ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第144話 出会いの連鎖、狼に育てられた少年と赤いドラゴン
前書き
破邪鬼神レガルゼーヴァが来たのはグルメ界の存在を何らかの理由で知ったリゼヴァムが干渉しようと色々やった結果、偶然E×Eに繋がってしまい怒りを買ってしまったからという風に設定を変えていますのでお願いします。
オーフィスが一龍と出会い零蝶という新しい名を貰って数年が過ぎた。一龍も成長して喋れる年にまで成長した。
「零蝶姉ちゃん!抱っこして!」
「承知した」
零蝶は一龍を抱き上げて高い高いする。
「姉ちゃん!いつものあれやって!」
「分かった」
零蝶は一龍をしっかりと掴むとそのまま凄い勢いでジャンプした、大体1500mは高度を上げただろう。
「すっげー!お空が手に届きそう!」
一龍は大はしゃぎで喜んでいた。
一龍はアカシアとフローゼ、そして零蝶の愛情を受けてすくすくと成長していた。最近はアカシアや零蝶に稽古を付けてもらっておりいずれはアカシアのような美食屋になることを夢見ていた。
「二人とも~、そろそろお昼ご飯にしましょう~」
「あっ、母さんだ!」
家からフローゼが顔を出して二人を呼び寄せた。すると一龍は一目散にフローゼの元に向かい抱き着いた。
「あらあら、一龍は甘えん坊ね」
「へへっ、母さんのハグはあったかくて好きだぜ。ぎゅ~」
一龍を優しく抱きしめるフローゼ、そんな二人を零蝶は羨ましそうに見ていた。
「零蝶、貴方もいらっしゃい」
「ん!」
フローゼに手招きされた零蝶は凄い勢いで彼女に飛びついた、だがフローゼが怪我をしないように力は弱めている。
「さあ、今日のお昼ご飯は『ホルモン貝』と『アーモンドキャベツ』をたっぷり入れた『ヤギそば』の焼きそばよ」
「わーい!やったー!」
「ん、我も楽しみ」
二人はすぐに家に上がって手洗いとうがいをして食卓に向かった。
「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」
「いっただっきまーす!」
零蝶と一龍は手を合わせて合掌する、そして焼きそばに箸を入れて口に運んだ。
まず香ばしい焼きそばの麺を咀嚼する、モチモチとした触感にソースの味付けが舌に広がっていく。そこにアーモンドキャベツのザクザクとした触感とホルモン貝のプルンとした肉厚な実が触感のハーモニーを奏でていく。
「うんめ~!ホルモン貝の焼きそば、最高~!」
「フローゼの料理は相変わらず美味しい、箸が止まらない」
山盛りに盛られていた焼きそばを二人はあっという間に胃袋の中にしまってしまった。
「ご馳走様!姉ちゃん、食後の運動で勝負しようぜ!」
「こら、食べたばかりで動かないの。体に悪いでしょ?」
「は~い……」
一龍はやんちゃな性格だ、とても甘えん坊で遊ぶのが大好きな子供らしい性格だった。だがフローゼの言う事は素直に聞く良い子でもある。
「ただいま」
「あっ、父さん!お帰りなさい!」
するとそこにグルメ界の調査に向かっていたアカシアが帰ってきた。一龍は一目散にアカシアの元に向かい彼に飛びついた。
「おお、一龍!今日も元気いっぱいだな。お前のその元気な笑顔を見れば疲れも取れてしまうよ」
「えへへ……」
アカシアは嬉しそうに一龍を抱き上げて笑みを浮かべる。
「アカシア、御帰り。一龍だけでなく我も撫でるべき」
「ふふっ、零蝶もただいま」
零蝶は頭をズイッと出して撫でろと言わんばかりにアカシアに押し付けた。アカシアは苦笑しながら彼女の頭を撫でる。
「お帰りなさい、アカシア。今日はすき焼きよ」
「それは楽しみだな」
フローゼもアカシアを出迎えて家族が全員揃った。アカシアは長旅で疲れた体をお風呂で癒して食卓に向かう。
「お肉美味しい~。お母さん、悟飯おかわり!」
「あらあら、お肉ばかり食べてたら駄目よ」
