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外道戦記ワーストSEED

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十二話 夜の双翼(前編)

 
前書き
仕事との両立で遅くなり申し訳ない。 

 
2ヶ月後、月面近くの宇宙にて。

「なんだよ!こいつらは!」

最初は簡単な任務であった。

世界樹の破壊による地球連合の宇宙への影響力低下のため、若干平均年齢は低くなれど、シミュレータの成績上位者で構成したチームで偵察に出たジン3小隊、9機。

彼らは、若輩なれど流石コーディネーターと言えば良いのか。

外周を守っていた、メビウスを搭載していた戦艦3機を潰し、被害は小破数機という戦果を挙げる。

初の戦闘で、これは大戦果である。

だからこそ、思った。

これならば、我々が世界樹に一番乗りで行けるのではないか?

なあに、もし守備隊が厚くても、逃げに徹すればどうにかなる。

上層部は前回出ていた不明機を警戒していたが、大量動員できるなら、すでに本国は攻められているはず。

先日の戦争が痛み分けで終わったのも、卑劣なナチュラルの自爆攻撃と聞いた。なら我々で奴らに鉄槌を下そうではないか。

個として優秀であるが故に、当たり前にナチュラルを見下す考え方。

その考え方が、更に世界樹の近くに部隊を進ませる。

その行為が、死神の鎌を彼らの首にかけることを知らずに。

望遠カメラで、うっすら世界樹が見える距離。

優雅に宇宙の海を飛ぶ、『鳥』達が彼らを襲う。

深く、静かに、『黒い鷲』が彼等の元に忍びよっていた。

ピュンという、聞き慣れない異音。

その音と共に、最初に潰されたのは、前を進む、2機だった。

閃光が走った直後、一機のコクピットが撃ち抜かれ、そして、同時に飛来した正体不明の黒い機体に、もう一機は綺麗に真っ二つにされていた。

直後、二機は爆散。

同時に、その機体のシルエットが浮かび上がる。

黒と青を基調に、処々に銀をあしらったカラーリング。

そして特徴的なツインアイが、宇宙の黒に、黄色く輝く。

「「ガンダムタイプ!」」

同時、彼らは即座に逃げを打つのが最適解だった。

だが、コーディネーターとしてのプライドが、『即座に逃走』ではなく、『一当てしてから逃げる』というプライド優先の動きに変えてしまった。

その隙を、『2機』は許さない。

「……ファンネル」

黒と紫基調のもう一体のガンダム。

その後ろに括り付けられた、不釣り合いに巨大な武装……見る人が見ればエース用のナチュラル側のメビウスに搭載されていたガンバレルに似た武装が、四方に飛び放たれる。

その初めて見る武装の動きに目移りした一瞬。

その一瞬に、4つのガンバレルは事前にチャージしていたエネルギーを全て、敵機のコクピットに吐き出した。

瞬間、間を開けていた4機が同時に爆裂。

その時、彼等はやっと理解した。

自分達が狩人なのではなく、獲物だと云うことに。

「「あぁあああ!」」

残った3機が、背中合わせで手に持ったマシンガンを斉射。

だが、残念ながら、既にそこには誰もいない。

『次の行動を先読みしたかのように』射線から外れた2機。

そのうちの前者が装備している……先程は確認できてなかった腰の砲口から、また光が一条走る。

同時に、頭上から光に串刺しにされたジンが爆裂。

強行偵察に出ていた筈の、3小隊計9機のジンは、接敵から数分で、僅か2機まで数を減らしていた。

「さようなら」

勿論、残りもそう長くは持たなかった。

数秒後、最後に呟かれた女性の声とともに、残りの2機も、共に宇宙のチリと化した。

全機撃墜を確認したあと。

機体の各部の調子を確認しながら、パイロットであるジョン大佐は、ため息と共に愚痴を零した。

「はぁ、これで何機目だよ……懲りねえ連中だ」

彼は、今日もまた、受領した新機体三種のうち一機、ガンダムナイトイーグルと共に、『ゴミ掃除』に精を出していた。

さて、賢明な方には、何故世界樹の周りの警備が雑なのか、本腰をいれないのか疑問に思う方が多いだろう。

その理由を凄く雑に説明すると、『余裕がないから』である。

ニュートロンジャマーによる経済への致命的打撃。

自爆作戦ありきの世界樹防衛戦。

結果、余力があり、きちんと戦力と物資を戦後に残し、軍の勢力を維持できたのは大西洋連邦のみ。

事前にシーゲルさんに食らった離間の計+皮算用の内輪揉めで連合内部の意識を統一するのに凄く時間がかかりますという事も、めちゃくちゃ痛手だった。

それに、地上もからっぽに出来ないしね。

つまり、ほとんどの国は、余裕がない中、宇宙と地上に戦力を振り分けなきゃならない訳で。

いざ、世界樹は要所なので守らなきゃなりませんとなったとき、地球の各国の殆どの国から送られてきたのが、この後モビルスーツ中心の戦場では要らなくなるであろうメビウスと、ついでにいなくなって欲しい主流派と対立する窓際のパイロットと提督達と云うのも、無理なからぬことであった。

まあ、しわ寄せ全部新任大佐の俺に来るんですがね!

「帰投するぞ、イヴ」

「ええ、ダーリン!」

茶目っ気たっぷりにウインクするイヴを見ながら、ジョンは思う。

いや、『あの事』はとても喜ばしい事なんだが。

あの光を浴びた日から、性格、変わり過ぎじゃない?

俺が聞いたのは、イイ声してる男二人と透き通るような女性の声だったんだが、イヴは誰の声を聞いたんだ。

というか、どんな吹き込まれ方したらそんなに性格変わるの?

誰の声を聞いたかも教えてくれず、ただ性格がとても明るくなったイヴに首を傾げながら、ジョンは機体を自艦に向けた。

月と地球の狭間、その宇宙で異彩を放つ戦艦が一艇あった。

それは、夜に泳ぐ怪鳥のようであった。

かつて世界樹と呼ばれ、今は前線基地ユグドラと名を変えた基地。

その周囲を、軽やかに舞うその戦艦は傍目から見て異様であった。

漆黒一色の船体は、まるで地上用のようにウイングが二対付けられており、バーニアが後部に多数装着。

また下部には、爪のようなロック装置で、何かが留められていた。

実験艦、ロックバード。

大西洋連邦の新造艦は、我こそは世界樹の守護神とでも言うように、基地の一番近くを飛んでいた。 
 

 
後書き
イヴの内心
『プ◯さんとか、サ◯さんとか色々あの空間の中でアドバイスくれた人いるんだけど、色々言われて何が正しいのか分からないから総当りしてみよう』←ジョンの困惑の主原因 
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