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大阪の夜泣き蕎麦

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第五章

「やっぱり」
「そや、あっちは蕎麦でもな」
「こっちはおうどんで」
「しかもこんなに寒くてな」
 それでというのだ。
「ざるそば食いたいか」
「いえ、それは」
 蜜柑はそう言われるとこう返した。
「やっぱり」
「いらんな」
「おうどんがええです」
「しかもあったかいな」
「それがええです」
「それでや」
 のっぺらぼうはあらためて言った。
「大阪やしな」
「このお店もですか」
「おうどんが人気や、特に今の季節はな」
 冬はというのだ。
「夜は余計にな」
「あったかいおうどんですね」
「こっちのな」
「そうですね」
「そやからな」
 だからだというのだ。
「わしのお勧めはな」
「おうどんですね」
「一杯二百五十円、大盛りでな」
「安いですね」 
 蜜柑はその値段を聞いて驚いた。
「立ち食いよりも」
「そこは妖怪の店やからや」
「人の世の中よりも安いですか」
「そや、それでや」
「安いんですね」
「まあ学食位と思ってな」  
 値段はというのだ。
「決めてるわ」
「私達高校生ですし」
 三葉はそれでと応えた。
「それでは」
「ああ、おうどんやな」
「そっちをお願いします」
「私もです」 
 蜜柑も言ってきた。
「あっかいおうどんを」
「一つずつやな」
「お願いします」
 こう話してそれぞれうどんを受け取って食べた、そうしてそのうえで二人でうどんを食べたが食べるとだった。
「美味しいわね」
「そうですね」 
 二人で顔を向け合って話した。
「コシもあって風味もよくて」
「おつゆもよくてね」
「いいわね」
「美味しいですね」
「しかもあったまるし」
「いいですね」
「そやろ、こっちは夜泣き蕎麦やない」 
 のっぺらぼうも言ってきた。
「夜泣きうどんや」
「そっちですね」
「言うなら」
「というかわし等昔から大阪におるんや」
 のっぺらぼうは腕を組んで言った。
「それやろ江戸の食いもんはな」
「口に合わないですか」
「そうですか」
「そや、蕎麦はええとしてな」
 この料理自体はというのだ。
「冬それも夜に外でざるはないやろ」
「そうですね」
「こっちの感覚ですと」
「それであったかいうどんや」
 店で人気があるのはというのだ。
「何といってもな」
「いや、美味しいです」
「温まりましたし」
「それは何よりや、ほなおかわりするか」
「いえ、もうこの一杯でお腹一杯です」
「夕食も食べましたし」
 二人は笑って応えた。 
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