさま防御体制を取る。
具体的には、映画「スリーハ○ドレッド」の防御を思い出して頂戴。
盾で自分と味方を覆いつつ、隊列を整える。
「全隊!進めぇ!」
防御体制のままゆっくり進み、教会内へ侵入するセノア
「今だ!放てぇぇぇ!」
敵の弓の合間を見つけて号令。
合わせて防御体制を解き、100の騎士が右手に持ったランスを投擲する。
まさかの急な反撃に隊列を崩し、攻撃の手を止める敵軍。
「勝負、ありね」
私の呟きと同時に、再びセノアの大号令
「総員抜剣!突撃ぃぃぃぃぃ!」
さぁ、戦闘から虐殺へと舞台は変わるわ。
くすくすと笑いながら、私は眺め続ける。
結局のところ、最初に戦闘した1部隊以外は、ほとんど酔いつぶれていた。
それらを拘束、抵抗する者は容赦なく殺害しながら、教会を制圧していく騎士団。
すぐに戦闘は終了しそう、そんな風に考えていると・・・
「ちっ、ようやく脱出できたと思ったんだけどな・・・」
教会の方から、30人ほどの集団がやってきた。その先頭にいる男がなんとも残念そうにつぶやく。
剣を抜こうとする部下を片手で止めながら、こちらの様子を伺う男。
「・・・・・今回の作戦に、私たちは参加していないわ。逃げたければ逃げなさい」
「・・・何が目的だ?」
「何も。強いて上げれば、あなた達は彼女たちの戦果になってもらう贄だった、といったところかしら」
「・・・ままならんねぇ。お前ら、引くぞ!」
号令一下、都市からの脱出を図る傭兵たち。
こちらと自分の力量差、何より戦力差を咄嗟に判断し、引くことを決断した男にご褒美と、5割の闘気を向けてあげる。
「勘弁してくれよ、あんたらほどの美人なら一杯誘うところだが、どうやら役不足らしい。素直に引くよ」
向けた闘気に顔を引くつかせながら、足を止め男が話す。
「そうね、あと100年くらい男を磨いたら、1杯くらいなら付き合ってあげるわ」
「まったく・・・手厳しいねぇ」
そう苦笑を浮かべながら男は去っていった。
「珍しいこともあるものだな」
エヴァが本当に不思議そうに話しかける。
「ああいう、芯のある人は嫌いじゃないもの」
最初に浮かべた表情は、保身ではなく、どうやって部下を生かすか。そればかり考えていた。
ああいった人間が教会にもいれば、もう少しマシになったのだろうに。
焼け落ちていく教会を眺めながら、ふとそんなことを考えていた。
「さて、こんなものかしらね」
今回の略奪品はかなりの量になった。
まぁ、教会の規模から言えば当然だが、よくぞここまでといった感じ。
略奪した財宝のうち、5割を私たちが貰い、あとをそれぞれに分配する。
この割合は、最初の頃から私たちの目的を説明する前に決まっていった。
そもそもこの娘達は金銭への欲が少ないのよね。
まぁ、それでも残りの5割を人数で割って分配しても、1人頭平民の年収数年分相当の金額にはなる。
それぞれの取り分は、私が作成した簡易略奪袋で各自が管理している。
街に行った時に好きに使わせている。
食料については略奪したものと、街ごとの商取引で設けて賄っている。
財宝は私が合成で、等価交換で貨幣に変換しているから、マネーロンダリングも自由自在。
実際この量の財宝を換金しようとするだけで手間だもの。魔法具スキル様々よ。
「そろそろ出発するわよ」
私の号令で、それぞれが自分の馬車に向かう。
3人で旅を始めた頃に作ったあの改造版簡易移動要塞型馬車。
今やその数も30台に膨れ上がったわ。
まぁ、1台10人が定員の、かなりゆったりとした作りだけど。
ちらりと、右手に持った資料に目を向ける。
今回の街の協力者に貰った、襲撃候補地のリスト。
さて・・・次はどこに行こうかしら
地平に彼方に視線を向けながら、私は自然と微笑んでいた。
「悪い微笑みを浮かべているな」
くすくすと笑いながら近づいてくる恋人。
「えぇ、まだまだ私たちの贄となってもらわなくてわね」
「あぁ、なにせ私たちは悪の魔法使いだものな」
2人して凄絶な微笑みを浮かべる。
エヴァにセノア、騎士団の娘達がいれば、まだまだ進めるわね。
・・・さぁ、次は誰が私たちの贄となってくれるのかしら。
そんなことを考えながら、私はエヴァを抱き寄せ馬車に向かっていった。
後書き
お読みくださりありがとうございます。
今回は少々短め・・・というよりこれから更新速度は少し低下すると思います。
せめて週一くらいの速度は保ちたいのですが・・・わかりません。
ゆっくり楽しんでいただければ嬉しいです。
さてさて、信者?を増やす我らがシルヴィア様。
ちなみに作中の映画のセレクションは作者の趣味です(笑)
一方的な蹂躙にロマンを感じます(コラマテ)
それではまた次回。
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