ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
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第56話 =世界の終わり=
前書き
アインクラッド編、終了です!!
まぁ、グダグダは変わってませんけど…
「……っ!!」
「…ふんっ!!」
キリトの攻撃をそのまま盾で受け止め後方へとその体ごと弾き返すこの世界の神である茅場。
あれからもうどれだけの時間が経っただろう…。5分、10分…それよりも短いかもしれないし長いかもしれない。その間の2人による4本の剣撃をすべてその盾で受け流しながらもこちらへ攻撃してくるヒースクリフさんはやはり最強だった。システムなんか必要ないくらいに…。
こちらは2人の代わりなのか俺たちにもハンデはあった。それはソードスキル、テイルズ技の封印だ。封印といっても使おうと思えばモーションを起こすだけでどちらも使用可能、それでも恐らくあの人の記憶力ならテイルズの技は覚えているだろうし自身がデザイナーとなったスキルなら体がもうそれを防御できるようにほぼ自動で動くだろう。…テイルズについては推測だけど死んではならないという考えを持っているのか実証しようとは思わなかった。
「…ぬぅん!!」
「……ぐっ…!」
やつの盾攻撃を俺は二刀を交差させて防ぐ。が、やはり一人であの骸骨百足の攻撃を耐え切ったのを証明するかのごとくその攻撃も重たいものだった。
「…まだまだぁ!!」
「……ほぅ…」
盾の後ろで感心したように俺の攻撃を受けているのを見て俺も「よしっ」と思ったのは仕方がないだろう。俺の本分は大剣の幅を生かしての盾も出来るが実際は抜きん出て高い筋力での攻撃だ。そしてこのユニークスキルで手に入れた大剣を扱うものとしてはなかなか得ることの出来ない手数の多さ。
「…うぉぉぉぉ!!」
剣道も剣術も習ってない俺がシステム補助のない技で繰り出せるのはただの無我夢中な攻撃のみ…。上から下へ右から左へ…など何度も何度も往復させる。だがさすがは神聖剣、すべてを防御しきってこちらの攻撃が一度も当たらない。
「…がっ!?」
「……せぁ!!」
俺が一瞬の隙をつかれ吹き飛ばされる。…どんだけパワーあるんだよ…この人は。だが、その突き飛ばした武具が盾だったというのは幸運だった。そのおかげで弱攻撃と判定されHPは危険域の半分くらいしか減らなかった。キリトも負けじと斬りかかるが剣と剣、たまに盾の応酬で決定的な攻撃を決められていない。
「はぁぁ!!」
1人で全てを防がれるのなら2人同時になら…そう思い、盾と剣が交差している中に飛び込みキリトとの交戦中で開いた体に向かって剣撃をねじ込もうとする。だが、どこから伸びてきたのか、と言いたいくらいにそれは右手の長剣で防御されてしまう。
「この…やろぅ!!」
この瞬間、茅場がフッと笑ったのが判ってしまった。どうやらテイルズの技を放ってしまったらしい。斬り上げのあと空中での連続攻撃…そしてシステムによる台詞の宣言…それでどの技かは簡単にわかってしまった。
「虎牙連斬!!」
だが、やってしまったなら仕方がない…奥の手を使うため虎牙連斬が終わる前に足に全意識を集中させる。茅場は単調な袈裟斬りで硬直のできるはずの俺に止めを誘うとしたのだがその前にもう1つのスキルが発動し、俺の体を後ろへと持っていきその攻撃の範囲外へと出させる。『アラウンドステップ』。俺が瞬時に回避できる唯一のスキルだ。
「……はぁ…はぁ…」
「…あんた、強すぎるだろ…」
キリトの言うとおり…強すぎる…。いつかのことだったかキリトが一瞬だけだが「チーター」なんて呼ばれてた時期がとてつもなく可愛く見えるほどだ。
一か八かのシステム外スキル『スキルコネクト』が成功してよかった…が、あのステップにも硬直が生じるので2回目をやれ…と言われたら絶対に無理。
そして虎牙連斬の時のあの笑みは…恐らく何らかの方法でテイルズの技を知っていた…モーションを記憶していた、ということになるだろう…。同じテイルズファンとは考えにくいけど…それなら違う出会い方がよかったな…。
「…なるほど…君がそこまで立ち回れるのはその技らのおかげか…ソードスキルの参考にはしたのだが…」
開発チームの遊びとして組み込んだものをここまで使えるとは…と関心なのか呆れているのか微妙な声を出してくる茅場。ソードスキルの源がテイルズの技か…そういえばアスナの使った《スタースプラッシュ》やキリトの使う《ヴォーパル・ストライク》をどこかで見たことがあるな…と思っていたのはそれが理由だったのか…。