「一龍、ネギや春菊も食べる」
「えー、野菜は嫌いなんだ。お姉ちゃん食べて」
「駄目。好き嫌いしたら強くなれない」
「ちえっ」
「ははっ、零蝶ももうすっかりお姉ちゃんだな」
すっかりお姉ちゃん気質が付いた零蝶は一龍に野菜も食べるように言う、一龍は渋々ながら野菜も食べ始めそれを見ていたアカシアとフローゼは笑みを浮かべた。
楽しい食事の時間はあっという間に過ぎていった。
「零蝶、申し訳ないが明日私の調査に付き合ってほしい。未開の地に向かうつもりだが強い猛獣がかなりいそうだ、一人では手がかかるかもしれん」
「分かった、我も一緒に付いていく」
アカシアは明日の調査に零蝶も付いてきてほしいと頼む。今まで向かった事のない未知の大陸を調査するために彼女に協力をお願いした。
「お父さん、僕も行きたい!ねえいいでしょ?」
「駄目だ、お前はまだまだ弱い。あの大陸は私達も初めて足を踏み入れるんだ、お前を守れる保証は出来ないしそもそも過酷な環境に耐えられないだろう?」
「うぅ~……お姉ちゃん」
「うっ……やはり駄目、一龍に何かあったら我死んでしまう程悲しむ。お願いだから言う事を聞いてほしい」
「分かった……」
一龍も生きたいと言い出したがアカシアに却下された、すると一龍は零蝶に涙目で助け船を求めた。
一瞬流されそうになったが彼女はそれを振り払い駄目と答える。それを聞いた一龍はがっかりした様子を見せた。
「一龍、明日はお母さんの護衛をお願いしてもいいかしら?近くにある山菜を取りに行きたいの」
「えっ、僕が?」
「うん、とっても頼りになる貴方にお願いしたいの」
「分かった!僕がお母さんを守ってあげるね!」
落ち込んでいた一龍だったがフローゼにそう言われて元気を取り戻した。
「お父さん、お姉ちゃん。頑張ってね!」
「明日は美味しいお弁当をたくさん用意しておくわね」
「楽しみ」
こうして零蝶はアカシアと共に未知の大陸を調査することになった。
―――――――――
――――――
―――
アカシアと共に未知の大陸に上陸した零蝶、そこはグルメ界の中でも相当に強い猛獣が山のようにいて更に過酷な環境も自分達を殺そうと容赦なく襲い掛かってくる。
零蝶は無限の龍神と呼ばれ無敵の存在であったが、弱体化した今では過酷な環境に無条件で耐えられない。
だが彼女はグルメ細胞というアカシアが見つけた万能細胞と100%適合することが出来、更に厳しい修行を乗り越えて強くなっていった。
「零蝶、大丈夫か?」
「この程度なら問題ない」
「ふっ、頼もしい限りだ」
今も鉄を簡単に溶かす酸性雨の雨と体を芯から凍らせる冷風の竜巻が襲い掛かってくるが二人をそれに適応して先を進んだ。
手ごわい猛獣と過酷な環境を退けながら二人は大陸の調査を続けていった、そして2週間ほどが経過した。
「ふむ、だいぶ調査が進んだな。まさかあんな食材があったとは……あの食材は『ペア』と名付けよう」
「一龍、そろそろ帰ろう。我もう限界、フローゼと一龍が恋しい」
「ははっ、私もだ。調査はいったん打ち切って戻るとしよう」
零蝶は2週間も二人に会えないことに不満を言う、それを聞いたアカシアはそろそろ戻るかと話す。
「ッ!アカシア!」
「これは……囲まれた?」
だがその時だった、二人の周囲に白い狼達が一瞬で集まり二人を囲い込んだ。
「バトルウルフ……!」
「馬鹿な、この辺は彼らのナワバリではないはずだが……敵意は感じないな」
二人を取り囲んだのはバトルウルフだった、以前バトルウルフに手痛い目に合わされた零蝶は警戒するがアカシアが静止する。彼らから敵意を感じないからだ。
「グルル……」
するとバトルウルフの群れをかき分けて一際大きなバトルウルフが姿を現した。そのバトルウルフには至る所に古傷が刻まれていてその姿を見ただけで震えが止まらなくなるほどの覇気を感じさせる。
「まさかこんな所で出会う事になるとはな……」
「ギネス……!!」
