スーパーヒーロー戦記
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第28話 ウルトラセブン暗殺計画
その日、本郷と一文字の二人は遊園地に来ていた。と、言うのも別に遊びに来た訳ではない。この地で不審者が出たと通報があったのだ。
その為ダブルライダーが派遣されたのだが結果は何もなかった。
「やれやれ、これで連続5件目の悪戯通報か」
「ぼやくな一文字。何もないのは良い事じゃないか。それよりさっさと戻ろう。皆に報告しないと」
「へいへい」
二人はそう言いバイクに乗り走り去って行った。だが、そんな二人を見て人気のない場所で静かに微笑む異形があった事を二人は気づかなかった。
既にこの手の悪戯通報は今日で5件目になる。悪戯通報が発生したのは1週間前の事だ。多い日によっては一日に10件近くも発生する事がある。
中には大海原に突如として怪獣が現れたとか言う性質の悪い嘘もあった。しかしレーダーが使えない以上肉眼で調べないといけないので即座に調査に向ったのだが結果は嘘で終わっていた。
その為メンバーの殆どがほとほと参っていた。
「また嘘だったのか?」
「あぁ、しかし一体何故こうも立て続けに嘘の通報が起こるんだろうか?」
本郷が考える。悪戯にしてもこれは行き過ぎだった。明らかに悪意のある者が行っているとしか思えない。
「そう言えば獲得した二つのジュエルシードはどうしたんだっけ?」
「あれでしたら今は科学特捜隊に送ってありますよ。イデさんがそれを使ってジュエルシードだけでも探索できる装置を作ろうって張り切ってましたし」
「それが出来てくれたら楽なんだけどなぁ」
正にその通りだった。そうなれば少なくとも起動前に回収が出来る。そうなれば少しは被害を抑える事が出来る筈なのだ。
そんな時、またしても通報の報せを告げる警報が鳴り響いた。
「今度は第三地区か…どうせデマだろ? 放っておこうぜ」
「そうはいかないよ甲児君。例え1000回の通報がデマだったとしても僕達ガーディアンズは出撃しないといけないんだよ」
ハヤタの厳しい指摘があった。それには頭が下がる甲児であった。
「今度は僕が行こう」
「あ、だったら私も一緒に行きます」
第三地区にはダンとフェイトの二人が行く事になった。二人は急ぎ調査に向った。
「う~ん、フェイトの奴案外ダンと仲良いなぁ…流石に大人の魅力に気づいたって奴かぁ?」
「え~、甲児が言うと何か危なそうに聞こえるなぁ」
「何だよアルフ。俺別に疚しい事なんか言ってないぜぇ」
「だって甲児の頭の中は女の子の事ばっかりなんでしょ?」
何故それを知っている。とばかりにアルフを見る。すると彼女の視線がある方向に向けられる。
其処を見ると、甲児の方を向かずそっぽを向いて口笛を吹く真似をしてるなのはが居た。
なのはの奴、ばらしたんだな。
「なのはぁぁぁぁ! お前ばらしたなぁぁぁぁ!」
「ニャハハ、ごめんなさ~い」
「御免ですむかあああああああああ!」
忽ち二人の追いかけっこが勃発しだす。が、今回のそれとは関係ないので放っておく事にする。
***
第三地区の通報現場に辿り着いたダンとフェイト。其処の通報機の前に来たが、其処には誰も居ない。やはり今回も悪戯だったようだ。
「また悪戯か……」
「そうみたいですね」
安堵する傍ら半ばこんな事をする者に対する苛立ちを胸に二人はポインターに乗り込み帰ろうとする。だが、その周囲を数台の車が取り囲んでいた。しかも、その車にはドライバーの姿が見られない。
「何だ? これは…」
「ダンさん、これって…」
ダンが一台の車に向かい透視光線を放つ。其処に居たのはハンドルを握る宇宙人の姿であった。鳥類を思わせる嘴を持ち不気味に光る目をした全く初めて見る宇宙人だ。その宇宙人がダン達を見て不気味に微笑んでいる。
「何者だ!」
【我々は、如何なる戦いにも負けた事のない、無敵のガッツ星人だ! モロボシ・ダン、嫌! ウルトラセブン…我等の挑戦を受けよ!】
ガッツ星人がダンを指差す。その言動から明らかな自信が感じ取れた。ダンは変身するのに渋った。これだけの啖呵を切ったのだ。もしかしたら罠かも知れない。それに、今此処にはフェイトが居る。下手に変身して彼女を巻き込む訳にはいかない。
