DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
強すぎると言う事は、卑怯な事である!と思った。
前書き
遂にあのイジメの様な正々堂々とした戦いが始まる。
彼の名誉の為に言っておきます。
ゾーマさんは強いですから!
本当は本当に強いですから!!
私達の遥前に、お父さんの姿がポツンと見える。
自ら作り出したレミーラの魔法で、暗闇でもハッキリ見えている。
そして、その魔法の光は、お父さんと共に奥へと移動し、世界を混沌へと誘う大魔王を浮かび上がらせる。
「はぁ~………何で僕がこんな事を………はぁ~…」
そんな大魔王ゾーマと戦おうとしている男が、情けない口調でぼやき出す。
何時までもグジグジ鬱陶しいわね!腹据えなさいよ!!
「やぁ、こんにちは。絶世のイケメン・リュカ君だよ」
私達とは大分距離があるのに、ハッキリ聞こえる明るい声で自己紹介をするお父さん。
状況分かってるのかしら?
「遂に来たか……しかも仲間に見捨てられるとは……哀れよのぅ…」
「ホント…酷いよね!『一緒に戦え!』って言われるのなら解るけど、『一人で戦え!』って意味解んないよ!」
ゾーマはあからさまにお父さんを馬鹿にしているのだが、当の本人は全然気にすることなく、愚痴を吐き出し同情を誘う。
「ふっふっふっ…しかし、どちらでも結果は同じであろう…キサマらは全員この場でワシの生贄になるのだから!」
勿論ゾーマからの同情は得られない…
代わりに邪悪なオーラを浴びせられている。
「ねぇねぇ…もう一回聞くけど…本当に君は美少女じゃないの?その姿は仮初めで、真の姿は美少女大魔王ゾーマちゃん!って事にはならないの?」
だけど舐めちゃならねーのが私達のお父さんだ。
あの強烈なオーラを存在しないかの様に自分のペースに持ち込む。
「な、何なんだ先程から『美少女』『美少女』と…この姿がワシの真の姿で、変化などせんわ!大体どこからそんな話が出てきたんだ!?」
「どっからって………あれ、どこからだっけ?」
いい加減呆れているゾーマ…
情報源など本気で気にしているわけでは無いのだろうが、思わず口から出てしまった言葉だ。
だがお父さんは情報源を思い出そうと、此方を見詰め答えを欲しがる。
目が合ったオルテガさんが、ジェスチャーでウルフの事を指差すと…
「あぁ!そうだよ………ウルフが最初に『ゾーマちゃんは美少女!』って言い出したんだ!何だよアイツ…ガセネタ掴ませやがって…」
と、ウルフを指差し憤慨する。
「アイツだよ、アイツ!アイツが僕に嘘情報を掴ませたんだ!いい迷惑だよなお互い…これは被害者友の会を創るべきじゃね?僕達でガセネタ掴ませたあのガキを訴えようよ!」
本当に何を考えてるのか分からないわ…
ゾーマの服の端っこを掴んで、ウルフを何度も指差しながら被害者意識を共有しようと試みている。
「ふ、ふざけるなキサマ!」
勿論ゾーマはお父さんに激怒する………が、
「そうだ、ふざけるな!僕達は訴えを取り下げないゾ!覚悟しろよ」
と、ゾーマの怒りが自分に向かっている事に気付かず、ウルフに対して憤慨し続ける。
「こ…この馬鹿が………マヒャド!!」
「うわぁ、あぶねー!………何すんだよいきなり!?『美少女大魔王ゾーマちゃん』疑惑を創り出したのは僕の所為じゃないって言ったろ!僕達被害者同士じゃないか…なのにいきなりマヒャドって……何なのサ!」
何であの距離で魔法を避けられるんだろう?
「こ、この距離で避けるとは………」
「そりゃ避けるよ。何なのお前!?」
違う!避けた事が驚きなのではなく、避けれた事にビックリなのだ!
「キサマ…ここには何しに来たんだ!?」
いい加減話が咬み合わない事に苛ついたゾーマ…
あり得ない事に聞いちゃったよ。
「何って…………………………あぁ…そう言えば戦いに来たんだ…話が合いそうだったから忘れてた(笑)」
………嘘だと言って。
ゾーマをコケにする為のお芝居だと言って。
「……………」
あぁ…大魔王様にまで呆れられてますわ。
見下す事もアホらしく思えてるのでしょうね。
しかし、突如ゾーマは凍える吹雪で攻撃を仕掛けてきた!
