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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第27話 異次元の死闘

 ゴモラを無事に退けてから数日。その間も休む事なくジュエルシードの捜索は続けられていた。一刻も早くジュエルシードを全て回収し、レーダー機能を回復させなければならない。されど、それの発見は未だに困難を極めていた。
 なにせレーダー類が全てダウンしている為捜索魔法も全く役に立たない。その為発見は目視で行うしかなかったのだ。
 今は少しでも早く発見する為にガーディアンズも総動員して捜索に当たっている。

「見つからないなぁ…」

 なのはが愚痴っていた。今彼女は広大な森林地帯を飛んでいる。少しでもジュエルシードがありそうな場所を飛び回って探し回っているのだ。そうでもしない限り発見は出来ない。それは宝くじの一等賞が当たる確立と同じ位に低い作業でもあった。
何せ広大な地球の中からビー玉位の大きさしかない宝玉を捜さなければならないのだから。しかも他のどの組織よりも先にである。例え一つでも悪の組織に渡ればそれは最悪の結末を意味する。

「なのは、聞こえるか? 良いニュースを持って来たぜぇ」
「甲児さん?」

 通信してきたのは甲児だった。彼もまたマジンガーに乗り別の地点を捜索していたのだ。その甲児から朗報が寄せられてきた。

「実はさぁ、たまたま起動前のジュエルシードを見つけてさぁ。今からウルトラ警備隊本部まで持って帰るからそこで封印してくれよ」
「本当ですか!? すぐに戻ります!」

 なのはの顔に笑みが浮かんだ。今の状況でそれ程嬉しい報せはない。だが、このジュエルシードこそとんでもない死闘の幕開けだとは誰も予想だにしていなかったのであった。




     ***




 ウルトラ警備隊本部へ戻ってきたメンバーは甲児が見つけたジュエルシードを見ていた。そんな中、甲児が自慢げに胸を張っていた。何せこれを見つけたのは他ならぬ甲児なのだから。

「どうでぇ、俺が見つけて来たんだぜぇ」
「凄い、あんな広大な砂漠で良く見つけられましたね」

 甲児が捜索していたのは広大な砂漠地帯であった。一面砂の荒野の中これだけの小さな宝玉を見つけて来たのは間違いなく甲児の手柄である。

「しっかしあんたも凄いねぇ。魔力を持ってないのに見つけてこれるなんて」
「本当に凄いですよ甲児さん」
「だろだろぉ。もっと褒めて良いんだぜぇ」

 すっかり上機嫌になっていた。

「ま、馬鹿でも時には役に立つって事だな」
「そうだろそうだ……それ、褒めてるのか?」

 隼人の言い分には若干の皮肉も混じっていた。が、彼なりに褒めているとも言える。しかし、その褒め方に若干納得が行かない甲児でもあり。

「まぁ良いんじゃねぇの? この際何の問題もなく見つけられたって事で万々歳って事でさ」
「まぁ、此処は一文字の言い分も一理有るか」

 ダブルライダーも事が無事に済んで良かったとばかりに言っている。だが、そんな中でハヤタとダンの二人は苦い顔をしていた。

(ダン、どう思う?)
(妙だ。無事に見つけられたと言うのに変な胸騒ぎが収まらない)
(僕もだ。何か引っ掛かる。このジュエルシードからは邪悪な何かを感じる……まさか!)

 二人がそれに気づいた時は既に遅かった。突如そのジュエルシードから黒いオーラが放たれだしたのだ。やはり罠だったか!
 気づいた時には既に遅かった。黒いオーラは既にかなりの範囲に広がりだしている。それを見た皆も慌てだす。

「なな、なんだぁ!」
「不味い! 皆、すぐに離れろ!」

 ハヤタが叫ぶ。だが、黒いオーラは瞬く間に一気に広がった。一瞬漆黒の闇が視界を奪う。そして、闇が晴れた時、其処は何時もと変わらない場所であった。しかし…

「おい本郷! なのはちゃん達が居ないぞ!」
「何!」

 其処に居たのは本郷、一文字、竜馬、隼人、武蔵、ハヤタ、アルフだけであった。
 なのは、甲児、フェイト、ダンの四名が姿を消してしまったのだ。そして、消えた仲間の安否を気遣う皆の前で、光を失ったジュエルシードが静かにその場に転がっているだけであった。