アカシアは冷や汗を流し零蝶は先程消した敵意が蒸し返しそれ以上に闘志をむき出しにした。
そのバトルウルフをアカシアは『ギネス』と名付けた、以前アカシアたちは偶然バトルウルフが住まうナワバリに足を踏み入れてしまった事があったのだが運悪くギネスと遭遇してしまった。
二人は戦ったが零蝶は死ぬ寸前まで追い詰められてしまった、何とかアカシアが彼らのテリトリーから零蝶を連れて出ることが出来たため逃げることが出来たが零蝶はその時の敗北を相当悔しがっていた。
それ故に敵意をむき出しにしてしまうのだ。
「あの時は不覚を取ったが我もアレから強くなった、今度は負けない……!」
「待て零蝶、落ち着くんだ」
今にもギネスに飛び掛かりそうな零蝶を宥めながらアカシアはギネスの動向を伺う。するとギネスは部下のバトルウルフに何か指示を出す。
するとそのバトルウルフが何かを咥えてアカシアたちの前に移動した。二人はバトルウルフが咥えていたモノを見て驚く。
「人間の子供だと……!?」
そう、そのバトルウルフが咥えていたのは人間の子供だった。腰に毛皮を巻いたその子供は人間とは思えない目つきでアカシアたちを威嚇していた。
「バトルウルフの新種?人間みたいな形をしている」
「いやあれは唯の人間の子供だ。まさかバトルウルフに育てられた子なのか?」
零蝶はそう言って首を傾げたがアカシアはそれは違うと答えた。あの子供は間違いなく人間だ、だが……
(見ただけで分かる、なんというグルメ細胞の濃さだ!最早人間の形をしたグルメ細胞ではないか!?)
アカシアは目の前にいる人間の子供がグルメ細胞を持っている事に気が付く、だがその混じり具合が異常で最早体のほとんどがグルメ細胞になっていることに驚いていた。
「ガアアァァァッ!!」
すると人間の子供はすさまじい速度でアカシアと零蝶に襲い掛かった。その速度はまるで弾丸の様で真っ直ぐに二人に向かってきた。
「グルァッ!!」
そして手を振るい斬撃を飛ばした、二人はそれを回避するが地面を大きく抉りとり後ろにあった大岩を粉々にしてしまう。
「なんという戦闘力だ。零蝶、あの子を抑えてくれ。私が力を封印する!」
「分かった」
そして二人は子供を抑える為に戦いを始めた、そして数時間後アカシアによって子供は力を封印されて大人しくなった。
「グゥ……」
「やれやれ、漸く落ち着いたか」
「暴れすぎ、お腹空いた……」
二人は溜息を吐きながら大人しくなった子供を見る。
「アカシア、この子どうする?いつの間にかギネス達もいなくなってる」
「もしかしたらギネスはこの子を私達に預けに来たのだろうか?」
アカシアはギネスが自分達の前に現れたのはこの子を預けるためではないかと推測する。
「じゃあ連れて帰る?」
「ああ、このままにはしておけない。連れて帰ろう」
二人はその子供を連れて帰路につくのだった。
―――――――――
――――――
―――
「……という訳なんだ」
「まあ、そんな事があったのね」
家に戻ったアカシアはフローゼに事情を話していた。そんな二人の眼前には……
「ガルルルッ!!」
「いたっ!指噛まれた!」
「落ち着く」
風呂に入れて体を荒い服を着せようとする一龍と零蝶、そしてそれを必死で抵抗するバトルウルフに育てられた子供がいた。
お風呂でも相当暴れたからか一龍の顔には引っかき傷が走っていた。零蝶が抑え込むことでなんとか落ち着かせる。
「それでフローゼ、この子なんだが……」
「分かってるわ、この子も育てたいんでしょ?」
「ああ、力を封印したとしても普通の人にはこの子は育てられないからな」
「私は反対なんてしないわ、家族が増えるなんて嬉しいじゃない」
「ありがとう」
アカシアは自分でこの子の面倒を見ようと思いフローゼに許可を得ようとする、だが彼女は分かっていますよと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「一龍、今日からこの子も私達と一緒に暮らす事になった」