きっともう終わりにしたかったんだと思います…
でも…
「ちょ…危な…ヤメロって!」
と軽い口調でお父さんはこれも避けきり、逆に攻撃する。
“ドゴッ!”と大きな音と共に、ドラゴンの杖で吹き飛ばされるゾーマ。
「お前…いきなりは卑怯だろ!」
吹き飛ばされ蹲るゾーマに対し、闘志0の口調で怒るお父さん。
ゾーマはお父さんより二回りは大きいのだが、軽く吹き飛ばすなんて凄いと思う。
「やるではないか…ワシを吹き飛ばすとは…しかし如何に強かろうと、ワシの前では全てが無意味!」
格好悪く吹き飛ばされたクセに、偉そうな態度のまま先程までの位置に戻り大口を叩く大魔王様。
だが言うだけの事はある…
お父さんの攻撃を受けた箇所が、見る見る回復して行く。
これが闇の衣の効果か!?
「クックックッ…ワシは不死身…この闇の衣がある限り、ワシに幾らダメージを与えても、即座に再生して行くのだ!さぁ、絶望せよ!それこそワシの喜び!」
光の玉を使わなきゃ!
私は目でルビスちゃんに訴える。
「リュカ…竜の女王から戴いた『光の玉』を使うのです!それでゾーマの闇の衣は無力化出来ます!」
そうよ、永遠に回復し続けるなんて卑怯じゃん!
私達はウルトラアイテムで応戦よ。
「何…『光の玉』って?僕の股間の双玉とは違うの?」
「「「……………」」」
や、やばい…
考えたくないけど、やっぱりあの人は馬鹿なのかもしれない…
「ち…ちげーよバーカ!アンタ、ラダトームでバコタを騙す為にアルルから受け取っただろ!アレだよ!『無くした』とか言うんじゃねーゾ!」
あぁ…何時も品行方正なお兄ちゃんが、口汚い言葉で父親を罵っている。
ヤメテ、そんなお兄ちゃんは見たくない!
「あぁ…あの玉っころか!アレだったら重要なアイテムだと思ったから、リムルダールの宿屋に預けてきたよ。宿屋の主人に『ちょ~大事な物だから、大切にしまっておいてね♥』って…大事な物を無くす訳無いじゃん(笑)」
「「「あ…預けてきた~!?」」」
私達は全員で絶叫する!
爽やかスマイルでサムズアップする男に心底驚愕をし…
ルビスちゃんなんか気を失っちゃったよ!
「テメーふざけんなー!」「バカヤロー、責任取れ!」「お前もう死ね!」
ダメだ…この男、本当にダメだ!
皆の罵声を止める事など出来やしない。
「リュ、リュカ…どうするの…一体どうすんのよ!」
みんなの罵声を受け、腹を抱えて大笑いするお父さん…
流石のお母さんも怒鳴り出す。倒れたルビスちゃんを抱き起こしながら…
「あはははは…ビアンカの怒った顔も可愛くてステキー!」
だが、まったく堪えないお父さんはどうなってるの?
愛しの妻が怒鳴ってるのに、投げキッスで答える。
「ジョーク、ジョークよ!ほれ…この通り『光の玉』は持ってきてます!」
存分に笑った後、懐から光の玉を取り出し戯けるお父さん。
「みんなスゲー顔で怒るんだもん…ちょ~うける~!!」
笑えねーよ!
全員ガックリ脱力する。
それを見てニコニコしているお父さん…殴りたい。
「ほう…これがワシの闇の衣を無力化させる光の玉か…」
無駄なコントが終わったところで、ゾーマがお父さんの手から光の玉を掠め取る!
げっ…あのオッサン、何で無警戒なのよ!?
「ちょっと…それは大事な物だから返してよ!」
ゾーマの光の玉を奪われ一瞬キョトンとしていたお父さん…
距離を取るゾーマに右手を差し出し“返せ”とせがむ。
「キサマは馬鹿なのか?」
「よく言われるけど何で?」
何でって…本当に馬鹿なのか!?
