野球チームの月刊誌
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三章
「そういう本なんだ」
「ああ、それじゃあね」
千佳はそう言われて頷いて言った。
「月刊ジャイアンツはね」
「有害図書に指定してだよ」
「そうそう読めない様にしないとね」
「手に取っただけで」
このおぞましき魔導書をというのだ。
「心が悪に支配されるよ」
「そうなるわね」
「見れば他にも巨人が出ている雑誌があるし」
スポーツ雑誌のコーナーはそうなっていた。
「大谷選手が多いのはいいけれど」
「巨人はあったら駄目よ」
「これだけ巨人が出ているなんて」
「日本にも世界にもよくないわ」
「こら、言い過ぎだぞ」
二人の父が横から言ってきた。
「巨人は悪魔か」
「悪魔だよ」
「そうに決まってるじゃない」
二人で父に言い返した。
「もうね」
「巨人より悪いチームないじゃない」
「悪いことしかしないし」
「邪悪そのものだよ」
「お父さんも巨人嫌いだけれどな」
それでもというのだ。
「二人程じゃないぞ」
「全く、何でそこまで嫌いなのか」
母もやれやれという顔で言ってきた。
「不思議よ」
「全くだな」
「だって僕阪神ファンだから」
まず寿が言った。
「当然だよ」
「巨人のライバルとなっているからな」
「伝統的にね」
「ライバルじゃなくて敵だよ」
寿の中ではそうだった。
「邪悪で永遠に成敗しないとね」
「駄目か、巨人は」
「そうだっていうのね」
「こんな嫌な連中ないわよ」
千佳も言ってきた。
「いつも選手掠め取って。この怨み晴らさないとね」
「千佳はこう言うな」
「やっぱりいつもね」
両親は千佳の言葉も聞いて言った。
「巨人が嫌いで」
「やっつけろって言うな」
「ぎったんぎったんにね」
身振りまで入れて話した。
「してやらないとね」
「駄目か」
「そうだっていうのね」
「そうよ、ずっと最下位にしてやるわ」
こうまで言った。
「一度しかなってないけれど」
「これからはずっとだよ」
寿も同じ考えだった。
「打倒巨人だよ」
「こんな雑誌見たくもないわよ」
「買わないだろ」
父はそんな子供達に問うた。
「そもそも」
「買わないよ、絶対に」
「見たくもないわよ」
二人の言葉は決まっていた。
ページ上へ戻る