冥府の寺
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第二章
「そこにある寺は」
「あれっ、俺死んだんですか」
「死んでいない、夢の中で冥界に来ただけだ」
「じゃあ朝起きたら生きてるんですね」
「そうだ、だがその夢の中でだ」
男は池田に腕を組んで言った。
「君は私にみっちり修行を受けて世界最強になる」
「そうなんですね、それで貴方誰ですか?」
「大山倍達」
彼は名乗った。
「極真流空手と言えば知っているか」
「いえ、知らないです」
池田は大山にもあっさりと返した。
「全く」
「君が来た道場の流派だが」
「はじめて知りました」
「君は空手を知らないのか」
「強くなってもてればいいですから」
ここでも本音を見事に出した。
「俺は」
「自分に打ち克つ、誰かを守るという考えはないか」
「全く」
やはり本音を出す。
「俺だるいの嫌いなんで」
「そうか、兎に角もてたいか」
「そうなんですよ」
「邪念がないだけましか」
大山は嘆息して述べた。
「それなら。まあここに来たのも縁だしな」
「強くしてくれますか」
「そうする、では修行の開始だ」
こうしてだった。
池田は冥界の寺で大山から修行を受けることになった、大山は彼にこれ以上はないまでに厳しい修行を課したが。
彼は平気な顔でいた、それで大山は彼に朝食のとんでもない量の様々な種類の野菜と果物からなるサラダを共に食べる時に問うた。
「君は辛くないのか」
「いや、夢の中で起きたら強くなってるんで」
池田は大山以上に食べつつ答えた。
「ですから」
「何でもないか」
「はい、それにこうして美味いもの食えるんで」
ドレッシングをかけたセロリを食べつつ言うのだった。
「ですから」
「いいのだな」
「はい」
そうだというのだ。
「もてる為に」
「そこまで女の子にもてたいのだな」
「もてるイコール正義ですよ」
きっぱりと言い切った。
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