「…何でじゃねーよ!このアイテムが何に使われるのか解ってるのか!?」
「あれ?…お前もしかしてルビスの説明を聞いてなかったの?それを使うと闇の衣が消えるんだよ。凄いだろ!…じゃ、返して」
「………か、返すワケねーだろ!これを使われたら、ワシは弱くなるんだ…そんな物をこれから戦う相手に渡すワケねーだろ!」
そりゃそうだ!何で返してもらえると思ってるんだろうか?
「あはははは…弱くなるって…たいして変わらないよ。お前、闇の衣があったって弱いじゃん!傷口が回復するってだけで、お前は弱いじゃん!むしろ苦痛が長引くだけだよ?光の玉を使ってサクッと死んだ方が良くね?」
「………くっくっくっ…はっはっはっ…随分と愚かな人間も居たものだ…己の実力も判らぬとはな。よくここまで来れたものだ!」
あぁ………どうすれば良いのよ!?
光の玉無しじゃ勝てるわけないのに!?
「ふん…大人しく光の玉を返していれば、真の苦痛を味わずに済んだのに………」
しかし、ただ一人だけ勝てると確信している男が、真面目な口調で大魔王を恫喝する。
いくらなんでもそのハッタリはないでしょう………
「いい加減にしろ!キサマ如きか弱き人間が、闇の大魔王ゾーマ様に勝てるワケが無いのだ!手始めにキサマを一瞬で塵に変え、残りの者共もあの世へ送ってやるわ!」
言い終わるや、怒りのゾーマはお父さん目掛けてマヒャドを唱えてきた!
だがお父さんは、人間離れしたスピードでゾーマの鳩尾にカウンターキックを炸裂させる。
でも無駄でしょうに…
ダメージを喰らった側から回復して行くんだもん…
「ぐぅ……やるではないか…だが無駄な事…闇の衣がある限「その中途半端な回復を後悔しろ!」
蹴り事態は効いている為、苦痛で顔を歪ませ蹲るゾーマ。
そんな大魔王が何とか絞り出した台詞を遮って、正義の味方らしからぬ台詞を吐くパパ。
「なまじ回復するが為に、僕のもう一つの姿を見る事になる…苦痛の中、後悔と共に死んで行くがいい!」
あの人何言ってるの!?
ドラゴンの杖を掲げ、大魔王よりも大魔王っぽい科白を口にするリュカ陛下。
だいたいもう一つの姿って何よ!?
誰もが同じ事を思っていたに違いない…お父さんの無意味なハッタリに呆れていたに違いない。
しかし今回も我々は裏切られる。
ハッタリ大王に裏切られる!
掲げてたドラゴンの杖が輝きだし、一瞬でお父さんを包み込むと、次の瞬間には巨大なドラゴンが出現していた。
濃紺色の美しいドラゴンが。
「な…何だ…これは…!?」
流石にゾーマも絶句する…勿論、私達も声を出す事が出来ない。
お父さんより二回りも大きいゾーマ…それを遥に凌駕する大きさのドラゴンの出現…
「これからお前の苦痛の時間が始まる…光の玉を返さなかった事を永遠に後悔せよ!」
ドラゴンからはお父さんの声が聞こえる。
ま、まさか………
「と、父さんなんですか!?それは父さんなのですか!?」
「あぁそうだ。これがドラゴンの杖の本当の能力…」
そ、そう言えばドラゴンの杖って『ドラゴラム』の効果があったわ!
「すげぇ………あの杖には『ドラゴラム』の力があったんだ…」
弟子のウルフが感激して叫び出す。
そのウルフから聞いたのだが、実際のドラゴラムは術者の能力を何十倍にもする効果があるらしい。
「…ふ…ふふふ…ははははは!なるほど…ドラゴラムか…しかしそんな物はワシの前では無意味だ!」
トリックのネタが分かったゾーマは、高笑いをしながら『凍てつく波動』を打ち放つ。
この『凍てつく波動』を喰らってしまうと、魔法の効果が消し飛んでしまうのだ。
「それがどうした!」
「ぐはぁ!!」
だがお父さん竜は、その巨体からは想像も出来ないスピードで凍てつく波動を躱し、逆に巨大な爪で反撃をする。
「ぐわぁぁぁ………」
先程も言いましたが、ドラゴラムは術者の能力を何十倍に引き上げるのだ。
本来は力の弱い魔法使いが憶える魔法の為、能力を何十倍に引き上げても、これ程まで驚異的に現実離れをする事はない。
しかしお父さんは元から強いのだ…
「……辛くなったら、何時でもいいから自ら光の玉を使えよ」
腹部から半分に千切られ、それでも回復して行くゾーマを見下ろし、恐ろしい程冷酷な声で己の未来を決める様に勧めるお父さん竜。
「お、おのれ~………キサマなぞ、ワシの凍てつく波動さえあたれば…」
再生を終え直ぐさま凍てつく波動を放つゾーマ。
だけどもアッサリ避けられ灼熱の炎を浴びる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ゾーマを包む炎も、肉体を焼ききってしまえば鎮火するのだろうが、焼かれながらも再生する為、苦痛が長い時間続くのだ。
しかもその間お父さん竜は攻撃をしない。
ゾーマの苦しむ様をただ見下ろしている。
これではどっちが大魔王なのか分からない…
光の玉を使わずに、一対一で正々堂々と正面から戦っているのに、何で凄く卑怯に見えるのだろうか?
