ピエロのプライベート
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「全くね」
「お家にいる僕とはね」
「また違っていたわ」
「そうだね」
「銀行のあなたを見たこともあるけれど」
「スーツの時のだね」
「物凄く真面目で無口で」
そうであってというのだ。
「テキパキとしていたわね」
「銀行のお仕事はね」
夫は妻にスパゲティを食べつつ答えた、今日の昼はペスカトーレだ。
「事務仕事や計算が多くて」
「無口になるのね」
「どうしてもね」
「それで無口なのね」
「普段と違ってね」
そうであってというのだ。
「本当にね」
「そうなのね」
「そしてね」
夫はさらに話した。
「ピエロになるとね」
「身軽で剽軽なのね」
「子供達は明るく面白いね」
そうしたというのだ。
「ピエロだってね」
「そうね」
妻も確かにと頷いた。
「私も見て思ったわ」
「そうだね、そして今はね」
「プライベートね」
「そうだよ、銀行員でなくて」
そしてというのだ。
「ピエロでもない」
「私と一緒に暮らしている」
「普通の市民だよ」
「そうね」
「この国のね、銀行員としても市民で」
「ピエロでも市民ね」
「けれど今は完全にプライベートの」
その中にいるというのだ。
「市民だよ、それでお昼を食べたら」
「お家に戻って」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「音楽を聴こうか」
「音楽は何を聴くのかしら」
「カントリーロックがいいね」
夫は妻に笑って答えた。
「今の気分は」
「カントリーロックね」
「家にあるCDでこれはというものを聴くよ」
「その時で聴きたいものをなのね」
「そうするよ、じゃあ」
「ええ、食べ終わったらね」
「お家に帰ろう」
こう話してそうしてだった。
二人でレストランの昼食を食べた、そのうえで家に戻った。そこでこれにしようと思ったカントリーロックの曲を聴いてプライベートを楽しんだのだった。
ピエロのプライベート 完
2024・6・12
ページ上へ戻る