ファイナルファンタジー1
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38話『帰還』
「あ……“火のカケラ”が、マゥスンの身体の中に戻ってく……!」
12賢者を代表して予言者ルカーンと女賢者エネラも付き添う中、白魔道士のシファは横たわる赤魔道士の彼の胸部に浮遊していた紅く淡い光を内に湛えている火のクリスタルのカケラが吸い込まれるように消えてゆくのを見つめ、それと同じくして微かに開かれていた口元から息を吹き返すように一度深くゆっくりと呼吸するのを目にする黒魔道士のビルとシーフのランク。
……しかし、それから一向に目を覚ます気配が無く、耐えきれなくなったランクはなるべく声を抑えて呼び掛ける。
「なぁ、マゥスン……? 修復された火のカケラがオマエの中に戻ったってコトは、オマエの魂だか精神が帰って来たんだろ? だったら、もう目を覚ましてくれてもいいじゃねェか……! オレ達あれからずっと、待ってたんだぜオマエのコト……ッ。なぁおい、マゥスン……!!」
────その悲痛な言葉が届いたのか、おもむろに目覚めた彼は、心配そうに顔を覗き込んでいた“3人の仲間”を朧気に見つめ返す。
「 ……………。皆……、心配を、掛けた……。私は、ここに……居る」
「マゥ、スン………よかった……っ!」
「ふえぇっ、帰って来て、くれたんでスねぇマゥスンさぁん……!」
例えようのない安堵と喜びに満ちたシファとビルは思わず涙するが、ランクは溢れる気持ちを抑えつつ間近に語り掛ける。
「一応……その、信じてたぜ。マジメくさったオマエが“為すべき役目”ってのほっぽいてどーにかなるワケねェってな」
「あぁ………その為に、私は還って来た……。お前達と共に、為すべき役目を、果たす為────」
話す内に、苦しげに瞳を閉ざしてしまったマゥスンに動揺するランク。
「お、おいッ、どうした……?!」
「暫くの間本体から切り離され、〈精神体〉として“異なる次元”で行動していたせいね。殆ど魔力が消耗されていて当然よ」
黒髪の長い女賢者エネラが口を挟む。
「既に〈精神体〉が消滅していてもおかしくなかったでしょうに……。けれど彼はよく持ち堪えたようね、流石だわ。大幅に消耗した魔力が回復するには、三日……いえ、五日間は絶対安静という事になるワ。……そうでしょ、ルカーン様?」
「……その者が動けるようになった後、火の源のクリスタルの輝きを今度こそ取り戻す為、再びグルグ火山へ向かってもらい、その後“四つ目のクリスタル”について話を進めるとしよう」
厳格な予言者ルカーンと妖艶な女賢者エネラは音も無くその場を去った。
────絶対安静の二日目の夜中、外は強すぎず弱くもない雨が降り続き、クレセントレイクの町外れ、東の広場にある木造の小屋にてシーフのランクが見守る中、深く眠り続けていたマゥスンが朧気に目覚める。
「……よぉ、気がついたかよ。気分、どーだ? なんか持って来てほしいモンとか、あるか?」
「いや………今は、何も…………。まだ、動けそうに、ない」
「そりゃそーだろうな。……あれから二日経ってっけど、あと三日は絶対安静だそうだぜ」
「そう、か。………シファと、ビルは」
「床に布敷いてそこで寝てるって、順番にオマエの看病してンだ」
「すまない………戻ってからもこうして、世話ばかり掛けてしまって」
「ンなこた気にすんな。……今はとにかく、何も考えねェで寝とけ。な?」
「……………ありが、とう───」
ランクの言葉を聞き受け、どこか安心したように微笑んだマゥスンは再び深い眠りにつく。
「(うはッ、今一瞬笑ったか……?? しかも、アリガトウって…………)」
「───先程の彼の様子からすると、精神体として異世界で少しは“人間らしさ”というものを学んだみたいね」
「ゲッ、テメェいつの間に……!」
気配すら感じさせず、女賢者エネラが唐突に現れていた。
「アラ……余り声を上げると彼がゆっくり休めないじゃない。……身体の機能が正常に戻れば、〈呪い〉の症状まで再発するのは否めないのよ」
「 …………ッ!!」
妖艶なエネラの絡み付くような独特の話し方に痛い所を突かれ、ランクは言い返せなくなる。
「これから少しづつ、アナタ達……アナタにとってマシになっていくにしても、ワタシにとっては物足りなくなるわね」
「あ、アンタはコイツと……どーゆう関係なンだよ」
「……そんなにワタシと“彼”の仲が気になるの?」
「ち、ちげェよッ」
否定しようにもしきれないランクに冷笑を浮かべるエネラ。
「そうね……アナタにとっては“由々しき仲”とでも言っておきましょうか。───付け加えるなら、アナタの知らない彼を、ワタシは“知っている”という事ね」
「………………ッ」
「教えてあげましょうか。アナタが“彼”に対して抱いている、最大の疑問を────」
「要らねェよ、そんなん」
「アラ……強がっちゃって。そろそろ、失礼するワね」
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