金木犀の許嫁
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第四十六話 鯨を食べてその五
「一切」
「まさに自分がこの世で一番偉いですね」
「そう思いますと」
それならというのだ。
「最早です」
「学べないですね」
「どなたからも」
「そうなりますね」
「小さな子供からもです」
「学べますね」
「人は」
白華に確かな声で答えた。
「そうです、低い心なら」
「そうなんですね」
「ですから」
それでというのだ。
「是非です」
「低い心であることですね」
「人は」
こう言うのだった。
「そうあるべきです」
「低い心ならですね」
「謙虚にです」
「学べますね」
「そうです、ただ」
幸雄はこうも言った。
「プライドがないこととは違います」
「低い心であることは」
「プライドは必要です」
それはというのだ。
「人には」
「誇りですね」
「恥ずかしいことをせず」
そうしてというのだ。
「媚びない、卑屈にならない」
「そうすることは大事ですよね」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「プライドは尊大とは違いまして」
「人としての行動でしょうか」
「そうです、謝るべき時は誤り」
頭を下げてというのだ。
「自分でことを進めかつ卑屈にはです」
「ならないことですね」
「人に媚びることも」
そうしたこともというのだ。
「しないことです」
「それがプライドですか」
「一言で言うと恥ずかしい行いをしない」
「そういうことですか」
「私はそう思います」
こう白華に話した。
「プライドとは何かと聞かれますと」
「恥ずかしいことをしないことですね」
「そうです」
あらためて言うのだった。
「そうしたものだと」
「そうですか」
「はい、そして」
幸雄は白華に話を続けた。
「真のプライドと低い心を共にです」
「持っていることですね」
「そうなればです」
そうであればというのだ、幸雄は穏やかかつ確かな表情で白華に対して自分の考えを話していった。
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