「えっ、本当?じゃあこの子僕の弟になるんだよね?」
「ああ、そうだな」
「やった!僕弟が欲しかったんだ!」
アカシアは万が一この子供が一緒に暮らす事を一龍が嫌がったらどうしようかと思った、だがその予想に反して一龍はお等々が出来て嬉しいと答えてホッとする。
「それでこの子は何て名前なの?」
「そうだな、その子は……二狼だ」
「ガウッ?……ガアアッ!」
一龍がこの子の名前を聞くとアカシアはニ狼だと答えた。二番目の男の子で狼に育てられたからそう名付けた。
ニ狼と名付けられた子は意味は分かっていないがなんとなく気に入ったように声を上げた。
「とにかくまずは人間の言葉を教えるところからだな」
「じゃあ僕も教えてあげるね!まずはいただきます!あとごちそうさまでした!」
「フフッ、とっても大事な言葉ね」
「その通り、とても大事な言葉」
「ガアッ?」
こうしてニ狼はアカシアたちの家族となった。そして二狼の教育が始まった。
「お手」
「ワン」
「お座り」
「ワンワン!」
「伏せ」
「クゥ~ン」
「お利巧さん、偉い偉い」
「お姉ちゃん、それ絶対に人間にする教育じゃないよ!」
零蝶が間違った教育をしていたので一龍が慌てて止めた。
「グウッ……」
「コラ、駄目よ。お皿にのせられたお料理は手じゃなくて箸かフォークで食べるの」
フローゼはニ狼に人間の食事の仕方を教えた。最初は嫌がっていたがフローゼの根気強さに負けたのか次第にいう事を聞き始める。
「いいか二狼、私達は人間だ。今までのように思うがままに力を振るう事は許されない」
「ガアァッ!」
「まずは私に存分に力を振るいなさい、その後に正しい力の使い方を教えよう」
力を封印されても今だに本能のまま暴れようとする二狼、そんな彼にアカシアは押さえつけようとはせず最初は好きに自分を攻撃させて疲れさせてから教育をしていった。
「ガウッ」
「よし、良い子だ」
「……♪」
教育は大変だったが二狼は次第にアカシア達に心を許していった。
「むにゃ……」
「グゥゥ……」
「お姉ちゃん冥利に尽きる、幸せ」
「その割には無表情じゃないか」
「あら、まだまだ零蝶検定1級の資格は上げられないわね。今凄くご機嫌よ、あの子」
「うむむ、私もまだまだだな……」
零蝶の膝を枕にして一龍と二狼が仲良くお昼寝をしていた。零蝶は無表情だとアカシアは言うが、フローゼには彼女が上機嫌だという事が分かるようだ。
それから数年が過ぎた頃、ようやく二狼も人間としての知性を得て言葉を話せるようになった。そこから一龍と共に鍛え続け最近は生き物の動きを止めるノッキングの技術をアカシアから学び伸ばしているようだ。
「いくぜ零蝶姉さん!ノッキングマシンガン!」
「甘い」
二狼は凄まじい速度でノッキングを仕掛ける、ナミの相手なら全身を動けなくされる速度で指を突いてくるが零蝶は涼しい顔で受け流す。
「そこ」
「がっ!?」
そして一瞬の隙をついて二狼の顔に拳を打ち込んだ。それを受けた二狼は吹き飛んでしまう。
「うえーん!姉さんが虐めたー!」
「姉さん、ちょっとは手加減してあげてよ」
「むう、手加減難しい……」
負けてしまい大泣きする二狼、それを見ていた一龍が二狼を宥めながら零蝶に手加減してあげて欲しいと言う。
零蝶は大切な弟をもう泣かせたくないので必死に手加減を覚えるのだった。
そこから更に年月が過ぎた、一龍も二狼ももう立派な青年になっており今ではアカシアと共にグルメ界の調査に行ける程に成長していた。
「二人ともこんなに大きくなって……私は嬉しいよ」
「俺達がこんなにも成長できたのは父さんと母さん、そして姉さんのお蔭です」
成長した息子たちを見てアカシアが嬉し涙を浮かべる、そんな彼に一龍は感謝の言葉を言う。
「もうすっかり大人ね、あんなに小さかった子達が大きくなって……感無量だわ」
