インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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一夏の疑問
最後の週。それは一般の学生が夏休みの宿題などで焦る週でもある。
「ということで、助けてくれ!」
当然、IS学園にもいた。
そいつの名前は織斑一夏。専用機持ちの中での強さは下から数えたほうが早いほどだった。
「一夏、宿題は早めに終わらせろよ」
『そうよゴミ。どうしてこれくらいのことが一日でできないのか謎で仕方がないんだけど』
「そ、それは………難しかったから………」
『どこがよ。こんな簡単な問題ぐらいさっさと解きなさいよ』
シヴァの言葉に一夏は項垂れた。
『大体あなた、いつの間にか二次移行したっていうのに全くその力を活かせてないじゃない』
そう。一夏の白式はいつの間にか二次移行しており、零落白夜のシールドを手に入れたらしいのだが、さらに燃費の悪さが加速してすぐエネルギーが切れる。
「そ、それは―――」
『ただの勉強不足という以外に何があるっていうのかしら?』
そう言いながら一夏の宿題をシヴァが見ると、
『………それで、どこがわからないのかしら?』
今度はそう言って俺に渡してくる。
不思議に思いながらページをめくると、そこには正解とは言い難いがちゃんと宿題は終わっていた。
「………どういう、ことだ?」
『どうやらゴミの分際で私を騙そうとしたってとこかしらね? で、首切りと代用、どっちがいい?』
「えっと、代用って………?」
『自称・天才を殺してきてよ』
さらりとシヴァが言った。
「シヴァ、どの道こいつには無理だ。諦めろ」
『……は~い』
はぁ。少しは落ち着けっての。まぁ俺が殺されそうになっているから気が立つのはわかるが………俺より立ちすぎだろ。
「……で、一夏。俺たちに嘘ついてまでここに来たのは何が目的だ?」
「あ、ああ。実はさ、どうして何か問題が起こるたびに俺が殺されそうになるかわからないんだけど………」
その言葉に俺たちは唖然とした。
だからこう答えることにした。
「それは―――お前が鈍すぎるからだぞ」
「俺は鈍くない!」
―――ドカーンッ!!
「―――何事だ!!」
突然ドアが開き、織斑先生が顔を出す―――が、
「お前はさぁ、確かに鈍くはない。ただ一つを除いて鈍くはない。だがな―――テメェはある一点の方向で鈍いんだよ!!」
さっきから聞いていれば何だよこいつ! 一辺死ねよ!!
「俺のどこが鈍いんだよ………」
「ごめん。今のお前の格―――篠ノ之束と同レベルだから」
『どっちにしてもゴミだけどね。というかこのゴミ燃やしていいかしら?』
「風宮兄妹、少しいいか?」
いつの間に現れたのやら、織斑先生が声をかける。
「なんですか? 今は世界にはびこるゴミ共の処理方法について議論しているところなんですが」
「篠ノ之束は別にゴミで構わん。だがな、一夏をゴミ扱いするな。それと―――どうして妹がいる」
『ここのセキュリティー、甘いわね。でも安心して。私並みの格を持っているモノはそういないから』
「つってもここに攻める奴はいないだろ」
俺たちが笑っていると、織斑先生は頭を抱えた。
「私はそう言いたいんじゃなくてだな、ここはIS学園だ」
「つまり、許可なくここに入るなと言いたいんですね」
「そういうことだ」
『じゃあ、結局はここにいてもいいことになるじゃない』
「………どういうことだ?」
シヴァの言葉が引っかかったのか、織斑先生は眉を潜めてこっちを見る。
『私はちょっと特殊な存在なのよ。そもそも、私は“人”じゃなくて“物”だからね。それに私は篠ノ之束より上の存在よ。もっと崇めなさい』
「その言い方だとわからなくなるだろ。というか最後のは言いたかっただけだろ」
『そうね。あ、もう私は寝るから』
「りょーかい」
すると、シヴァはその場から消えた。
「!? どこに行った!?」
「帰りましたよ」
「………風宮、今回は見逃すがこれ以上はするな。いいな」
「了解」
………なんとか誤魔化せたな。まぁ、最初に超能力を持っているとかで疑わなかったから大丈夫だとは思えたけど。
「さて、話を戻すぞ。………とにかく一夏はこれでも読んでおけ」
そう言って渡したのは『女の子のキモチ』という本だった。
「……………」
「? どうした?」
「……お前、女にモテたかったのか?」
「いや、前にシヴァが『これであのゴミの頭もマシになるんじゃないかしら』とか言いつつ買っていたから」
そう言って俺は外を見る。
「そういえば、シヴァってゴミ扱いするけど何でだ?」
唐突に一夏に聞かれて俺はまるで教科書でも用意されていたかのように答えた。
「機密事項だ」
シヴァを含む俺の周りのモノは機密事項モノが多い。
何故ならそれはとっくの昔に破棄されたと各国が思っている部分。そしてここでは真の力を発揮してはいけないと思えるからだ。
「……それって、絶対に聞けないものなのか?」
「俺はお前を信用していないからな」
「え? 嘘だろ?」
「ああ、嘘だ。だが話すことはできない。それとなんでもかんでも首を突っ込むなよ。突っ込んだら最後、世界を敵に回すことだってありえるんだからな」
「………ああ」
そこから微妙な空気が流れ、わからないところを教えると一夏は帰った。
「……シヴァ」
『何かしら』
俺が呼ぶとシヴァが現れた。
「……今の世界って、正しいと思うか?」
『本音を言うと思わない。だけど前に言ったわよ。私は例え間違っていてもあなたに従うって』
「………そうだよな。ありがとな」
『だったら撫でてよ、お兄ちゃん』
俺は要望通り頭を撫でてあげた。
その顔はまるで猫のようだった。
「そういえば、さっきの織斑先生って姉の顔に見えなかったか?」
『無意識だったみたいだけどね』
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