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金木犀の許嫁

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第五十三話 家に帰ってその六

「この人には名作が多いですが」
「十五少年漂流記や海底二万マイルもですね」
「そうですが」
「その作品もそうで」
「当時の科学技術ではです」
 それではというのだ。
「とてもです」
「八十日で世界一周は無理とですね」
「そう思われていたが」
「出来ましたね」
「そうでした、知恵も用いて
「出来たので」
「また技術もです」 
 それもというのだ。
「進歩しますし」
「出来ましたね」
「あの作品は知恵を用いてです」 
 そのうえでというのだ。
「達成しましたが」
「技術は進歩しますね」
「科学は。今よりもです」
「未来の技術は進歩しますね」
「そうですから」
 だからだというのだ。
「今の技術は絶対ではなく」
「進歩しますか」
「ですから未来の技術を今の技術で無理だと言うことはです」
「意味がないですか」
「全く」
 幸雄は言い切った。
「ありません」
「そうなんですね」
「今ある技術でかつては夢と思われたものがどれだけあるか」
 こうもだ、幸雄は言った。
「非常に多いですね」
「そうですね」
 佐京も頷きつつ応えた。
「確かに」
「そうしたことも考えますと」
「今の技術ではですね」
「未来の技術は語れません」
 そうだというのだ。
「到底」
「そうなんですね」
「はい、そして」
 それでというのだ。
「語ろうとすればです」
「無理が出ますか」
「それが創作の世界の技術でもです」
「未来ってわからないですよね」 
 夜空も言ってきた。
「誰にも」
「技術についてもですね」
「はい、それこそです」
 幸雄にさらに答えた。
「わからないです」
「テレビにしましても」
 今はどの家にもあるこの電化製品もというのだ。
「かつてはです」
「なかったですね」
「映画もです」 
 これもというのだ。
「そうでしたし」
「未来の技術は今の技術では語れないですね」
「産業革命がはじまった頃にラジオなぞです」
「考えられなかったですね」
「そうでしたし」
「もう本当にわからないですね」
「むしろ無理だ、出来ないとばかり言う様では」
 それではというのだ、世の中こう言って否定ばかりして子供の夢を壊したと悦に入っている輩も存在している。 
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