     ***




「う~~ん、此処は…一体何処だ?」
「さぁ?」

 甲児となのはの二人は今何処か分からない場所に来ていた。一面歪んだ空間の世界である。余り直視していると酔いそうになる。そんな空間であった。所謂異次元空間と言う場所である。

「ま、こんな時は俺の山勘に任せておけってんだ。何せジュエルシードを見つけて来た位だからな」
「は、はぁ…」

 正直不安しか感じられなかった。だが、この際は任せてみるしかない。そうなのはは思えた。
 二人は暫くその場を歩き続けた。方角など分からない。専ら甲児の気分次第であった。すると、目の前に一枚の扉が姿を現したのだ。

「おっ、俺の山勘大的中! あそこがきっと出口だぜぇ」

 意気揚々と甲児は近づき扉を開く。中に入ると其処はさっきまで自分達が居た場所であった。しかし、其処には誰一人として居ない。甲児となのはだけだったのだ。

「あれ? 何で誰も居ないんだ?」
「きっと私達を探しに行ったんじゃないんですか?」
「だよなぁ。しょうがないなぁ、折角だから俺達も探しに行ってやるかぁ」

 甲児がそう言って最寄の扉を開く、その先は長い廊下が待っている。
 だが、開けてみたら其処に映った光景は全く別の光景であった。
 たち篭る湯気。一面裸の美女達。此処は日頃の激務を癒す憩いの場。そう、其処は女湯であった。

「あ、あり?」
「え?」

 二人の目が点になる。此処は確か廊下だった筈。それが何時のまにこんなに大改造したのだろうか。
 突如、美女達の視線が甲児に向けられる。女湯に男が堂々と立っている。それはかなりヤバイ事でもあった。

「キャアアァァァァァ!!!」

 叫びながら恥ずかしい箇所を押さえる美女達。そして飛んでくる洗面器具の山。

「いでででででででぇぇぇぇぇ!」
「ご、御免なさぁぁぁぁぁぁい!」

 即座に退散する甲児となのは。二人共洗面器具をまともに直撃してしまい頭にたんこぶが出来ていた。因みに結構痛い。

「って~~、酷い目にあったぜ」
「う~~、何で私までぇ」

 甲児は当たり前として、なのはは完全にやぶ蛇であった。何故同じ女の自分にまで投げつけられたのだろうか。これは最早一種の謎であった。

「でも、良いもん見れたな~~」
「甲児さん…」

 甲児のスケベっぷりは相変わらずであった。そんな甲児に呆れた目線をぶつけるなのは。しかしそんななのはの事など甲児にはお構いなしだった。

「うっし、せめてもう一回見ておこうっと」
「ふぇえぇぇぇぇぇ!」

 懲りずにまた扉を開く。だが、其処にあったのは先ほどの女湯ではなく元の長い廊下であった。

「あれ? 戻ってる」
「本当だ! でも何で?」

 首を傾げる二人。だが、何時までも立ち止まってる訳にもいかない。仕方なく二人は長い廊下を歩く事にした。
 だが、その廊下を歩いていても誰ともすれ違わない。それどころか人の気配すら感じられないのだ。

「変だなぁ。何で誰とも出くわさないんだぁ?」
「確かに変ですよねぇ」

 廊下を歩きながら二人は疑問に感じていた。此処は普段人通りが多い筈。なのに誰とも出会わないなんておかしい。

「えぇい、こうなったら片っ端から調べて回るっきゃねぇや!」

そう言い甲児が近くにあった扉を開く。だが、開いた先にあったのは何もない空間であった。只、先ほどまで自分達が歩いていた不気味な空間が其処にはあった。

「な、なんじゃぁこりゃぁ!」

 甲児は叫んだ。此処は元居たウルトラ警備隊ではない。そう、此処は、隔離された別世界だったのだ。
 そして、今甲児となのはの二人はその隔離された別世界の中に閉じ込められてしまったのだ。




     ***




 ダンが見ていたのは一面緑の平原と青い空であった。言うなれば平和な草原だったのだ。その中にダンは一人立っていた。

「何処だ? 此処は」

 草原を歩きながらダンは辺りを見回した。明らかにおかしい。先ほどまで自分は地下の基地に居た筈だ。それがどうして突然こんな所に居るのだろうか? 疑問はつきない。そもそも他の皆は一体何処へ消えてしまったのだろうか。

