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敵が怖過ぎて

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第三章

「あまりね」
「怖過ぎるとですね」
「視聴率に影響しますね」
「それもずっと出ていると」
「尚更ですね」 
「そのことがわかったよ」
 冨野にしてもだ。
「本当にね」
「全くですね」
「怖くするのも考えものですね」
「悪意を出し過ぎるとよくないですね」
「子供が怖がって」
「観なくなりますね」
「そうだね、じゃあ路線変更しよう」 
 こう言ってだった。
 その番組では悪役が退場してこれまでのシリーズの路線に戻った、すると視聴率は回復して子供達も言った。
「あいつ等いなくなってよかった」
「本当によかったわ」
「怖かったからな」
「気持ち悪くて」
「いなくなったし」
「これで観られるよ」
 ほっとした顔で言ってだった。
 またその番組を観る様になった、母親に観なくないと言った子もだった。
「あいつ等いなくなったから」
「そうなのよね」
「観るのも嫌だったから」
「確かにあれはね」
 母親も否定しなかった。
「怖過ぎたわね」
「うん、二度と出ないで欲しいよ」
「出たら観ないのね」
「あいつ等本当に怖かったから」
 こう言ってだった。
 その子は番組を嬉々として観た、多くの子供達がそうした。そして彼等は大人になってその番組を振り返って話した。
「あのシリーズ敵怖かったけれど」
「風刺や寓意もあったりして」
「あの異次元人が一番怖かったわ」
「そうだったよな」
「人間の悪意を描いていて」
「全体主義国家の秘密警察みたいで」
「本当に嫌だったな」
 こう話した。
「シリーズでまた出てきたりしたし」
「出て来てもやっぱり気持ち悪かったし」
「あのシリーズ最悪だったな」
「今観ても怖いわ」
「あの作品前半いいイメージないけれど」
「あの悪役のせいだったな」
 大人になっても話した、兎角怖過ぎたと。そう感じたことは子供の頃から全く変わることはなかった。


敵が怖過ぎて   完


                  2025・1・24 
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