のびあがり
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第四章
「コンサート終わってシャワー浴びて着替えたし」
「明日の朝二日酔いだとお風呂ですっきりします」
「ならよいがな、兎に角わしはそこまで伸びぬ」
のびあがりはあらためて断った。
「十メートルもな」
「そうなのね」
「それ位ですね」
「そうだ」
あくまでというのだ。
「それはな」
「そうなのね」
「流石にそこまではですか」
「見上げ入道さんとは違う」
この妖怪とはというのだ。
「巨人ではないからな」
「日本にも巨人いるけれど」
「そうですよね」
二人は巨人と言われて話した。
「その見上げ入道とか」
「海の海坊主とかね」
「山には大女とかいますね」
「ダイダラボッチとかね」
「高女さんの様にな」
この妖怪の様にというのだ。
「あくまでな」
「のびるだけで」
「巨人じゃないですね」
「のびて驚かせるだけだ」
見上げた者をというのだ。
「別に危害も加えん」
「そうなのね」
「だったら問題なしですね」
「うむ、そしてな」
妖怪はさらに話した。
「そなた達今から家に帰るのか」
「そうよ、二人暮らしだけれどね」
「ここからすぐそこのマンションです」
二人はのびあがりに答えた。
「それで、今から帰って」
「休むわ」
「そのマンションはどれだけ高い」
妖怪はこのことを問うた。
「それで」
「八階建てです」
琴子が答えた。
「私達はその六階にいます」
「どのマンションで部屋の番号は内緒よ」
美玖は微笑んで言った。
「プライベートだからね」
「マンションの名前もですよ」
「人のプライベートなんぞどうでもいい」
妖怪もそこは断った。
「わしには関係のないことだ」
「よく住所ばれとかあるからね」
「芸能界は」
「変な人に付きまとわれたら大変だし」
「そこは秘密なんです」
「それはいいことだ、しかし八階建てとなると」
妖怪はそれだけの高さならと話した。
「わしは到底及ばんな」
「まあね、それだけだとね」
「十メートルなんてものじゃないですから」
二人もそれではと返した。
「三階位ですね」
「大体ね」
「そうだな、大阪も高い建物が多くなった」
のびあがりはいささか残念そうに述べた。
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