金木犀の許嫁
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第四十七話 須磨の海その十四
「昔はね」
「諱と本姓はね」
「呼ばないのがね」
これは手紙でもだ、当時の手紙でも諱そして本姓は用いられていないのが普通だった。
「普通だったよ」
「そうよね」
「だからの鐘も」
方広寺のそれもというのだ。
「家康さんも言いがかりじゃなくて」
「入っていないかってね」
「そのことを確認した位だよ」
「そうだったのよね」
「自分の諱が入っていて」
「国家安康ね」
「ここで自分の名前を切って呪っているとか」
その安という字でだ。
「流石に無理があるし家康さんもね」
「考えてみたらそんな言いがかりってせこいわね」
「そんなせかいことはね」
それはというのだ。
「流石にね」
「家康さんもしないわね」
「そこまで器の小さい人か」
徳川家康という人間はというのだ。
「果たしてね」
「違うわね」
「その筈だよ」
絶対にというのだ。
「もうね」
「そうよね」
「だからね」
それでというのだ。
「このお話はなしで君臣豊楽も」
「この文字もよね」
「豊臣家を栄える様に逆さにしているとか」
「やっぱり小さいわね」
「そんな小さいことを家康さんが言うか」
天下人である彼がというのだ。
「違うし問題はね」
「諱があるかどうかね」
「若し入っていたら不都合だから」
諱、本姓が入っていることがだ。
「そうだったら訂正する様にね」
「言っただけね」
「それでこのこと自体はね」
「豊臣家も説明して」
「終わったんだ、それだけ諱や本姓はね」
当時はというのだ。
「表立って使っていなかったんだ」
「そうよね」
「だからね」
それでというのだ。
「俺達のご先祖様も佐助様はね」
「普通のお名前で諱じゃないわね」
「そうなんだ、幸村公も」
この人もというのだ。
「諱であられて」
「当時は呼ばれなかったわね」
「源次郎様ってね」
「呼ばれていたわね」
「武士はそうだったから」
それでというのだ。
「そのことはね」
「覚えておくことね」
「そうだよ」
まさにと言うのだった、そうしてだった。
そうした話もしつつプールのことも話して登校した、二人は登校する間そうして話もして一掃絆を深めていったのだった。
第四十七話 完
2024・10・23
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