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故郷は大空にあり

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第二章 ミッションEX : 肩にある傷
  第十五話 小型エンジンはパワフルに

プルルルルルル……プルルルルルル

んー、提督、どうかしたの?

いや…働きすぎじゃないかな、と思って

んーん…大丈夫。提督と違って、しっかり自分で調整できるから

うーん…そう言われると、何も言えなくなっちゃうなぁ。
でも、ここで力を発揮しすぎるのではなくて、ミッションで実力を出してよ?

大丈夫。いち早く人々を助けたいからね。

そう?でも、戦力の中心はF/A18だよ。
倒れちゃったら、大変なんだから。

それもそうだし、もう少しほど、したら戻るよ。

──────────────────────

「うぁーっ…」

なんだか、優しい感触がする。
私は…そうだ。エンジンの点検をしていたら、
そのまま吸気口のところで寝てしまったはず…
エンブラエル170のエンジンが小さくて良かった。
でも、エンジンのような…冷たい金属の感触じゃない。
まるで…人に抱きつかれていられるような感触だ。

「ここは…」

目を開けて見えたのは…
数々の窓。よく見た機体後部。
小さいエンジンノズル。

ここは格納庫だ。
思わず、ソファーから落ちる。
痛くは無い。頑丈な身体であるし。
外を見ると、青い空が見えた。
朝である。

薄暗い格納庫の中を、朝日が照らす。
既に身体は、朝に適応していた。
F/A18は、格納庫の小さな部屋の中で、朝食を食べコーヒーを飲む。

併設された洗面台で歯磨きをして、
手前と奥に腕を動かしていると、コツン、と歯ブラシのヘッドに何かが当たる感触がした。
寝ぼけ目で鏡を見て、自分の舌にある『それ』にF/A18の意識が冴えていく。

「なに…これ」

舌に有ったのは、真ん中にF/A18の機体のシルエットマーク、それから八方向に伸びる線、
その線の真ん中にある、それぞれの線を繋ぐ円。

F/A18は一旦、水で口をすすぎ、吐き出して、格納庫から鎮守府に向かおうとした。

「ん……どうしたの、F/A18。こわい夢でもみた? いっしょにねる?」

元々いたソファから、提督の声がした。
まだ暖かさが残ったベッドと掛け布団、
その発生源である抱き心地が良さそうで温もりを感じるであろう先生は魅力的ではある。

しかし、今はそれどころではない。

説明するより見た方が早いだろうと、F/A18は口を開き舌を出す。
提督はその両頬を掴み、自分の顔をF/A18の舌に寄せていく。
 
 
「ん〜……ん?」
 
 
 『それ』を見た瞬間、F/A18と同様に動きを止め、段々と提督の寝惚け目が冴えていく。
 そして、F/A18の目と舌を交互に見た。
 
 
「ぇ、F/A18。これ……!! って顔近いね私達!?」
 
「……締まらないねぇ、本当に」
 
 
 溜息を吐き、顔を顰めるF/A18。これは提督に向けたものではなく、
彼女に不快感を抱いているわけではない。突然起こった自分の異変に対するものだ。

「いや…なんだろう…これ」

提督がそういう。
実際、提督もこういったものは見たことがない。
明らかなる異常だ。

F/A18はこういう。

「めんどくさい事にならないといいけど」

─────────────────────────

今日はエンブラエル170の点検飛行を行う日だ。
パイロットとして搭乗するのは、提督とF/A18。
F/A18は、ベテランです。

APUを作動させ、バッテリーを起動。
F15Cの操作するプッシュバックカーで誘導路までプッシュバック。
バッテリーを起動後、エンジンを作動させる。
第1エンジンを点火してから、第2エンジンを点火させる。

「んゔ!…こちらSI001です、離陸滑走路19にタキシング許可求みます」

「了解。SI001、タキシング許可します」

スロットルレバーを少しずつ押し、推力を上げていく。
通常のタキシング速度で固定し、誘導路を進む。
左側には、ひとつのボーディングブリッジが見えた。

「SI001、タワー管制に周波数を切り替えてください。」

「了解、SI001、切り替えます」

周波数のツマミを回し、タワー管制に切り替える。
そして、周波数を合わせたと通信をする。

「SI001、離陸準備完了しました。」

離陸準備完了の旨を伝え、待機する。

「SI001、ランウェイクリア、離陸を許可します。風は南南東に3m/s。」

「了解しました。風は南南東から3m/s。」

スロットルレバーを押し込み、
小さいエンジンが大きな音を立てる。

「ビフォアテイクオフチェックリストコンプリート、提督。準備はいい?」

「スタビラーイ、OK」

「ブレーキ解除!離陸滑走開始!」

ギアブレーキを解除して、機体が加速を始める。
ロケットスタートのような、急な加速だ。
滑走路を疾走していく。
提督がF/A18に伝える。

「セッツテイクオフスラスト!」

「V1!」

「異常なし、大丈夫!」

V1(離陸決心速度)を越え、後戻りは出来ない。

「ローテート!(回転!)」

「引き上げる!」

操縦桿を引き上げ、機体が前部から浮き上がる。
そして、前輪も降輪も、地面から離れる。

「ぎゃーらっぷ(ギアアップ)」

「ギアアップ。」

ギアをしまう。音がし、固定される。

「ポジティブクライム」

──────────────────

「よし、今のうちに確認するよ。」

操縦桿を操作し、ピッチ・ヨー・ロールをチェックする。
各ライト類や機器類をチェックし、異常がないか確認する。

「チェックリストコンプリート?」

「コンプリート。」

「了解。着陸許可を貰うよ。」

「こちらSI001、着陸準備完了しました。」

「了解。着陸を許可します。風は南南東に5m/s」

「SI001は着陸許可を了解しました。」

「提督、降下率とトリム、フラップをチェック。」

「了解。降下率…PAPI正常。トリム、問題なし、フラップを85%まで下げている。」

滑走路横にあるPAPIを見ながら、機体の高度を下げていく。
(PAPIとは、滑走路横にある装置で、低いと赤のみ、高いと白のみ、
丁度いいと赤と白に見える装置のこと。だいたいね)

「F/A18。お豆腐のところで設置するんだよ?」

「お豆腐っていう人初めて見たかも。目標点標識ね。」

「そろそろ設置だよ。」

「フレア開始。」

機体を上向きにし、滑走路に対しての迎え角を大きくする。
ゆっくりと高度を下げ、滑走路端標識を過ぎる。

「着陸!」

静かな音だったのが、ギアのブレーキの音でかき消される。

「スラストリバーサー作動」

ゴゴォォォオォ

エンジンが甲高い音を立て、機体を減速させる。

「SI001、ウィスキー7に入ってグランド管制にコンタクトしてくれ。見たことないくらいな綺麗な着陸だったよ。」

「了解。W7に入りグランド管制にコンタクトする。」

 
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