「……なるほどね…」
でも今は納得して一安心、じゃなくてその思いは脳の片隅に追いやるべきだ…じゃないと絶対に勝てない!!剣をもう一度握りしめて気を引き締めなおす。
「…らっ!!」
剣で攻撃にかかるも盾など使わずにその長剣で、2本による剣撃を全て受け流されてしまう。やっぱりというべきか俺たちと茅場では積み上げてきた量に大きな差がある。キリトはどうか知らないけど俺は剣という存在を握ってまだ2年、茅場はこの城を創造するところまで至っているのだ。この防御もそれと現れだろうな…。そんなことを思っているとキリトも次々と斬撃を入れようとするがまたしてもこれも防がれてしまう…。
2人同時に攻撃や、フェイント、対ボス戦で使うような壁と攻撃に分かれての攻撃も全てが無意味、眼に見えないほどではあるが少しずつこちらのHPが削られていくだけだった。もちろん、向こうも減っているが俺たちの比じゃなくパッと見ではまったく減ってないと言われても信じるくらいまだ残っている。
そんな時だった。この戦いに変化がおきたのは…。
「馬鹿っ!!キリト!!」
「…っ!?」
キリトの剣が一瞬発光し、そして連続攻撃を繰り出し始めたのだ。もちろん、ここから見える茅場の顔は俺のとき以上に笑っている。
ソードスキルはモーションさえ取れればシステムアシストにより通常では不可能な動きをこれでもか、というくらいにサポートしてくれる。だがそれは偶然、何かしらの形で意識せずともその構えを取ってしまっても発動するということだ。
恐らくキリトの攻撃を茅場は受け流し、そして防御により自然とその構えを取らせたんだと思う…。ナーヴギアを開発したらしい男ならこれくらい造作もないってか?何とか一撃でも当てさせようとするが俺はどちらの剣も1つの長剣との鍔迫り合いで動けない状況に陥っている。…何度もいってやろうか?パワー強すぎだっての…!
《ジ・イクリプス》という名のソードスキルは余裕で真っ白な盾に全てを阻まれその直後にキリトに長時間の硬直、そしてリズの最高傑作の1本の剣先が砕け散るという最悪の結果で終了した。
「さらばだ。キリト君…」
その瞬間を狙ってか…いや絶対に狙っていただろう。俺をキリトの攻撃を防いだ盾で吹き飛ばし神聖剣のソードスキルなのか、真紅の光をまとってキリトに襲い掛かろうとしていた。
ここままじゃ…キリトは死ぬ…?…そんなの駄目だ…俺じゃこの人には勝てない、それは今の攻防で十分にわかった。でも俺たちの唯一の希望であるこいつならそのチャンスくらいは…!
「……うぉぉぉ!!」
その考えが浮かんだ瞬間には俺はすでに飛び込んいた。キリトと茅場の間に立ち、俺も同じくリズの最高傑作であるオータムリリィで受け止めようとするが、まさかの向こうからのフェイントに対処しきれずその攻撃を食らってしまう。
「……が…ぁぁっ!!」
HPが減るまでにはタイムラグが少々ある。そのため俺の意識はまだ生き残っている。あと何秒かで殺されるだろうが…。そのおかげと相手のソードスキルが初級ランクだったためにノックバックを耐えることが出来た。
「……キリト…あと、頼んだ」
こいつなら…今のお前になら握れるはずだぜ?
そう思い、左手のキャリバーンをキリトの方に向けて投げる。軽く投げたせいか、カラカラと乾いた音をたてながらキリトの足元まで転がっていった。キャリバーンゲット時はキリトには握れなかった。でも今のアイツは当時の俺くらいの筋力値はもう持っているだろう…
「…先に死ぬのは…剣だけで」
十分だ…と言ったつもりなのだが聴覚も失ったのかそれが聞こえず、目の前がブラックアウトしてしまった。そしてその暗くなった視界に唯一浮かんできたのはそこには紅い文字で《You are dead》という宣告文が…。
最後の最後に…約束、破っちまったな……………。それが意識を失う前に思った最後の言葉だった。
____________
「……どこだ、ここ?」
眼を覚ますと、なんともいえないような場所に立っていた。下はガラスだろうかアクリルだろうか…そんな透明な分厚い板での足場が作られておりさらにその下には俺たちを閉じ込めた鉄の城、アインクラッドが漂っている。いや、ただ漂っているんじゃないな…下の方から少しずつ壊れてる…
「……最終フェイズ実行中 現在40%完了…?」
なんだそれ…?少々に貴意なって右手を振ってみるとウィンドウの中にそんな項目が出てきた。でもアインクラッドがあってさらに俺の服装が【抜刀騎士】の灰色の服で2本の大剣が背中にあるってことはSAOの中なのか?
