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外道戦記ワーストSEED

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五話 チーム、ケルベロス結成(中編)

 
前書き
人類の革新や進化を望む心があっても、それを許容する世界が出来てなければ机上の空論である。

とある新聞社の記事 

 
「いそげ!宇宙での運用初戦だ!整備不良で出せねえなんざ全員銃殺もんだぞ!」

ベテランのおやっさんが怒鳴りながら整備している横で、合流した『一人』を加えて、ジョンとソンネンは小さな部屋に入った。

機密のモビルスーツ部隊の更に最奥。

先程ビニールの被せられた、『新型』についてだ。

三人の椅子と、書類などが並べられたテーブル、そしてモニターと必要なものを確認すると、ジョンはソンネンと『彼女』に説明を始める。

「さて、各戦地でモテモテの俺達は、ついには世界樹戦という、初戦にしては激しすぎる戦闘に今から駆り出される訳だが、何か疑問点はあるか」

年上だが余りそういったことを気にしないソンネンと、そもそも関係性的に余り普段から敬語を使わない彼女の前だからか、多少砕いて話をする。

すると直ぐに、さっと二人から手が上がった。

「ふむ……ではレディファーストといこう、イヴ少尉」

そう呼ばれた『少女』は、その言葉に微動だにせず、言葉を返した。

「ジョン少佐、前にも話しましたが、私は失敗作の戦闘人形です、女性扱いの必要はありません」

「君が必要性を感じなくても、私は感じている。質問はそれだけかね?」

「いえ、では新型の詳細をお願いします。」

美しい少女である。

シャギーの入った栗色のショートカットは、勝ち気な瞳と整った顔立ちを合わせ、猫のような愛らしさを感じられる。

また、スタイルも小柄ながら女性的な凹凸を含んだなだらかな曲線を描いており、健康的な美を、身体全体で表していると言われれば、なるほどと頷ける美しさであった。

だからこそ、彼女に施された強化人間処置……確かスーパーコーディネイター、だったか?の失敗による彼女の体内の遺伝子の異常と、それに伴う短命に、心を痛めていた。

だが、そう文句を言っても彼女の病が治る訳ではない。

そう切り替えると、ジョンはモニターをつけて言葉を続けた。

「イヴ少尉が乗るのは、『ガンダムカーペンターズ』。
近接特化型で、近接武装としてガンダムハンマー、ガンダムピアーズ(釘打機)を両手にマウント。トリモチガンという、ボールで宇宙船やコロニーを修復される際に使用する大工用の加工ガンを両肩にマウントしている。又、全3機共通に装備されているシールドと同様の試作型フェイズシフト処理をハンマーとピアーズに使っているため、非常に正面突破力が高い機体だ」

その言葉に、次はソンネン中尉が手を挙げる。

「話を遮ってすまない、『フェイズシフト』とはいかなる技術だ」

「良い質問ですね。前回のガンタンクとガンダムもどきでもぎ取った勝利から、増えたスポンサーから頂いた技術でして、一応実験中にはミサイルの破裂や高高度からの鉄球の衝突など、物理衝撃に滅法強い技術であると証明できてます。ただ、電気バカ食いするので僕や先輩のシールドに数時間、多用するカーペンターズには使用時にしか使えない技術ですね」

モニターを切り替えて見せる画面上には、フェイズシフト処理を施した板にヘリから鉄球を落としたり、硬い岩盤にカーペンターズの装備してるのと同じ工具を叩きつけて粉々に砕いている動画が再生されている。

なるほど、確かに凄い技術だ。

だが、その全ての装備が実戦で使われてない上に、その結果も未知数。

そう、一体目は、頭から爪先まで実験物だらけの機体なのである。

パイロットの彼女、イヴ・ウェイブを上がどう思っているか分かって、正直ため息が漏れた。

だが、あと半日後にはマスドライバーで宇宙へ打ち上げだ。ごねる訳にはいかない。

「色々言いたいことはあるだろうが、実験武装を付けられた代わりにある程度OS改善と手足の摩耗したパーツ交換はしてある。ベストとは言わない、ベターを尽くしてくれ」

「了解」

頷くイヴに、申し訳なさそうに頭を下げる。

正直、拿捕したジンの武装をそのまま使ったほうがましだと俺は思う。

で、次は俺の機体だ。

ガンダム顔のフェイスパーツこそ同様だが、肩にミサイルランチャー、背中の弾倉に直接繋がる大規模な両手のガトリングガン。
背中にサブアームで二枚と、肩の横に二枚シールドが付けられ、ずんぐりむっくりといった印象を見るものに与える。

「自分が乗るのはこの中距離機体、『ガンダムヘッジフォッグ』、機体武装としては、ボールの滑空砲とジンのマシンガンを参考に製造した専用のガトリングと、誘導式ミサイルランチャーと、火薬庫のような奴だよ。」

「銃弾のジャムりは大丈夫か?この装弾数で弾幕張るとなると、だいぶ砲身以外にも負荷がかかるが」

「一応、ランドセル内である程度弾の整理整頓や歪んだ弾の排出はやってくれるらしいですが、余り酷いようなら拿捕したジンのマシンガンも出撃用の戦艦のラックに積んでるので、それに切り替えます」

「そうしろ、イレギュラーな戦場で、実戦経験のない武装を大量に使って撃墜なんざぞっとしない」

そう言って、ソンネンパイセンは肩を竦めるが、先輩も他人事じゃねえよ?

「じゃあ最後に、乗り換え予定のソンネン中尉の機体も説明しますね?」

その言葉に、聞いていない、とソンネンは目をパチクリさせた。

「え……ガンタンクで良いんだけど」

「良くねえよ、あれ地上かコロニー内部の有重力下のプログラムしか積んでないもん」

先の2機で察しろ、うちらは『は?ナチュラルもモビルスーツ開発してましたけど』というプロパガンダ部隊だ。

二足&ガンダムフェイス強制なんだよ。

「続けます、ソンネン中尉の機体は『ガンダムヘビーウエイト』名の通り遠距離実験機体であることを生かして、動きを阻害するレベルの巨大なバッテリーを肩から足元にかけて装着、これを利用したレールガンを専用武装として持ちます。」

ガンダムの身長に並ぶ砲身が、その異様さに拍車をかけていた。

「参考映像を見れば分かりますが、この銃そのものに別枠でバッテリーが存在し、それを余計にガンダムに持たしているのは、砲身に圧力や電圧をかけても破砕しないよう、フェイズシフト処理をおこなっているからです。一見無駄に見えますが……」

スクリーンに映った目の前の巨大なデブリが、レールガンの一撃で粉砕されていく。

「足は飾りです、四方のスラスターでキャタピラと同じように移動できると思います。愛機を持ってきてもらったのは、自分の関係した機体系列にダウンロードしている、『学習型コンピュータアプリ』を使って、ガンタンクからデータを引き抜いてガンダム内に落とすためなので、ソンネン先輩なら慣らし運転でどうにかなります」

最後に、とジョンはこの言葉で締めた

「勝ちましょう、お偉方のためとかではなく、我々が自身の未来を勝ち取るために」

その言葉に、二人も力強く同意してくれた。

中編 了 
 

 
後書き
天秤は、未だナチュラルにもコーディネーターにも傾かず、だからこそ、互いに足掻く。 
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