「ダンさん!」
「フェイトちゃん、此処は逃げるんだ。罠かも知れない!」
【貴様は我々から逃れる事は出来ん!】
ガッツ星人が言い放つ。その直後、周囲に複数のガッツ星人が現れる。それら全てが手に武器を持っている。携行型に小型化された光線中だ。一見すると只のレーザー銃に見えなくもない。
【我々から逃げようとすれば、こうなる】
試しにその光線を近くの車に放つと、その車は一瞬の内に蒸発し、屑鉄すら残さず消え去ってしまった。その銃口を今度はダンではなくその隣に居るフェイトに向けてきた。
「な、貴様!」
【動くな! ウルトラセブンになれ! でなければ……】
ガッツ星人達の持つ冷たい銃口がフェイトに向けられる。今のフェイトはバリアジャケットすら纏っていない。恐らく、ガッツ星人達はフェイトが変身する間も無く引き金を引けるだろう。そうなれば彼女もまたあの車と運命を共にする事となる。
【ウルトラセブン、我等の勝負を逃げると言うのなら、この場で二人揃って処刑するだけだ!】
「くっ……!」
ダンは決意した。どの道このままでは活路は見出せない。それに逃げると言う方法も封じられた。助けを呼ぼうにも恐らく敵はそれを許してはくれまい。最早こうなっては敵の言い分に乗る他ない。でなければ此処で二人揃って共倒れとなる。
「フェイトちゃん、僕が変身したら、すぐに皆に連絡してくれ」
「でも、ダンさんは?」
「僕は大丈夫、良いね」
ダンの言葉にフェイトは頷くしか出来なかった。この状況ではガッツ星人の要求を呑むしかない。例え、それが罠だったとしても。此処で全滅する訳にはいかない。まだ倒れる訳にはいかないのだ。
【話は済んだか?】
「良いだろう。お前たちの勝負に乗ってやる! 但し、此処じゃなく誰も居ない場所でだ!」
【好きにするが良い。場所は貴様が選んで構わない】
相等な自信を持っている。油断ならない相手のようだ。ダンは覚悟を決め、懐からウルトラアイを取り出し、それを装着した。
眩い閃光と共にダンの体がみるみる巨大化し、光の巨人ウルトラセブンとなる。
変身したセブンは直ちにその場から飛び上がり別の場所へと降り立つ。それにガッツ星人達も続いた。
セブンの言い分を呑む辺り絶対に勝てる自信があると見られる。今までの敵とは何処か違う。
降り立ったのは人気の全くない岩場だった。
此処でなら町の被害もないし存分に戦える。目の前にガッツ星人が下りてきた。数は一体。どうやらサシでの勝負を挑むようだ。
【行くぞ! ガッツ星人】
【来るが良い。貴様を倒し我等が無敵だと言う事を証明してくれる!】
ガッツ星人の自信に満ちた言葉がセブンに放たれる。だが、迷ってはいられない。
先手必勝をとるのだ。
開幕と同時にアイスラッガーを放つ。だが、その一撃はガッツ星人の体をすり抜けてしまった。
【何!】
【無駄だ。貴様の攻撃は我々には通用しない。そして、貴様は我々には勝てん】
不適にガッツ星人が肩を震わせて笑う。
ならばと今度はエメリウム光線を放つ。
しかし、それもやはり通じなかった。ガッツ星人の体の回りには特殊な結界が張られていたらしく光線が全く通らない。
【くそっ!】
ならばと格闘戦を挑んだ。だが、それも無駄足だった。ガッツ星人の体には触れる事すら出来ない。
殴った拍子にその拳がガッツ星人の体を突き抜けてしまうのだ。まるで虚像を殴っているような感覚だ。
全く攻撃の通らない相手にセブンは正しく掌で踊らされ続けるのであった。そうしている内にセブンの額が点滅しだした。
エネルギーが消耗し始めたのだ。もう余り残っていない。
【はぁ…はぁ…ぐっ!】
【それで終わりか? ならば今度はこちらから行くぞ! プラズマエネルギー消失光線を受けてみろ!】
ガッツ星人の両手から光り輝く閃光が放たれた。エネルギーを消耗したセブンにそれを避ける事は出来なかった。
それを浴びたセブンの体からエネルギーが無くなっていくのが分かった。この光線は普通の光線じゃない。
今までの光線は体にダメージを与える為の光線だった。だが、この光線を浴びた途端セブンの体からエネルギーが抜けていくのが分かる。
まるでこの光線にエネルギーを吸い取られているかのようだ。
【な、何!?】