「ん?」

 草原を歩き続けていたダンが見つけた。それは広い草原の上で倒れているフェイトであった。

「フェイトちゃん!」

 即座にフェイトに近づき声を掛けるダン。その声を聞きフェイトは目を覚ます。

「あ、ダンさん」
「怪我はないかい?」
「はい…でも、此処は」

 フェイトは改めて自分の居る世界を見た。一面緑の草原と青空。それは何処にでもありそうな平和な世界そのものであった。だが、フェイトにだけは違って映っていた。

「懐かしい…また此処に来たんだ」
「懐かしい?」
「うん、私昔此処で良く母さんと花冠作ってたんですよ」

 懐かしむようにフェイトが呟く。それをダンは黙って聞いていた。妙な不信感と共に。

(前々から思っていた。彼女は他の子とは違う。上手くは分からないが、彼女は何処か違う気がする…まるで、別の生まれ方をしたかの様な…)

 ダンが推測をしていた時、目の前で楽しく笑う声が聞こえてきた。見ると其処に居たのは金髪の小さな少女であった。その少女が楽しそうに花冠を作っている。

「あれは…フェイトちゃん!?」
「あれ、小さい頃の私だ! でも、何で?」

 今此処に自分が居る。では、目の前に居る彼女は一体…

「あ、母さん!」

 目の前の小さな少女が母と呼ぶ。其処には一人の女性が居た。紫の長髪の美しい女性だ。

「彼女が君の母さんかい?」
「うん、私の母さん。きっと此処は過去なんだよ」

 フェイトが確信する。だが、此処が過去だとしても何故彼女の過去に? 疑問は尽きなかったが、とにかく今は目の前の親子を見守るしかなかった。

「はい、母さんにとっても似合うよ」
「うふっ、有難うね……アリシア」

 女性が少女の名を言う。だが、その名はフェイトではなく、アリシアと言っていた。

「アリシア? 違うよ母さん。私はフェイトだよ!」
「おかしい、此処は本当に彼女の過去なのか?」

 本当に此処はフェイトの過去なのだろうか? ならば何故名前が違うのか? ダンが疑問に思っていた時、空間が歪み別の空間へと変わる。
 それは、何処かの研究室であった。そして其処には先ほどの女性が白衣を着て立っていた。何かの実験をしている。
 そして、隣に居る同じように白衣を着た男性と何か揉めていた。

「危険です! これ以上ペースを早めたら最悪の事態に!」
「これ以上期間を伸ばせる訳がないだろう。研究費とて既に足が出ているんだ! 此処で完成させなければ私の権威に傷がつくんだぞ!」

 どうやら男の方は女性の上司のようだ。研究が行き詰まり、起死回生を掛けての研究を行っていたようだが、そこで問題が発生したようだ。女性はこの時期間を延ばすように進言したがそれを上司は一蹴し強引に実験を行った。そして、それが元で事故が起こった。
 一面閃光の爆発が起こる。

「いかん!」

 咄嗟にダンはフェイトを抱えてその場から走り去ろうとする。だが、その隣には先ほどのアリシアと呼ばれた少女が居た。

「ダンさん! あの子が!」
「しまった!」

 急ぎその子も抱えて逃げようと近づく。だが、アリシアに手を伸ばしたダンの手がアリシアをすり抜けてしまった。

「え?」
「そうか、これは映像…僕達が掴む事が出来ないんだ!」

 ダンが拳を握り締める。そんな時、閃光が辺りを包み込んだ。ダンとフェイトの視界が閃光にふさがる。しかしこれは映像な為二人には何の被害もない。
 だが、閃光が止んだ時、其処には地面に横たわる少女の姿があった。

「そんな…私…一体どうなっちゃったの?」
(死んでいる…だが、もし彼女がフェイトだとしたら、この子は一体?)

