転生者達による神世界開拓記
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東方
国譲り編
第九話
諏訪子から相談を受けて数ヶ月が経過した。東の連中が着々とこちらに侵攻してくるが、こちらも黙ってる訳じゃなかった。地形の把握や作戦の意思疎通、住民との避難経路など色々調査してきた。それが今までの事で今は・・・、
「明日……か」
そう……明日、東の連中が攻めてくる。その大将はもちろんあのガンキャノンだ。
「八坂神奈子、軍神として名高い。集団の中にはそいつ以上の実力者はいるものの、大将に居座り続けている。カリスマってやつなのかね」
「さあな」
もちろん八坂神奈子以上の神と言えば須佐之男、天照、月読の三神だ。月読もとい月夜見は月に出張った為に不在だが残りの二人は厄介だ。二人一斉に襲いかかられたら勝てない可能性の方が高い。時間稼ぎに徹するべきだろう。
「絶対に勝てよ」
「勿論だよ」
しかし、この戦争は八坂神奈子を倒す事によって終了する。例え俺を倒したとしても、一騎打ちを邪魔すれば部下の躾も出来ない無能差を晒し、自身の誇りすら穢される。八坂神奈子は性格上全て力で押し込む事を是としている為、そのような行為は好んでないだろうし、部下にそのような事をさせる策士でもない。
「香苗は準備出来てるか?」
「村人達との避難経路の打ち合わせは終わっています。後は私が誘導するば恙無く終わるでしょう」
「頼むよ香苗~」
「諏訪子様こそどうなんですか?神としての差はともかく、身長差は依然としてひっくり返せない現実でしょう?」
「チビってゆうな!」
またか、とこの数ヶ月で何回心内で叫んだ事か。この喧嘩は飽きないものだろうか?
「取り敢えずお子様な諏訪子様は明日に備えて早く寝てください」
「誰がお子様かー!」
「はいはい、ねんねしましょうねー」
「むきー!」
哀れ諏訪子は香苗に連れてかれてしまった。彼女らが見えなくなった後、俺はある一つの懸念を抱いていた。
「転生者の影がない」
東方Projectは二次創作の中でトップクラスの作品数を誇っている。故に俺TUEEEEとか、ハーレム万歳とか考える奴は少なからずいる。しかし、俺は安心院なじむを一人しか見た事がない。あいつ自身は何人か接触し、始末したみたいだったが。幻想郷から始めたいとか、それとも恋姫☆無双などの方がいいぜ的なのか?
「………考えてもしょうがないか」
明日は久し振りの実戦だ。寝不足にならないようしっかり寝とかないとな。
~~~~~~
翌日の朝を迎えた。早めに起きてシャッキリシャキーン。
「擬音で展開を誤魔化さないでください」
「バレたか……」
うまくいったと思ったのに。諏訪湖だったら100%騙せた筈だ。
「そもそも騙して何の意味があるんですか?」
「……諏訪子は起きてるか?」
「無視ですか……まあ、起きたには起きたんですが……」
「……?何かあったのか?」
「それは「あはははは~」……」
前後不覚悟みたいな声が聞こえる方を向く。そこには漫画みたいに千鳥足で、焦点の合わない目を備え、陽気に歩いてくる諏訪子がいた。
「おい」
「何も聞かないでください」
「ラリってるじゃねえかよ!」
「あー何も聞こえなーい!」
諏訪子の今の状態は麻薬でキメてる人みたいに見える。放送事故になりかねない顔だ。
「……どうすればああなるんだ?」
「寝起きに気付け薬を混ぜた酒を飲ませたんですが……その……」
「?」
「いつも適量なんでパサーっとやっちゃいました☆」
「おおい!お前そんなキャラじゃねえだろ!今ドジっ娘キャラ成立させようとするんじゃねえよ!」
お前は従者キャラ(諏訪子以外)だろ!?
「それよりこれどうします?」
「お前が何とかしろよ!これじゃ元々なかった勝率がマイナス振り切るぞ!?」
「本物じゃないですからその内治りますよ」
「すげー楽観的だ!」
諏訪大戦オワタ\(^ω^)/
「……治ったとしても二日酔いとか出るんじゃないか?」
「そうですね」
「それで八坂神奈子と戦えるのか?」
「私に良い案があります」
「……良い案?」
とても悪い予感しかしないんだが……?
~~~洩矢神社付近の湖~~~
俺の目の前には神の軍勢……数千柱はいるだろうな。あの腕組んでる標縄が八坂神奈子か?
「我らは誇り高き大和朝廷の長・八坂神奈子様の精鋭である!さあ洩矢諏訪子ら諏訪の精鋭よ!尋常に出てくるがいい!」
軍勢の中でも一歩先を出ている男と思われる者の声が静寂を破る。
「……どうします旦那?(ヒソヒソ)」
「……どうもこうも、出るしかないだろう」
「わ、私たち戦えませんよ?」
「分かってる。うまくやるさ」
諏訪子の部下達はあまり役に立たない。いても無駄かもしれないな。
「おお!そこにいたか!」
「……ああ」
「何だ?調子でも悪いのか?」
悪い所じゃないわ、もう。何でこうなったのか、それは香苗の案が原因だった。本当なら回想に入るとこだけど面倒なので簡潔に言えば……、
「……洩矢諏訪子の代わりに八坂神奈子を成敗してとは(ヒソヒソ)」
「……風祝も無茶をさせる(ヒソヒソ)」
「……あれは人間が神に抱く理想そのものだぞ(ヒソヒソ)」
「……人間を助け、導く存在……それが神そいうもの(ヒソヒソ)」
「……諏訪子様に引き分けたといっても所詮は遊びの領域では?(ヒソヒソ)」
「……ヒソヒソ」
お前らヒソヒソ話してんじゃねえ!全部聞こえってからな!
「おい」
「(ッチ)……何だ?」
「お前が洩矢諏訪子か?」
「いいえ」
「ならば洩矢を出せ」
「いいえ」
「……何?」
「意味が分からないか?出す必要もない、そう言っているのです」
あっ、青筋が浮かんだ。初めて見るわ、あんなくっきり怒りマークが出るのって。ていうかもうヤケっぱち。行ける所まで行ってやるわ!
「貴様……タダで死ねると思うなよ!」
「英雄王かよ、お前は……」
「八意殿!」
「あーお前らは下がってろ。邪魔だから」
諏訪子の部下を下がらせ、右手で魔道書を開く。
「大魔導典籍起動、32ページの魔法参照、詠唱開始」
蒼色に発光する大魔導典籍はひとりでにページを開き、一工程で詠唱を終える……!
「煉獄の終末火焔!」
さっきまで晴天だった空が黒く染まる。それを訝しく思う敵達だがそんな余裕はすぐになくなった。
「何だあれは……!?」
「隕……石……!?」
「さあ慄け東の狗共よ!キャンキャン喚きながら惨めに死に果てろ!」
その声を皮切りに、焔纏う隕石が八坂陣営に振り落ちる。この状況を理解出来る者は誰一人いなかったが、自分の運命を理解させられた者は五体満足の死体にすらなれなかった。
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