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負けたと思った時

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第五章

「女遊びはな」
「終わるか」
「少なくとも毎日みたいにはな」
 それこそというのだ。
「出来なくなってきたな」
「そうか」
「ああ、本当にな」
 まさにというのだ。
「落ちてきてるな」
「そうなってきたか」
「飲む量は変わらなくても」
 今度は酒の話をした。
「残る様にもなった」
「酒もか、俺もな」 
 友人は自分もと応えた。
「言われるとな」
「酒残る様になったな」
「かなり飲むとな」
 その時はというのだ。
「若い時よりもな」
「残るな」
「ああ」 
 実際にというのだ。
「そうなってきてるよ」
「ずっと遊ぶなんて出来るか」
「無理だな」
「だから尚更な」
 それこそというのだ。
「好色一代男の主人公もな」
「聖闘士の主人公達の親父さんもか」
「本当にな」
「及ばないな」
「ああ」
 実際にというのだ。
「俺は無理だ」
「殆どの奴がそうだな」
「そうだよ、しかしそんな話を生み出せるなんてな」
 大友は今度は笑ってこんなことを言った。
「西鶴さん凄いな」
「それはな」
 友人も確かにと頷いた。
「物凄い作家さんだな」
「伊達に歴史に残ってる筈だな」
「全くだな、あれだろ」
 友人はここでこんなことを言った。
「俺達今北新地で飲んでるけれどな」
「西鶴さん大阪の人だからな」
「道頓堀とかでな」
「飲んでたな」
「そうだよな」
「じゃあ今度行くか」
 大友は友人に笑って言った。
「道頓堀辺りにな」
「それで飲むか」
「ああ、そしてな」
 そうしてというのだ。
「そんなぶっ飛んだ話を書いた」
「西鶴さんのことを思うか」
「ああ」
「いいな、それも」 
 友人も嗤って応えた。
「それじゃあ今度一緒に飲む時はな」
「あの辺りに行ってな」
「飲もうな」
「そうしような」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「お前も六十までは女遊び出来ないんだな」
 こう大友に言った。 
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