 ダンの目からは明らかにアリシアと呼ばれる少女が死んでいる事が分かった。だが、だとしたら何故此処にフェイトが存在している。死んだ人間が生き返ることは断じてない。

「ア、アリシア!」

 女性が青ざめた顔でアリシアに近づいた。その隣には灰になった元上司の姿があった。どうやら女性は何かしらの力で防いだのだろう。その女性が少女を抱き抱える。

「アリシア…御免なさい……私のせいで……絶対、絶対に生き返らせてあげるからね!」

 女性が強い決心の元にそう言う。そしてまたしても世界が一変した。今度はまた別の場所だった。それは西洋風の建物の中であった。そして其処にはモニター越しに先ほどの少女を見ていた。だが、其処には以前の優しい顔は何処にもなかった。

「違う! やっぱりあの子は違う! 魔力値も、利き手も全然違う! やっぱりあの子じゃアリシアの代わりにはならない! 所詮は…プロジェクトFで生み出した偽者に過ぎないと言うのね」

 女性の口からそう放たれた。代わり? プロジェクトF? 一体何の事だ?

「母さん、どうして? どうして変わってしまったの? あんなに優しかった母さんが…」
「プロジェクトF…聞いた事がある…確か、人造魔導師計画だった筈…確か、Fのイニシャルは…Fate…フェイト…まさか!」

 ダンの中で一つの確信が生まれた。それは、フェイトの存在についてだ。そして、その後にプレシアの口から放たれたのは最悪の一言であった。

「所詮、あの子には【フェイト】の名がお似合いね…出来損ないの偽者人形が!」
「!!!」

 女性から告げられた言葉を耳にしたフェイトの顔が青ざめていく。

「そんな……私は、私は母さんの子じゃなかった…母さんに作られた出来損ないの……人形」
「フェイトちゃん! しっかりするんだ!」

 ダンがフェイトの肩を掴んで叫ぶ。だが、フェイトには全く耳に入ってなかった。彼女の顔色はドンドン青ざめて行き、やがてダンの手を払い除けたフェイトはその場に倒れこむ。

「私は人形…作られた人形…人形…」
(いかん…精神が崩壊し掛けてる…このままでは再起不能になってしまう……)

 ダンは決断した。このまま彼女を廃人にする訳にはいかない。最早これは賭けであった。これで戻るかどうかは分からない。だが、他に方法がない以上これに賭けるしかなかった。

「フェイトちゃん、聞いてくれ」
「私は…私は…」
「聞くんだ!」
「!!!」

 ダンの怒号を聞いたフェイトがハッとしてダンを見る。その目は真剣そのものであった。

「良いか、例え君がどんな生まれ方をしてようと君は君なんだ!」

 ダンが必死に説得を試みる。だが、ダンの言葉すら、今のフェイトは耳を貸そうとはしなかった。首を左右に振りその言葉を否定している。

「それは、それは貴方が人間だから言える事でしょ!? 私は貴方とは違う! 私は作られた人形なんだよ…ダンさんとは違うんだよ」
「違わない…何故なら、僕も人間じゃないからだ!」
「え?」

 フェイトは一瞬思考が停止した。人間じゃない。一体どう言う事なのか?

「正確には僕は地球人じゃない。その証拠を今見せよう」

 ダンが懐からある物を取り出す。それは紅い眼鏡の様であった。

「デュワッ!」

 ダンがそれを嵌める。するとダンの姿が一瞬にして変わった。其処に居たのは紅い体の超人であった。

「見ての通り…僕はM78星雲から来た恒天観測員340号…地球名でウルトラセブンなんだ」
「ウルトラセブン…ダンさんがウルトラセブンだったんですか?」
「騙すつもりはなかった。只、僕の正体を誰かが知れば君達の身に危険が及ぶ…だから隠し続けていたんだ」

 ダンが真実を話す。それにはダンの強い思いがあった。

「フェイトちゃん。例え君が作られた存在であろうと、君は君だ。決してアリシアちゃんの変わりなんかじゃない! 君はフェイト・テスタロッサ。僕達ガーディアンズの大事な仲間なんだ!」

 彼女を救おうと言う強い思いがその言葉にあった。それを聞いたフェイトの心が揺らいだ。
 自分は作られた人形だ。だが、例えそうだとしても自分は今此処でこうして生きている。そして仲間達と戦っている一つの命なのだ。
 自分はフェイト・テスタロッサ。ガーディアンズのメンバーであり、この星の為に戦う一人の魔導師なのだ。

