実は肉食の受付嬢

　　　　　　　　　　　　　　　　実は肉食の受付嬢
　八条自転車名古屋支社の受付嬢日笠帰蝶は長い黒髪を後ろで束ねている。クールな感じの二重の切れ長の目で眉は細く長い。奇麗な顎を持っていて唇は紅だ。背は一六二位で胸が大きく脚はすらりとしている。
　基本無口でクールで真面目な仕事ぶりだが何処か機械の様だと言われていた、その見方は新入社員の大土井睦月も思っていた。長方形の顔できりっとした目鼻立ちで黒髪を短くしている。背は一七五位で引き締まった身体つきだ。
　だがその彼にだ、ある日帰蝶は言ってきた。
「時間おありでしょうか」
「時間ですか」
「はい」
　仕事で取引先から帰ってきた大土井に受付の場所から言ってきた。
「今日にでも」
「はい、今夜は別に」
　大土井は素直に答えた。
「予定ないです」
「そうなのですね」
「はい、それで何か」
「お付き合いして下さい」
　クールに言ってきた。
「今夜お仕事の後で場所は」
「何処ですか？」
「バーネオンです」
　この店でというのだ。
「待ち合わせしてです」
「そこで、ですか」
「お話したいことがありますので。ただ」
「ただ？」
「このことは誰にも言わないで下さい」
　会社の入り口に二人いる状態で言ってきた。
「お願いします」
「誰にもですか」
「はい」
　絶対にというのだ。
「それはお願いします」
「わかりました、それでお話は」
「その時にお話させて頂きます」　
　帰蝶はこれ以上は言わなかった、そうしてだった。
　大土井は何を話すのかわからないまま帰蝶の言葉に頷いてだった。　
　誰にも言わず仕事が終わるとその店に行った、店の場所は帰蝶がそっと出してきたメモに書かれていた。
　その店に入ると膝までのグレーのタイトスカートとスーツ姿の帰蝶がいた、帰蝶は席を予約していると言ってだった。
　その席二人用の席に座った、そして帰蝶はカクテルを注文して言った。
「好きです」
「えっ、僕がですか」
「そうです、ですからお付き合いして下さい」
「あの、いきなりですね」
「いきなりで悪いでしょうか」
　大土井に真顔で言ってきた。
「本気で好きになりましたので」
「告白してくれたんですね」
「そうです、断られても」
　本気の目での言葉だった。