【貴様の事は全て調査済みだ。だから言ったであろう。貴様は我々には勝てん…と】
トドメにとばかりに再びエネルギー消失光線が発射された。それを全身に浴びたセブン。
まさか、ガッツ星人は初めから僕を狙っていたのか。
思えば、今までの悪戯通報もダンは疑念を抱いていた。と、言うのも他のメンバーが通報現場に行った際には何も無かったのに、自分が言った時には突如怪獣の襲撃を受けた。
しかし、その怪獣も能力的には大した敵ではなく、セブン一人でも難なく倒せた。
もっとそれを疑うべきだった。
その怪獣こそガッツ星人がセブンの能力を把握する為に放った怪獣だったのだ。その怪獣との戦闘でセブンは能力の全てを分析されてしまったのだ。
しかし、今更悔いた所で全てが手遅れだ。セブンは既にガッツ星人の掌の上に立っていたのだ。
セブンの額のビームランプの輝きが消え失せる。
失意の念と共にセブンは力尽き目の光が消え失せた。しかしまだ死んだ訳ではない。エネルギーが尽きただけだ。しかし、それこそガッツ星人の本当の計画の始動を意味していたのだ。
【フハハハハハ! 勝った、勝ったぞ! ウルトラセブンを倒したぞ! さぁ、ウルトラセブンを捕らえるのだ!】
エネルギーが尽きて動けなくなったセブンを突如謎の十字架が捕らえる。そして、何処へともなく姿を消してしまったのだ。
ガッツ星人の狙い。それはウルトラセブンの捕獲であった。
セブンは十字架に捕えられ、エネルギーが尽きた今ではどうする事も出来ない。身動き一つ出来ない状態のセブンを連れてガッツ星人達はいずこかへと消えてしまった。
ウルトラセブンと共に…
***
連絡からすぐに皆が駆けつけてくれた。恐らく帰りが遅かったので心配になった時にフェイトの連絡を聞いたのだろう。
しかし、其処に居たのはフェイトだけであった。もう一人、ダンの姿が見えない。ポインターの中を見たがやはり其処は無人だった。
その周囲に止められている車も気になったが今はダンを探すのが優先だ。
「フェイト、ダンさんはどうしたんだ?」
「それが、ダンさんはガッツ星人の挑戦を受けて飛び去ってしまったんです」
「ガッツ星人? まさか、今までの悪戯通報は全て奴等の仕組んだ事だったんじゃ」
ハヤタの脳裏に不安が過ぎる。その時だった。
太陽が西に沈む方角、其処に霧の如く現れたのは十字架に掛けられたウルトラセブンであった。
「う、ウルトラセブンが!」
(ダ、ダンさん!)
誰もが衝撃を覚える光景であった。そして、そんな彼等に語りかけるような不気味な声が聞こえてきた。
その声は間違いなくガッツ星人であった。勝ち誇ったような声色で其処に居るガーディアンズメンバー達に言い放ってきたのだ。
【地球人に告ぐ。貴様等の希望、ウルトラセブンは我等ガッツ星人の手に落ちた】
「なんだと!」
【貴様等の希望の象徴、ウルトラセブンは、夜明けと共に処刑する! その時までかつての英雄の雄姿をその目に焼き付けておくが良い! フハハハハハハハハッ!】
不気味な笑い声が辺りに木霊していた。皆誰もが十字架に掛けられたセブンから目が離せられない状況になってしまっていた。
(ダンさん……どうすれば、どうすれば助けられるの? このままじゃ、ダンさんが殺されてしまう)
目の前に捕らえられたウルトラセブンを見てフェイトは勿論、誰もがそう思っていた。
何としてもセブンを助けねばならない。
だが、今はどうする事も出来ない。もしあれもガッツ星人の罠だった場合助けに行った途端皆捕まりお陀仏となる。今は悔しいが撤退し作戦を練るしかない。
だが、同時に時間も余りなかった。
ガッツ星人は言っていた。夜明けと共に処刑すると。
そして、今は日没時。次の朝の夜明けにはセブンは殺されてしまう。
つまり、セブンの命は後十数時間しかないと言うことになる。
急がねばならない。間に合わなかった場合、ウルトラセブンは永遠に帰ってこなくなってしまうのだから。
つづく
後書き
次回予告
ウルトラセブン処刑まで後13時間足らずしかない。
セブンを救う為科学特捜隊に向ったハヤタとなのは。
しかし其処にはかつてない強敵が居たのであった。
次回「さらば! ウルトラマン」お楽しみに
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