食堂のオムライス
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第一章
食堂のオムライス
上田秀幸は家の食堂、街のそれの跡継ぎとして高校を出てすぐに料理の専門学校に入りながら働きはじめてだった。
専門学校を卒業してからも働いている、小さな目と長方形の顔を持ち薄い唇と黒いスポーツ刈りの中背で痩せた青年だ。
毎日忙しく働いている、店は味とサービスが好評で少し離れたところからも常連客が来てくれて繁盛している、その店にだ。
今高校時代の同級生で今は実家の県内でも有名な高級レストランの経営陣に入っている鬼頭健太眼鏡をかけた細面で黒髪をセットしたきりっとした顔立ちで背が高く高級スーツが似合うスタイルの彼が入って来た、そしてだった。
彼はカウンターに座るとだ、上田に言ってきた。
「オムライス一つ」
「えっ、鬼頭だよな」
だが上田はまず彼に驚きの顔で問い返した。
「そうだよな」
「そうだよ」
鬼頭は真面目な顔で答えた。
「久し振りだな」
「あの、何でうちに」
上田はその彼に驚きの顔のままこう返した。
「来たのかな」
「来たら駄目かな」
「そんな法律ないけれど」
「じゃあお願いするよ」
「オムライス一つですね」
上田は店員の顔に戻って応えた。
「わかりました」
「はい」
鬼頭は真面目な顔のままだった、そしてだった。
オムライスを待ちそれが来るとスプーンで食べた、そして食べ終わってから言った。
「美味しかったよ、評判通りだ」
「あの、今丁度お客さんいなくなったから聞くけれど」
昼食時が終わったばかりでそうなっていた。
「あの、何でうちの店に来たのかな」
「高級レストランの息子が」
「そっち高級フレンチの店だよな」
「そうだよ」
鬼頭はここでもにこりともせず答えた。
「よく県内でも有名と言われるね」
「そうだよな」
「だからシェフの人達は凄く腕がよくてね」
「値段も高いよな」
「食器もお店の内装も気を使ってるよ」
「うちの店なんて」
上田はそれこそと述べた。
「ごく普通の街の食堂で」
「うちの店とは全く違うっていうんだね」
「そうだよ」
実際にというのだ。
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