【フッフッフッフッ……】

 何処からか不気味な笑い声が聞こえてきた。辺りに警戒を行う二人の目の前で、またしても景色が一変した。今度は歪に歪んだ空間の中であった。まるで異次元である。

「こ、今度は一体?」
「これだけの事をする奴…そうか、今回の一件は全て貴様等が仕組んだ事だったんだな!」

 セブンが見上げる。其処には歪んだ空間から歪んだ姿をした者達が幾人も現れた。それは人間の姿をしていなかった。

【マサカ光ノ巨人ガマギレコムトハ…我々ハナントモ運ガイイ】
「貴様等…異次元人ヤプール! するとあのジュエルシードも貴様等が……」
【ソノトオリ。アレハ既二我々ガ発見シタ。ダガ貴様等ヲ一網打尽ニスル為ニ逢エテヒロワセタノダ。我等ノ力ヲコメテナ】

 ヤプールが話す。半ばダンの予想した通りの結果となった。あのジュエルシードは既にヤプールが発見し、逢えてその場に置いて来たのだ。その際に異次元の力を込めた事により後で拾いに来たガーディアンズのメンバーを全て倒す為の布石としていたのだ。

【貴様ガアノトキウルトラ念力ヲ用イタ為ニ全員ヲトジコメル事ハデキナカッタ。シカシ貴様ヲココデ葬レバ後々ニ有利トナロウ】
「そう簡単に私を倒せると思うな!」
【強ガリヲ。コノ空間デハ貴様ハ実力ノ半分モダセナイ。我等ニ勝ツ事ナド不可能ダ!】
「ぐっ…」

ヤプールの言う通りだった。この空間の中では彼等異次元人以外の者は実力を封じられてしまう。絶体絶命的状況に立たされてしまったのだ。




     ***




 その頃、甲児となのはは仕切りに閉じ込められた閉鎖空間の中を彷徨っていた。

「だ~~~、くそぅ! 一体全体どうなってんだよ! 行けども行けども同じ廊下ばっかだしさぁ!」

 歩きつかれた甲児がその場に座り込んで愚痴る。その間、なのはは少し考え事をしていた。何故一瞬女湯が現れたのだろう。そして何故次には廊下が出てきたのか?

「もしかして…」

 自信の考えを確かめるべく、なのはは目の前の扉に手を掛ける。

「おい、何する気だ? 其処はさっき開けたけど何も無かったぜ?」

 甲児が見てる前でなのはは扉を開く。だが、其処に映ったのは何となのはの自室であった。

「うえぇ! どうなってんだ?」
「やっぱり、此処は頭の中に思い浮かべた空間が具現化するんですよ! 私此処を開ける時自分の部屋を思い浮かべましたから」
「成る程! 流石だぜなのは。そうと決まったら出るのは簡単だ! 皆の居る場所を思い浮かべれば良いだけなんだしな!」

 そうして今度は甲児がノブに手を掛ける。頭に皆の居る部屋をイメージして扉を開く。
 其処に映ったのは無数のロッカーとその前で着替えをする下着姿の美女達。

「え?」

 どうやら今度は女子更衣室に来てしまったようだ。再び美女達の絶叫が木霊して、今度はその場にある物を手当たり次第に投げつけられた。即座に退散する甲児となのは。

「もぅ! 何考えてるんですかぁ甲児さんはぁ!」
「悪ぃ悪ぃ、もう一回…」

 再チャレンジとばかりに再びノブを開き扉を開ける。
 其処にはパジャマ姿の美女達が今正に寝ようとしている光景であった。今度は個室だったようだ。
 またしても美女達の叫びが木霊する。今度は物を投げつけられる前に扉を閉めた。息を荒立てる甲児の横でなのはがジト目で甲児を見ていた。

「甲児さん…頭の中でそんな事考えてたんですね」
「ち、違うぞなのは! これはあれだ…敵の巧妙な罠なんだ! そうだ、そうに決まってる! ちゃんと頭の中じゃそう考えてたんだよ! 信じてくれ! これは本当なんだ!」

 幾ら弁解しようが無駄であった。なのはの中ではもう甲児は変態だと言う烙印が押されてしまったのだから。必死に弁解する甲児を無視し、なのはは扉の前に歩み寄る。

「分かりました。それじゃまた私がやってみますね。これ以上甲児さんが開けると色々と不味い事になりそうですし」
「あれ? さり気に俺見下されてない? やばい…目から涙が止まらないや…これ、どうしたら良いんだろう」

 一人涙を流す甲児を無視してなのははノブに手を掛ける。ちゃんと皆の居る場所をイメージしてドアを開く。その時、ふとなのはは考えた。

(そう言えば、フェイトちゃんは巻き込まれたのかなぁ?)