「私も嬉しい。二人はもう立派な雄」
「姉さんは全く変わらないけどな」
「むう……」
フローゼは大きくなった二狼を見上げながら胸に手を置いて感動を言葉にする。隣で零蝶も胸を張るが二狼に頭をポンポンされて口をムッとさせる。
「我はアカシアとフローゼがこの姿が良いというから成長しないだけ。その気になればいつでもナイスバディになれる」
「いやいや姉さん、強がるなって」
「……生意気になった。暫く禁酒させる」
「ええっ!?俺から酒を取ったら死んじまうよ!許してくれ、姉さん!」
「駄目、許さない」
「そんなァァァ―――ッ!?」
二狼の絶叫が青い空に響き渡った。二人が大人になった後も家族たちと平和に過ごしていた零蝶、だがそんな彼女に因縁の相手が姿を見せる。
ある日の昼だった、アカシアたちが住む家の近くにズシンと大きな地響きが響き何事かとアカシアたちが外に出ると大きな紅いドラゴンが傷だらけで倒れていた。
「なんだこの猛獣は?初めて見るタイプの生物だが……」
「グレートレッド!?」
アカシアは初めて見るドラゴンに首を傾げるが、零蝶はそのドラゴンがグレートレッドだと直ぐに分かった。
「零蝶、貴方はこのドラゴンを知っているの?」
「昔の知り合い、でもコイツがこんなに傷だらけなのは初めて見た」
「とにかく直に治療した方が良い、早くしないとこのドラゴン死ぬぞ!」
「ああ、瀕死の状態だ」
フローゼは零蝶に知り合いかと尋ねる、零蝶は頷きグレートレッドがここまでやられていることに驚いていた。
二狼は傷の具合から非常に不味い重体だと見抜き一龍も頷く。二人がグレートレッドに近づこうとした瞬間、近くの空にヒビが入り空間が割れて何かが出てきた。
「逃がさんぞ、紅いドラゴン。トドメを刺してやる」
そしてそこから恐ろしい姿をした存在が姿を現した。その姿はまるで邪心のような禍々しさを放っていた。
「お前は一体なんだ?」
「何だ人間、無礼だぞ。俺は破邪鬼神レガルゼーヴァ、異世界エヴィー・エトゥルデの機会生命界(エヴィーズ・サイド)を支配する邪神メルヴァゾアの兄神にして最強の存在……貧弱なる生き物どもよ、ひれ伏すがいい」
アカシアがその存在に一体何者だと尋ねる、するとその存在は自身をレガルゼーヴァと名乗りアカシア達を小ばかにした態度を見せる。
「零蝶、フローゼ、彼は異世界の存在らしいが心当たりはあるか?」
「我はない、エヴィー・エトゥルデという名は初めて聞いた」
「私も多分心当たりは無いわね」
「あるわけがないだろう、エヴィー・エトゥルデにはもはや生物は存在しない。我らが全て滅ぼしてしまったのだからな。俺達以外に残るは高位精霊界(エトゥルデ・サイド)の奴らだけだ」
アカシアは異世界の出身者である二人に確認する、だが二人は首を横に振った。そんな彼らを見てレガルゼーヴァは自分達の住む世界には生物は存在しないと話す。
「生物が存在しないだと、どういうことだ?」
「簡単なことよ、貧弱な生き物共は俺達が絶滅させてやったという訳だ。俺達がいずれ支配する世界に軟弱な肉体を持つ生き物など必要ないからな」
「なんだと?そんな理由で生きる者達を絶滅させたというのか?」
「ひでぇ奴らだ」
アカシアは何故生物が存在しないのか尋ねる、するとレガルゼーヴァは自分達が生物を滅ぼしたと楽しげに語り始めた。
それを聞いた一龍と二狼は不快そうに顔を歪める。
「レガルゼーヴァといったか?何故グレートレッドを狙う?」
「別にその赤い蜥蜴を狙った訳じゃない、そもそも俺は俺達に干渉して無礼なふるまいをした奴の住まう世界を滅ぼす為に向かっていた。その際に次元の狭間にてそいつと接触したというわけだ」
零蝶はどうしてグレートレッドを狙うのか尋ねた、レガルゼーヴァは元々グレートレッドを狙う気は無かったようだ。
「久しぶりに生きの良い蜥蜴を折角見つけたんだ、狩りを楽しもうとしてな。トドメを刺そうとしたら空間に亀裂が走ってそこに穴が開き俺達は吸い込まれてしまったという訳さ」
