大阪の呼ぶ子
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第三章
「面白いわね」
「そうだな、ただな」
「ただ?」
「大阪で山彦はないな」
「ヤッホーーーとか言わないわね」
舞奈もそれはと言った。
「やっぱり」
「そうだな」
「大阪だとね」
「それでわしもだ」
「呼ぶことないのね」
「大坂の陣で徳川家康さんの話し相手にはなった」
「冬の陣で陣を敷いたから」
それが何故かは舞奈もわかった。
「だからなのね」
「夏の陣は真田幸村さんでな」
彼でというのだ。
「そうなった」
「そうなのね」
「ちなみに幸村さんは死んでおらんぞ」
呼ぶ子は何気に歴史の真実を話した。
「薩摩に落ち延びたぞ」
「ああ、神戸に子孫の人がおられるわね」
舞奈は自分が聞いた話をここでした。
「十勇士の子孫の人達もだし」
「そうだな、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「誰も山に言わなかったか」
「山彦になる様なことは」
「そうだ、こんな山彦もそうはないな」
「ないわね」
舞奈もそれはと返した。
「まずね」
「茶臼山にそんなこと言う人なんてな」
勇也も言った。
「いないよな」
「そうよね」
「全く、わしのやることがない」
呼ぶ子は不満そうに述べた。
「だからな」
「だから?」
「どうしたのよ」
「だから毎日足を人のものにして街を歩いてな」
大阪のそこをというのだ。
「妖怪仲間と一緒に飲んで食べておる」
「そこは妖怪ね」
「そうだな」
勇也は舞奈のその言葉に同意して頷いた。
「夜は墓場でっていうしな」
「どんちゃん騒ぎもするわね」
「遊んでおる、それはそれで楽しいが」
しかしというのだ。
「山彦を言わぬのは寂しいな」
「茶臼山じゃね」
「諦めるしかないな」
舞奈も勇也もあっさりとした口調で述べた。
「もうな」
「そうよね」
「そうだ、だから実は諦めてな」
妖怪もそれでと答えた。
「毎日楽しくやっておる」
「それならそれでいいな」
「そうよね」
「じゃあそういうことでな」
「これからも大阪の暮らし楽しんでね」
「そうする、では今夜は都島のカラオケに行く」
そうするというのだ。
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