「なかなかの絶景だろう」
「……あんたは……茅場、か…」
顔を見たことは全然無くて思い出せなかったけどヒースクリフさんからにじみ出ていたオーラといおうか雰囲気がまったく一緒だったのでその正体に気付くことが出来た。白衣を着ているところを見るといよいよ科学者にしか見えない。
「今、どういう状況なんだ?」
「ご覧の通り、アインクラッドが崩壊している」
「…そうじゃなくて何で崩壊してるのかって…」
察しのいい人はここでピンとくる…とかあるだろうけど残念ながら俺は残念な頭なのだ…。そんなこと気付けるか…。その後の説明によりヒースクリフさんが負けたことにより皆がログアウト、そしてアインクラッドというシステムの削除中の比喩的表現がこれらしい。
「…あれは、俺の家か…」
途中、自然に囲まれただけの空間に家が2件立ち並んでいる場所がごっそりと落ちていくのが見えた。…確認が出来なくてもわかる。あれは皆と楽しく過ごした家だ。
「…立ち話もなんだ。座りたまえ」
「なら、お言葉に甘えてっと」
空中に足を投げ出すように俺が今立っている板に直接座る。すると、どうでもいい疑問が頭の中から浮かんできた。HPを0にされた茅場、そして俺がいるんだ。冥土の土産ということで聞いておこう。
「…なんで、ソードスキルの参考にテイルズの技にしたんだ?他にもそういうゲームならあったろ」
やったことは無いけれど格闘ゲームとか…。
「そうだな…。君はテイルズというゲームの初代がいつ、発売されたのか…知っているかな」
「…なめてるのか?もちろん判るさ」
「やはり…か。私は小さな頃に空に浮かぶ鉄の城の空想に魅入られた。さらに追い討ちをかけるかのごとくテイルズのあの幻想的な世界が私の思いを加速させた…。」
「なら自分の夢が叶った世界にその加速させたものも…ってことか」
「…その通りだ」
それにしたって入れすぎじゃないか?と思ったけれどどんなゲーム開発の過程にも遊び心というものはあるらしくメンバーの1人が提案した案がそのまま通って『称号』や今あるテイルズの技が導入されたらしい。いうなれば『称号』もユニークスキルのようなものだとか…。でも決して茅場作ではないらしく……詳しくその人と話してみたかったな。
「それでは…ゲーム開発者としてユーザーに感想を求めるとしよう…どうだったかな、リクヤ君」
「…そうだな…戦闘システムはいろいろなシリーズのものが導入されてて……」
いや…そんなことじゃないか…簡単に、そして全てを現せる言葉があるじゃないか…。
「…死んじゃった人には申し訳ないけど…最低だったけど最高だった」
確かに2年前、デスゲーム宣言されたときは何で?と思ったけどそれと同時になぜか楽しみだって気持ちも浮かんできた。それは今でも変わらない。まぁ…俺もその死んでしまった1人なんだけど。
「そうか……では私はそろそろいくよ」
「もういくのか…?せっかく創った世界なんだから見届けていけばいいのに」
「最初に言っただろう。この世界の完成を見た時点で、私の目的は達せられていた」
そういい、茅場は俺に背を向けどこかへ行こうとする…。コツコツと足音を立てながら歩いていると不意にその足音が鳴り止み顔だけをこちらに見せると茅場は口を開いた。
「…須郷という男には気をつけるといい」
「それって…どういう…」
ことだよ、と聞く前に俺が死んだときとは真逆、真っ白な光が視界を埋め尽くしそれと同時に意識も光に包まれていった…。
後書き
涙「よし、原作11巻の半分まで読んだぞ」
リ「初っ端から話違うし…」
涙「…キリト視点のアンダーワールドはアリス以外はなんとなくわかった」
リ「…アリスて…?」
涙「君は知らなくてもいいんだよ…さて、次回からは現実で目覚めてしばらくを書きたいと思います」
リ「…あれ、俺死んだんじゃ」
涙「主人公補正ってやつwwではっ!!」
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