レガルゼーヴァはそういうと覇気を全身から放ちながらアカシア達に殺意を向ける。
「お前達も運がないな、俺に見つかるとは……まあ己の不運を呪いながら死んで行け。精々俺を楽しませて見せろ」
レガルゼーヴァはアカシア達も狩りとして殺す事にしたらしい。そもそもレガルゼーヴァからすれば生きる生物など自身のおもちゃでしか無いのだ。
「一つだけ聞かせてくれ。お前に取って命は何だ?私達にとって命とは明日をくれる尊いものだ、だから私達は毎日の食事に感謝をしている」
「食事ィ?感謝ァ?……ガハハ!バカバカしい!俺がそんな下劣な行為をすると思っているのか!命など俺達の玩具に過ぎないんだよ!」
「そうか、それを聞いて安心した。これで遠慮なくお前を殺せる」
「あん?……ガッ!?」
アカシアの腕からカロリーによって構成された巨大な腕が現れてレガルゼーヴァを殴り飛ばした。
「グオオオッ!?」
まさか格下である人間に殴り飛ばされるなどつゆにも思っていなかったレガルゼーヴァはそれをマトモに喰らい大陸二つ分吹き飛ばされた。
そして生物がいない広い不毛な大地に体を叩きつけられるのだった。
「一体何が起きた?俺は……」
「ここなら存分に暴れられるな」
そこにアカシア、零蝶、一龍、二狼が空から降り立ち着地する。
「貴様……この俺に無礼な真似をしやがって!」
「無礼だと?ずかずかと人様の家の庭に上がり込んで殺そうとする野蛮人などに尽くす礼はない」
「お前ら……地獄を見せてやる!」
アカシアに逆ギレしたレガルゼーヴァは凄まじい咆哮を上げた、それは空間を震わし大地にヒビを入れる程だった。
「お前達、相手は八王級かもしれん。心して挑め」
「了解です」
「さぁて……いっちょやりますかねぇ」
「我らに喧嘩を売った事、後悔して死ね」
だが4人は臆しなかった、そのままレガルゼーヴァと戦闘に入る。
この戦いは苛烈を極めた、八王達も異常事態を察して様子を見に来るほどだった。そしてこの戦いは一月ほど続くのだった。
最初こそ完全にアカシア達を舐め切った態度でいたレガルゼーヴァだった。だが食義を究め食没によって圧倒的な栄養を体に秘めていた4人は不眠不休で戦い続け遂にはレガルゼーヴァの体に大きな傷を付け始めた。
それに焦りと怒りを感じたレガルゼーヴァはなりふり構わず攻撃を放っていく。
「馬鹿な!あり得ない!人間など俺達に成すすべも無く滅んだ弱者のはずだ!」
全身から凄まじい量の光線を放つレガルゼーヴァ、それを回避した一龍が両手を合わせる。
「お前の体は機械でできている、そしてそれを構築する原子の真逆……崩壊する原子がお前を支配した」
「グオオオオッ!?」
突然自身の右腕が崩壊して驚くレガルゼーヴァ、一龍のマイノリティワールドによって体を崩壊させようとする少数派の原子を操られ体を壊されてしまったのだ。
「ようやくお前さんの体の構造が見えたぜ……エターナルノッキング!」
「ガアァァァァッ!?」
レガルゼーヴァの体の構造を見抜いた二狼がノッキングで全身の動きを封じ込めた。本来機械の体を持つレガルゼーヴァにノッキングなど効かないが、二狼はなんなくやってのけた。
「これは悪夢だ……俺は夢を見ているのか?」
「機械も夢を見るのだな」
「なら永遠に夢を見続けろ」
「ハッ!?」
ここまで追い詰められた経験のないレガルゼーヴァはこれを夢だと思い込む、だが背後から聞こえた二つの声に意識がそちらに向いた。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「これで……終わり!」
「グァァァァァァァァァァッ!!?」
そしてアカシアと零蝶の渾身の一撃がレガルゼーヴァの中心を打ち抜きコアを砕いた。体が崩壊して朽ち果てていくレガルゼーヴァ、最早助からないだろう。
