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蛙の鳴き声

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第二章

「それもかなり」
「はい、います」
 その通りという返事だった。
「いつも」
「雨降った時とか五月蠅くないですか?」
 どうかという顔での言葉だった。
「それじゃあ」
「いえ、別に」
 長谷の返事は何でもないというものだった。
「何もないですよ」
「本当ですか?」
「確かにかなりの数で鳴きます」
 このことは事実だというのだ。
「雨が降った夜なんか特に」
「それじゃあ」
「いえ、ちゃんと雨戸に防音ありますし」
 それでというのだ。
「問題なしです、夏は冷房入れて寝ますし」
「だから大丈夫ですか」
「はい、むしろです」
「むしろ?」
「蛙がいたらいいんですよ」
 久保永に微笑んで話した。
「蚊が多いですよね」
「周りが田んぼですと」
「どうしても。ですがその蚊をです」
「蛙が食べてくれるんですね」
「はい、ですから」
 だからだというのだ。
「沢山いてくれるならです」
「有り難いですか」
「それに見ていると可愛いですよ」
 微笑んだままこうも言った。
「アマガエルなんて」
「あの小さな蛙ですね」
「家の壁にいたりしたら色も変わりますし」
 このこともあってというのだ。
「いい生きものですよ、鳴き声もお昼の家の中で仕事していて」
「夜は雨戸で防音して」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「お昼に家の中で仕事していて」
「雨が降ってですか」
「雨音もして」
「蛙の鳴き声が聞こえたらですか」
「風情もありますから」
 それ故にというのだ。
「いいですよ」
「そうですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「蛙は沢山いてくれた方がです」
「いいんですね」
「逆に冬眠する冬は寂しい位ですよ」
「そうなんですね」
「はい、ですから田んぼの真ん中で暮らしていて」
「満足ですね」
「とても」
 笑顔で話した、そのうえで久保永と仕事の話をした。その仕事の話は順調で久保永は意気揚々と帰ることが出来た。
 長谷は順調に仕事を続けそこで一生暮らした、彼が暮らしている場所について不満を言うことは一度もなかった。


蛙の鳴き声   完


                     2025・1・21 
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