大魔王の力を弱め、大人数で一人を攻撃する方が、まともに見えるのは何故だろうか?
哀れな大魔王に安らかな死を………
「ぐはぁ………」
最終決戦という名の拷問が続く…
何度かお父さんに“嬲らずトドメを刺してあげて”と懇願したのだが、プライドの高い大魔王ゾーマが“見くびるな人間が!こんな攻撃はなんでもないわ!!”と虚勢を張った為、可哀想な時間が過ぎていった。
凍える吹雪を吐いたり…凍てつく波動を試みたり…ダメ元でマヒャドを唱えたり…
勿論、私の頭よりも大きい拳を振り回し、物理的な攻撃を仕掛けたりもしてるのですが…
お父さん竜には全く効果なく、その都度逆撃を被るのはゾーマさんです。
即座に回復するのだとしても痛いものは痛いのだろう。
攻撃を受ける度に精神的ダメージが蓄積して行く。
それを回復する衣の持ち合わせはない。
そして遂にゾーマさんがキレた!
今しがた受けたダメージをオートで回復しながらヨロヨロと立ち上がり、懐から光の玉を取り出し掲げ叫ぶ。
「光の玉よ…闇の衣を消し去りたまえ…」
誰もが目を疑うその行為。
光の玉を掲げたゾーマの身体から、闇の衣が消え去って行く。
そう…自ら無限回復を捨てたのだ!
「………お前………何やってんの?」
「うるさい…もう、嬲られるのはたくさんだ………」
お父さん竜が馬鹿にする様な口調で呟くと、吐き捨てる様に怒鳴るゾーマさん。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………………」
そして突如此方に向かって突進してきた!
ぶっちゃけマッタリしていた私達はビックリ仰天!!
何も出来ず固まっていると…
「リュカちんと戦っていたのだから、いきなりこっちに来んじゃねーよ!」
と、ダンディー勇者オルテガさんが剣を抜き放ち嘯く。
「まったくです…折角楽してたのに…」
私の格好いいお兄ちゃんも、ニヒルに呟くとオルテガさんと共に、突進してくる大魔王ゾーマを切り捨てる!
めちゃんこ格好いいッス!
結局ゾーマを倒したのは、オルテガさんとお兄ちゃんだ。
「僕は約束通り、ゾーマと戦っていたよ。そっちに向かったのは僕の所為じゃ無いからね。つか、戦闘しないからって気を抜きすぎだったんだよ!もっと緊張感を維持しなきゃ…ねぇ、オルテガっち!」
しかし最終決戦を行っていたお父さんは、人間の姿に戻り勝手な主張で自身の正しさを主張する。
その言い方が、何時もの緊張感に欠ける口調なのでむかっ腹が立つ。
きっと私だけではないだろう…
「な、何が『僕の所為じゃ無い』よ!さっさとトドメを刺してれば、こんな事にはなったんでしょ!」
ほら…小うるささ代表のアルルさんが怒ってるもん。
まぁ、そんな事を気にするお父さんではないけどね。
「しょうがないじゃんか…ダメージを与えても回復しちゃうんだよ!精神的に追い詰めるしかないじゃん!そこんとこ解ってないなぁ…」
「あんだけ圧倒的な強さだったんだから、その気になればトドメの一つくらい刺せたでしょ!」
私もアルルさんの意見に賛成だ…
けど、ゾーマが突進してきた時に何も出来なかった勇者さんには何も言えない気がする。
口に出して言うと、またややこしくなるから黙ってるけどね。
ページ上へ戻る