 ふと、フェイトの身を案じた。その思いのまま扉を開く。其処には眩いほどの閃光が二人を出迎えてきたのであった。




     ***




「デュワ!」

 ヤプールを前にセブンの光線技が放たれる。しかしどれもヤプールに届く前に消失してしまった。

【無駄ナ事ハ止メタラドウカネ?モウエネルギーモ尽キルダロウ】

 ヤプールの言う通り、既にセブンのビームランプは点滅しだしていた。この空間内では余計にエネルギーを使ってしまうのだ。

「ダンさん、此処は私も…」

 フェイトも共に戦おうとした時、彼女の膝が折れて倒れこんだ。この空間の中ではウルトラマンでさえ立っているのがやっとの空間だ。人間では立つことさえ困難になる。

(いかん…このままでは共倒れだ、何とか彼女だけでもこの空間から出さなければ…だがどうやって)

 この空間では全てに置いてヤプールが凌駕している。今のセブンの力ではヤプールに対抗出来る力は残っていないのだ。
 そんな時、セブンの目の前の空間に閃光が放たれ、其処から何かが落ちてきた。

「いだっ!」
「きゅぅっ!」

 それは甲児となのはであった。二人共閉鎖空間から抜け出て此処に出てきたのだ。

【ムッ、マダ鼠ガイタノカ?】
「ってて~、何処だ此処?」
「また変な空間に出たみたいですよ」

 起き上がった二人が辺りを見回す。そして、膝をついてるセブンと倒れたフェイトを見つけた。

「ウルトラセブン! それにフェイトまで」
「フェイトちゃん! 大丈夫なの?」

 二人の元に駆け寄る。だが、今度は甲児の膝までもが折れだした。

「こ、甲児さん?」
「何だ? 頭がクラクラしやがる…」

 やはり甲児でもこの空間内では自由が利かないようだ。しかし、そんな中、なのはだけは平気な顔で立っていられた。

【何故ダ! 小娘、何故貴様ダケハタッテイラレル?】
「え、私?」

 思わず驚くなのは。いきなり言われても分からないのが事実である。自分だって何故立っていられるのか分からないのだ。

「う~ん、何でだろう…」
【……マサカ、貴様ガソウダッタノカ! 貴様ガアノ光ノ子!】

 ヤプールが言葉を放った。以前光の中で聞いた言葉だった。光の子…それが何なのかは分からないが、それを言ったヤプールの顔色が変わってるのが分かった。

【ウヌッ…ヤムヲエン、折角ノ機会ダガココデ戦力ヲソグ訳ニハイカン! ダガ覚エテオケッ。イズレ必ズ貴様等ヲ倒ス。我等ヲ覚エテオクガイイ!】

 そう言い終えるとヤプールの姿は消え去ってしまった。それと同時に眩い閃光が当たりを包み込む。




     ***




閃光が止むと、其処は元居た場所だった。更に皆が居る。皆心配そうな顔で四人を見ていた。

「皆、無事だったか?」
「ハヤタさん、そうか! 俺達戻って来れたのか…」

 甲児が安堵した途端その場にへたり込む。どうやら相当偉い目にあったのだろう。そんな事が見て取れた。

「何があったんだお前等?」
「そりゃもう大変でしたよぉ。だって甲児さんの頭の中全部…」
「だぁぁぁぁぁっ! それを言う必要はねぇだろうが!」
「むがむぐっ!」

 言おうとしたなのはの口を甲児が急ぎ塞ぐ。それを見た皆が首を傾げる。一体何があったのかは皆が理解する事はなかった。
 何故かなのはは甲児を冷めた目で見てるし、フェイトはダンに信頼を寄せた目で見ていた。一体何が起こったのか、それは、その場で静まり返ったジュエルシードと同じく分からなくなってしまった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

ウルトラセブンを狙う異星人の影。
そして、それは恐るべき計画であった。

次回「ウルトラセブン暗殺計画」お楽しみに 
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