「こ、この俺が……レガルゼーヴァが破れたというのか!こんな強い生物がいる異世界があったとは……データ不足だった」
「いや、お前は強かったぞ。途中でギネスやバンビーナが加勢しなければ危なかった」
この戦いで自分達のナワバリに流れ弾での攻撃をした報復でギネス、遊びに来た猿王バンビーナの加勢が無ければ自分達も危なかったとアカシアは語った。
「この俺を殺したことは素直に褒めてやろう……だがこのことは我が弟であるメルヴァゾアには伝えてある。いずれ俺の仇を打ちに大群でこの世界を攻め入って来るだろう……その時を楽しみにしておくのだな……フハハハハハハッ!!」
レガルゼーヴァはそう言って消滅した。
「ふう……なんとか勝てたか。流石に腹が減ったな」
「早く帰って母さんのご飯を食べようぜ」
「ああ、そうしよう」
「ん、グレートレッドの様子も見に行く」
過酷な戦いを終えた4人は帰路につくのだった。
「ただいま、フローゼ」
「アカシア!無事だったのね!」
「ああ、何とか勝てたよ。グレートレッドというドラゴンは?」
「彼ならそこにいるわ」
出迎えて呉れたフローゼを抱きしめながらアカシアはグレートレッドの事を訪ねる。フローゼはキッチンの方に指を刺すとそこには巨大な体を持った男性が食事をしていた。
「……んぐ、帰ったか、オーフィス」
「グレートレッド、お前人間の姿になれたのか。しかも喋れている」
「普段は窮屈だからならないがな、言葉は彼女に教えてもらった」
なんとその大男は姿を変えたグレートレッドだった、初めて見る姿に零蝶は驚いていた。人間の言葉を話せるのはフローゼに教えてもらったかららしい。
「それよりもオーフィス、お前に一体何があった?昔のお前は出会えば喧嘩を吹っ掛けてくるクソガキにしか思えなかったが今は落ち着いているな」
「えっ、姉さんにそんな一面が?」
「グレートレッド、家族の前で変な事を言うな。それに今の我は零蝶、間違えるな」
「そうか、それは済まなかった」
グレートレッドは久しぶりに会った零蝶が別人のように感じて思わずそれを口にしてしまった。それを聞いた一龍は驚き零蝶は家族の前で変な事を言うなと怒りを滲ませて呟いた。
「それよりも零蝶、この世界は一体なんだ?お前はあれから何をしていたんだ?」
「話せば長くなる」
零蝶はグレートレッドに今までのことを話した。
「成程、そんな事があったのか。お前がそんなに強くなっていたのはこのグルメ界で鍛えたからなのだな」
「その通り」
「ならば俺も鍛えてくれないか、あの連中が再び来るのは分かった。俺もドラゴンとして負けっぱなしは性に合わん、リベンジをしてやりたい」
「お前がそんな事を言うとは珍しい」
グレートレッドにそう言われた零蝶は驚きながらもアカシアの顔を見る。
「アカシア……」
「彼も住まわせてほしいのだろう?全然かまわないぞ、なぁ皆」
「ああ、姉さんの友人なら大歓迎だ」
アカシア達は快く零蝶のお願いを承諾する。
「それなら皆が無事に戻ってきた事もかねて歓迎会でもしましょう。美味しい物を沢山作るわね」
「なあおっさん、姉さんの過去とか知ってるんだろう?酒でも飲むながら教えてくれよ」
「グレートレッド、余計な事を言ったら殺す」
「お前本当に変わったな……」
「また家族が増えますね、父さん」
「ああ、賑やかになるな」
こうしてグレートレッドもアカシア達と生活を共に始めた。いつか来る機械生命界の刺客達に勝つ為に彼も鍛え始めるのであった。
後書き
グレートレッドだ、まさかオーフィス……いや零蝶があそこまで変わっていると驚いた。だが奴は確かに昔よりも強くなっていた、俺もこの世界で鍛えて必ず機械生命界とやらの連中に思い知らせてやろう。
次回第145話『三虎との出会い!零蝶の決意と夜王の共闘!』で会おう。
次回も美味しくいただきます……こんな感じか?
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