金木犀の許嫁

「そうしますね」
「私達のご先祖も大坂におられた時があって」
「関ケ原の前と大坂の陣の時に」
「そうでしたね」
「そして織田作さんは大阪の人で」
「そうした作品を書いていて」
「そして」
　幸雄はさらに言った。
「猿飛佐助も書いています」
「まさに私達のご先祖様ですね」
「私達に関係ない様で」
「実はですね」
「関係のある方です」
「そうなるんですね」
「はい」
　まさにというのだ。
「その実は」
「そうなんですね」
「そしてです」　
　さらに言うのだった。
「佐京君と夜空さんが織田作さんにお会い出来たことは」
「よかったですね」
「そうでしたね」
「まことに」
　実にというのだ。
「そう言うべきです」
「そうですか」
「そうした意味でもですね」
「大阪に行かれてよかったです」
　デートしたことを言うのだった。
「お二人の絆を深め楽しめただけでなく」
「あの人にもお会い出来た」
「そのことがですね」
「よかったです、ですから」
　それ故にというのだ。
「あの出会いを大切にされて下さい」
「織田作さんとのですね」
「あの人との出会いを」
「そうです、大阪を心より愛していて」
　自分達と縁の深いあの街をというのだ。
「私達のご先祖様達も書いてくれた」
「その織田作さんと出会えた」
「そのことは本当に大きいですね」
「そうです、あと今ではです」
　幸雄はさらに話した。
「私達は今は伊賀の人達とも仲がいいですね」
「はい、母方の祖母ですが」
　佐京が応えた。
「伊賀の忍の家の出身で」
「まさに忍者ですね」
「今も尚」
「そうですので」
「戦ったのは江戸時代のことです」
　真田家と伊賀の者達がというのだ、幸村を主として十勇士達はその彼等を戦ってきたことを話したのだ。
「ですから」
「今はですね」
「違います」
　まさにというのだ。
「維新の時に和解して」
「そうしてですね」
「今はです」
「仲がいいですね」
「左様です」
　佐京に微笑んで話した。
「そうなっています」
「左様ですね」
「戦いはもう昔のことは」
「今は結婚もする」
「そうしたです」
　まさにというのだ。
「間柄になっています」
「江戸時代はもう昔ですね」
「戦いのことは」
「そうですね」
「今は融和です」
　その時代だと言ってだった。
　幸雄は鯨のベーコンを肴に焼酎を飲んだ、ベーコンも焼酎も実に美味く身体にも心にも染み渡るものだった。


第四十六話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２４・１０・１５