おぢばにおかえり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第八十三話 回廊ひのきしんその六十九
「兵庫県だから」
「それで、ですね」
「兵庫県の何処に行くかは」
それはです。
「わからないけれどね」
「リクエストしていいですか?」
「兵庫県の何処か?」
「八条町がいいですね」
「ってそこ私の実家の教会がある場所じゃない」
まさにそこです。
「何でなのよ」
「いやあ、親戚もいますから」
新一君はいつもの軽さで言ってきました。
「ですから」
「それでなの」
「はい、いいでしょうか」
「お引き寄せがあればね」
それならです。
「来られるしね」
「じゃあ八条町に」
「いいわね」
ここで先輩もくすりと笑って言われました。
「ちっち、そうしたお引き寄せは大事にしてね」
「あれっ、先輩も言われます?」
このことは意外でした。
「新一君が八条町にって」
「そこはちっち次第ね」
「私、ですか」
思わず首を傾げさせてしまいました。
「そうなんですか」
「ええ、そう思うわ」
「そうですか」
「だからね」
それでというのです。
「大事にしてあげてね」
「はい、大切な後輩君ですから」
同じ高校同じ大教会のです。
「そうさせてもらいます」
「そのことは嬉しいです」
新一君がここでまた先輩に言いました。
「僕のことそう言ってくれるのは」
「そ、そうなの」
「貴女がしたことは許さないしこれからも言い続けます」
このにくいの強さは健在でした。
ページ上へ戻る